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番外編

85 悪党の恋5 ※

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天性のタラシ。昔からよく言われた。

何故か色恋が分かっちまうんだからしょうがない。

昼間の俺の片思いだったらしいこの恋は王子の重すぎる愛が比重を超え毎日夜遅くまで愛される事となった。



「――やだ、やめろってっ。あっ……ああっ……んな……いきなりっ……ああっ……んんっ……ああっんっ……」

今日は昼間王子が来なかったらしく、体が軽いなって、よっしゃ、夜の街にでも繰り出すかと思ってたら王子がやって来た。やって来ていきなりのキスから服を脱がせにかかるから……え、何か初めからってはずいなって、いつもSEXの最中に覚醒するから、初めからの王子のもどかしい動作や表情が何かこう俺的にキて、恥ずかしくなって許否しまくったらこうなった。

「俺に飽きたのかっ。逃げるなっ。」

飽きるも何も初めから好きじゃねぇしっ。

「ああっ……好きっ……好きだからっ……やぁっ……」

手首を頭の上に縛られ、服を破られ、いきなり突かれた後はネチネチと挿れられ、イく寸前で止められ好き好き言わされた。

それからは昼間王子が来なかったと聞けば、夜屋敷にはいないようにしている。あんな全部を持っていかれるようなSEXしてたら体がいくつあっても足りない。



――王子が結婚する。酒場で噂になっているのを知ったのはそんな時だった。

相手はあのバニラ嬢。なんだよ結局上手くいったんじゃないか。バカらしい。興ざめだと次の日の夜は昼間のSEXで重過ぎる体に鞭打って珍しく夜会に出た。王子は居なかったがバニラ嬢はいた。

――なんでそんな事をしたか、分からない。「私を放っておいたくせに」とふくれるバニラ嬢を宥め一室に誘いだし純潔を散らした。昼間散々SEXしたらしい俺の体は疲れていて終わったら眠ってしまった。

――真夜中に物凄い力でベッドから引摺り下ろされ目が覚めると赤い獅子が俺に食いつこうとしていた。

恐怖で気を失い気が付くと朝だった。

意識が戻る前にキャロルが俺の夢の中に現れた。


『――ああ、恐い。私はこんな恐ろしいこと耐えられないよ。けど王子との恋は夢のようだったねぇ。カイン、ありがとう。』

そう言って光の中に消えていった。

そして俺はを迎えた。

昼間の俺はキャロルだったらしい。あのババアいい夢見れて最高じゃねぇか。バカ野郎。

足には足枷がついていて朝、昼、晩と食事が運ばれてくる。王子は毎晩やって来て俺を犯した。何の会話もなくただ犯すだけ。何がいいんだこんなの。

王子が飽きるのをこのまま待つのか?

そんな排他的で絶望の時間を過ごしていた時、皇太子妃がご懐妊したと使用人達が話すのを聞いた。

……そうか、結婚したのか。

何故か涙が出て何だこれと思った。


――その時、目の前が優しい光に包まれると俺に少し似た女が現れた。

「ずっと探していたの。お父さんが高い高いしすぎてあなたを地上に落としたのよ。オホホ」

……おい、そこは笑うところなのか?

「さぁ、帰りましょう?」

女はニコニコと笑い俺の方へ白い手を伸ばした。

一瞬、赤い髪が頭をよぎる。

――そして、俺は女の手を取った。






――二十数年後。


俺は何年前か分からない人相書きを頼りに人を探していた。

そしてたどり着いた墓の前。

「……間に合わなかった。」

もし、彼が幸せでないのなら俺の時のように天上に連れて行こうと思って探していた。

――ジャリ

「ラインハルト?」

生きていたのかと腕を掴まれ対面させられた。

「……カイン?…そんなバカな……」

信じられないものを見る目で俺を見るかつての王子。……年取ったなぁ。

「……おい、金髪碧眼って俺の子じゃねぇか!……殺す事ねぇだろう!……なんで俺が迎えに来るまで待ってくれなかったんだよ!」

かつての王子の年老いた胸を叩き責める。何度も叩いて泣きじゃくる俺を宥める事もせず黙って受けた王子は絞り出すような声で――

「――会いたかった。」

そう言って俺を力強く抱き締めた。



~悪党の恋  完~



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



前王と、ラインハルトの父親のお話でした。

主人公やアレンが出てこないのにご覧くださりありがとうございました。彼らがいないと二人はいないので、少しでもこんな恋があったのねと心にお留め下さったら幸いです。
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