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最終章
56 少年は空気を読まない
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アレンは苦しむ俺を面白そうに眺めながらあろうことかそのままベットへ入ってきた。俺はここ限定なのか?部屋は沢山あるだろ?いやむしろユノの所へ帰してくれ。
言いたい事は沢山あったが顔色の悪いアレンを見ると何も言えなかった。面白がる顔とは裏腹にアレンは優しく俺を包み込み痛む膝を撫でた。すると不思議と痛みが和らいだ気がする。しかし暫くすると撫でる手は動きを止め腰に回ってきてしまった。
「止めるな。もっと擦っててくれ。気持ちがいいんだ。」
手当てとは良く言ったもんだな。俺はアレンの手を俺の膝に導く。
「……お前、俺が誰だか知らないのか?」
「っはあ?んなの関係ないだろう!お前、俺にしたこと忘れた訳じゃないよな?」
俺は50代にしてお漏らしをさせられたんだぞ!膝を擦るくらいしやがれ!
「……。」
アレンは大人しく俺の膝を擦り始めた。
「……細いな。」
「誰かさんのせいでな。あんまり強く抱くと骨折れるからな。」
途端に拘束が緩む。
アレンの素直な反応に笑いを堪え肩が震えた。
「……泣くな。」
「泣いてねぇ。」
笑いを堪えてんだけど。
「俺は謝罪が出来ない立場にある。……許せ。」
その日アレンは俺が眠りにつくまで膝を擦った。
「……イケメン滅びろ。」
次の日、目の前の美しい寝顔を見ながら俺は呟いた。例のごとくガッチリホールドされているので身動きがとれない。頼むから抱き枕でも買ってくれ。
途方に暮れていると控えめに扉をノックする音がした。失礼しますと入ってきた男がこの状況を見て固まる。
「……本当に寝ておられるのか。」
うん。がっつり寝てるね。
「しかし今から大事な会議が……そこのお前、お起こししろ!」
えっ?何びびってんの?大体起こせるもんなら起こしてるっつーの!
「叩いても、つねっても起きないんですよー。」
「つっつね⁉何て事を‼」
どんどん青褪める男。髭ちょびん。
「だって、おしっこ行きたくなったらどーすんの!?」
この前の二の舞はごめんだ!!だから尿意はないがそうなる前に起こそうとさっきから努力してる。
「お、おし!?何と下品な。何故このような下賎の者をお側に……」
俺だって知りたい。
「おい、離れぬか!」
髭ちょびんが近付いてきた。実力行使か?頼むぞ!
「グハァッ!!」
近付いて来た髭ちょびんが俺の頭に触れそうになった瞬間、遠くの壁に叩きつけられた。
「なぁ、誰かこれに話しかけてよいと言ったか?」
青白い怒りの炎を纏いながらアレンはゆっくりと身を起こした。
「誰かこれに触れていいと言ったか?」
「もっ申し訳ありません。」
髭ちょびんは何とか起き上がり膝を折る。小刻みに震えているのが分かる。
俺はアレンの袖を引っ張り見上げた。
殺すのか?お前、起こされたからって起こした人間を殺す様な暴君になっちまったのか?
「……会議があったな。直ぐに行く。」
張りつめた空気がなくり、アレンは静かに微笑むと安心しろとばかりに俺の頭を撫でた。
「お前、話を聞かないで人をぶっ飛ばすクセ、改めねぇといつか死人が出るぞ?」
ピシッとアレンの笑顔が固まる。
「……まぁいい。実はな、俺はこの国の王だ。」
どうだ?驚いただろう?という顔をしながら諭すように俺を撫で続けるアレン。
「いや、知ってるし。」
またまたピシッとアレンの笑顔が固まる。
「……知っていてその態度。余程の阿呆か。」
哀れむように言われて脳天がカチ割られる程の衝撃を受ける。
ガブリ!!
「っ!?」
アレンの腕に噛みついてやった。アレンの赤い瞳が驚愕で見開く。
「誰が阿呆だぁ?俺は神童と呼ばれた男だ。世界一頭がいい!!……っ!?…モゴモゴ……」
俺は言いきって口を押さえる。
「……歯が、抜けたぁ。」
アレンの野郎。どんだけ鋼の肉体なんだよ!!
永久歯が抜けた俺にはもう、絶望しかない。
言いたい事は沢山あったが顔色の悪いアレンを見ると何も言えなかった。面白がる顔とは裏腹にアレンは優しく俺を包み込み痛む膝を撫でた。すると不思議と痛みが和らいだ気がする。しかし暫くすると撫でる手は動きを止め腰に回ってきてしまった。
「止めるな。もっと擦っててくれ。気持ちがいいんだ。」
手当てとは良く言ったもんだな。俺はアレンの手を俺の膝に導く。
「……お前、俺が誰だか知らないのか?」
「っはあ?んなの関係ないだろう!お前、俺にしたこと忘れた訳じゃないよな?」
俺は50代にしてお漏らしをさせられたんだぞ!膝を擦るくらいしやがれ!
「……。」
アレンは大人しく俺の膝を擦り始めた。
「……細いな。」
「誰かさんのせいでな。あんまり強く抱くと骨折れるからな。」
途端に拘束が緩む。
アレンの素直な反応に笑いを堪え肩が震えた。
「……泣くな。」
「泣いてねぇ。」
笑いを堪えてんだけど。
「俺は謝罪が出来ない立場にある。……許せ。」
その日アレンは俺が眠りにつくまで膝を擦った。
「……イケメン滅びろ。」
次の日、目の前の美しい寝顔を見ながら俺は呟いた。例のごとくガッチリホールドされているので身動きがとれない。頼むから抱き枕でも買ってくれ。
途方に暮れていると控えめに扉をノックする音がした。失礼しますと入ってきた男がこの状況を見て固まる。
「……本当に寝ておられるのか。」
うん。がっつり寝てるね。
「しかし今から大事な会議が……そこのお前、お起こししろ!」
えっ?何びびってんの?大体起こせるもんなら起こしてるっつーの!
「叩いても、つねっても起きないんですよー。」
「つっつね⁉何て事を‼」
どんどん青褪める男。髭ちょびん。
「だって、おしっこ行きたくなったらどーすんの!?」
この前の二の舞はごめんだ!!だから尿意はないがそうなる前に起こそうとさっきから努力してる。
「お、おし!?何と下品な。何故このような下賎の者をお側に……」
俺だって知りたい。
「おい、離れぬか!」
髭ちょびんが近付いてきた。実力行使か?頼むぞ!
「グハァッ!!」
近付いて来た髭ちょびんが俺の頭に触れそうになった瞬間、遠くの壁に叩きつけられた。
「なぁ、誰かこれに話しかけてよいと言ったか?」
青白い怒りの炎を纏いながらアレンはゆっくりと身を起こした。
「誰かこれに触れていいと言ったか?」
「もっ申し訳ありません。」
髭ちょびんは何とか起き上がり膝を折る。小刻みに震えているのが分かる。
俺はアレンの袖を引っ張り見上げた。
殺すのか?お前、起こされたからって起こした人間を殺す様な暴君になっちまったのか?
「……会議があったな。直ぐに行く。」
張りつめた空気がなくり、アレンは静かに微笑むと安心しろとばかりに俺の頭を撫でた。
「お前、話を聞かないで人をぶっ飛ばすクセ、改めねぇといつか死人が出るぞ?」
ピシッとアレンの笑顔が固まる。
「……まぁいい。実はな、俺はこの国の王だ。」
どうだ?驚いただろう?という顔をしながら諭すように俺を撫で続けるアレン。
「いや、知ってるし。」
またまたピシッとアレンの笑顔が固まる。
「……知っていてその態度。余程の阿呆か。」
哀れむように言われて脳天がカチ割られる程の衝撃を受ける。
ガブリ!!
「っ!?」
アレンの腕に噛みついてやった。アレンの赤い瞳が驚愕で見開く。
「誰が阿呆だぁ?俺は神童と呼ばれた男だ。世界一頭がいい!!……っ!?…モゴモゴ……」
俺は言いきって口を押さえる。
「……歯が、抜けたぁ。」
アレンの野郎。どんだけ鋼の肉体なんだよ!!
永久歯が抜けた俺にはもう、絶望しかない。
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