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最終章
52 再会
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『ライトオブホープ2』は社会現象を巻き起こした『ライトオブホープ』に続き、満を持して2年後に発売されたが、伝説級の1を越えることはなく、売れ行きは芳しくなかった。
物語は『ライトオブホープ』の10年後。
平和になった世界に暗雲が立ち込め始める。それは『始まりの村』の唯一の生存者、悲劇の男が村人が全滅しているとは知らず、村にいる病気の妻を助けて欲しいとアレンにすがり付く所から始まる。
アレンは預言者より『始まりの村』で世界の終わりが始まるとお告げを聞き、そこへ向かう途中だった。
「――ヒールを。」
「はい!」
アレンに言われ一緒にいた魔術師の女がヒールを唱えると今まで叫んでいた男の傷が癒えて大人しくなった。
「……お前、今何をしていた?」
アレンが氷のように冷めた瞳で俺を見た。
「……何って、傷口を縫っていただけだ。」
顔に飛んでいるだろう血を拭いながら俺もアレンを見る。
なんて顔色だ。俺が魔方陣に吸い込まれてから10年経ったらしいから28才か……。顔色も悪く目の下に隈がある。今にも治療が必要な患者に見えた。
アレン……お前、幸せじゃないのか。
血を拭った俺の顔を見てアレンが目を見張る。相変わらず目がでけぇ。以前は父王に似ていると思っていたが更に上をいく男前になりやがって。これで顔色がよかったら道行く女子は皆恋に落ちてしまうんじゃねぇか?俺のアレンの色気が半端ねぇぞ。
「名は?」
俺に近付き、まだ頬についていた血を親指で拭い顔をあげさせられる。
「息子のハルです。こんな事をするような子ではないんです。どうかお許し下さい!!」
父親が俺を庇い必死で頭を下げている。
おい、あんた今まで何してた?よりにも寄ってアレンを連れてきやがって。……こんな事なら帰って来ない方がましだ。
まさか少年の父親が悲劇の男だったなんて。
「……城へ戻る。お前も連れていく。」
俺は人を切り刻んだ罪で罰せられるのか。俺が居なくなればまた、ここや周辺の村人達の生存率が下がってしまう。
「嫌だ。俺は悪いことはしていない。俺が居なくなったら誰がこいつらを治すんだ?」
俺は思いの外近くにあるアレンの顔を睨む。お前の目力には耐性があるから睨んだって怖くないぞ。
「ヒールを使う魔術師を派遣する。常駐させれば問題ない。」
「こいつらに治療代を払う金があると思うか?」
「アレン様になんて口のきき方を!」
女が咎めたが知ったこっちゃない。
「金を取らなければいいんだな。」
「そんな事出来る筈がない。」
貴重な人材をこんな辺鄙の土地に寄越しておいて金を取らないなんて、そんな事出来るなら初めからしてるだろう。
「預言者がこの地に邪気が立ち込め死人が多数出る。それが引き金になって世界が終ると言うから来た。お前のお陰か思ったより邪気は進行していないし、死人も出ていないが、癒しの力で抑制出来るとの事だったから初めから常駐させるつもりだった。問題はない。」
アレンはなにがなんでも俺を罰したいらしい。
「分かった。母さんに挨拶してからでもいいか?それと、よかったらたら母さんにもヒールをかけてやって欲しい。」
母親には俺がつけた傷痕が残っている。綺麗にして欲しかった。
「いいだろう、こいつの母親の元へ行け。」
女を一瞥しアレンが命令する。
「はい!」
「……おい。」
離してくれないと魔術師の女を母親の元へ案内できないだろうが。俺が身をよじると不服とばかりに握った手に力が入った。
「俺も行く。」
「アレン様?」
女が訝しげに見るが気にしていない。俺は諦めて一緒にお手てつないで母さんの所へ向かった。
「――この子は優しい子なんです!どうかご慈悲を!」
母親はヒールで傷口を治して貰いながら泣いてアレンに頼んだ。
母親の傷痕も消え、再発の心配もなくなった事に俺はほっとした。もう、煮るなり焼くなり好きにしろ、だ。ごめんな、少年。
「……悪いようにはしない。」
アレンは俺の手を離さない。
「ハル?どうかしたのか?」
――その時、居なくなった俺を探してユノがやってきた。
「――ライ。」
金糸のようなサラサラの髪、陶磁器のような肌、アイスブルーの瞳。
――そう、優しい幼馴染みのユノはラインハルトの容姿にそっくりだった。
そしてあんなに強く握っていたアレンの手は簡単に俺から離れた。
物語は『ライトオブホープ』の10年後。
平和になった世界に暗雲が立ち込め始める。それは『始まりの村』の唯一の生存者、悲劇の男が村人が全滅しているとは知らず、村にいる病気の妻を助けて欲しいとアレンにすがり付く所から始まる。
アレンは預言者より『始まりの村』で世界の終わりが始まるとお告げを聞き、そこへ向かう途中だった。
「――ヒールを。」
「はい!」
アレンに言われ一緒にいた魔術師の女がヒールを唱えると今まで叫んでいた男の傷が癒えて大人しくなった。
「……お前、今何をしていた?」
アレンが氷のように冷めた瞳で俺を見た。
「……何って、傷口を縫っていただけだ。」
顔に飛んでいるだろう血を拭いながら俺もアレンを見る。
なんて顔色だ。俺が魔方陣に吸い込まれてから10年経ったらしいから28才か……。顔色も悪く目の下に隈がある。今にも治療が必要な患者に見えた。
アレン……お前、幸せじゃないのか。
血を拭った俺の顔を見てアレンが目を見張る。相変わらず目がでけぇ。以前は父王に似ていると思っていたが更に上をいく男前になりやがって。これで顔色がよかったら道行く女子は皆恋に落ちてしまうんじゃねぇか?俺のアレンの色気が半端ねぇぞ。
「名は?」
俺に近付き、まだ頬についていた血を親指で拭い顔をあげさせられる。
「息子のハルです。こんな事をするような子ではないんです。どうかお許し下さい!!」
父親が俺を庇い必死で頭を下げている。
おい、あんた今まで何してた?よりにも寄ってアレンを連れてきやがって。……こんな事なら帰って来ない方がましだ。
まさか少年の父親が悲劇の男だったなんて。
「……城へ戻る。お前も連れていく。」
俺は人を切り刻んだ罪で罰せられるのか。俺が居なくなればまた、ここや周辺の村人達の生存率が下がってしまう。
「嫌だ。俺は悪いことはしていない。俺が居なくなったら誰がこいつらを治すんだ?」
俺は思いの外近くにあるアレンの顔を睨む。お前の目力には耐性があるから睨んだって怖くないぞ。
「ヒールを使う魔術師を派遣する。常駐させれば問題ない。」
「こいつらに治療代を払う金があると思うか?」
「アレン様になんて口のきき方を!」
女が咎めたが知ったこっちゃない。
「金を取らなければいいんだな。」
「そんな事出来る筈がない。」
貴重な人材をこんな辺鄙の土地に寄越しておいて金を取らないなんて、そんな事出来るなら初めからしてるだろう。
「預言者がこの地に邪気が立ち込め死人が多数出る。それが引き金になって世界が終ると言うから来た。お前のお陰か思ったより邪気は進行していないし、死人も出ていないが、癒しの力で抑制出来るとの事だったから初めから常駐させるつもりだった。問題はない。」
アレンはなにがなんでも俺を罰したいらしい。
「分かった。母さんに挨拶してからでもいいか?それと、よかったらたら母さんにもヒールをかけてやって欲しい。」
母親には俺がつけた傷痕が残っている。綺麗にして欲しかった。
「いいだろう、こいつの母親の元へ行け。」
女を一瞥しアレンが命令する。
「はい!」
「……おい。」
離してくれないと魔術師の女を母親の元へ案内できないだろうが。俺が身をよじると不服とばかりに握った手に力が入った。
「俺も行く。」
「アレン様?」
女が訝しげに見るが気にしていない。俺は諦めて一緒にお手てつないで母さんの所へ向かった。
「――この子は優しい子なんです!どうかご慈悲を!」
母親はヒールで傷口を治して貰いながら泣いてアレンに頼んだ。
母親の傷痕も消え、再発の心配もなくなった事に俺はほっとした。もう、煮るなり焼くなり好きにしろ、だ。ごめんな、少年。
「……悪いようにはしない。」
アレンは俺の手を離さない。
「ハル?どうかしたのか?」
――その時、居なくなった俺を探してユノがやってきた。
「――ライ。」
金糸のようなサラサラの髪、陶磁器のような肌、アイスブルーの瞳。
――そう、優しい幼馴染みのユノはラインハルトの容姿にそっくりだった。
そしてあんなに強く握っていたアレンの手は簡単に俺から離れた。
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