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第3章

47 心を込めて唱えましょう。(基本)

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あの後、激オコなアレンに夜這いされ、明け方まで抱き潰された事は、誰も醜男のアンアンイクイクなど何度も聞きたくないだろうから割愛する。

――俺は死を感じていた。何なの?若さなの?もうこれ以上、溢れ出る精力を俺には受け止められねぇ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「イヤミお前、腐っても魔法の教師だったよな?」

薄く開いたドアに足を挟めて扉を開けようとするが、イヤミは必死に閉めようとしてくる。

「突然何ですか?もう遅いですし、お帰り下さい。」

運悪く俺の隣の部屋に住んでいる自分を呪えとばかりに僅かの抵抗をはね除けてイヤミの部屋に入った。

「ちょっと何勝手に入っているんですか!出ていって下さいよ!」

どかっと部屋の端にあるベットに座りお茶を要求する。出来れば温かいのがいい。

「……全く、甘やかされて生きてきた方は常識をご存じないとみえますね。」

イヤミを言いながら渋々お茶を持ってきたイヤミにこいつは使えそうだと思う。押せばなしくずし的にいけそうだ。腐っても王族の俺の言動を完全に否定はできないらしい。

「今日から暫くここに泊まる。死にたくなければ他言無用だ。夜は全魔力を使い誰にも破られない結界をはれ。」

「……どう言う事です?」

「深くは知らない方が身のためだ。」

何か王家の陰謀風に言ってるが、本当はアレンから逃げてるだけなんだけどな。俺は結界をはれないし、寝てる所を襲われたらひとたまりもない。俺の睡眠は深すぎるんだ。イヤミに結界をはらせれば二重に安心だしな。そのうちあいつの性欲も収まると信じたい。

「全く、私を巻き込まないでいただきたい。……1週間ですよ。それが限度です。毎夜結界をはっていたら私の魔力が持ちません。」

1週間か、あの無尽蔵な性欲がおさまればいいが。

「分かった。取り合えず1週間な。」

「取り合えずじゃありません‼絶対に出ていってもらいますからね!」

猫のように毛を逆立ててイヤミがわめき散らす。

「あっ、俺、ソファでいいから。」

「……人の話聞いてますか?」

イヤミは諦めたように俺にベットを譲ってくれた。朝は朝食まで作ってくれたし、以外といい奴なのかもしれない。

「いいですか?魔法は創造力を働かせてどれだけ具体化出来るかにかかっています。」

「えっ、何でいきなり講義始まった?……創造力?俺、理系だから無理だわ。」

だから魔法の才能なかったのか~。

「無理と諦めないで結界くらい覚えて下さい!そして一刻も早く部屋に戻って下さい!」

――確かに俺が結界使えたらアレンも易々と夜這い出来ないはずだ。

「いっちょやってみるか。」

突然やる気を出した俺を胡散臭そうに見ながらもイヤミの講義は夜中まで続いたが、俺が結界をはれる兆しもないままその日は終了した。最後にイヤミが呟いた言葉は泣きたくなるから気づかなかった事にしておく。

「なんて事だ。この人、才能ない……」

俺は努力でヒールを獲得した男だ。毎日練習したら出来るようになるさ…………多分な。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「えっ?先生ぇ、結界バリアー出来ないの?ないわぁ~。」

俺が昨日イヤミに教えてもらったやり方でこっそり練習していると会計がいきなりやって来て、………察した。察しのいいやつめ。

「威力の違いはあるけど、魔法使えるなら初期の段階で属性関係なく普通出来るよねぇ。」

そんな信じられないものを見る目付きで見るな。居たたまれなくなるだろうが。

「俺は努力で不可能を可能にする男だ。」

魔法使いのじじいに放り出されたが、ヒールを修得した事を俺は誇りに思っている。

「そんな頑張らなくても、俺がいつでも守ってあげるよぉ?」

後ろから抱き締められ囁かれるとキーンと耳鳴りがして結界がはられたのが分かった。

「……お前、今日は何の用だ。」

俺はプライドを傷つけられた。クソ!アレンといい、会計といい、年下のくせに簡単に魔法を使いこなしやがって。

「生徒会も解散しちゃったし、暇だから先生とイチャイチャしようかと思って、テヘペロ☆」

「……うぜぇ。俺は結界を修得するのに忙しいんだよ。」

誰が男とイチャイチャするか!

「ざーんねん。」

会計はにやにや笑いながら結界を解くと、するりと俺の頬に触れながら離れた。ぞくぞくするからやめろ。

「……先生ぇ?実はお願いがあるんだけど。」

そして急に真面目な顔になると、キュルルン上目使いでお願いしてきた。お前、絶対それ使う相手間違ってるからな。

「この前、鬼ごっこあったでしょう?」

マロが仕切った鬼ごっこは、俺のいや~ん、バカ~ンなハプニングもあったが(醜男のハプニングなど聞きたくはないだろうからここも割愛)先日無事に終了した。

「……何か問題あったか?」

会計は言いにくそうに口を開いた。

「うーん。あのね。やっぱり風紀の目をかい潜ってレイプされる子がチラホラいたんだよねぇ。」

ガンっとタライが頭に落ちてきたような衝撃を受けた。

「な、んだと?」

「ちょちょちょっ!まった!まって!相手も被害者も分かんないでしょ‼そんな世界を終らせてやるっぽいオーラ背負って何処に行くのぉ‼」

涙目でしがみつかれ我に返る。

「確かにそうだな。で?誰をミンチにすればいいんだ?大丈夫だ。判別出来ないくらい粉々にしてやるから。」

会計の頬に手を触れ優しく笑う。

「もう!男前風に言っても駄目だからぁ!違うよ!被害者の子達を先生のヒールで癒して欲しかったのぉ!」

はらはらと泣きながら切実に訴えられて現実に引き戻された。ええ、効くかなぁ……?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そっそれで、ひっくっ、お前も楽しんでんだろってっ、ひっくっ、身分の高い自分の種を仕込んで貰って有り難く思えっ、ひっくっ、て。……先生、僕。死んじゃいたい!」

最初は俺に相談するのが嫌そうだったチワワも話しだすと止まらず最後はわぁーと泣き出した。可愛いチワワが可哀想で心が痛む。こんな辛い思いをして生きていくのが辛いのはよく分かる。許すまじレイプ!俺はありったけの思いを込めてヒールを唱えた。どうかチワワの心が回復しますようにぃぃぃ!!

「お前は何も悪くない。すぐには回復しないが必ずよくなるからいつでも来いよ。」

頭をポンポンする。チワワはポゥっとした顔をしてふと胸に手を当て首を傾げた。

「あれ?先生。僕もう平気みたいです?」

「えっ?そっそうか?無理すんなよ?」

チワワはニコニコしながらペコリとお辞儀をして部屋を後にした。

それから十数人のチワワの心を完全に回復させる事が出来た後、俺は気づいた。

もしかして心!?心を込めて願えばいいのかも~‼

「結界(俺はこの部屋に誰もいれたくなーい!)」

キィィィィイン!

簡単に成功した。



「――イヤミ、世話になったな。」

若干寂しそうなイヤミの部屋をあとにし俺は晴れて部屋での安眠を手に入れることができたのだった。
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