主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

第２章

30 王子の品格

最悪な目覚めだった。

あり得ないほど頭が痛い。頭の中で寺の鐘を悪ガキが滅茶苦茶に鳴らしているようだ。


「ううう…ん」



これは普通なら起き上がれそうにない。何故こんな事に？確か昨日は風呂に入る前に酒を飲みに居酒屋に行って、隣に座ったイケメンと酒代を掛けた酒飲み対決をして…勝った・・・。うん。勝った。あのやろう俺を当て馬にして更にモテるつもりだったようだか、俺は勝った。イケメン滅びろ・・・・・・・。

イケメンと今度はサウナでどちらが長く耐えられるか勝負をしようと、ご機嫌で宿屋に戻り、風呂へ行ったまでは覚えているのだが、それからがさっぱり記憶がない。いててて。取り合えずこの状態から抜け出すには…



「ヒール」


ああ、俺、酒が好きだ・・・。日に日に・・・・異世界の酒が好きになってる・・・・・・・、アル中になったらどうしよう・・・・・。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「おはようございます。」



ヒールをかけ完全回復した俺が食堂に行くと先に居たリリィが声をかけてきた。

「おはよう。」

今日も100点満点に可愛いな。その胸プライスレス。変態って思われるだろうから言わないけど。

隣に座り固いパンにスープだけの朝食をとる。そしていつも腰巾着の如く一緒に居るライナスが居ない事に気付いた。

「ライナスは？」

パッとリリィの顔が赤くなる。

「ギっギルドへ依頼を探しに行っていまっす！！」

目を逸らししどろもどろに答えるリリィに俺はピンときたね。

こいつらデキやがったな？

何て事だ、ライナスはこの胸を合法的に揉むことが出来るのか。羨ましい。こんな顔に生まれてきたばかりに俺には訪れることはないリア充の世界に思いっきり嫉妬をしながらパンをむしりかじる。


「……きれい。」


パンがか？流石にこのパンは美しくないぞ？素朴だぞ？リリィがこちらを見ながら言うから訳が解らない。


「貴方の咀嚼の仕形です。とても美しい。いつも見とれてしまいます。」


そんな頬を染めて、はにかんで笑うなんて。惚れてまうやろ～。ライナスがいるくせに～。

じゃなくて食べ方？ああ、うん腐っても王子だったし…って……まずいな仕草から気品が溢れ出ちゃってるって事か？醜悪な男の癖に気品漂わせてどうするんだよ。う～ん、いかに庶民に馴染むかが今後の課題になりそうだな。


よし、ひとまずジュルジュルとスープを飲んでみる。


「……貴方が行うと全ての動作が美しくみえますね。」


うん分かった。リリィの目が節穴だって事がな。