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第1章

24 エン

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お目目クリクリ、可愛いなおい。


「キャウワウ。」


手の平サイズの蜥蜴を見ながらこの俺が蜥蜴を可愛いと思う日が来るとはな、と思う。


エンが居なくなってからすでに1週間が過ぎようとしていた。俺から離れたら死んでしまうエンが分身を置いて行ったという事は、暫く戻らないつもりなのだ。


アレンが死ぬまでか……エンは分かるが俺の時間は永いとはどういう事なのだろう?



誰も居ない部屋に入ると布団に潜りブルっと寒さに震えながら眠りにつく。王が用意してくれたこの家はこじんまりとしているが、俺一人が住む分には申し分ない。住宅街から少し離れているので干渉されずにいい。生きていく上でこれ以上強くなる必要もないので、ここでは農作業に勤しんでいた。エンの力を借りて耕したり、水やりをしてスクスクと育っていた苗の管理が、今や俺一人の肩にかかっている。水場が反対側にあるので水やりに骨が折れる。エンなら魔法であっという間に終わっていたのにと思い、チクリと胸が痛む。俺に水属性さえあればな…魔力が少ないから威力は期待できないが。


アレンは公務が忙しい為か、あれから1度も会いに来ない。王の危篤事件もあり、唯一の跡継ぎになったアレンは国へ帰る事になったそうだ。元国王の若い頃に瓜二つの容姿、赤ければ赤い程血統が良いとされる赤髪に赤い瞳は、歴代の王にない程燃えるような赤色をしている。そんなアレンを跡継ぎにと押す声は以前から多数あったので何の混乱もなかったらしい。俺は幼少の頃の悪行で嫌われていたからな。あっという間に立場は逆転どころか雲泥の差がついてしまった。まぁ、その事は覚悟していたのでショックは少ないが、その後に訪れる民衆になぶり殺しに合う未来が待っているのは許容し難い。アレンが酒場の民に釘をさしてくれたが、アレン崇拝者の民衆はアレンが我儘な俺に苛められていた事を何処からともなく聞きつけ、酒場の話を信じない者が多数を占めた。すぐにでもここから離れ、かつての身分を隠して生きるのがいい事は分かっているのだが、エンが戻った時に俺が居なかったらどうする?何も出来ないまま、時間だけが刻一刻と過ぎていく事に俺は焦りを感じていた。今日も色んな事を考えて眠れない夜だった。



コンコン。



控え目なノック音がする。こんな夜更けに来客とは、……淡い期待を込めて扉を開ける。



そこには190㎝はあるだあろうがっしりとした体躯に射ぬくような眼光、アレンとよく似たしかしアレンにはまだ無い威圧感を持つ人がお伴の者も従えず居た。



「…王様?」



「待たせた。許せ。」



いや、全然待ってないけど?



「話がある。」



王の思い詰めたような顔に嫌な予感がする。



「結婚しよう。…ではなくて。何を言っているのだ私は。」



王が頭を掻いている。何だ気持ち悪い男だな。



「アレンが成人したら王位を譲る。そうしたら迎えに来る。……待っていてくれるか?」


国を納める絶大な威厳を誇る王が、伺うように俺を見ている。それってやっぱりプロポーズじゃ……


「俺、男ですけど?」


「些細な事だな。」


間一髪答えられてたじろぐ。


「や、俺、あんたの息子ですよ?」


「お前の事を息子だと思った事は一度もない!」


ひでぇ、胸を張って言われても…


「待つのか?どうなのだ?」


否と言わせない圧力が俺を襲う。こんなの答えは決まっているじゃないか。俺は困ったように笑った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「何故だ!何故断るのだ!」



「いや、ぶっちゃけ俺、今にも民衆に嬲り殺しにあいそうなんですよ。2年も待てません。もう、あんたは当てにならないようなのですぐにここを出ていきます。長年ほっとかれたのにちょっとでも期待した俺が馬鹿でした。」



自分の都合ばかりを押し付けて、俺の身も案じない親はいらない。


「お前も私を裏切るのか!?」



王のいきなりの激高にちょっとビビるが、更に心が覚めていく。結局俺は王の想い人の身代わりだったんだな。


「何の事を仰っているのかは分かりませんが、裏切るも何も王と私はそんな関係ではないでしょう?今まで散々ほったらかして飼い殺しにしてきたくせに。俺はあんたを恨みこそすれ愛する事なんてない。」



王の平手打ちが飛んできたが避けずに受ける。パシンと頬がなるが少しも痛くない。今や王と俺のレベルは鷲尾岳とエベレストくらいの差がある。


「っ!大丈夫かっ?」



俺に触れそうになる手を払い、頬を押さえながら早く出て行けと目で訴える。王は俺の心が変わらないことを察して肩を落として出て行った。good-bye毒親。せめてアレンには父親らしいことしてやれよ。でないとこの国、滅ぼしちゃうぞ?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




次の日の朝、若い警備兵が訪れてきた。



「何かご入り用はございますか?」



アレンに言われた手前、緊張した面持ちで直立不動のまま立っている。



予め要るものを書いてある紙とお金を渡す。少し多目に渡し残りは迷惑料として取ってもらう。パァっと警備兵の顔が明るくなった。良かった、プライドを傷つける事にはならなかったようだ。




「では、行って参ります。」


にこやかに去っていく警備兵を見て、来週はもう頼むことはないかもなぁ。と思う。民衆の動向にもよるが、あと、1週間がたってもエンが帰って来なかったらこの町を出る事にした。俺が生き残るにはそれしかないだろう。ゆくゆくは隣国に行った方がいいかもしれない。


警備兵を見送ると畑に行く。いずれ居なくなる身だが最後まで世話をしたい。水を樽にいれて転がしながら何度も往復する。柄杓で少しずつ水をやっていくとあっという間に水がなくなった。深い溜め息をついて、水を入れに行こうと振り返ると警備兵がこちらを見ていた。


「何だ、もう帰って来たのか。早いな。」


「水やりですか?大変ですね~。アレン様なら魔法であっという間に終わらせるでしょうに。あの方全ての属性を持つ凄い方なんでしょう?同じ兄弟なのに……イテテ!」


思いっきり頬っぺたをつねってやった。


「買い物ありがとう。昨日の残り物だが、ご飯食べていくか?」


涙目になりながら警備兵は元気よく頷いた。


「んうんめぇ!何ですかこれ?目茶苦茶旨いじゃないですか!?」


驚きながらもフォークの手は止まらず、あっという間に平らげてしまった。足りなそうだったので、俺の昼に残しておいた分も出してやった。ただのペペロンチーノなんだが、そんなに喜んで貰えるとは。城の料理長の腕は確かなようだ。


「何かすいません。今日、夕飯奢ります!」


「いや、いい。民を刺激したくない。」


丁重にお断りをして、食後のデザートにアップルパイを出してやった。これもこんなの食べた事ねぇ~!と美味しさに悶えながら食べてくれたのは正直、嬉しかった。これはエンが気に入って毎日作らされたデザートだ。無表情で何枚も食べるエンを思い出し、自然と顔が綻ぶ。エンは今、どこで何をしているのか。心が押し潰されそうに傷んだ。俺が考え込んでいると、警備兵がお代わりいいっすか?と聞いてきたので、ある分を出してやった。その全てを平らげて警備兵は帰って行った。


……シーン


警備兵が居なくなると静けさが身に染みる。


「……おい。エン。お前の好物、あいつが全部食っちまったぞ。どうすんだ?」



ぽたっと目から涙が零れ落ち、床を濡らす。その時、フワリと後ろから抱き締められた。目の端に見える赤と力強い若々しさでアレンと分かる。


「「アレ…」あの龍は死にました。」


ドクン


心臓があり得ないくらい音を立てた。
エンが死んだ?


そんなハズはない。あいつはこの世界の万物の王にして、絶対王、唯一無二の存在って言ってたじゃないか。そんな凄いやつがこんな事で死ぬハズはない!分身の蜥蜴だって――


――いない?


「そん、な…」


「ああ、素材は素晴らしいので、骨は折れますが解体して、国中のギルドへ行き渡るよう手配しました。これで国が潤う事でしょう。」


 周りの酸素が全て無くなったかのような錯覚が起きる。息が出来ない。


「かひゅっ!」


苦しみながら喉を押さえて必死で息をする。崩れ落ちそうになる俺をアレンは後ろから抱きしめながら更なる追い討ちをかけるかの様に囁く。


「王がお兄様への保護を解除しました。民は明日にでもここへ押し掛ける事でしょう。」


エン、エン、苦しい、エン。息が出来ないんだ。エン……


「そうそう、安心して下さい。ティアラが私の妃になる事が決まりました。――これでお兄様の周りには誰も居なくなりましたね。」



ドンと突き飛ばされる。前のめりになり、床に手と膝をつく。振り返ると心底冷たい目でアレンが俺を見ていた。今だかつてアレンからこんな目で見られた事があっただろうか。今やエンと対等に渡り合えるアレンの冷ややかな瞳に俺は背筋が凍りついてしまった。


「――ざまぁみろ。」


「お前……」


アレンは片膝をつき俺の顔に自身の顔を近付ける。


「いずれ、あの女は殺す。お前のどん底に落ちぶれた姿を見せつけてからな。」


あの女?王妃の事か?


「…な…んで…?っい!」


乱暴に髪の毛を引っ張られ上を向かせられる。


「何でだと?俺のお母様を殺しておいてよくも!?知らないとは言わせない!!」


えー!!!?俺、アレンの母さん殺したの?全然記憶にないんですけど?この世界がライトオブホープの世界と気付く前、物心ついた時から亡くなっていた。もし、俺が殺したと言うなら、記憶のない幼児の頃じゃないか。何したんだ俺!?人を殺すなんて、幼児の頃から悪かったのかよ~!


「俺のお母様はあの女に虐め抜かれ、最後はお前が持ってきた食べ物に入った毒で殺された!」


全然覚えてない。大方あの女にやらせられたって所だろう。


……確かに同罪だな。


「アレン、悪いが記憶にないんだ。……でもお前が言うならそうなんだろう?」


「ああ、俺はこの日の為だけにお前に尻尾を振っているふりをしていた。やっとだ、やっと報われる時がきた。」


アレンの恍惚とした表情を見て絶望が増す。


――結局俺はこの運命から逃れられなかったんだ。記憶が戻る以前に最大の罪を犯していたんだから。静かに目を閉じると俺は覚悟を決めた。

「――アレン、悪かった。お前のお母さんを殺して、お前を不幸にして。」


憎しみのこもった瞳で俺を見るアレン。今までこの瞳を隠して生きてきたんだな。俺は全く気づかなかった。兄として慕われていると思ってた。

「……運命には逆らえない事が身に染みたよ。俺はここで天命を待つ事にしよう。今までウソでも優しくしてくれてありがとうな。」


俺を陥れる為とはいえ、憎い俺に好意をよせているふりはさぞかし辛かったろう。お前が民衆に嬲り殺しに合う俺を見たいと言うなら、それが一番お前が救われるって言うのなら、俺はそうする事でしかお前に償う事が出来ない。


「何を言っているの?俺から逃れられると思ってるの?死ぬなんて生ぬるい事許さない。お前には生き地獄を味わって貰う。その為に先ず龍を殺した。次は民衆に嬲り物にされる番だよ。その後はボロボロのライを俺が死ぬまで犯して捉えて離さない。一生絶対に逃がすものか。」


精々いたぶられて苦しんでよ。そう言うとアレンはマントを翻して家を出ていった。





死ぬまで犯す。

一生逃がさない。



――なんて執着。



アレンは気付いているだろうか?自分がその身を焦がすような情熱的な愛の告白をした事を。


「え、困る。」


あいつは、弟だから可愛がってきたし、弟だから何でもしてやりたかったんだし、弟じゃなかったらぶっちゃけ面倒くさい奴としか思えんし。そして大問題は――



「俺は、俺は、女子が好・き・だ・か・らぁっ!」



醜悪なくせにあんなイケメンにモテてどうするんだ?


どうせなら美女にモテたかった人生だった。








――次の日の朝。扉を叩き壊す音で目が覚める。


「早ぇな。」


民衆っていうのは暇人ばかりなのか?小さい家なのですぐに俺が寝ている部屋まで人が押し寄せてくる。一人の人間にをよってたかって嬲り殺しにする事に何の躊躇いもなく、むしろ好奇の色が伺える。こんな奴等に殺されちゃうのか。しかし、勢いよくやって来た民衆がピタリと止まった。


【――生き残りたいか?】


生きたいか?だって?俺にはその資格がない。俺は死ぬべきなんだ。その方がアレンも救われる。


【お前がどうしたいか聞いている。】


――あれ?今……その可能性に心が震える。


「10才の時からずっと、生き残るために頑張って来たんだ。許されるなら……許されないだろうが……」


心の奥底に眠っていた言葉を吐き出す。


「俺は、生きたい!」



【――分かった。】



辺りが光に包まれ完全体になった龍の姿のエンが現れた。家は砕け落ち、民衆は尻餅をついている。
俺はエンに抱きついた。


「お前、生きてたんだな。」


【いや、死んだが?】


俺を背に乗せエンは爆風を撒き散らしながら飛び立った。


「死ん?えっ?」


【色々あった。】


「そうか、色々あったのか……」


下を見ると警備兵が居たので思いっきり手を振る。


「おーい!畑、よろしくなぁ!」


「!?あんた、ラインハルト王子か?分かりました。任せといて下さい!」


警備兵もはち切れんばかりに手を振り替えしている。これで畑は大丈夫だろう。エンが何かを唱えると辺りに優しい雨が降る。



「……今日の水やりは大丈夫だな。」


虹がかかった青空へ龍に乗った青年が飛び去って行く神秘的な姿を、人々は眩しそうに見送った。ラインハルトの慈愛に満ちた美しい微笑みにいきり立っていた心が凪いでいく。自分たちは何を仕出かそうとしていたのか。呆然と彼らを見送った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


side  アレン


「クソッ!クソッ!クソッ!」

椅子を蹴飛ばし、机上の書類をなぎはらい激しく叩いた。


目の前でラインハルトが龍にさらわれた。


――龍は死んだはずだ。


この目で確認もした。

だからこそ奴が死んだ今、ラインハルトは助ける者もおらず民衆の嬲り物になるはずだった。その後はボロボロのライを死んだ事にして、捉えて囲って隠して永遠に俺の側に置いて苦しめてやろうと――


――昔、母を助けようとしたがどうしても助けることが出来なかった事を思い出す。母が死ぬ事は知っていた・・・・・。だからこそ救うつもりだったのに救えなかった。


放っておいても元凶である醜悪で醜い親子は身を滅ぼすのも知っていた・・・・・

けれど予想外の事が起き始める。

俺を苛めぬくはずの豚が俺を遠ざけて苛めなくなった。

魔王が死んだ。

そして王は死ななかった。

挙げ句のはてにデブで油ギッシュな不細工に育つはずの豚が、人々を魅了する程美しく成長した。龍に見初められるなんて計算外もいいところだ。


生まれ落ちた瞬間、あの人・・・がいない世界に絶望して咽び泣いた。何で、どうして、苦しみが続く中、そんな俺に寄り添う者が二人いた。母とライだ。

この二人がいるならこの地獄の責苦を受け続けているような世界でも呼吸くらいは出来るかと思えるようになった頃、母はライに殺された。

救われるかもしれないと希望を持ちかけた心が落とされた時の絶望は言葉では言い尽くせない。


ライを憎まないと生きていられなかった。




――アレンは、逸らされる事なく真っ直ぐと自分を見る、澄んだ青空のようなアイスブルーの瞳を思い出し耐えるように眉を潜めた。

どんなに才能がなくても強くなりたいと毎日修行して1年かけてヒールを習得していた。初めてかけられた時の救われるような癒しの力には驚いた。悔しくて効いていないふりをした。

強くなっていくライに焦りを感じ、もっと強くなりたいと留学した時も、思い出すのは最後に泣いていた顔だった。

再会してからは抑えきれない欲望が爆発した。離れがたい。こんな気持ちになるなんて本当に計算外もいいところだ。



「俺の心を揺さぶるライは嫌い。」



――だから、捉えて囲って永遠に俺の物にしないと。


アレンは感情の波をやり過ごすべくゆっくりと深呼吸をした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




俺を安全と思われる所に下ろし、エンはこれで最後だと言った。



【我は死んだ。天に昇る前に最後にお前に会いたくなったから来てみれば、死に急ぎおって。】



「悪いな。血迷ってた。俺は絶対に生き残って幸せになってやる。」


アレンやアレンの亡くなったお母さんには悪いが、俺はもう諦めない。この世界で幸せに生きてやる。その為に努力してきたんだ。俺は末長くしぶとく生きてやるんだ。

【それでこそお前だ。しかしお前は危なっかしい、我の加護を授けてやろう。】


ちょん。


そう言ってエンは俺に触れるだけのキスをした。この時俺は龍の姿をしたエンを初めて美しいと思った。キラキラと光っているようだ。ん?俺も光っているぞ?

「お前、何か変わったか?」

自分の姿を省みながら尋ねる。


【だから死んだと言ってるであろうが。死んで神になったのだ。】

「神?…それって、とんでもなくないか?」

呆気に取られてエンを見る。

【龍神の加護だ。お前の助けになるだろう。】

そう言ってエンはニコリと笑ったように見えた。光を放ちながらどんどん消えていくエンに何かを言わなくてはと思うが気のきいた言葉が出ない。


「これで本当にお別れなんだな。」


【ああ、最後になるだろう。】


最後、その言葉を聞いて現実に引き戻される。今、言わなければもう二度と伝える事が出来ない。


「エン、今までありがとう。……ごめんな。」


お前を選ばなくてごめん。お前の力を利用してごめん。そして、お前を好きになってやれなくてごめん。


【愛しい小さき者よ。お前の気持ちなどどうでもいい。それよりも我がどう思ったかが大切だ。我は、お前と居て沢山の初めてを知る事が出来た。お前と居ると愉快だった。だからもういい。後はお前があの小童と幸せになればいい。】


「小童?アレンの事か?いや、あいつ、何だかんだ言って、俺の事好きっぽいんだよなぁ。嫌い嫌いが好き好きで重すぎて面倒くせぇの。」

俺がげんなりして言うとエンが固まった。


【……お前、あやつが好きではなかったのか?】


「ちょ、止めろよ~。好きって男同士だろうがっ。そりゃ、可愛い弟だから何でもしてやったけど、可愛すぎて甘やかし過ぎた、俺に執着して嫌いだから好きみたいな面倒くさい奴になってんの。勇者だから恐ぇわ。」

俺は肩を上げてお手上げのポーズをした。


【……ブ。】


「ぶ?」


【ブワッ、ハッハッハッハッハッハッハッ!!!】


アバブブブブ……エンの大笑いに唾が飛んできて汚ねぇ。髪も服も全部びちょびちょだ。止めろよ~。


【弟とあれだけの事をしておいてそうではないと言うか。ブブッ、小童も前途多難だな。ブブブ、精々足掻いて苦しめばよい。ああ、愉快愉快。本当にお前は面白い。】


笑いながらエンは消えていった。後には何も残らず。ただ重さによって倒れた草木がそこにエンがいたことを物語っていた。
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