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第1章

22 別れの時 ※

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俺、育て方どこで間違ったのかなぁ。



俺はアレンに身支度をしてもらいながら、途方にくれていた。その間にアレンは下着からシャツまで全てを俺に着せていた。この1週間、散々やらしい事をした形の良い綺麗な指先が、器用にボタンをとめていく。



「――はい、出来ました。」



「ああ、ありがとう。」



アレンは満足そうにニッコリと笑った。そして取るに足らない事のように、そう言えば王が危篤みたいです。言った。



「……え。」



穢れのない笑顔のアレンを見て聞き間違いかと思った。



「昨日、報告を受けたのですが、どうせ助からないみたいだし、後でもいいかと思って、遅くなってごめんなさい。」



しゅん。


いや、可愛い子ぶっても駄目だろう。自分の父親が死ぬって時に俺とのSEXを優先するなんて――



「お兄様。一緒に帰りましょう?」



悲しみの片鱗も見せないアレンの違和感に気持ち悪さを感じて下がった体を強引に抱き締められて次の瞬間にはテレポートで城へ戻っていた。

俺はこのままとんずらするか正直悩んだ。判断を誤ればこれから先、俺の人生に悪影響を及ぼす可能性があるからだ。

しかし、天人の血をひく俺ならもしかして助けられるかもしれない、その可能性を棄てきれずに倒れた王に会う事にした。


扉が重々しく開かれると、死に近い人間がそこに居た。


アレンとよく似た男が瞳を閉じて横たわっている。いつもの威圧感は微塵もない。確実に死に向かっている。


5日前の執務中、急に倒れ、それから一度も意識が戻らないらしい。国中のエリクサーを集め、飲ませたが一向に効く気配がないそうだ。今日がやま場との事だった。


「本当に死んじゃいそうですね。」


アレンは無表情で父親を見つめている。そんなアレンの様子に今まで感じた事のない闇が垣間見えた。


「……ああ。そうだな。」


俺はその姿を見てこのままアレンの父親を死なせてはいけないと思った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




【毒だ。あの女狐やりおったな。】



部屋に戻るとエンがいた。俺が城に戻った事よく分かったな。流石、絶対王。



「女狐?」



【お前にも毒を飲ませようとしていた。我がことごとく阻止したが、王にも飲ませておったか。】



毒?ライトオブホープの世界で、俺は毒を飲んでアレンを追い出すはずだった。あれは…



【人間の王は、何年もかけて少しずつ毒を飲まされているようだ。体に蓄積して死に至る。毒消しもエリクサーも効かないのも仕方ないな。】



「…王妃か…」



王を殺し、邪魔なアレンを追い出し、傀儡の俺を王にしたてあげる。全ては王妃の仕業だったのか。アレンが留学したり、俺が毒を飲まなかったりと予定は狂ったようだが、王は着々と蝕まれていたんだな。


「……助けられると思うか?」


【魔王の呪いに比べたら容易い事だ。】


「……そうか。」


俺は心を決め、そっと視線を落とした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




真夜中。王の寝所に俺は居た。医者やお付きの者達はエンに眠らせてもらっている。


布団の中へ潜り、合わさった着物の間をめくっていき、目当てのものを探り当てる。そして元気がないそれを口に含んだ。


口と舌で丁寧に絡めとり、ジュポ、ジュポとやらしい音をさせながら、抜き差しをする。次第にムクムクと元気を取り戻していったそれははち切れんばかりに反り立つと口に入りきれなくなったので手も使って必死にしごいた。そうして程なくすると呆気なく弾けた。ゴクンと一滴も残さず飲み干す。うえ……あまりの不味さに涙が滲んだ。上の方へ這い出して行き、王の顔を確認してホッとする。

顔色が良くなっている。

しかし、最後の仕上げにとエリクサーを飲ませようとするが上手くいかない。仕方なく口移しで飲ませる。形のよい唇にそっとエリクサーを含んだ唇を合わせる。


ゴクと王が飲んだ気配がする。ホッとして唇を離そうとした瞬間、頭を押さえられ、
深く口づけをされた。


「ん!?ん-!」



必死に離れようとするが、何度も角度を変え、口の中を蹂躙される。どこにこんな元気が!?さっきまで死にかけてたのに!?



「……どうして俺を裏切ったんだ。こんなに愛しているのに。」



そうこうする内に体を入れ換えられ、王は情欲にかられた瞳で俺を見下ろしていた。ゾクリと快感が押し寄せてきて堪らなくなる。だって、この瞳はアレンにそっくりなんだ。あのズブズブの1週間の情事を思い出すには十分だった。



「愛しているんだ。もう、どこにも行かないでくれ。」



ポタリと赤い瞳から涙が落ちる。思わず王の頬に手を添える。




「――泣かないで。」



アレンに似た顔であまりに切ない声で言うものだから、可哀想になってしまう。王は自分の頬にある俺の手を掴み、瞳を閉じて手の平にキスをした。


その後キスは自然と首筋に落ちていき、服を脱がされた後は、乳首に落ちていった。アレンに似た髪質の頭を思わず抱き締める。


「んんっ……くぅんっ……はぁんっ。」



「もう絶対、離さぬ。」


下も全て脱がされると、すでに反り立っていた中心を優しく擦られ、一旦唾液を含ませて戻って来た長い指を後蕾に入れられる。


くち、ちゅく、クチュ、ぬちゅ、



「あっ……待っ……んんッ……んぁあんっ。」



何度も抜き差しをして、本数を増やされ、トロトロになっていた俺に王は中心をあてがった。


「入れるぞ。」


アレン――


その時、気付いた。欲望に濡れた顔はアレンに似ているがアレンじゃないって。


「あっ、いやだ……だめ……」


俺は力なく首を振った。快楽に弱い体ではこれが精一杯の抵抗だった。


ああ、入ってくる――


絶望に支配され、その時を待つ――


――が幸いな事にその時は来なかった。


王は俺の後蕾に自身をあてがったまま止まっていたのだ。顔を見ると毒は完全に治った筈なのにまた真っ青になっていた。



「ラインハルト…何故……」


俺は正気に戻った王から距離をとりといそいそと服を着ると、「では、これにて。」ドロン。




とはいかず、俺は王の腕の中に捉えられてしまった。


……何故だ。



「お前が助けてくれたのだろう?」


「……はぁ、まぁ、そうです。」


どうやったか聞かない方が身の為だぞ。


「こうなっては王妃を罰せねばならぬ。」


「……はい。」


「あれには悪い事をした。どうしても愛する事が出来なかった。」



や、別に親の色恋は聞きたくないんで、離してくれませんかねぇ。


「年々似てくると思っていたが、ここまで似るとは……」


醜悪な俺が王妃に似てる?


肩に顔を埋められてゾワっとする。あー、やっぱり可愛いアレン以外無理。アレンにぎゅうぎゅうしたい。


「――お前をこのまま皇太子にしておく事は出来ない。」


「……はい。明日出ていきます。」


「何か望みはあるか?」


「いえ、……ただ、アレンともっと話をしてやって下さい。」


あいつに親の愛情を与えてやって欲しい。俺はアレンにあんな顔をして欲しくなかった。


「分かった。」



絶対だぞ?アレンをよろしく頼む。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




――復活してから王の行動は早かった。


先ずは王の暗殺未遂の罪で王妃を幽閉した。もう一生出てくることはないだろう


そして、王妃の傀儡である俺に身分剥奪の上、城からの追放を言い渡したのだった。
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