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08 家族に紹介される極上α

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「ふぁい。これ」と錠剤の入った怪しい瓶を渡された。

 「自然派? 無添加? あり? オーガニックだっけぇ? うーん。うん。体に優しい薬だから毎日飲んで」

 パリピから渡される薬って……

 「紫貴ちゃんの体を守る為なの。俺のダチィ、超っ超っ超っ天才だから大丈夫」

 パクンと口に入れ「ベエ」と舌の上に乗せた錠剤を俺に見せる風早。

 いけないいけない。あの舌はとんでもなくやらしいんだ。思い出して条件反射のように下半身が熱を持つ。膝小僧を擦り合わせてモジモジしてると「紫貴はエッチだね」タレ目をもっと垂らして俺に近付いてきた風早は唇を合わせるとコロコロと錠剤を俺の口の中に入れる。

 「んんっ」

 錠剤は俺の舌で溶けたのか、風早の舌で溶けたのか分からなくなってジュワっと消えた。


 ――そんな甘甘な週末を過ごして、月曜から仕事に行っても帰っても風早がいる生活が1週間ほど続いた後で週末がまたきた。

 「――家族にっ、しょーかいっ? ああっ」

 職場からアパートに直行して部屋に着いた途端に腰を俺の尻に擦り付けカクカクするのが風早の日課になりつつあったこの1週間。シャツのボタンを器用に外しながら開発中の乳首をクリクリされれば立っていられなくなって畳に膝をつくのが俺のルーティン。

 「うん。明日、俺んちおいでませぇ。家族が紫貴ちゃんに会いたいって。」

 「ああっ、んんっ、もうっ、いくっうっ」

 「ウェーイ。言質とったりぃ」

 違う。そのいくじゃない。

 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 
 ジャリ。何故俺はこんな所にいるのか。パリピとはいえαである風早への親御さんの期待はいかほどか。その期待の息子がこんな図体のデカい番を連れてきて歓迎されるとは思えない。きっと別れてくれと言われる。その為に呼ばれたのかもしれない。

 泣きそうだけど、風早の事を思ったら恥ずかしい格好ではいけないと職場に置きっぱなしだった風早のスーツを拝借した。髪はアップにして横を垂らした。顔もぬるま湯で洗った。少しでも親御さんの心証を良くしたい一心で自分を風呂で磨いた。

 「今日の紫貴ちゃん。眩しいんだけど。どおしたのぉ?」

 呑気な風早は目を細めて俺を見ている。

 「お、俺。認めてもらうように頑張るっ」

 「……頑張るかぁ。うちの家族卒倒しちゃうねぇ」

 「い、行くぞっ」

 「紫貴ちゃんっ。手と足が同時に出てるよぉ?」

 ピンポーン

 「はーい」

 女性の声。母上だろうか。スーハースーハー息をして自分に暗示をかける。俺はやれる。やるしかない。

 「いらっしゃーい。お待ちして……」

 風早が恋人を連れてくる事を事前に知っている母上は扉を開けながら俺に笑顔で話しかけてくれた。

 「……」

 「?」

 「マミー。息して?」

 「んはぁっ。はぁはぁはぁはぁ……ちょっと紺君? こここここ……」

 「マミー。落ち着いて?」

 「そうね。そうね。こ、この方はどなたかしら? まさか紺君あなたこの方にご迷惑でもお掛けして慰謝料請求されてるとかなの? そう、そうなのね。いいわ。また家族で乗りきりましょう。パパにまたマグロ船に乗ってもらえば乗りきれるわよ。」

 今度は10年かかるかしらぁ。

 「ああーんっ。今日は紺君のパートナーが来るってワクワクしてたのにっ。どうしてこんな事に」

 わーん。わーんと泣き出した母上は玄関で完全に腰を抜かしてしまった。

 「どうしたんだ?」

 騒ぎを聞き付けた父上が参上。

 「パパ。マグロ船にカムバックよ。今度は10年よ。紺君の為だもの。耐えられるわよね」

 「まさかこの方に何か? 愚息が申し訳ありませんでした。誠心誠意対応させていただきます。どうか家族だけはお助け下さい。ママ。立つんだ。一番辛いのは紺だよ。」 

 「うわぁ。阿鼻叫喚ってこんな感じ?ウェーイ」

 「紺さんのお父様とお母様。私は山田紫貴と申します。先日より紺さんとお付き合いさせていただいております。ふつつか者ですがどうかよろしくお願いします」

 ビシッ。俺は背筋を伸ばし気をつけをした。

 「三顧之礼するのは当然。何回でも足を運び交際を許してもらえるよう頑張る所存です」

 スッ。そして俺は深々と頭を下げた。

 「サンコンの霊? 今度はサンコンの霊を祓ちゃうのぉ? 俺の彼氏デンジャラス。ウェーイ」

 「「交際!? 彼氏!?」」

 ヘタリこんで、抱き合う仲の良い夫婦は風早と俺とを交互に見た。

 「はい。ご挨拶もまだだったのに、申し訳ございません」

 爛れた生活を送っています。

 思い出すと顔に血がのぼり、恥ずかしいなと頬に手をやった。

 じーー……。

 気づけば6つの瞳に見つめられていた。

 「……こここ、紺君!? ちょっと来てっ。いいから早くっ」

 「きゃーー。拉致られるぅ。紫貴ちゃん待っててねぇ」

 お母様に首根っこを掴まれた風早は両手をあげて廊下の奥へと消えて行った。

 「ちょっとっ。紺君っ。聞いてないわよっ。どうするのよっ。スーパーの3個で298円のケーキしか用意してないわよっ。岡村屋の1本3千円の羊羹買ってきてっ」

 丸聞こえだ。

 「あの。お構い無くっ。私はケーキ好きですっ」

 廊下の先に聞こえるように大きな声で言った。大変だ。気を使われてしまっている。俺が可愛くないからケーキではなく羊羹がお似合いだから申し訳ない。

 「ケーキお好きなのねっ。じゃ、じゃあ。貴賓邸の1個500円以上するケーキを買ってきてっ」

 違う。そうじゃない。

 パシャリ。

 俺が青くなってるとスマホをこちらに向けるお父上と目が合った。

 「……ご利益ありそうだから待受にしてもいいかな? 決して職場で息子の彼氏なんて自慢しないから」

 スマホを両手で挟んでお願いされた。 
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