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アンタの言ってる事、よくわかんないなあ(その1)
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……
今までお話しして来たのは、結局クレーマーさんなんですけど、本人的には悪い事だとは思っていないのです。
ですから、時間はかかりますけど最後は普通に電話を切ってくれるのですね。
きっと、チョット口うるさいおばさんとおじさんなんでしょうね普段は。
でもね、そうじゃあない人もいるのです、悲しい事ですけどね。その人達は、最初から悪意を持って電話をかけてくるのです。その#類__たぐい__の人は電話機の向こう側が困っているのを楽しんでいるのです。
この人達に対しては、対応が難しいんです。
新人オペレーターの岩寺裕子さんなんか、一発で泣いちゃいますね。でもね、そういう場合はサッサとギブアップして良いのですよ。相手は電話の向こうで困っているのを喜んでいるのですから、サッサとギブアップしてベテランに交換されるのが一番嫌なのです。
夜の時間帯は、時々そういう人が電話をしてくるのです。今日も早速かかって来たようですね。
プル、プル、カチャ。
「おはようございます。ニコニコATMセンター。担当オペレーターの安田静香です。今日はどういたしましたか?」
安田静香さんは、いつもの調子で明るく電話を受けます。
「そんなの決まってるだろう。オタクのATMでトラブってるから電話してんだよ!」
イキナリ強い口調で喋り始めます。安田さん、チョット驚きつつも冷静に会話を続けようとします。
「それは、申し訳ございません。どのようなトラブルでしょうか、内容を教えていただきますか?」
「何言ってんだよ!俺は困ってるんだから早く何とかしてくれよ!トラブルの内容なんかそっちで調べたら分かるだろう?」
オペレーターの話に耳を傾けてくれませんね。会話をしようとしないで、自分の困った部分だけを強くアピールします。
安田静香さん、これは常連クレーマーだと気が付いたようです。
早速自分の席に常備されている赤いボタンを押します。すると衝立の上に乗っているパトランプ(昔のパトカーの車についていた、明かりがグルグル回るヤツですね)が勢い良く回り出しました。
リーダーの小田さんは、早速その光を見つけて安田静香さんを助けるために彼女のオペレーションデスクに向います。
新人オペレーターの岩寺裕子さんも、小田さんに付き添うように、今まで会話を聞いていた別のオペレーターさんから離れて安田さんの所に向います。
「オイ、聞いてんのか?姉ちゃん。ATMのトラブルなんかそっちで簡単に分かるんだろう?俺は何も言わないから早く治せよ!」
実際には、ATMの機械の種類によって故障の分かる範囲は限られていて、すべての故障が自動で分かる訳ではありません。それに、具体的にトラブルの内容もある程度はわかるのですけど、その内容は『ヒミツ』なんですよ。
***
ATMの機械は、お金(紙幣)を扱っています。普通の自動販売機よりも何倍も精密な部品が付いているから紙幣を正しく数える事が出来るのです。
そのような精密な機械は自分が正しく動けるかを自動で判断出来る自己チェックの機能が必ず付いています。
ですから、紙幣の紙詰まりや紙切れなどのトラブルも瞬時に判断出来ます。
でも、その内容は最高機密なんですよ。だってその秘密が漏れたらATMを騙す事が出来ちゃうからです。
ATMを開発する場所は、そこの会社の社員でも限られた人しか入れないのです。例え社長さんでも入れません。
それだけ秘密を守る努力をする必要があるのですね。
だってATMの製造を許してくれるのは日本銀行と警察庁ですからね。
彼らが認めてくれなければどんな技術があっても絶対にATMメーカーにはなれないんです。
***
そのクレーマーさんが言うように、実際には、ATMを遠隔で操作出来るのですから、ある程度のトラブル内容は把握出来るのです。
でも、お客様のトラブル内容はある程度分かっても、オペレーターからは一言もその話はしません。お客様の口から直接トラブルの内容を聞くのが大原則なんですね。
一つ目の理由はATMのセンサーの場所を教えたく無いからです。どんなトラブルなら分かるのかをオペレーターさんが話してしまうと、機械に詳しい人なら、ATMの何処にセンサーがあるのか分かっちゃうからですね。
センサーの場所が分かれば、そのセンサーを騙す事が出来れば、お金を引き出せるかもしれません。そういう事を考える人は多いのですね。
もう一つの理由、本当はこっちの方が多いのですけど、別の人がすり替わって電話をするのを防ぐためなのです。
そんなバカな事ないだろうー?とか思っているでしょう。イエイエ『事実は小説より奇なり』です。あ、これはフィクションでしたね。『フィクションは小説より奇なり』ですね。
……
ATMのトラブルで気が動転している人に近づいて、優しく声をかけるのですね。
「私がATMセンターに連絡しておいてあげるから、その間に用事を済ませてきたらどうですか?」
トラブルを起こした人は動揺しているので、その親切な(?)人に後を任せて用事をしにコンビニの外に出ちゃうのです。普通は、簡単なトラブルならその場でお金が戻って来るのを知らないのです。
普通の人は、トラブったお金は翌日銀行口座に戻ってるくらいにしか思ってません。
そんな事はないんですよ、だって銀行からは既にお金を引き出した情報しか無いんですもの。
銀行としては、お客様が引き出したからもう知らない、という事です。
お客様はATMイコール銀行だと思ってるのですけど、実際にはATMの中にお金は残っているのです。
だから、それをお客様は取り戻さないといけないのです。
でもね、そのお金を狙ってる善人のフリをする人もいるのです。
……
今までお話しして来たのは、結局クレーマーさんなんですけど、本人的には悪い事だとは思っていないのです。
ですから、時間はかかりますけど最後は普通に電話を切ってくれるのですね。
きっと、チョット口うるさいおばさんとおじさんなんでしょうね普段は。
でもね、そうじゃあない人もいるのです、悲しい事ですけどね。その人達は、最初から悪意を持って電話をかけてくるのです。その#類__たぐい__の人は電話機の向こう側が困っているのを楽しんでいるのです。
この人達に対しては、対応が難しいんです。
新人オペレーターの岩寺裕子さんなんか、一発で泣いちゃいますね。でもね、そういう場合はサッサとギブアップして良いのですよ。相手は電話の向こうで困っているのを喜んでいるのですから、サッサとギブアップしてベテランに交換されるのが一番嫌なのです。
夜の時間帯は、時々そういう人が電話をしてくるのです。今日も早速かかって来たようですね。
プル、プル、カチャ。
「おはようございます。ニコニコATMセンター。担当オペレーターの安田静香です。今日はどういたしましたか?」
安田静香さんは、いつもの調子で明るく電話を受けます。
「そんなの決まってるだろう。オタクのATMでトラブってるから電話してんだよ!」
イキナリ強い口調で喋り始めます。安田さん、チョット驚きつつも冷静に会話を続けようとします。
「それは、申し訳ございません。どのようなトラブルでしょうか、内容を教えていただきますか?」
「何言ってんだよ!俺は困ってるんだから早く何とかしてくれよ!トラブルの内容なんかそっちで調べたら分かるだろう?」
オペレーターの話に耳を傾けてくれませんね。会話をしようとしないで、自分の困った部分だけを強くアピールします。
安田静香さん、これは常連クレーマーだと気が付いたようです。
早速自分の席に常備されている赤いボタンを押します。すると衝立の上に乗っているパトランプ(昔のパトカーの車についていた、明かりがグルグル回るヤツですね)が勢い良く回り出しました。
リーダーの小田さんは、早速その光を見つけて安田静香さんを助けるために彼女のオペレーションデスクに向います。
新人オペレーターの岩寺裕子さんも、小田さんに付き添うように、今まで会話を聞いていた別のオペレーターさんから離れて安田さんの所に向います。
「オイ、聞いてんのか?姉ちゃん。ATMのトラブルなんかそっちで簡単に分かるんだろう?俺は何も言わないから早く治せよ!」
実際には、ATMの機械の種類によって故障の分かる範囲は限られていて、すべての故障が自動で分かる訳ではありません。それに、具体的にトラブルの内容もある程度はわかるのですけど、その内容は『ヒミツ』なんですよ。
***
ATMの機械は、お金(紙幣)を扱っています。普通の自動販売機よりも何倍も精密な部品が付いているから紙幣を正しく数える事が出来るのです。
そのような精密な機械は自分が正しく動けるかを自動で判断出来る自己チェックの機能が必ず付いています。
ですから、紙幣の紙詰まりや紙切れなどのトラブルも瞬時に判断出来ます。
でも、その内容は最高機密なんですよ。だってその秘密が漏れたらATMを騙す事が出来ちゃうからです。
ATMを開発する場所は、そこの会社の社員でも限られた人しか入れないのです。例え社長さんでも入れません。
それだけ秘密を守る努力をする必要があるのですね。
だってATMの製造を許してくれるのは日本銀行と警察庁ですからね。
彼らが認めてくれなければどんな技術があっても絶対にATMメーカーにはなれないんです。
***
そのクレーマーさんが言うように、実際には、ATMを遠隔で操作出来るのですから、ある程度のトラブル内容は把握出来るのです。
でも、お客様のトラブル内容はある程度分かっても、オペレーターからは一言もその話はしません。お客様の口から直接トラブルの内容を聞くのが大原則なんですね。
一つ目の理由はATMのセンサーの場所を教えたく無いからです。どんなトラブルなら分かるのかをオペレーターさんが話してしまうと、機械に詳しい人なら、ATMの何処にセンサーがあるのか分かっちゃうからですね。
センサーの場所が分かれば、そのセンサーを騙す事が出来れば、お金を引き出せるかもしれません。そういう事を考える人は多いのですね。
もう一つの理由、本当はこっちの方が多いのですけど、別の人がすり替わって電話をするのを防ぐためなのです。
そんなバカな事ないだろうー?とか思っているでしょう。イエイエ『事実は小説より奇なり』です。あ、これはフィクションでしたね。『フィクションは小説より奇なり』ですね。
……
ATMのトラブルで気が動転している人に近づいて、優しく声をかけるのですね。
「私がATMセンターに連絡しておいてあげるから、その間に用事を済ませてきたらどうですか?」
トラブルを起こした人は動揺しているので、その親切な(?)人に後を任せて用事をしにコンビニの外に出ちゃうのです。普通は、簡単なトラブルならその場でお金が戻って来るのを知らないのです。
普通の人は、トラブったお金は翌日銀行口座に戻ってるくらいにしか思ってません。
そんな事はないんですよ、だって銀行からは既にお金を引き出した情報しか無いんですもの。
銀行としては、お客様が引き出したからもう知らない、という事です。
お客様はATMイコール銀行だと思ってるのですけど、実際にはATMの中にお金は残っているのです。
だから、それをお客様は取り戻さないといけないのです。
でもね、そのお金を狙ってる善人のフリをする人もいるのです。
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