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おいこら、お前の上司を出せ、おじさん

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クレーマーだと意識してないタイプで二番目は、おじさんに多いパターンです。
とにかく、上司を出せの一点張りおじさんです。このおじさんも、自分はクレーマ―だと思っていません。

コンビニのバイトがおつりを出すのに手間取っている。そのおかげで俺の貴重な時間が奪われた……とか。
陳列棚にいつも置いてあった雑誌の折り目が気に食わないから、新しい(特にエッチ系な)雑誌をいれろ……とか。
今日の牛丼屋(?)は、いつもに比べて飯の量も肉の量もすくないし、店員が愛想笑いしない……とか。
最後の話のように、コンビニとは全然関係ないところにクレームの内容が移りやすいのがおじさんの特徴です。

多分、おばちゃんの場合は、具体的な不満をぶつけて来るのですね。
でもおじさんの場合は、具体的な不満ではなく、会社での不満やストレスと言った、はっきり出来ない不満をぶつけたいのだと思います。

でも一番の特徴は、オペレータのお姉さんに対して「オレはえらいんだ」オーラを出し続ける事なんです。
その結果、かならず言う言葉が「お前では、話がわからん。お前の上司をだせ!」です。

オペレータさんの上司は、バイト―リーダなんですけど、バイトリーダさんが代わりに電話に出ても全然認めてもらえません。

「バイト・リーダじゃあ話にならん。俺が話したいのはここの責任者だ、責任者をだせと言っているんだ」

とか言い出します。

***

実はコンビニのATMも銀行業務の一環として位置付けられているのです。
監督官庁は、当然財務省の金融局です。

それはそうですよね、あのATMの中には正真正銘のお札が、ウン千万円も保管されているのですもの。
お札が少なくなって来ると早めに警備会社の人が来て補充しているんですよ。

だから、お役所から見るとコンビニATMは小さな銀行と同じです。
その銀行を管理してトラブルに対応するオペレーションセンターは銀行の大元締めみたいなものです。

そうなるとお役所としては当然見過ごせないですよね。
色々と指導という名の嫌がらせ(?)があります。
一番大変なのは『オペレーションセンターにも銀行員を置け』という事です。

そのために、実はオペレーションセンターにも銀行員さんがいるのです。
実際には日本の三大都市銀行の支店長クラスの人達や、そのOBさん達がオペレーションセンターに出向と言う形で働いています。

***

彼ら銀行からの出向者の事を、オペレーターさんは『副所長』と呼んでいます。

実際にオペレーションセンターとATMを運営しているのは大手IT企業ですから、センターを管理しているIT企業の社員でチーフ担当者さんがセンターの『所長』になります。
でも、対外的には銀行業務に精通した副所長さんがオペレーションセンターの責任者になるわけですね。

「責任者を出せ」

と言われると、銀行員OBや出向者さん達が電話に出ます。

「はい、お電話代わりました。このセンターの責任者である、◯△□です」

そう言ってオペレーターさんから電話を受けます。これも結局はストレス発散ですから、ひとしきり文句を言ってガス抜きが出来ると、さっきの剣幕は何処へやら。
俺は上司の人間に正しく意見した出来る奴なんだぜ、と思って素直に電話を切ってくれるんです。

副所長さんも慣れたもので、時々相槌を打つ振りをして電話の中身はほとんど聞いていません。
だってイチイチ聞いていたら、自分達の心が壊れちゃいますからね。
それに会話自体は録音されているので後で文章化してコンビニの業務連絡会に提出されるので、メモを取る必要もありませんし。

若い女性オペレーターさんやリーダーさんと別のお喋りをしながらだったり、趣味の囲碁の本を読みながらだったりしてクレーマーさんが電話を止めるまで待っているのですよ。

新人オペレーターの岩寺裕子さんも、今日のシフトに入っている副所長さんに挨拶に行きます。

「新人オペレーターの岩寺です。よろしくお願いします」

「お、新人さんか。僕は田中一郎と言います。これからも宜しくね」
やさしく答えてくれます。

今日の副所長さんは、赤い銀行のOBである田中一郎さんと、青い銀行のOBである佐藤太郎さんです。
昼間はもっと多いのですけど、夜間帯は少ないのです。

赤い銀行と青い銀行以外に、緑の銀行もありますね。
え?何それ、と思うでしょうけども、思い出してくださいね。
三大都市銀行の看板の色は何色ですか?それぞれ色が違ってますよね……



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