異世界の管理人

ぬまちゃん

文字の大きさ
35 / 42

電車で戻る

しおりを挟む
「ふー、フー、ふー、…」

「もう大丈夫じゃ」
「すまんのう、神宮寺君、なんとか落ち着いたわい」

「サリーさん、マリアさん迷惑かけたのお」
「もう、冥界のトビラを無理に抑えなくても大丈夫じゃ」

「神宮司君、本当に申し訳ない!」
「君と話してみて、人間界には話の分かる者もいる事は理解できるのだ」
「それは、ワガハイが人間界に来て得た、重要な事実だ」
「しかし、それでもやはり、人間界から異世界に対して攻撃されているという事実を思うと、感情的にはフツフツしてしまうのも事実でなあ」
興奮気味の主任さんは、深呼吸を数回して自ら落ち着きを取り戻そうとする。そうしてから、すまなそうに男の子に頭を下げた。

「神宮司さん、ごめんなさい。ハデスおじ様は、異世界の住人だという空想世界に入り込むと、ちょっと興奮してしまうの」
女の子は、必死になって、自分たちが異世界から来た住人だという事を悟られないようにするのだった。

「そんな。ハデスさんに謝って頂く必要は有りません」
「マリアさんが仰るように、もしも僕が異世界の住人だとして、傍若無人な侵略を受けたら憤慨するのは当然だと思います」
男の子は、主任さんが自分を異世界の住人だと妄想しているのを前提に答えた。

「おお、神宮寺君、君も侵略される側の気持ちを分かってくれるのか…」
「ありがとうな、そうか人間の中にもその様に考えてくれる者がいるのだな。それを聴いただけで、ワガハイは涙腺が緩んでしまうわい」
主任さんは、思わず目頭を押さえてしまった。

「どうだね神宮寺君、君も異世界の住人になってくれんかね?ワガハイは君ならば歓迎するぞ」
「ぜひマリア君と結婚して異世界に来てくれたまえ」
主任さんは、興奮して余計なことまで口走ってしまった。

それを聞いた男の子は、慌ててハデスさんにささやいた。
「ハデスさん、その件は秘密にして下さいとお願いしたじゃあないですか…」

「おお、すまん、スマン」
「まずい事を口走ってしまったな…」

それを聞いていた女の子は、顔を真っ赤にしてうなだれてしまった。
自分の顔を見られたくないからだ。

男の子と女の子の間で、少し気まずい空気が流れてしまったので、それを打破する様に、西の魔女は話を変えた。

「ところで神宮寺さん、ハロウィンで真似をしているのはアニメのキャラクターだとおっしゃってましたけど…」
「アニメとは何ですか?」

「ああ、サリーさん、アニメと言うのは、絵が動くんです」

「デジタルを説明した時にも出てきましたけど、人間はあまり早い動きを追いかけられないのです」
「だから、人物が少しづつ変化している絵を人間の感じる速度より早い速度で順番に表示すると、まるで絵が実際のように動いて見えるのです」

「実際には、小説や漫画といった、原作者が作った仮想の話を基に、そのお話の中の人物達を絵に描いて動かすのです」
「そうやって作ったアニメを、テレビや映画でみんなが見るんです」
「すると、人気のあるアニメの主人公や主人公のライバル達になってみたいと思う人が現れるのです」

「たしかに、わたくし達生物は強い物にあこがれて、その様になろうとしますものね」
「でも、神宮司さん、そのアニメの主人公たちは、そもそも架空の話の中にしか出てこないのでしょう?」

「そのような仮想の中の主人公にあこがれて、みなさんは一体どうしたいのでしょう?」
西の魔女は、男の子の説明を聞いても、なんとなく腑に落ちない感じだった。

「そうですねえ」
「実際には、実在の人に対する話もあるのですけど…でも確かに、サリーさんが仰るように、架空の話の主人公にあこがれるというのは不思議な話ではありますね」
男の子も、サリーさんを納得させることが出来なかった。

「やはり、人間界の生き物は頭の中の想像力が秀でているからなんでしょうかしら?」
「空想の事柄も、実際にあるかのように思えるんじゃないかしら?」
女の子が、男の子と西の魔女の会話に入って来た。
やっと顔を火照りも取れて、男の子と会話したいという思いがあったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...