異世界の管理人

ぬまちゃん

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異世界の人達とファッション

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「そうですか、ハデスさんも気に入って頂けましたか?」
「イイところはドンドン真似して、サービスを向上させる。それが有名なお店の店員ですよね。どうすれば、お客様が喜ぶか?いつも考えているんでしょうね」

「ウム、ワガハイは感動したぞ。人間世界の者たちは相手がどうすれば気持ち良いのかを想像して対応しているのだな。そうやって、想像力を鍛えているのか」

「そうですね、相手の立場になって考える、と言う訓練を積んできているのですね」

「惜しむらくは、その相手の立場になって考える、と言うことを、異世界の住人に対してもやって欲しいものだなあ…」

「え?すみません、ハデスさん、チョット意味がわからないのですが」

「イヤ、独り言だから、気にしないで結構じゃ」
「お!あそこに、サリーとマリアがいるぞ!」

「本当ですね。なんかまだ迷っている様ですよ?」
我々も行きましょうか。
それとハデスさん、マリアさんの件は内緒にしていて下さいね。

「ウム、大丈夫じゃ。ワガハイは口が固いのが自慢じゃからな」


「サリーさん、マリアさん、何を悩んでいるのですか?」
男の子は、洋服選びに迷っている二人の女性に声をかける。

「アラ、神宮寺さんとハデスさん、ずいぶん早かったわね。もう電気屋さんの用事は終わったのですか?」
西の魔女は、女の子に服を合わせながら楽しそうに聞いてきた。

「もう、可愛い服がありすぎて迷ってしまいますわ。マリアさんとも色々話してたけど、このお店は置いてある服が皆んな可愛いのよね」

「そうです、サリーおば様とも話してましたけど、もう本当に選ぶのが大変ですの。アラ?ハデスおじ様、その服は何ですの?」
「まさかこのお店で服を選んだのですか?」
女の子は、主任さんが先ほど選んだジャケットを目ざとく見つけて、聞いてきた。

「ウム、先ほどこの店の店員に選んでもらってな。なかなか良いセンスをしておるぞ。接客態度も良いしな」


「まあ、このお洋服センスが良いわあ。お店の店員さんのお勧めも良いわねえ。どうしようかしら、本当困っちゃうわ」
なぜか、サリーさんが本当に困っている。

「今、手に取っている服は良いと思いますよ。可愛くてお似合いです」
男の子が、女の子に楽しそうに話しかけた。

「私はこちらの服とあちらの服で迷ってしまって…」
「サリーおば様は、向こうの服も良いわよと言って持ってきて下さるし、もう本当に困ってしまうわ」


「もう、目を瞑って、どちらかにしてしまえば良いのでは無いか?」

「ハデスさん、そんな良い加減な選び方をしてはダメですよ。ねえ、サリーさん」

「そうよ、男の方は選び方がいい加減なんだから。そうだ、神宮寺さんはどちらの服が良いかしら?」
「ヤッパリ若い殿方が選んで下さる方が良いのではないかしら?」


「どちらも、よく似合いますよ。ただ、こちらの方が、マリアさんの綺麗な髪の毛に似合いますよ。いつもシニヨンにヘアキャップですけど、たまには肩に垂らしてみるのも良いのではないですか?」
男の子は、少し顔を赤くして言った。

「髪の毛は、訳あってまとめているのです。でも有難うございます、髪の毛を褒めていただいて。きっと私の蛇たちも喜んでいると思いますわ」
「みんな、私の髪の毛を見ると石になってしまいますので…」

「え?マリアさん、ゴメンなさい、チョット意味がわからなかったのだけど」

「ああ、神宮寺さん、お気になさらないで下さい。独り言ですから」
「それでは、神宮寺さんが選んでくださった、この可愛良いワンピースを購入しましょうかしら」

「ウム、マリアさん、よくお似合いじゃよ。ワガハイのジャケットと一緒に購入しようか」

なぜか、ハデスさんの言葉に、男の子と女の子が真っ赤になっていた。

「しかし、これだけ豊富な洋服を店に置いてあるという事は、毎日沢山服を作っているの者がいるのだろうな」
ハデスさんは、関心して言った。

「そうですね、服を作るだけでは無くて、デザインも毎日考えている人が居るんですね。デザイナーと呼ぶのですけれど。彼らが、毎年の流行を決めているのです。例えば、今年は短めのスカートを流行らせようとか、色はピンクが良いとか、色々た考えているのです」

「なんだと!一部の人間が考えた服装が一年間のあいだ、皆が着るようになるのか?なぜ、みんな真似をするのだね。確かに、仕事上有利な事を真似したり、子供が親の真似をして言葉や社会規範を身に着けるのは良い。しかし、なぜ服の良しあしまで、皆真似をするのだ?それが流行という魔術か?」
ハデスさんは、人間の行動の不思議さを口にした。

「そうですねえ、個人個人で好きな服を着ればいいのですけど、どうしても流行という言葉に乗ってしまいますね。まさに、魔術かもしれません」

「たくさんの人間を操る魔法は、確かにあるけど、特定の服だけ流行らせるという魔法は、異世界にもないわね」
西の魔女は、人間界の不思議な風習に頭をひねった。





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