異世界の管理人

ぬまちゃん

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人間界で住む所

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受付の女の子のお父さんは、人間界に住んでいた人間だった。

そのお父さんの伝手で、住む所は確保出来そうだった。

えーと、
中央区の山田町って、確かこの辺りだと思うのですけどね~。

女の子は、お父さんから受け取った封筒に入っていた地図を見ながら、住む場所を探し始めた。

なんかー、どこに行っても同じ様な風景ですね…
この地図に書いてある、番地、というものを使って探すらしいんですけど。
これだけ同じ街並みだと、本当に番地が分からないと迷子になっちゃいますね。

女の子は、道ゆく人に声をかけて、
すみません~この番地はどうやっていくのでしょうか?

と聞いて回った。

老人と老婆よりも、若い女の子が尋ねると、街を歩いている人は、ほぼ立ち止まってくれる。

だけど、みんなここら辺の住人では無い様で、一様に困った顔をして、済まなそうに去って行く。

何回か、その作業を繰り返していたら、遂に番地が分かる人と遭遇する事が出来たらしい。


えーと、
確かこの番地は随分前に町名変更があったはずですよ?

随分古い地図をお持ちですね。
ああ、そうか!
お祖父さんとお婆さんの持っておられた地図なんですね。

きっとお二人の若い頃に住んでいた住所ですかね?
この辺りは、土地代が高いので今の若い人は住めませんからね。
先祖代々から住んでいる、名家の人が多いのですよ。

確か今は山田町では無くて、村山町だったと思います。

村山町なら、この前の大きな道を右に曲がって、しばらく歩いたとこですよ。

若いお姉さん、お爺ちゃんとお婆ちゃんを連れて大変ですね。
頑張ってくださいね。


そう言いながら、親切な人は反対の方向に歩いて行きました。


うーむ、
人間族は仲間には随分優しいのだな。
人間族同士で争って破滅してくれるのが一番なのだがな。

主任は独り言を言いながら、さっき言われた方向に歩き出した。

その後を魔女と女の子はついていった。
ドラゴンは、女の子のカバンにブラブラぶら下がっている状態だ。

しばらく歩いていると、柱に村山町、の文字が現れた。おお、この辺りじゃないか?
番地は何番だい?

主任さんの質問に女の子は答えた。

えー、
四丁目四番地の四と書いてあります。

どれどれ、この柱が三丁目一番地だから、もう少し奥の方かな?
そう言って、主任さんは少し細い道をズンズン入っていきます。

だんだん人気が少なくなってきました。
周りは公園のようで、ベンチでくつろいでいる人と短パンとランニングで走っている人ぐらいしか見かけなくなりました。

ああ、ここかな?
ここの柱には、四丁目四番町と書いてあるな。

古い大きな家だな。
なになに、表札には、平和荘と書いてあるぞ。
その下には四丁目四番地の四とある。

多分、ここだな。
君のお父さんのお陰で借りられる家は。
随分と大きな家だなあ。

呼び鈴を押してみるか。
チリン、チリン。

はーい?
どちら様ですか?
若いお兄さんが、玄関から現れた。

あ!
はじめまして、私の父がこの家に縁があるらしくて。
実は色々ありまして、この家にご厄介になれないでしょうか?
というお願いなのですが。
受付の女の子は、愛想笑いを浮かべて精一杯説明して、父親から預かった手紙を差し出した。

え!
もしかして、西園寺のおじさんからの手紙ですね。
という事は、君があのおじさんの娘さんか~
確かに笑った時の顔は、おじさんの若い頃にそっくりですね。


初めまして、僕は神宮寺京太と言います。
西園寺家と神宮寺家は、昔から親戚付き合いをしてて、僕も小さい時は西園寺のおじさんによく遊んでもらいました。

随分昔に、西園寺家の家督を弟さんに譲って遠い外国の女の人と結婚したという話を聞きました。

その後、娘さんが生まれて大切に育てていると風の頼りに聞いていたのですが。
それが、貴方だったのですね!

このアパートは、全ての家督を弟さんに譲った時に、一つだけ残して欲しいと言われてお兄さん名義のままになっています。

たまたま、僕が大学でこちらの方に引っ越してきたので、管理人と兼任で安く借りているのです。

見ての通りのボロアパートなので、空き部屋は沢山有りますから、いつまでもいて下さって結構ですよ。



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