異世界の管理人

人間界への転生

ドラゴンさん、
それでは、人形の形へ変身してください。
我々の力では、ドラゴンさんに魔法をかける事は出来ませんから。

主任さんは、
今回の探検にドラゴン族の長老から指名された、若いドラゴンにお願いした。

人間界に転生して、人間界の様子を探検するメンバーが異世界転生課に集まっていた。
探検隊のメンバーは、転生課の主任、若いドラゴン、西の魔女、そして受付の女の子。

ドラゴンさんには、自らの魔法でストラップに付ける人形になってもらう。

その人形をストラップとして、スマホに取り付けるのは、西の魔女。

そのスマホを持つのは、ドラゴンの人形を持っていても不自然にならない、受付の若い女の子。

最後に、冥界の門を利用して、探検隊そのものを人間界に転生させる、異世界転生課の主任。

転生後の拠点としては、若い女の子のお父さんが人間族なので、お父さんの実家に近いアパートをお父さんの伝手を使って借りる事が出来た。

主任と西の魔女は老夫婦として、
受付の女の子は、老夫婦の忘れ形見の子供の孫娘として、アパートに住んで、人間界を探検する事になった。
ドラゴンさんは、女の子が持っているスマホのストラップとして、人間界を見て回る。

西の魔女は、異世界の人間族だし、若い女の子は、メデューサ一族と人間世界の人間とのハーフなので、外見は人間族そのままだ。
主任は人間族と同じ体形なので、人間族では無いが、特別な変身魔法は必要ない。

ただし、怒ると冥界の門が開いてしまうので、女の子と魔女がその門を閉める大役を仰せつかる事になる。
それに、若い女の子の髪の毛が蛇なので、いつもはシュシュをして髪の毛を隠すが、それでも彼女の髪の毛を見てしまうと、石になってしまう。
その場合んは、西の魔女が魔法を使ってその石を人間に戻す。

西の魔女は、異世界の住人なので、異世界から出るためのトビラを作り出す事は出来ない。
しかし、既にある異界へ続く門を人間界につなぎなおす事は出来るらしい。

以上の作戦を立てたうえで、主任の冥界の門を、人間界へのつなぎなおす作業を、西の魔女が始めた。

小さなスティックを使って、主任の冥界の門を人間界につなぐ。

さあ、
それでは皆さん、準備はいいですか？
今から、人間界へ繋ぎますね！

…
冥界の門を司る者に依頼する。
我は異界の空間を人間界に繋ぎかえる事を欲する。
さあ、我の望みを叶えたまえ～
エイ！
…

西の魔女のスティックが振り下ろされた瞬間に、
門の向こうが、暗い冥界の世界から、明るい人間界の世界に切り替わった。

受付の女の子は、つい声を上げた。

マア！
なんて綺麗なのかしら！
あれが人間界と呼ばれる世界の光なのね。

主任も自分の門の隠された力に驚いていた。

これは凄い！
私も長い間この門を管理していたつもりだったが、
この門はこんな凄いことが出来るのだなぁ。

西の魔女は言った。

主任さんの冥界の門は空間を切り開く凄い力があるのです。

普通の魔法は、その世界の中でしか使えませんが主任さんの門は数少ない例外的な魔力です。
この私も、門の出入り口を切り替える程度なら出来ますが、門そのものを作り出す事は出来ません。


さあ、あちらとこちらが繋がっている間に、向こう側に行きましょう。

いつまでも空間を繋ぎ止める事は、私にも出来ません。

良し、
それでは、向うの世界に急いで移動しましょう！

ビューン
ビューン
ビューン


彼らは、遂に人間界の地に立ったのである。

その瞬間、向こう側の景色が異世界の風景から冥界の風景に戻った。
冥界から、魔物たちが来ない様に、主任は慌ててその門を閉めた。

人間界は、まだ昼間の様だった。
多くの人間が、通りを歩いている。

異世界では、色々な人種が歩いていたが、この世界では驚くほど多くの人間が街中を行き来していた。

あまりの人間の多さに、主任とドラゴンは一瞬目を疑った。

何という人の多さだ。
これだけの人間が、争う事なく、秩序正しく仕事をしているのか！

もしも、ここにいる人間が全員異世界に来たら、本当に大変な事になる。
直ぐに炎を使って焼き殺してしまおう。

若いストラップ人形のドラゴンが吠えた。


ドラゴンさん
待ってください。
今目の前にいる人間は、この世界のほんの一部ですよ！
ここでほんの一部の人間だけ燃やしても、焼け石に水です。

我々の目的を思い出してください。
人間族を調査する事では無いですか？

人間族の弱点を見つける事が出来れば、対処の方法があるはずです。


先ずは、拠点に移動しましょう！