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番外編
親友のそんな性癖、知りたくもない【琉成×圭吾】(圭吾 ◇ 琉成・談)
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これは、清一と充がラブラブになるちょっと前の話だ。
「圭吾ー、今日はいいもの買ってきたんだ」
学校の一階にあるホールに並ぶベンチに一人。購買部で買ったばかりのちくわパンの袋を開けて、『さぁ食うか』と思っていたらいつものタイミングで琉成が来やがった。
監視でもしてるのか?
俺のスマホにGPSのアプリでも忍ばせてやがるんだろうかってくらい場所を的確に突き止めて、いつも俺が間食をしようとすると現れる。
「いいもの?」
今俺の手の中にあるちくわパンよりもいい物が世の中にあるのか?
いいや、無い。
「ほい」
琉成はそう言いながら、俺の目の前に薄緑色をしたビニール袋を差し出してきた。
「何だ?これ」
俺の手にはちくわパンがあり、受け取れない。袋と琉成の顔を交互に見ていると、袋を開いて中身を俺に見え易いようにしてくれた。
「バイト代が出てたからさ、商店街のパン屋に行って圭吾の好きそうなパンを沢山買って来たんだ。メロンパンだろ、パニーニ、唐揚げパンとか…… まぁそんな感じのもん」
甘い匂いとしょっぱい匂いが混じった袋の中身は見ているだけでも全てが美味しそうで、宝箱でも覗いているような気分になった。
「これ、全部食べていいのか?」
期待に目を輝かせて目の前に立つ琉成を見上げて問いかける。すとる奴は、よりにもよって「圭吾にあげるから、俺に食べさせて!」と言い切った。
「…… 俺、先に帰るわ」
ちくわパンを口に咥え、咀嚼しながら座っていたベンチから立ち上がる。
『いいもの買ってきた』と期待させておいてコレは、今までで一番ムカついた。どうしてよりにもよって俺の好きそうなパンばかりを買い、目の前に差し出しておきながら、食うのは琉成なんだ。
楽しみにしていたちくわパンの味までもが、気分が悪いせいで美味しいと思えない。腹に入ったので空腹は紛れたが、ただそれだけだった。
「え、何で?圭吾何で怒ってんの?俺ちゃんと買って来たのに」
足早に立ち去ろうとする俺の肩を琉成が掴んで止める。
本気でわからないのか?
あ、いや…… コイツなら有り得る。
同じ言語を操っているとは思えないくらいに言葉が通じず、持論を押し付けてくる事が多いからだ。
「まぁ確かに。俺の買ったパンを毎度毎度奪うよりは、た・し・か・に・マシだな」
「だよな?そうだろう!」
琉成が誇らしげに笑い、二、三度頷いた。
『そのデカイ図体の中身は空っぽだな』と、吐き捨ててやりたい気持ちになったが、言った所で言葉通りにしか受け止めないコイツでは意味など通じないだろう。
「成長期で常に空腹の俺の口には入らん事を怒ってるって、マジでわかんねぇの?」
「…… あーそっか。んじゃ俺が食わせてやるよ!だから圭吾も、俺にちょうだい」
「まどろっこしいだろ!アホか」
「それじゃダメだよ!圭吾のモノが欲しいんだもん」
「俺の、が?」
「うん、圭吾のが。全部欲しい、全部喰べたい」
「全部お前にやったら飢え死にするわ!」
眉間にしわを寄せ、琉成の手からパンの入った袋を奪い取る。「あ!」と声をあげた琉成を無視して、俺はその場から脱兎の如く走り出した。
◇
大量に入る教科書のせいで背中に背負っている鞄が重く、思い通りに走れない。どこまで行けばいいかなんて考えないまま、ひたすら廊下を駆けて行く。人が少ない方を選びながら進んで行くと、家庭科室や技術室が並ぶ実習棟の建物へ辿り着いた。ウチの学校は文系の部活動が少ない為、この辺は放課後になると殆ど人の気配が無い。先生もあまり来ないので、こっそり隠れて人の物を食べてしまうには丁度いい場所だった。
階段を上がり、二階の奥まで突き進む。誰も居ない廊下に鞄を置き、その場に腰を下ろすと、俺は奪ったビニール袋の中からメロンパンを一つ取り出した。
しょっぱいちくわパンを食べたので甘いものが食べたい。パニーニとかの調理パンはできたら温めて食べたいから、これを食べたら家に帰ろう。人の物を奪って食す罪悪感は多少あるが、今まで散々琉成に食われてきた俺のパンの量を考えると、そんな事は瑣末事に思えてきた。
「いただきます」
パンの入る透明な薄手の袋を開けて、中に入るメロンパンにかじりつく。走った後だった所為もあってか、パンの甘さがより美味しく感じた。
「外はサクサクで中はふわっふわとか、最高だな」
今度はちゃんと俺もパン屋で買おう。コンビニや購買部で買う安いパンよりも断然美味しくって、さっきまでの苛立ちが少し緩和出来た。
もぐもぐと咀嚼し、俺が戦利品のメロンパンを味わっていると、琉成がのっそり歩いて近づいて来るのが見えた。慌てて追いかけてきた感は無く、『やっぱりここに居たか』って雰囲気のせいで、またちょっとムカついた。
当然のように隣に座り、琉成が俺の方へ紙パックに入った牛乳を差し出してくる。メロンパンの入る袋を膝に置き牛乳を受け取ると、まだ冷たくって今さっき買って来た物だとすぐにわかった。
「サンキュ」
「一口飲んだらソレもくれ」
「…… お前さ、今日は特に酷いな」
紙パックにストローを刺しながら、呆れた声が出てしまう。いつもいつも琉成は俺の食いかけだとかを欲しがるが、ここまでじゃ無いのに。
「そりゃあ、欲求不満だからねー」
膝に置いてあったメロンパンを俺から取り返し、琉成が嬉しそうにかじりつく。まだ半分くらいはあったはずのパンは、たった二口で消えて無くなった。
せめて味わえよ、とツッコミたい気持ちを『欲求不満』の単語が邪魔をする。
聞き流すべきなのか?いや、コイツのことだから性的な意味で言った訳では無いかもしれない。そもそも意味を知っているのかすら怪しい。わかっていない事すらわからない、典型的タイプなのだから。
「他のも食わせて。ソレも早く飲みたいから、先に一口飲んで」
「いや、もうお前が飲めよ」
ストローに口をつける事無く牛乳パックを琉成の前に差し出すが、受け取ってくれない。「飲むから、先に早く飲んで」と言われるばかりでサッパリだ。
毒味か?
俺に毒味でもさせたいのか。誰に狙われてるってんだお前は。
顔立ちは清一並みに整ってはいるが、中流家庭のお前は毒殺される程の存在じゃないだろ。犬みたいな人柄のおかげで誰かから嫌われてるような気配も皆無だっていうのに、コイツの意図が全くわからない。
でもまぁ、喉は乾いているので真意不明のままストローに口をつけて、ずずっと牛乳を飲み込んでいく。一口と言われていたが、ムカつく気持ちで飲んだせいか、半分以上が一気に無くなった。
そんな俺の様子を琉成が満足気に見つめている。口元が少し綻び、笑っているようにも見えた。
「ん」
「やったー!」
少ないと文句を言うことなく、今度は俺の差し出した牛乳パックを素直に琉成が受け取って、中身を飲み込んでいく。
「毒なんか入って無かったぞ?」
「当然じゃん、未開封なんだし」
「…… いや、まぁそうなんだけど」
言いたい意味が伝わらない。
言葉足らず過ぎたな、失敗した。一から十まで説明が必要な奴だった事を失念していたなと思いながらため息をついていると、琉成が俺の脚へとのしかかってきた。
「重い」
「いや、だってこうしないとパン取れないし」
琉成からは離れた位置に置いてあったパンの入る袋を回収し、俺の脚から体を起こす。太腿に触れていた手が離れる瞬間、指先でスッと内腿側を撫でられた気がしたが、気のせいだったかもしれない。
袋の中から丸くて砂糖だらけの揚げドーナツが入る袋を取り出し、琉成が俺の口元へ差し出してきた。
「はい、あーん」
「自分で食えるわ」
「ダメ。俺から食べないんだったらあげない」
真剣な顔で言われて、咄嗟に言葉が出なかった。普段はふにゃっとした駄犬みたいな奴なのに、真顔になると端正な顔がカッコよく見えてしまい腹が立つ。
「…… んあ」
口を大きく開けると、中に揚げドーナツが入ってきた。大きくって全部は入らず、一旦かじりついて一口食べる。
「餡子のドーナツか、美味いな」
「だろ?絶対に好きだと思ったんだ。はい、もう一口」
口元に差し出され、それを受け取ろうとした手はハエでも扱うみたいに叩き落とされた。
「…… あ」
口を開けて琉成の顔を見上げると、さっきは気がつかなかったが随分と奴の呼吸が乱れている。頰がやけに赤くって、俺の口内を見る溶けた眼差しを認識した瞬間、全身の肌が粟立った。
ドーナツを口に押し込まれ、それを噛んで離れようとしたが、琉成の方が動きが早かった。俺の後頭部を琉成が手で押さえられて後ろには逃げられない。かといって前からは俺の咥えるドーナツを食べようとする琉成の顔があり、前後不覚になった。
残っていたドーナツが全部琉成の口の中に消えていく。
美味しかったのに!
全部食べたかったのに、また琉成の取り分の方が多かった!
と思った瞬間、ペロッと生温かいものが砂糖の残る唇の上を掠めていった。
「甘いな!思った通りめっちゃ美味いわ、これ」
ハイテンションで喜ばれ、文句を言う隙を失った。今のは唇に残る砂糖を舐めたかっただけ、なのか?
「次何食べる?甘いのが続いたから、しょっぱいものとかもいいな」
ゴソゴソと袋の中を漁っているのを見ながら、自分の唇をそっと触る。初めてされた行為だったのだが、ノーカンでいいよな?舌先だけだったし。
返事をする事無く固まっていると、琉成が袋から顔を上げてこちらを見てきた。目が合った途端、琉成の顔がパッと明るくなり「もっと美味しそうなものみっけた!」と大きな声で言った。
こっちには何も無いぞ?何の話だ
——そう言いたくって口を開けたのに、言葉が出る前に柔らかな舌がにゅるりと侵入してくる。両耳を両手でガッチリ抑え込まれ、顔を逸らして逃げる事も出来ない。
「んんんんんっー⁈」
悲鳴に近い音を発し、バシバシと琉成の体を叩く。だが行為を止めるには至らず、口の中を蹂躙され続けた。甘みの強い舌が絡まり、逃げようしても追いかけてくる。舌先をチョロチョロッと舐められ、腰がビクッと跳ねた。雑だけど、好き勝手に歯茎やら上顎やらを舐められて体から否応無しに力が抜けていく。針で穴を開けられた風船みたいに、ふにゃっとなった体が寄り掛かかる壁伝いにずるずると倒れそうになった。
満足したのか、琉成が俺の口から舌を抜き取り、破顔した顔をこちらに向けてきた。
「甘い、美味しい。もっと喰べたい、全部欲しい、もっともっと」
学ランの胸倉を掴み、琉成が俺の体を引き寄せる。
何がしたいんだ?何が起きた!
そうは思っても快楽で溶けた頭が上手く動かず、抵抗する所まで体が動かない。
「もっと食べて、もっと喰べさせて」
舌を指で掴まれ、無理に引っ張られる。
「んぐっ」
「赤い、甘い、美味しい…… あぁずっとコレが喰べたかったんだ」
強制的に出した状態になっている舌を、引っ張りながら琉成が舐めてくる。舌先を俺の舌の中心に沿って指で撫で、端を甘噛みする。溢れ出る唾液はスープでも飲むみたいな感覚で吸い尽くされ、琉成の事を心底怖いと思った。
「ひゃ、ひゃめ…… ろっへ」
上手く言えず、引っ張られるせいで舌の根元が痛い。胸元をグッと押してみたりして抵抗したりもしてみたが、力が入らず無駄に終わった。
「…… 我慢出来ないや。ねぇ、喰べちゃっていい?」
そう言った琉成の目が座っている。拒否や否定など今のコイツの耳には一切届かないと、すぐにわかった。
首を横に振って断りたいのに、頭が動かせない。
食べるって、俺の舌を噛みちぎって飲み込むって事か?カ二バリズムなんて絶対にダメだ、親友を食うとかホラー映画だけにして欲しい。
「んー…… でもここじゃ流石にヤバイな、人来るかもしれんし」
むしろ今すぐに来て俺を助けて欲しい。
状況が受け止めきれず、目から涙が溢れ出る。
食い物を奪われはしても、それでも一番一緒に居て楽で楽しい奴だと思っていただけに、琉成から俺は、食料としか思われていかったショックも大きかった。
「うわぁ…… 泣くとかマジヤバイって」
口元に弧を描き、琉成の顔がまたこちらに迫って来た。掴まれたままになっている舌を咬みちぎられるかもしれない恐怖に体が硬直し、動けなくなる。
ペロッ、ペロッ…… 。
予想外にも琉成は俺の頰を伝う涙を舐め取り始めた。掴んでいたままの舌を離してくれ、慌てて口内へと舌を戻す。その舌を指が追い、口内へ琉成の細長い指が入ってきた。
「しょっぱくて、こっちも美味しい」
眦をチュッと吸われ、口の中の指が歯茎をなぞる。唾液の絡む指先が口内をくすぐるみたいに動き、腹の奥がキュッと疼いた。
なんだコレ、変な感じがする。気持ち悪いのに、心地いい。相反する感覚に心が騒つく。
「ひゃめらっへ、ほう、はらへっ」
「うんうん、何言ってるかサッパリだやー」
ニッコリ笑うと、琉成が俺の口から指を抜いてくれた。何だ、止めろってちゃんと伝わってるじゃん。ホッと息をついたのも束の間。琉成は俺の体を横抱きして持ち上げると、荷物もそのままに廊下を来た方向へと歩き始めた。
「何処に、行く気だ?」
「もっと人の来ない所に行こうかなって。じゃないと全部喰べらんないし」
「ぜ…… 全部?」
お姫様抱っこをされている事を非難したい気持ちが瞬時に吹き飛ぶ。
え、こんな簡単に俺死ぬの?
そう考えたせいで顔が真っ青になり、逃げたいのに逃げられない。いつもなら何かトラブルがあっても脱兎の如く走り出せるのに、もう既に腕の中に捕まっているせいもあるんだろうか。
琉成は鼻歌を歌いながら足早に目的地へ進んで行く。この様子だと、もう行きたい場所は決まっているみたいだ。
◇
実習棟の隅にある男子トイレに連れ込まれ、洋式トイレのある個室に入る。蓋が閉まっているのを確認して俺をそこへ下ろし、琉成が扉を背に立って、後ろ手に鍵を閉めた。
ガシャンッ——
いつもなら何とも思わない鍵のかかる音が、耳奥に響く。頰を染めて、ニッと嬉しそうに笑う琉成の場違いな顔に背筋が凍った。
「やっとだ…… 一年の頃からずっと、圭吾ってなんか美味しそうだなって思ってたんだよね」
学ランのホックやボタンを、上から順に外されていく。
バクンバクンと心臓が大騒ぎし、「止めろって、食うとか…… んな事捕まるぞ?」と震える声で言いながら、琉成の胸をグッと押した。
「平気だよ、圭吾優しいし。それに、なんだかんだ言って俺の事嫌じゃないだろ?」
そりゃまぁ否定はしないが、食われてもいいと思う程ではないぞ?と、言いたいのに言えない。んな発言をしたら『煩い』って首を絞められるかもなんて、悪い方に考えてしまう。
上半身の前が全てはだけ、青白い肌が薄暗い個室の中で露わになる。俺の薄っぺらい胸に琉成がそっと触れ、恍惚に染まった顔をした。
「薄い胸に細い腰…… 乳首なんか冷たい空気のせいかツンって膨らんでて、可愛いな」
便器の蓋の上に座る俺の前にしゃがみ、琉成が肌を撫でてくる。吟味するみたいな視線が肌に刺さり、頰が引きつった。
「あぁ…… いい匂いまでする」
胸に頬ずりをされ、匂いを嗅がれる。
「な、何してんだお前」
やっと出た声は震えていて、情けない顔しか出来ない。
「しおらしい圭吾も可愛いな」と、言うが同時に胸の尖りをペロッと舐められ、体が跳ねた。
——んな⁈
何してんだコイツ!
「そんなとこ、何で——んあっ!」
ガブッと右胸の先を噛まれ、敏感な箇所なせいで声を抑える事が出来なかった。
「あ、やっ…… こわ…… やめ…… 」
肩に手を置き、押しながら必死に訴える。
だが俺の訴えは虚しくスルーされ、琉成は甘噛みをしたり吸ったりとを執拗に繰り返す。左胸の肌をさすっていた手が明確な意図を持って尖りに触れ、引っ張り揉んだりもし始めた。
「や!んあっ何でこ…… んんっ」
しつこく胸を弄られ、琉成の意図が益々わからなくなっていく。腹の奥で変に疼きを感じ、俺は慌てて「は、離せって!」と叫んだ。
「嫌だ。今日はもう喰べるって決めたしね。こんなご馳走を前にして、喰べないとかあり得ないよ」
ガブッと肌に噛み付かれ、歯型がうっすらと残る。血が出るまででは無かったが、俺の心をへし折るには十分な力だった。
抵抗したら本気で食われる…… じっとしていないと。
無抵抗になろうが食われるのかもしれないが、痛くされるよりはマシだと考えてしまう。
「あぁ…… 最高だね、この感触」
かぷり、かぷりと俺の肌を噛みつつ、下の方へ琉成がさがっていく。
「やめ、ダメだって、ソコは——」
「んー?ダメって、もしかしてコレのせい?」
学ランのズボン越しに、一番他人に触れられたくない箇所をつつかれて、青かった俺の顔が一気に真っ赤に染まった。
「触んな!関係無いだろ?んなとこは」
必死の形相で言ったが、琉成相手では暖簾に腕押しで終わった。ベルトを外され、ボタン、ファスナーとを次々に下げられる。ズボンは穿いたまま、パンツだけ下げられて、食われかねない追い詰められた今の状況下には絶対に存在してはいけないモノが琉成の前に露わになった。
見られた恥ずかしさから、俺は赤かったり青かったりとを繰り返す顔を腕で覆って隠した。見えなくなったからってその事実が消える訳じゃ無いのに、今は現実を見たくない。
琉成からの罵りが耳に届くのを逃げたい気持ちいっぱいのまま待っていると、俺にとっては予想外の言葉を奴が発した。
「胸とか噛まれたの、気持ちかったんだね。絶対俺達相性いいよ!」
嬉しそうな声色が聞こえ、琉成がどんな顔でそんな発言をしたのか気になり、俺はそっと目元を隠していた腕を避けた。
その事に気が付いていたのか、俺の勃起したモノを前にした琉成と目が合ってしまった。恥ずかしくってもう死にたい…… 早く食い殺して欲しい。痛いのは嫌なので、出来れば一瞬で。
琉成が何をする気でいるのかが心配で目を逸らす事も出来ないでいると、奴が大きな口を開けたので全身がビクッと恐怖に震えた。
まさかそんな箇所から食い始めるとか、お前は鬼か!
「ひっ!」
俺が短い悲鳴をあげたが同時に、陰茎の切っ先が生温かくって何やらぬるっとしたものに包まれて俺は目を見開いた。
「…… え?…… ぁっ」
予想外の動きに腰が浮く。嬌声が出そうなくらいに、陰茎を咥えた琉成の動きが淫猥だ。
待って、食うんじゃなかったのか?
舌で裏筋を舐められ、切っ先から漏れ出る先走りの蜜を流成が美味しい飴でも食べる時みたいな嬉しそうな顔で舐め取っていく。量に不満でもあるのか、中から吸い出したいみたいに先っちょを吸われ、「くぁっ…… んんっ、ソレら、めぇろって」と、呂律の回ってない声が出た。
力無く頭を押して抵抗を試みるが、逆に根元まで口内に含まれてしまい腰を振りたくなるくらいに気持ちがいい。これって、まさか…… フェラとかってやつじゃないのか?確かめたいけど、自分から出る声は全て喘ぎ声になってしまう。
くぷっぬぷっと水音をたてながら、琉成が頭を動かす。根元の方もキュッと握り、上下にしごかれてしまい、痴態にふけってしまった。
ナニコレ、知らないこんなの。
頭ん中が真っ白になり、『キモチイイ』くらいしか考えられなくなっていく。自慰だって体調に不備が出ない限りほとんどしないせいか、脳髄に響く快楽に抗えない。
「あ、や、も…… い…… 」
ここは学校のトイレだっていうのに、声が抑えられない。もう果ててしまいそうだ。
「はなし…… て、出ちゃ、う、やめ——あぁぁぁぁ!」
琉成の動きが少し早くなっただけで、一気に追い立てられてしまった。ぐんっと陰茎が膨らみ、白濁液を琉成の口内へと容赦無く吐き出す。もう随分長いこと自分でもしていなかったせいでかなり溜まっていたのか、射精がなかなか止まらない。
「どうしよ、とまんなっ」
恥ずかしさで一杯で顔から火が出そうだ。
「…… 」
一段落し、ずるりと琉成の口から陰茎が抜け出て、果てたモノが力無く二人の目の前に晒された。終わった…… 色々なものが自分の中で砕け散り、俯きながらこのまま死んで消える事だけを願ってしまう。なのに、琉成の方からはごくんっと精液なんぞを飲み込む音が聞こえ、俺は慌てて奴の顔を見た。
「ちょ!ば!出せ!飲むな!」
受け取るみたいに掌を上にし、琉成の口の前に差し出す。だけど琉成は「……あぁ、美味しいい」と呟きながら、淫猥な瞳をこちらへ向けた。
お前は味覚音痴なのか?んなモン美味いわけねぇだろ…… 。
賢者タイムのおかげか、少し冷静に現状を見る事が出来た。
「飲むとか…… お前…… 」
「何で?圭吾のくれたものだよ?圭吾がくれるモノは、全部美味しいよ。全部ちょうだい、圭吾の全てが欲しいな、こうやって喰べちゃいたいくらいに好きぃ」
「…… ん?こうやってたべる?」
カニバリズムじゃなかったのか!
——って、冷静に考えりゃぁこっちしかありませんよね。
それこそホラー映画じゃないんだし、本気で親友に食われるかもと思った自分の顔を真正面からぶん殴りたい。スッと冷めた目で琉成を見ると、大きな体をぶるっと震わせて、琉成が俺の腰に抱きついてきた。
「あぁ!圭吾のモノを食べるたんびに勃起しちゃいそうになるくらいに興奮して、いっつも教室で興奮してたんだよね。最初自分でもその事に気が付かんくってさ、圭吾がパンを咥えたりストローかじったり、指についたソースとか舐めとるとこ見てて、徐々に『美味しそうだな』『いっそ圭吾を喰べちゃったら性欲が満たされるかも』って、そればっか考えるようになったんだ。今だって、ほら——」
ひどく興奮した表情で、琉成がその場で立ち上がる。制服上着を引っ張り上げ、股間の盛り上がった様を眼前に見せつけられた。
疑いようもなく勃起しているのが布越しでもありありとわかる。通常時を風呂場で見た事があったが、それでも『うわぁ、何コイツの。ムカつくわ、シネばいいのに』と思ったが…… 膨張したソレは、正直自尊心を木っ端微塵に砕かれそうなので見たくない。
「圭吾を喰べちゃいたいし、喰べられたい。圭吾の触ったモノは全部欲しい、全部に触られたい、いっそコレを圭吾に挿れてしまいたいし、挿れられもしたいっ」
コイツの性癖歪んでる!
エロ本の貸し借りとかはした事が無かったので、全く知らんかった。まぁそもそも持ってないんですけどね、俺は相当そういった面に淡白な方なんで。
挿れるとか挿れたいとか、男同士でどうしろと?頭ん中がショート寸前で、目眩がしてきた。
「触って欲しい、一緒にイキたい、もっと欲しい、圭吾、圭吾——」
興奮が抑えきれない琉成が、ズボンの前をはだけさせ、立派過ぎる陰茎を俺の目の前に晒す。赤黒いソレはギンギンに滾っていて、同じ雄のイチモツだと瞬時に受け止められなかった。身長差だけでは片付かぬ差に、男としてのプライドがズタズタに傷付く。
萎えていたモノを再度掴まれ、ゾッとした。
「な、何をしてんだ?」
「触るのは嫌そうだから、コッチで触ってもらおうかと思って」
俺のモノに自らの陰茎を擦り付け、まとめて掴む。大きな手のひらで擦られると、意に反して固さを持ち始めてしまい、俺は口元を戦慄かせた。
「圭吾の体って正直ー。やり慣れてないから、かえって快楽に弱いのかもね」
「何で知って…… 」
「匂いでわかるよー。圭吾ってたまにしかそういった匂いしてないから、残念だなぁもっとしたらいいのにって思ってたんだよね。でもまぁ、これからは毎日だって俺が喰べるから、自分では余計にしなくなりそうだね」
人懐っこい笑顔でとんでもない事を言われた。琉成にとっては確定した未来っぽいが約束なんかしていないぞ。
「キスしたいな、いいよね?」
答えを待つ事なく、唇の隙間を琉成の舌が割って入ってくる。狭い空間の中、便器の蓋に体を押し付けられながらキスとか…… 誰か嘘だと言ってくれ。
互いの陰茎から溢れる蜜のせいか、下腹部からぐちゅぐちゅと卑猥な音がたち始めた。
こんな状況から逃げたい、夢であって欲しい
——快楽の沼地にズルズルの引き込まれながら、俺はそんな事しか考えられなかった。
◇
焦点の定まらぬ虚ろな眼差しのまま、圭吾がぼぉっとしている。ハンカチをお湯で濡らし、それで体が拭いてはあげたが、卑猥で俺を誘うような匂いはなかなか取れていない。いっそ家まで連れ帰って、このご馳走を最後まできっちり頂き尽くしたい所なのだが、残念ながら今日は家に親が居て、連れ込む事を選び取れなかった。
「大丈夫か?」
「…… 全然大丈夫じゃない」
ぼそっと呟いた圭吾の声はひどく掠れている。目尻は泣き腫らした感が濃厚で、人目に晒すには色っぽ過ぎだ。
あぁ…… もっと喰べたかったなぁ。
制服のボタンをとめ、身支度を手伝いながらそんな事ばかり考える。熟れた果実みたいな圭吾を前にして、喰べるのを我慢しろなんか俺には出来なかった。涙も唾液も精液でさえも、全て飲み尽くしたい。圭吾の体を味わう事が予想以上の喜びに溢れていて、一回した程度では微塵も満足出来ていない。
圭吾が好きって事なんだろうな、コレは。
性欲が自覚出来るレベルで人一倍強いせいか、自身から溢れ出る圭吾への愛情全てがそっちの方へ突っ走ってしまう。まだ足りない、もっともっともっと——…… 制服を着せながら、この制服だっていつかは俺にくれないかなと思ってしまった。
間食用のパンだけでは済まず、とうとう体にまで手出ししてしまったが後悔は無い。ただこの先一生手放せそうに無いが、どうやったら圭吾の心を喰べる事が出来るのかが思い付かない。体から俺の方へと堕ちてくれる様なタイプではなさそうなので、今後の関係性がどうなってしまうのか少しだけ心配だ。
「家まで送れよな。鞄持てないから」
「——うん!いいよ、もちろん」
「…… 帰りだけじゃなく、一週間は鞄持ちな。腰痛いし」
無理しやがってと、呟きながら圭吾が便器の蓋の上から重い腰を上げる。こんな場所で喰べようとしてしまったのは流石に失敗だったなと思ったが、『気持ちよかったなぁ』『また沢山したいなぁ』という考えで速攻上書きされた。
「もうすんなよ」
「それは無理だなー、圭吾が美味しいのが悪い」
「俺のせいか!」
胸に裏拳をくらったが、普通に接しようとしてくれる気遣いが嬉しかった。
あぁ、圭吾を好きになって良かったな。
どう思っているのか、どうしていきたいのか、俺の事は好き?それとも嫌いになった?
わからない事、訊いた方がいい事。
色々山積みだけれども、今は美味しいモノを摘み喰い出来た満足感で心は一杯だ。体の方は明日からじわじわ満たさせて頂くとして、今はこの何気ない帰宅時間を楽しもうと、俺はのそのそとゆっくり歩く圭吾の背中を追いかけたのだった。
【終わり】
「圭吾ー、今日はいいもの買ってきたんだ」
学校の一階にあるホールに並ぶベンチに一人。購買部で買ったばかりのちくわパンの袋を開けて、『さぁ食うか』と思っていたらいつものタイミングで琉成が来やがった。
監視でもしてるのか?
俺のスマホにGPSのアプリでも忍ばせてやがるんだろうかってくらい場所を的確に突き止めて、いつも俺が間食をしようとすると現れる。
「いいもの?」
今俺の手の中にあるちくわパンよりもいい物が世の中にあるのか?
いいや、無い。
「ほい」
琉成はそう言いながら、俺の目の前に薄緑色をしたビニール袋を差し出してきた。
「何だ?これ」
俺の手にはちくわパンがあり、受け取れない。袋と琉成の顔を交互に見ていると、袋を開いて中身を俺に見え易いようにしてくれた。
「バイト代が出てたからさ、商店街のパン屋に行って圭吾の好きそうなパンを沢山買って来たんだ。メロンパンだろ、パニーニ、唐揚げパンとか…… まぁそんな感じのもん」
甘い匂いとしょっぱい匂いが混じった袋の中身は見ているだけでも全てが美味しそうで、宝箱でも覗いているような気分になった。
「これ、全部食べていいのか?」
期待に目を輝かせて目の前に立つ琉成を見上げて問いかける。すとる奴は、よりにもよって「圭吾にあげるから、俺に食べさせて!」と言い切った。
「…… 俺、先に帰るわ」
ちくわパンを口に咥え、咀嚼しながら座っていたベンチから立ち上がる。
『いいもの買ってきた』と期待させておいてコレは、今までで一番ムカついた。どうしてよりにもよって俺の好きそうなパンばかりを買い、目の前に差し出しておきながら、食うのは琉成なんだ。
楽しみにしていたちくわパンの味までもが、気分が悪いせいで美味しいと思えない。腹に入ったので空腹は紛れたが、ただそれだけだった。
「え、何で?圭吾何で怒ってんの?俺ちゃんと買って来たのに」
足早に立ち去ろうとする俺の肩を琉成が掴んで止める。
本気でわからないのか?
あ、いや…… コイツなら有り得る。
同じ言語を操っているとは思えないくらいに言葉が通じず、持論を押し付けてくる事が多いからだ。
「まぁ確かに。俺の買ったパンを毎度毎度奪うよりは、た・し・か・に・マシだな」
「だよな?そうだろう!」
琉成が誇らしげに笑い、二、三度頷いた。
『そのデカイ図体の中身は空っぽだな』と、吐き捨ててやりたい気持ちになったが、言った所で言葉通りにしか受け止めないコイツでは意味など通じないだろう。
「成長期で常に空腹の俺の口には入らん事を怒ってるって、マジでわかんねぇの?」
「…… あーそっか。んじゃ俺が食わせてやるよ!だから圭吾も、俺にちょうだい」
「まどろっこしいだろ!アホか」
「それじゃダメだよ!圭吾のモノが欲しいんだもん」
「俺の、が?」
「うん、圭吾のが。全部欲しい、全部喰べたい」
「全部お前にやったら飢え死にするわ!」
眉間にしわを寄せ、琉成の手からパンの入った袋を奪い取る。「あ!」と声をあげた琉成を無視して、俺はその場から脱兎の如く走り出した。
◇
大量に入る教科書のせいで背中に背負っている鞄が重く、思い通りに走れない。どこまで行けばいいかなんて考えないまま、ひたすら廊下を駆けて行く。人が少ない方を選びながら進んで行くと、家庭科室や技術室が並ぶ実習棟の建物へ辿り着いた。ウチの学校は文系の部活動が少ない為、この辺は放課後になると殆ど人の気配が無い。先生もあまり来ないので、こっそり隠れて人の物を食べてしまうには丁度いい場所だった。
階段を上がり、二階の奥まで突き進む。誰も居ない廊下に鞄を置き、その場に腰を下ろすと、俺は奪ったビニール袋の中からメロンパンを一つ取り出した。
しょっぱいちくわパンを食べたので甘いものが食べたい。パニーニとかの調理パンはできたら温めて食べたいから、これを食べたら家に帰ろう。人の物を奪って食す罪悪感は多少あるが、今まで散々琉成に食われてきた俺のパンの量を考えると、そんな事は瑣末事に思えてきた。
「いただきます」
パンの入る透明な薄手の袋を開けて、中に入るメロンパンにかじりつく。走った後だった所為もあってか、パンの甘さがより美味しく感じた。
「外はサクサクで中はふわっふわとか、最高だな」
今度はちゃんと俺もパン屋で買おう。コンビニや購買部で買う安いパンよりも断然美味しくって、さっきまでの苛立ちが少し緩和出来た。
もぐもぐと咀嚼し、俺が戦利品のメロンパンを味わっていると、琉成がのっそり歩いて近づいて来るのが見えた。慌てて追いかけてきた感は無く、『やっぱりここに居たか』って雰囲気のせいで、またちょっとムカついた。
当然のように隣に座り、琉成が俺の方へ紙パックに入った牛乳を差し出してくる。メロンパンの入る袋を膝に置き牛乳を受け取ると、まだ冷たくって今さっき買って来た物だとすぐにわかった。
「サンキュ」
「一口飲んだらソレもくれ」
「…… お前さ、今日は特に酷いな」
紙パックにストローを刺しながら、呆れた声が出てしまう。いつもいつも琉成は俺の食いかけだとかを欲しがるが、ここまでじゃ無いのに。
「そりゃあ、欲求不満だからねー」
膝に置いてあったメロンパンを俺から取り返し、琉成が嬉しそうにかじりつく。まだ半分くらいはあったはずのパンは、たった二口で消えて無くなった。
せめて味わえよ、とツッコミたい気持ちを『欲求不満』の単語が邪魔をする。
聞き流すべきなのか?いや、コイツのことだから性的な意味で言った訳では無いかもしれない。そもそも意味を知っているのかすら怪しい。わかっていない事すらわからない、典型的タイプなのだから。
「他のも食わせて。ソレも早く飲みたいから、先に一口飲んで」
「いや、もうお前が飲めよ」
ストローに口をつける事無く牛乳パックを琉成の前に差し出すが、受け取ってくれない。「飲むから、先に早く飲んで」と言われるばかりでサッパリだ。
毒味か?
俺に毒味でもさせたいのか。誰に狙われてるってんだお前は。
顔立ちは清一並みに整ってはいるが、中流家庭のお前は毒殺される程の存在じゃないだろ。犬みたいな人柄のおかげで誰かから嫌われてるような気配も皆無だっていうのに、コイツの意図が全くわからない。
でもまぁ、喉は乾いているので真意不明のままストローに口をつけて、ずずっと牛乳を飲み込んでいく。一口と言われていたが、ムカつく気持ちで飲んだせいか、半分以上が一気に無くなった。
そんな俺の様子を琉成が満足気に見つめている。口元が少し綻び、笑っているようにも見えた。
「ん」
「やったー!」
少ないと文句を言うことなく、今度は俺の差し出した牛乳パックを素直に琉成が受け取って、中身を飲み込んでいく。
「毒なんか入って無かったぞ?」
「当然じゃん、未開封なんだし」
「…… いや、まぁそうなんだけど」
言いたい意味が伝わらない。
言葉足らず過ぎたな、失敗した。一から十まで説明が必要な奴だった事を失念していたなと思いながらため息をついていると、琉成が俺の脚へとのしかかってきた。
「重い」
「いや、だってこうしないとパン取れないし」
琉成からは離れた位置に置いてあったパンの入る袋を回収し、俺の脚から体を起こす。太腿に触れていた手が離れる瞬間、指先でスッと内腿側を撫でられた気がしたが、気のせいだったかもしれない。
袋の中から丸くて砂糖だらけの揚げドーナツが入る袋を取り出し、琉成が俺の口元へ差し出してきた。
「はい、あーん」
「自分で食えるわ」
「ダメ。俺から食べないんだったらあげない」
真剣な顔で言われて、咄嗟に言葉が出なかった。普段はふにゃっとした駄犬みたいな奴なのに、真顔になると端正な顔がカッコよく見えてしまい腹が立つ。
「…… んあ」
口を大きく開けると、中に揚げドーナツが入ってきた。大きくって全部は入らず、一旦かじりついて一口食べる。
「餡子のドーナツか、美味いな」
「だろ?絶対に好きだと思ったんだ。はい、もう一口」
口元に差し出され、それを受け取ろうとした手はハエでも扱うみたいに叩き落とされた。
「…… あ」
口を開けて琉成の顔を見上げると、さっきは気がつかなかったが随分と奴の呼吸が乱れている。頰がやけに赤くって、俺の口内を見る溶けた眼差しを認識した瞬間、全身の肌が粟立った。
ドーナツを口に押し込まれ、それを噛んで離れようとしたが、琉成の方が動きが早かった。俺の後頭部を琉成が手で押さえられて後ろには逃げられない。かといって前からは俺の咥えるドーナツを食べようとする琉成の顔があり、前後不覚になった。
残っていたドーナツが全部琉成の口の中に消えていく。
美味しかったのに!
全部食べたかったのに、また琉成の取り分の方が多かった!
と思った瞬間、ペロッと生温かいものが砂糖の残る唇の上を掠めていった。
「甘いな!思った通りめっちゃ美味いわ、これ」
ハイテンションで喜ばれ、文句を言う隙を失った。今のは唇に残る砂糖を舐めたかっただけ、なのか?
「次何食べる?甘いのが続いたから、しょっぱいものとかもいいな」
ゴソゴソと袋の中を漁っているのを見ながら、自分の唇をそっと触る。初めてされた行為だったのだが、ノーカンでいいよな?舌先だけだったし。
返事をする事無く固まっていると、琉成が袋から顔を上げてこちらを見てきた。目が合った途端、琉成の顔がパッと明るくなり「もっと美味しそうなものみっけた!」と大きな声で言った。
こっちには何も無いぞ?何の話だ
——そう言いたくって口を開けたのに、言葉が出る前に柔らかな舌がにゅるりと侵入してくる。両耳を両手でガッチリ抑え込まれ、顔を逸らして逃げる事も出来ない。
「んんんんんっー⁈」
悲鳴に近い音を発し、バシバシと琉成の体を叩く。だが行為を止めるには至らず、口の中を蹂躙され続けた。甘みの強い舌が絡まり、逃げようしても追いかけてくる。舌先をチョロチョロッと舐められ、腰がビクッと跳ねた。雑だけど、好き勝手に歯茎やら上顎やらを舐められて体から否応無しに力が抜けていく。針で穴を開けられた風船みたいに、ふにゃっとなった体が寄り掛かかる壁伝いにずるずると倒れそうになった。
満足したのか、琉成が俺の口から舌を抜き取り、破顔した顔をこちらに向けてきた。
「甘い、美味しい。もっと喰べたい、全部欲しい、もっともっと」
学ランの胸倉を掴み、琉成が俺の体を引き寄せる。
何がしたいんだ?何が起きた!
そうは思っても快楽で溶けた頭が上手く動かず、抵抗する所まで体が動かない。
「もっと食べて、もっと喰べさせて」
舌を指で掴まれ、無理に引っ張られる。
「んぐっ」
「赤い、甘い、美味しい…… あぁずっとコレが喰べたかったんだ」
強制的に出した状態になっている舌を、引っ張りながら琉成が舐めてくる。舌先を俺の舌の中心に沿って指で撫で、端を甘噛みする。溢れ出る唾液はスープでも飲むみたいな感覚で吸い尽くされ、琉成の事を心底怖いと思った。
「ひゃ、ひゃめ…… ろっへ」
上手く言えず、引っ張られるせいで舌の根元が痛い。胸元をグッと押してみたりして抵抗したりもしてみたが、力が入らず無駄に終わった。
「…… 我慢出来ないや。ねぇ、喰べちゃっていい?」
そう言った琉成の目が座っている。拒否や否定など今のコイツの耳には一切届かないと、すぐにわかった。
首を横に振って断りたいのに、頭が動かせない。
食べるって、俺の舌を噛みちぎって飲み込むって事か?カ二バリズムなんて絶対にダメだ、親友を食うとかホラー映画だけにして欲しい。
「んー…… でもここじゃ流石にヤバイな、人来るかもしれんし」
むしろ今すぐに来て俺を助けて欲しい。
状況が受け止めきれず、目から涙が溢れ出る。
食い物を奪われはしても、それでも一番一緒に居て楽で楽しい奴だと思っていただけに、琉成から俺は、食料としか思われていかったショックも大きかった。
「うわぁ…… 泣くとかマジヤバイって」
口元に弧を描き、琉成の顔がまたこちらに迫って来た。掴まれたままになっている舌を咬みちぎられるかもしれない恐怖に体が硬直し、動けなくなる。
ペロッ、ペロッ…… 。
予想外にも琉成は俺の頰を伝う涙を舐め取り始めた。掴んでいたままの舌を離してくれ、慌てて口内へと舌を戻す。その舌を指が追い、口内へ琉成の細長い指が入ってきた。
「しょっぱくて、こっちも美味しい」
眦をチュッと吸われ、口の中の指が歯茎をなぞる。唾液の絡む指先が口内をくすぐるみたいに動き、腹の奥がキュッと疼いた。
なんだコレ、変な感じがする。気持ち悪いのに、心地いい。相反する感覚に心が騒つく。
「ひゃめらっへ、ほう、はらへっ」
「うんうん、何言ってるかサッパリだやー」
ニッコリ笑うと、琉成が俺の口から指を抜いてくれた。何だ、止めろってちゃんと伝わってるじゃん。ホッと息をついたのも束の間。琉成は俺の体を横抱きして持ち上げると、荷物もそのままに廊下を来た方向へと歩き始めた。
「何処に、行く気だ?」
「もっと人の来ない所に行こうかなって。じゃないと全部喰べらんないし」
「ぜ…… 全部?」
お姫様抱っこをされている事を非難したい気持ちが瞬時に吹き飛ぶ。
え、こんな簡単に俺死ぬの?
そう考えたせいで顔が真っ青になり、逃げたいのに逃げられない。いつもなら何かトラブルがあっても脱兎の如く走り出せるのに、もう既に腕の中に捕まっているせいもあるんだろうか。
琉成は鼻歌を歌いながら足早に目的地へ進んで行く。この様子だと、もう行きたい場所は決まっているみたいだ。
◇
実習棟の隅にある男子トイレに連れ込まれ、洋式トイレのある個室に入る。蓋が閉まっているのを確認して俺をそこへ下ろし、琉成が扉を背に立って、後ろ手に鍵を閉めた。
ガシャンッ——
いつもなら何とも思わない鍵のかかる音が、耳奥に響く。頰を染めて、ニッと嬉しそうに笑う琉成の場違いな顔に背筋が凍った。
「やっとだ…… 一年の頃からずっと、圭吾ってなんか美味しそうだなって思ってたんだよね」
学ランのホックやボタンを、上から順に外されていく。
バクンバクンと心臓が大騒ぎし、「止めろって、食うとか…… んな事捕まるぞ?」と震える声で言いながら、琉成の胸をグッと押した。
「平気だよ、圭吾優しいし。それに、なんだかんだ言って俺の事嫌じゃないだろ?」
そりゃまぁ否定はしないが、食われてもいいと思う程ではないぞ?と、言いたいのに言えない。んな発言をしたら『煩い』って首を絞められるかもなんて、悪い方に考えてしまう。
上半身の前が全てはだけ、青白い肌が薄暗い個室の中で露わになる。俺の薄っぺらい胸に琉成がそっと触れ、恍惚に染まった顔をした。
「薄い胸に細い腰…… 乳首なんか冷たい空気のせいかツンって膨らんでて、可愛いな」
便器の蓋の上に座る俺の前にしゃがみ、琉成が肌を撫でてくる。吟味するみたいな視線が肌に刺さり、頰が引きつった。
「あぁ…… いい匂いまでする」
胸に頬ずりをされ、匂いを嗅がれる。
「な、何してんだお前」
やっと出た声は震えていて、情けない顔しか出来ない。
「しおらしい圭吾も可愛いな」と、言うが同時に胸の尖りをペロッと舐められ、体が跳ねた。
——んな⁈
何してんだコイツ!
「そんなとこ、何で——んあっ!」
ガブッと右胸の先を噛まれ、敏感な箇所なせいで声を抑える事が出来なかった。
「あ、やっ…… こわ…… やめ…… 」
肩に手を置き、押しながら必死に訴える。
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「や!んあっ何でこ…… んんっ」
しつこく胸を弄られ、琉成の意図が益々わからなくなっていく。腹の奥で変に疼きを感じ、俺は慌てて「は、離せって!」と叫んだ。
「嫌だ。今日はもう喰べるって決めたしね。こんなご馳走を前にして、喰べないとかあり得ないよ」
ガブッと肌に噛み付かれ、歯型がうっすらと残る。血が出るまででは無かったが、俺の心をへし折るには十分な力だった。
抵抗したら本気で食われる…… じっとしていないと。
無抵抗になろうが食われるのかもしれないが、痛くされるよりはマシだと考えてしまう。
「あぁ…… 最高だね、この感触」
かぷり、かぷりと俺の肌を噛みつつ、下の方へ琉成がさがっていく。
「やめ、ダメだって、ソコは——」
「んー?ダメって、もしかしてコレのせい?」
学ランのズボン越しに、一番他人に触れられたくない箇所をつつかれて、青かった俺の顔が一気に真っ赤に染まった。
「触んな!関係無いだろ?んなとこは」
必死の形相で言ったが、琉成相手では暖簾に腕押しで終わった。ベルトを外され、ボタン、ファスナーとを次々に下げられる。ズボンは穿いたまま、パンツだけ下げられて、食われかねない追い詰められた今の状況下には絶対に存在してはいけないモノが琉成の前に露わになった。
見られた恥ずかしさから、俺は赤かったり青かったりとを繰り返す顔を腕で覆って隠した。見えなくなったからってその事実が消える訳じゃ無いのに、今は現実を見たくない。
琉成からの罵りが耳に届くのを逃げたい気持ちいっぱいのまま待っていると、俺にとっては予想外の言葉を奴が発した。
「胸とか噛まれたの、気持ちかったんだね。絶対俺達相性いいよ!」
嬉しそうな声色が聞こえ、琉成がどんな顔でそんな発言をしたのか気になり、俺はそっと目元を隠していた腕を避けた。
その事に気が付いていたのか、俺の勃起したモノを前にした琉成と目が合ってしまった。恥ずかしくってもう死にたい…… 早く食い殺して欲しい。痛いのは嫌なので、出来れば一瞬で。
琉成が何をする気でいるのかが心配で目を逸らす事も出来ないでいると、奴が大きな口を開けたので全身がビクッと恐怖に震えた。
まさかそんな箇所から食い始めるとか、お前は鬼か!
「ひっ!」
俺が短い悲鳴をあげたが同時に、陰茎の切っ先が生温かくって何やらぬるっとしたものに包まれて俺は目を見開いた。
「…… え?…… ぁっ」
予想外の動きに腰が浮く。嬌声が出そうなくらいに、陰茎を咥えた琉成の動きが淫猥だ。
待って、食うんじゃなかったのか?
舌で裏筋を舐められ、切っ先から漏れ出る先走りの蜜を流成が美味しい飴でも食べる時みたいな嬉しそうな顔で舐め取っていく。量に不満でもあるのか、中から吸い出したいみたいに先っちょを吸われ、「くぁっ…… んんっ、ソレら、めぇろって」と、呂律の回ってない声が出た。
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くぷっぬぷっと水音をたてながら、琉成が頭を動かす。根元の方もキュッと握り、上下にしごかれてしまい、痴態にふけってしまった。
ナニコレ、知らないこんなの。
頭ん中が真っ白になり、『キモチイイ』くらいしか考えられなくなっていく。自慰だって体調に不備が出ない限りほとんどしないせいか、脳髄に響く快楽に抗えない。
「あ、や、も…… い…… 」
ここは学校のトイレだっていうのに、声が抑えられない。もう果ててしまいそうだ。
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琉成の動きが少し早くなっただけで、一気に追い立てられてしまった。ぐんっと陰茎が膨らみ、白濁液を琉成の口内へと容赦無く吐き出す。もう随分長いこと自分でもしていなかったせいでかなり溜まっていたのか、射精がなかなか止まらない。
「どうしよ、とまんなっ」
恥ずかしさで一杯で顔から火が出そうだ。
「…… 」
一段落し、ずるりと琉成の口から陰茎が抜け出て、果てたモノが力無く二人の目の前に晒された。終わった…… 色々なものが自分の中で砕け散り、俯きながらこのまま死んで消える事だけを願ってしまう。なのに、琉成の方からはごくんっと精液なんぞを飲み込む音が聞こえ、俺は慌てて奴の顔を見た。
「ちょ!ば!出せ!飲むな!」
受け取るみたいに掌を上にし、琉成の口の前に差し出す。だけど琉成は「……あぁ、美味しいい」と呟きながら、淫猥な瞳をこちらへ向けた。
お前は味覚音痴なのか?んなモン美味いわけねぇだろ…… 。
賢者タイムのおかげか、少し冷静に現状を見る事が出来た。
「飲むとか…… お前…… 」
「何で?圭吾のくれたものだよ?圭吾がくれるモノは、全部美味しいよ。全部ちょうだい、圭吾の全てが欲しいな、こうやって喰べちゃいたいくらいに好きぃ」
「…… ん?こうやってたべる?」
カニバリズムじゃなかったのか!
——って、冷静に考えりゃぁこっちしかありませんよね。
それこそホラー映画じゃないんだし、本気で親友に食われるかもと思った自分の顔を真正面からぶん殴りたい。スッと冷めた目で琉成を見ると、大きな体をぶるっと震わせて、琉成が俺の腰に抱きついてきた。
「あぁ!圭吾のモノを食べるたんびに勃起しちゃいそうになるくらいに興奮して、いっつも教室で興奮してたんだよね。最初自分でもその事に気が付かんくってさ、圭吾がパンを咥えたりストローかじったり、指についたソースとか舐めとるとこ見てて、徐々に『美味しそうだな』『いっそ圭吾を喰べちゃったら性欲が満たされるかも』って、そればっか考えるようになったんだ。今だって、ほら——」
ひどく興奮した表情で、琉成がその場で立ち上がる。制服上着を引っ張り上げ、股間の盛り上がった様を眼前に見せつけられた。
疑いようもなく勃起しているのが布越しでもありありとわかる。通常時を風呂場で見た事があったが、それでも『うわぁ、何コイツの。ムカつくわ、シネばいいのに』と思ったが…… 膨張したソレは、正直自尊心を木っ端微塵に砕かれそうなので見たくない。
「圭吾を喰べちゃいたいし、喰べられたい。圭吾の触ったモノは全部欲しい、全部に触られたい、いっそコレを圭吾に挿れてしまいたいし、挿れられもしたいっ」
コイツの性癖歪んでる!
エロ本の貸し借りとかはした事が無かったので、全く知らんかった。まぁそもそも持ってないんですけどね、俺は相当そういった面に淡白な方なんで。
挿れるとか挿れたいとか、男同士でどうしろと?頭ん中がショート寸前で、目眩がしてきた。
「触って欲しい、一緒にイキたい、もっと欲しい、圭吾、圭吾——」
興奮が抑えきれない琉成が、ズボンの前をはだけさせ、立派過ぎる陰茎を俺の目の前に晒す。赤黒いソレはギンギンに滾っていて、同じ雄のイチモツだと瞬時に受け止められなかった。身長差だけでは片付かぬ差に、男としてのプライドがズタズタに傷付く。
萎えていたモノを再度掴まれ、ゾッとした。
「な、何をしてんだ?」
「触るのは嫌そうだから、コッチで触ってもらおうかと思って」
俺のモノに自らの陰茎を擦り付け、まとめて掴む。大きな手のひらで擦られると、意に反して固さを持ち始めてしまい、俺は口元を戦慄かせた。
「圭吾の体って正直ー。やり慣れてないから、かえって快楽に弱いのかもね」
「何で知って…… 」
「匂いでわかるよー。圭吾ってたまにしかそういった匂いしてないから、残念だなぁもっとしたらいいのにって思ってたんだよね。でもまぁ、これからは毎日だって俺が喰べるから、自分では余計にしなくなりそうだね」
人懐っこい笑顔でとんでもない事を言われた。琉成にとっては確定した未来っぽいが約束なんかしていないぞ。
「キスしたいな、いいよね?」
答えを待つ事なく、唇の隙間を琉成の舌が割って入ってくる。狭い空間の中、便器の蓋に体を押し付けられながらキスとか…… 誰か嘘だと言ってくれ。
互いの陰茎から溢れる蜜のせいか、下腹部からぐちゅぐちゅと卑猥な音がたち始めた。
こんな状況から逃げたい、夢であって欲しい
——快楽の沼地にズルズルの引き込まれながら、俺はそんな事しか考えられなかった。
◇
焦点の定まらぬ虚ろな眼差しのまま、圭吾がぼぉっとしている。ハンカチをお湯で濡らし、それで体が拭いてはあげたが、卑猥で俺を誘うような匂いはなかなか取れていない。いっそ家まで連れ帰って、このご馳走を最後まできっちり頂き尽くしたい所なのだが、残念ながら今日は家に親が居て、連れ込む事を選び取れなかった。
「大丈夫か?」
「…… 全然大丈夫じゃない」
ぼそっと呟いた圭吾の声はひどく掠れている。目尻は泣き腫らした感が濃厚で、人目に晒すには色っぽ過ぎだ。
あぁ…… もっと喰べたかったなぁ。
制服のボタンをとめ、身支度を手伝いながらそんな事ばかり考える。熟れた果実みたいな圭吾を前にして、喰べるのを我慢しろなんか俺には出来なかった。涙も唾液も精液でさえも、全て飲み尽くしたい。圭吾の体を味わう事が予想以上の喜びに溢れていて、一回した程度では微塵も満足出来ていない。
圭吾が好きって事なんだろうな、コレは。
性欲が自覚出来るレベルで人一倍強いせいか、自身から溢れ出る圭吾への愛情全てがそっちの方へ突っ走ってしまう。まだ足りない、もっともっともっと——…… 制服を着せながら、この制服だっていつかは俺にくれないかなと思ってしまった。
間食用のパンだけでは済まず、とうとう体にまで手出ししてしまったが後悔は無い。ただこの先一生手放せそうに無いが、どうやったら圭吾の心を喰べる事が出来るのかが思い付かない。体から俺の方へと堕ちてくれる様なタイプではなさそうなので、今後の関係性がどうなってしまうのか少しだけ心配だ。
「家まで送れよな。鞄持てないから」
「——うん!いいよ、もちろん」
「…… 帰りだけじゃなく、一週間は鞄持ちな。腰痛いし」
無理しやがってと、呟きながら圭吾が便器の蓋の上から重い腰を上げる。こんな場所で喰べようとしてしまったのは流石に失敗だったなと思ったが、『気持ちよかったなぁ』『また沢山したいなぁ』という考えで速攻上書きされた。
「もうすんなよ」
「それは無理だなー、圭吾が美味しいのが悪い」
「俺のせいか!」
胸に裏拳をくらったが、普通に接しようとしてくれる気遣いが嬉しかった。
あぁ、圭吾を好きになって良かったな。
どう思っているのか、どうしていきたいのか、俺の事は好き?それとも嫌いになった?
わからない事、訊いた方がいい事。
色々山積みだけれども、今は美味しいモノを摘み喰い出来た満足感で心は一杯だ。体の方は明日からじわじわ満たさせて頂くとして、今はこの何気ない帰宅時間を楽しもうと、俺はのそのそとゆっくり歩く圭吾の背中を追いかけたのだった。
【終わり】
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感想を書き込んで下さりありがとうございます!(*ノωノ)
キャラクターへの愛情に溢れた内容で、めちゃくちゃテンション上がりながら読ませて頂きました♫
圭吾くん達の方がツボだった様ですね(`・∀・´)o。
かなりのド変態君かな?と不安になりながら書いた作品(どれもこれもそんな話ばかりですけども)だったので、気に入って頂けて本当にとっても嬉しいです。
これは是非ご期待にお応えして、ネタが思い付き次第とはなってしまいますが、ちょっと色々考えて挑んでみようかと思います!なので、のんびりお待ち下さいm(_ _)m。
もしまた何か気に入った作品がありましたら、気軽に感想を頂けると、嬉しくってひっそりと小躍りしてるかもです(*´꒳`*)うふふ。
改めて、拙い私に素敵な感想を贈ってくださり、本当にありがとうございました!
9話
立つ→勃つ
の方だと思うのですが、数箇所。あえてならすみません。
ご指摘ありがとうございますm(_ _)m。
これよりチェックし直し、訂正させて頂きます。
うわぁ~("⌒∇⌒")
私の感想を元にってことですか???
それだったらめっちゃ感激です!
そうですよ!
盗撮ダメ!絶対!!(笑)
まぁこの二人にはアカンやつすらイチャイチャのスパイスですね😅
楽しい番外編ありがとうございました。
また面白いお話期待してます♪
感想ありがとうございます(*'▽'*)
その通りです!ご感想を元に「こりゃちゃんと末路も書かないと」と思い生まれたお話しです٩( 'ω' )و。かなりエロネタ全開になってしまって大変申し訳なくも思いつつ、楽しんで書かせて頂きました(*´∀`)♪
真っ当な恋人を得て、きっと拗らせた部分も少しは軌道修正しつつ、別方向に突っ走る事でしょう、楓君。
この作品はもう少しで完結してしまいますが、他にも色々書いておりますので、また別作品でもお付き合い頂けると幸いに思います(´∀`*)。