古書店の精霊

月咲やまな

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第三章

【第十五話】天神様の花嫁⑨

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 もう少し、あと少しでまたあの、脳の奥にまで響く様な快楽を貰える…… 。
 心が期待に高鳴り、陰部が濡れそぼり、柊華はこっそりと自分から腰を少し上げてその瞬間が早く訪れる様にと促していたのに、背中に面が落ちたと思ったら、全てが一転してしまった。

「柊華さん!こんなところに居たんですね⁈こんな場所で、何…… を、し——」

 焦りのあった声が、段々とトーンダウンしていく。
 何事かと不思議に思いながら柊華が軽く上半身を後ろへ向けると、セフィルは視線を横に逸らしながら、鼻の下を手で押さえ垂れ落ちる血で指先を汚していた。
「…… すみません、自慰の最中だったようですね。こんな斬新な方法を好まれるとは…… 流石に私もビックリです」

「ち、違うし!」

 柊華は全力で否定したが、どの様な言葉を言っても通じるはずが無い。
 布団は体液と精液と破瓜の血とで汚れぐちゃぐちゃだし、長い黒髪も着ている白無垢も、原型をとどめていない程乱れている。腰にまだ軽く巻かさっている帯も殆どがオブジェの様に布団を飾り、その他の紐も全て辺りに散らばっている。汗っぽい肌はピンク色に色付き、うつ伏せのせいで潰れている“お雪”の膨よかな胸はキスマークに近い噛み跡がハッキリと残っていた。女性らしいぷるんとした双丘と、その奥に隠れる陰部は驚く程濡れそぼり、快楽は今か今かとヒクついている。

「何が違うのです?駄目ですよ、柊華さん。この類の一人遊びをする時は、私も呼んで頂かないと!」

「セフィルさんを誘う時点で一人遊びでは無いのでは⁈——というか、ホントに違いますからっ!」
 先程までとは違う意味で、柊華はもう泣きそうだ。だが状況は正確に理解出来ている。今脚に跨っているこの人は、と。
「店に帰ったら貴女がどこにも、完全に世界から存在が消えていたので、私は本当に驚いたのですよ?それなのに…… 柊華さんったら…… 」
 最初は叱るような声だったのに、柊華の名を呼ぶ声には艶があった。

 目の前にある双丘に再び手を当て、セフィルが優しく揉み出す。そのせいでぐちゅぐちゅと蜜が音をたて、柊華の耳を優しく刺激した。
「私物である『記憶の本』に入り込むなんて、イケナイ子ですねぇ」
 記憶の本とは何の事だろうか?と一瞬思ったが、すぐにあの読めない本の事だと柊華は悟った。そしてあの本が、『セフィルの過去の記憶を閉じ込めた本』である事も何となく理解した。

(前世とか…… そんな時の、セフィルさんと私との記憶って感じなのかな?…… きっと。そんな本があと何冊あるのだろうか。まさか、全てが全て、だったりするの?)

 ちょっと不思議に思ったが、柊華は考えるのを止めた。…… そうだとしたら流石に怖いが、そうである可能性が大であると流れ的にわかってしまったからだ。
「…… じ、事故ですぅ」
 悲痛な声をあげ、柊華が顔を布団へと突っ伏す。まさに頭隠してなんとやら状態だが、それでももう、これしか彼女には出来なかった。
「よりにもよって、一番私が貴女に対して酷い扱いをした『“雪”との記憶』に入り込むだなんて…… そんなに苛めて、欲しかったのですね?ふふふ」
 楽しそうに笑い、セフィルが柊華の陰部へと滾ったままになっていた怒張をあてがう。
「いいですよ、ええ。苛めぬいてあげましょう。強引にココをかき混ぜ、吐精して、孕ませてしまいましょうか。そこの天井へと腕を吊るし、これらの紐で胸なども縛るのも悪く無いかと。今の柊華さんは胸が大きいので、きっと映えますよ」
 勝手に納得し、セフィルが楽しそうに囁く。その声は喜悦に満ちていて、普段ならば聞いている柊華まで嬉しくなってしまう色を持っているが、内容が内容なので今日ばかりは共感出来ない。
「違います、事故です!掃除していたらここに来ちゃっただけで、意図的にではなかったし、私は抵抗したのに、ここのセフィルさん全然話を聞いてくれなくって、こんな感じまで追い込まれただけなんですぅ」
 布団に顔を埋めたまま、柊華が必死に状況を口にする。

「えぇ、えぇ、知っていますよ。からかっただけです。でも…… 苛めてはあげますね。過去の私と浮気をした罪は…… 償ってもらわないと、ね?」

 セフィルはそう言いながら柊華の体に体を重ね、言い終わると同時に己の怒張を陰部へと一気に押し込んだ。そこからはもう馴染むのを待つ事なく、いきなり激しく中を穿ち始め、肌のぶつかりあう音が柊華の耳に響いた。

「う、うわきって、ちが!あぁ!セフィッ…… やぁぁぁっ!」

 うつ伏せで、かつ脚が閉じている状態な為、いつも以上に狭隘な膣内を言葉通りにいたぶられ、柊華がよがり声をあげて布団にしがみつく。
(私は被害者のはずなのに、何で怒られないと駄目なのぉ!加害者は過去のセフィルさんなのにぃ!)
 納得は出来ないが、嫉妬心の全てを注ぎ込む様に激しく抱かれ、全身が痺れてしまう。享楽に染まり、酔いしれ、もっと欲しいかも…… もっと苛めて?だなんて、体は訴え始めた。

「この時の私に噛まれるなど、可哀想に。媚薬を仕込んだ八重歯をしていたので、しばらくこの疼きは続いてしまいますからね。沢山…… たくさーん、その疼きは癒してあげましょう。…… くっくっく、『我になど、その役は渡さぬわ!』」

 演技じみた声が聞こえ、もう柊華は今自分がも分からなくなってきた。ただ愛らしい声をあげ、体の全てをセフィルへと任せてしまう。
 体位を変えられ、対面座位になりながら激しいキスをされようが、胸を噛まれながら強く先の尖りをつねられようが、何もかもが柊華を蕩かせ、歓喜に打ち震えさせてしまう。

「愛していますよ、柊華さん。もっと、もっといっぱい愛し合いましょうね?」

 何度もそう声をかけられながら、柊華は淫靡で甘い嫉妬心を、何時間どころか、何日間もずっと…… この場で与えられ続けたのだった。

       ◇

 ——柊華が目を覚ました。

 今ではすっかり見慣れたセフィルの自室の天井が目に入り、『…… 夢だったのかなぁ』と、ぼんやりとした頭で考える。
(夢だとしたらすごい淫乱の極みだったけど、田舎道とか、神社とか…… あんまし現実感無いし、夢だったんだろうなぁ)
 目覚めたばかりの頭ではそんな結論にたどり着き、ゆっくり柊華が体を起こす。
「あ、おはようございます。よく眠れましたか?」
 パーテーション越しにセフィルの声が聞こえ、柊華がのんびりとした口調で返事をした。
「おはようございます。んー…… あんまり眠れなかったですね。なんか、変な夢を見ちゃって」
「変な夢、ですか?はて、どんな夢です?」
 訊かれても、柊華はすぐに返事が出来なかった。『どんな夢?』と言われて即浮かんだのが、白無垢姿で散々烏天狗の面をしたセフィルに強姦じみた行為をされたシーンだったからだ。
「…… わ、忘れました」
 顔を赤く染め、柊華が顔を横へと向ける。パーテーションでセフィルに顔を見られてなくて良かったと安堵の息を吐いたのだが、彼はひょこっと仕切りの奥から顔を出し、真っ直ぐ柊華の方へとやって来た。

「嘘ついちゃって、本当に『お前は愛い奴よのう』」

 烏天狗の面をしたセフィルが、起き抜けでまだベットの上に居る柊華の前に姿を現す。全てが全て現実であったと瞬時に悟った柊華は、目の前が真っ白になったのだった。
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