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突き進む先にある関係
烏丸の外堀・前編(烏丸・談)
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綾瀬と猫田旅館で激しい一夜を過ごしたあの日から一週間が経過した。
抗い難い流れとその場の勢いで…… だったとはいえ、享楽に満ちた夜から綾瀬の態度は一転。毎日の様に綾瀬は俺を部屋へと呼び出し、玄関の扉を開けるやいなや色めかしい姿でしなだれかかって口付けを求め、濡れそぼった蜜壺への指淫を強請ったり、廊下に嬌声が聞こえするのも構わずにバックから愛らしい隘路を熱塊で満たす様にと懇願したりしてくる様に。日光の差し込む寝室のベッドで先走りの雫が淋漓している鈴口を口淫であやしてくれたり、俺の下半身に自分から跨って陶然とした表情で俺のモノをぐっぷりと下のお口で咥え込んでくれたりなんかも…… って——
んな夢見たいな事、実際にはあるもんかぁぁぁっ!
所詮そんな展開は、十八禁の創造物の中だけのものだ。俺の前にある原稿用紙の中でしか存在しない。散々達しても快楽堕ちなんかする奴は実際にはそう居やしないし、体が深くまで繋がったからって好きになってくれたりも無い!そんな事が起こり得るのなら『セフレ』なんて言葉は世の中から消えている。
現実は泣きたくなるくらい普通だった。
気絶するみたいに眠りに入り、朝起きると主室には既に『どうせ朝は起きられないだろうから』と言いたげに、お弁当箱に詰めてくれた朝食がのど飴と一緒に置かれていた。新しいバスタオルやハンドタオルと共に。
祖母と曽祖母の気遣いが精神を容赦無く攻撃する…… 。
『どうせ朝までヤッていたんでしょ?』と家族に思われているのは恥ずかしくってしょうがない。事実そうだったのだから何も言えないが、性的な一面には触れずにいて欲しいものだ。
それにしても…… 婚約者でもなければ付き合ってもいないというのに、何故綾瀬は何時間も抱かせてくれたんだろうか?
朝、起きてすぐの段階から不思議でならなかったが、しゃがれ声で『おはよう…… 』と恥ずかしそうに笑う綾瀬と目が合った瞬間、何も訊けなくなった。怖気付き、昨夜は彼女の隅々にまで触れられたんだという事実だけを喜び、この関係に水を差す様な質問は控えておこうと口を噤む。
綾瀬の方から理由を言ってくれるまでは、このままでいい…… 。
あの行為が二人の関係を一歩前に進ませたのか、それとも激しく後退させたのか。それがわかるのは何も今じゃなくてもいいだろう。
そう考え、俺は何事も無かったかの様に二日目を過ごした。綾瀬が風呂に入っている間にベッドメイクを済ませ、自分も体を洗ってから部屋で弁当を食べた。その後は荷物を旅館に預けたまま温泉街に足を運んでぶらっと一周しつつ今後の資料になりそうな風景の写真を撮ったり、焼き鳥やお茶などといった軽い物を摘みながら過ごした。その間、俺と同じく綾瀬もずっと曽祖母からもらった赤い糸の指輪は嵌めたままだった事にほっとしつつ、デートと言えなくもない時間は至福の時だったが、『…… 二度目はあるのだろうか?』という不安が常に付き纏う。
それでもどうにか無事に散策を終え、荷物を回収して列車に乗り込み、無事に帰宅。その後は綾瀬を自宅の玄関前まで送り、俺も上階にある部屋に戻って行った。
その後は…… 一週間、見事に音信不通だ。
こちらから何かを言う勇気もなく、じっと綾瀬からの連絡を待っている。向こうも同じ様に待っているのだとしたら平行線のままなのでこちらからアクションを起こさねばと思うが、そもそも俺とはもう距離を置きたいのでは?と考えると、怖くって電話どころかメッセージもメールも送れないままだ。
アレってどう考えたって、強姦みたいなモノ…… だったしな。
綾瀬からの抵抗らしい抵抗が無かったとはいえ、ただ怖くて言えなかっただけだという可能性もあり得る。幼馴染が雄に豹変したら驚きで声も出なかったに違いない。擦り合う程度で済ませるつもりが結局早々に本番に突入してしまったし…… 。すっごく良かったから後悔はしていないが、罪悪感ではいっぱいなままだ。でも謝る気は無い。謝るくらいなら最初からヤッてないしな。
仕事用の椅子に座り、あの日の事を振り返りつつ次々号分のネームを描いていると、不意にスマホから着信音が鳴り響いた。だが綾瀬からでは無い。残念ながらこれは実家からの通知音だ。普段は何かあってもメッセージアプリに連絡してくるからあまり電話をしてこないのだが、何か緊急の用件でもあるんだろうか?
そう不思議に思いながら電話に出ると、相手は俺の烏丸透子からだった。
「もしもし?」
『あぁ、透?今ちょっといいかしら』
手に持っているペンをクルッと回し、「大丈夫だけど、何かあった?」と問い掛ける。普段通りの落ち着いた母さんの声の様子からいってどうやら緊急の用件ではなさそうだ。
『貴方、式はいつ頃にするわけ?恵美子母さんから『休暇申請の関係があるから早めに決まるとありがたい』って言われたんだけど』
「…… ん?」
“式”とは?何の式の話をしているんだ。母の言っている言葉の意味がわからず、ただただ困惑するばかりだ。
抗い難い流れとその場の勢いで…… だったとはいえ、享楽に満ちた夜から綾瀬の態度は一転。毎日の様に綾瀬は俺を部屋へと呼び出し、玄関の扉を開けるやいなや色めかしい姿でしなだれかかって口付けを求め、濡れそぼった蜜壺への指淫を強請ったり、廊下に嬌声が聞こえするのも構わずにバックから愛らしい隘路を熱塊で満たす様にと懇願したりしてくる様に。日光の差し込む寝室のベッドで先走りの雫が淋漓している鈴口を口淫であやしてくれたり、俺の下半身に自分から跨って陶然とした表情で俺のモノをぐっぷりと下のお口で咥え込んでくれたりなんかも…… って——
んな夢見たいな事、実際にはあるもんかぁぁぁっ!
所詮そんな展開は、十八禁の創造物の中だけのものだ。俺の前にある原稿用紙の中でしか存在しない。散々達しても快楽堕ちなんかする奴は実際にはそう居やしないし、体が深くまで繋がったからって好きになってくれたりも無い!そんな事が起こり得るのなら『セフレ』なんて言葉は世の中から消えている。
現実は泣きたくなるくらい普通だった。
気絶するみたいに眠りに入り、朝起きると主室には既に『どうせ朝は起きられないだろうから』と言いたげに、お弁当箱に詰めてくれた朝食がのど飴と一緒に置かれていた。新しいバスタオルやハンドタオルと共に。
祖母と曽祖母の気遣いが精神を容赦無く攻撃する…… 。
『どうせ朝までヤッていたんでしょ?』と家族に思われているのは恥ずかしくってしょうがない。事実そうだったのだから何も言えないが、性的な一面には触れずにいて欲しいものだ。
それにしても…… 婚約者でもなければ付き合ってもいないというのに、何故綾瀬は何時間も抱かせてくれたんだろうか?
朝、起きてすぐの段階から不思議でならなかったが、しゃがれ声で『おはよう…… 』と恥ずかしそうに笑う綾瀬と目が合った瞬間、何も訊けなくなった。怖気付き、昨夜は彼女の隅々にまで触れられたんだという事実だけを喜び、この関係に水を差す様な質問は控えておこうと口を噤む。
綾瀬の方から理由を言ってくれるまでは、このままでいい…… 。
あの行為が二人の関係を一歩前に進ませたのか、それとも激しく後退させたのか。それがわかるのは何も今じゃなくてもいいだろう。
そう考え、俺は何事も無かったかの様に二日目を過ごした。綾瀬が風呂に入っている間にベッドメイクを済ませ、自分も体を洗ってから部屋で弁当を食べた。その後は荷物を旅館に預けたまま温泉街に足を運んでぶらっと一周しつつ今後の資料になりそうな風景の写真を撮ったり、焼き鳥やお茶などといった軽い物を摘みながら過ごした。その間、俺と同じく綾瀬もずっと曽祖母からもらった赤い糸の指輪は嵌めたままだった事にほっとしつつ、デートと言えなくもない時間は至福の時だったが、『…… 二度目はあるのだろうか?』という不安が常に付き纏う。
それでもどうにか無事に散策を終え、荷物を回収して列車に乗り込み、無事に帰宅。その後は綾瀬を自宅の玄関前まで送り、俺も上階にある部屋に戻って行った。
その後は…… 一週間、見事に音信不通だ。
こちらから何かを言う勇気もなく、じっと綾瀬からの連絡を待っている。向こうも同じ様に待っているのだとしたら平行線のままなのでこちらからアクションを起こさねばと思うが、そもそも俺とはもう距離を置きたいのでは?と考えると、怖くって電話どころかメッセージもメールも送れないままだ。
アレってどう考えたって、強姦みたいなモノ…… だったしな。
綾瀬からの抵抗らしい抵抗が無かったとはいえ、ただ怖くて言えなかっただけだという可能性もあり得る。幼馴染が雄に豹変したら驚きで声も出なかったに違いない。擦り合う程度で済ませるつもりが結局早々に本番に突入してしまったし…… 。すっごく良かったから後悔はしていないが、罪悪感ではいっぱいなままだ。でも謝る気は無い。謝るくらいなら最初からヤッてないしな。
仕事用の椅子に座り、あの日の事を振り返りつつ次々号分のネームを描いていると、不意にスマホから着信音が鳴り響いた。だが綾瀬からでは無い。残念ながらこれは実家からの通知音だ。普段は何かあってもメッセージアプリに連絡してくるからあまり電話をしてこないのだが、何か緊急の用件でもあるんだろうか?
そう不思議に思いながら電話に出ると、相手は俺の烏丸透子からだった。
「もしもし?」
『あぁ、透?今ちょっといいかしら』
手に持っているペンをクルッと回し、「大丈夫だけど、何かあった?」と問い掛ける。普段通りの落ち着いた母さんの声の様子からいってどうやら緊急の用件ではなさそうだ。
『貴方、式はいつ頃にするわけ?恵美子母さんから『休暇申請の関係があるから早めに決まるとありがたい』って言われたんだけど』
「…… ん?」
“式”とは?何の式の話をしているんだ。母の言っている言葉の意味がわからず、ただただ困惑するばかりだ。
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