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むっちゃんと不思議なクレヨン【3】
しおりを挟む風に吹かれて着いた先は、砂だらけの場所でした。
さっきまでの寒さが嘘のように、暑くて暑くて堪りません。
「あっついよぉ~」
「にゃあぁ…」
むっちゃんとりりは、喉がカラカラになり座り込んでしまいました。
そこへ、おじいさんがやって来ました。
「大丈夫かい?」
おじいさんはむっちゃんを立ち上がらせてくれました。
「こんな砂漠に子供とはなぁ…」
「さばくぅ?」
膝に付いた砂を払うむっちゃんに、おじいさんが溜め息を吐きながら言います。
「水を飲ませてやりたいが、ここには水がなくてなぁ…」
おじいさんの目は、それはそれは悲しそうでした。
「街の水もとうに尽きてしまった……もう、わし等はお仕舞いだ…」
むっちゃんには、おじいさんの言葉の意味が分かりませんでしたが、おじいさんが水がなくて困っているという事だけは分かりました。
「おじいちゃんも、おみず、のみたい?」
むっちゃんが尋ねると、おじいさんは、静かに頷きました。
むっちゃんは、それなら………と、ポッケから青色のクレヨンを取り出します。
「僕の出番だね!」
「うん、よろしくね、あおくん」
青色のクレヨンを握り締めたむっちゃんは、足元の砂に向かって、ぐるぐるぐる~…
「………なんという事だ!」
おじいさんが驚き、尻餅をつきました。
それもその筈、むっちゃんが青色のクレヨンで描いたのは、大きな大きなお池。
砂漠に突然出来た水溜まりに、おじいさんはビックリして腰を抜かしたのです。
「凄い、凄いぞ!水じゃ!水じゃ~!」
おじいさんは、勢い良く立ち上がったかと思うと、子供のようにはしゃぎながら巨大な水溜まりに向かって行きました。
「まって~」
「にゃ~ん」
むっちゃんとりりもおじいさんの後に続きます。
大喜びで水の中へと飛び込んだおじいさん。
「あぁ~…ありがたや、ありがたや…」
沢山の水を浴びて、とても気持ちが良さそうです。
むっちゃんとりりがおじいさんの真似をして飛び込もうとすると、これまた風がビュウッと吹きました。
「きゃあ~」
「にゃあ~」
風は、むっちゃんとりりを軽々持ち上げ、どこかへ飛ばします。
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