オフィスラブは周囲の迷惑から成り立っている。

激おこ漣くんside：輝子

結婚式の三次会が終わり、騒ぎ過ぎて疲弊し切った面々とカラオケ店前で解散した。

と、漣くんが自分の後輩である更科くんを呼び止めた。


「斗真……ちょっといい？」


普段とは様子の違う漣くんに、更科くんの表情が強張る。

この後の展開を予想して体が勝手に震えた。


「……お前さ、凪ちゃんに何飲ませたの？」


この質問を浴びた途端に更科くんの目が泳ぐ。


「な、何って……普通にオレンジジュースですよ」


吃っている辺り、怪しい。


「……本当に？彼女、異様に酔ってたから、おかしいなって思ったんだけど。強い酒飲ませたとか……覚えない？」

「何言ってんすか！マジでオレンジジュースですよ！」


この必死さが俄然怪しい。


「……だよな、お前がそんな事する訳ないもんな」

「そうっすよ、間違ってもスクリュードライバーなんか飲ませてな―――……あ…」


うっかり口を滑らせ、慌てて口を押さえた更科くん。

次の瞬間―――――…


「………お前、どういうつもりだ？」


更科くんを壁に叩き付けて凄む漣くんに、恐怖で膝が笑う。


「ど、どうって……」

「俺の女の友達に何してくれてんだよっ！！」

「っ、」


漣くんに前髪を掴み上げられた更科くんの顔が苦痛に歪んだ。

流石にそれはやり過ぎというもの。

だけど止めようにも、漣くんのあまりの迫力にそれも出来なくて…


「ふざけてんじゃねーぞ！自分が何をやってるか分かってんのかよ！」

「す、すみませんっ！！どうしても彼女が欲しくて……」

「はぁ？！意味分かんねー！酔わせて何するつもりだったんだよ？！」

「や、あの………その…」

「お前がやろうとした事と俺が想像してる事が同じなら、それは犯罪だろーが！！」


普段の穏やかさが嘘のように「馬鹿かテメーは！」と吐き捨てた漣くんに、私は声も出せなかった。


「反省してます！」

「あったりめーだろーがっ！！死ぬ程反省しろや！」


立派な巻き舌を披露する漣くんを見て、実はヤバい人？との疑問が生じたものの、怖くて本人に確認出来なかった。

これが彼の本性だったなら、式を挙げた直後に知りたくなかった…