売名恋愛

江上蒼羽

文字の大きさ
上 下
107 / 137

相方の想い①

しおりを挟む


「………まさか……本当に来ると思わなかった…」


玄関のドアを開けた人物が、譫言のように言った。

その顔は、驚きに満ちていて、さながら幽霊でも見ているかのよう。


「な、何で………貴方がここに居るんですか?」


相手が驚いているのなら、当然私の方もビックリ仰天で。

何故、彼が間宮の部屋から現れたのか、不思議でならない。

しかも、我が物顔で。

しかもしかも、眼鏡にジャージという、寛ぎスタイルで。

突如、間宮の部屋に出現した忍足さん。

完全に乾き切っていない髪が無造作に整えられている様から、彼がお風呂上がりらしいという事が見て取れた。

仄かにシャンプーの香りもする。

不覚にもドキッとさせられた。

同時に、間宮の部屋に入り浸る程の深い仲になっているんだな……と、胸がざわついた。

もしかしたら、既に半同棲生活を満喫している……とか?

だとしたら、随分と進展が早い事で。


「間宮どこですか?私は間宮に会いに来たんです」


忍足さんの登場に意表を突かれたけれど、私が用があるのは彼じゃない。

間宮だ。

プライベート仕様の忍足さんを押し退け、玄関に入る。


「間宮、来たよ!間宮ー!」


部屋の奥に向かって叫ぶも、中からの返事はない。


「間宮ってばー!」


呼んでも姿を見せない間宮。

それに焦れて「入るからねー!」と、靴を脱いで上がり込む。

相方の部屋とあれば遠慮は要らない。

ズカズカと進み、電気が煌々と灯る部屋に足を踏み入れた。

だけど……


「………間宮?」


肝心の間宮の姿はない。


「間宮?ねぇ、間宮ー?」


辺りを見回してみるけれど、間宮はいない。

そこで、違和感を覚えた。


「この部屋……」


間宮の部屋にしては、簡素で小綺麗だ。

私の知る間宮の部屋は、彼女の趣味の物でかなりゴチャゴチャしていた。

アニメのポスターやBL関連の本やDVD、ぬいぐるみやフィギュア等のグッズとか、色々。

なのに、この部屋にはそれ等が何一つない。

二次元グッズの代わりにあるのは、本棚にぎっしり詰まった沢山の本。

そこから溢れた分は、片隅に山積まれている。


何かがおかしい…………そう感じた時だった。

爽やかなシャンプーの香りが鼻腔を擽り、すぐ後ろには彼の気配。


「あの、忍足さーー…」


異変を感じて振り返ろうとしたけれど、出来なかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お笑い芸人

紫 李鳥
現代文学
夢を諦めなかった、ある女の話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

探偵内海は宝船を仕舞いこむ

八木山
ミステリー
▼登場人物 内海: 元警官の探偵。立ち位置は右。 「なんぼあってもいい」ものをポケットに入れて依頼を引き受ける。 駒場: 敏腕マッチョ刑事。立ち位置は左。 本来なら事件の真相にたどり着いているはずだが、情報を整理できないせいで迷宮入りになりかける。 ヨシノ: IQは200を超え、この世の全ての答えを知る男。 ※品田遊先生の方が百倍面白いものを書いてます

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

処理中です...