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相方の想い①
しおりを挟む「………まさか……本当に来ると思わなかった…」
玄関のドアを開けた人物が、譫言のように言った。
その顔は、驚きに満ちていて、さながら幽霊でも見ているかのよう。
「な、何で………貴方がここに居るんですか?」
相手が驚いているのなら、当然私の方もビックリ仰天で。
何故、彼が間宮の部屋から現れたのか、不思議でならない。
しかも、我が物顔で。
しかもしかも、眼鏡にジャージという、寛ぎスタイルで。
突如、間宮の部屋に出現した忍足さん。
完全に乾き切っていない髪が無造作に整えられている様から、彼がお風呂上がりらしいという事が見て取れた。
仄かにシャンプーの香りもする。
不覚にもドキッとさせられた。
同時に、間宮の部屋に入り浸る程の深い仲になっているんだな……と、胸がざわついた。
もしかしたら、既に半同棲生活を満喫している……とか?
だとしたら、随分と進展が早い事で。
「間宮どこですか?私は間宮に会いに来たんです」
忍足さんの登場に意表を突かれたけれど、私が用があるのは彼じゃない。
間宮だ。
プライベート仕様の忍足さんを押し退け、玄関に入る。
「間宮、来たよ!間宮ー!」
部屋の奥に向かって叫ぶも、中からの返事はない。
「間宮ってばー!」
呼んでも姿を見せない間宮。
それに焦れて「入るからねー!」と、靴を脱いで上がり込む。
相方の部屋とあれば遠慮は要らない。
ズカズカと進み、電気が煌々と灯る部屋に足を踏み入れた。
だけど……
「………間宮?」
肝心の間宮の姿はない。
「間宮?ねぇ、間宮ー?」
辺りを見回してみるけれど、間宮はいない。
そこで、違和感を覚えた。
「この部屋……」
間宮の部屋にしては、簡素で小綺麗だ。
私の知る間宮の部屋は、彼女の趣味の物でかなりゴチャゴチャしていた。
アニメのポスターやBL関連の本やDVD、ぬいぐるみやフィギュア等のグッズとか、色々。
なのに、この部屋にはそれ等が何一つない。
二次元グッズの代わりにあるのは、本棚にぎっしり詰まった沢山の本。
そこから溢れた分は、片隅に山積まれている。
何かがおかしい…………そう感じた時だった。
爽やかなシャンプーの香りが鼻腔を擽り、すぐ後ろには彼の気配。
「あの、忍足さーー…」
異変を感じて振り返ろうとしたけれど、出来なかった。
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