70 / 137
衝撃的オチ②
しおりを挟むフトシが言うには、ヤラセ交際自体がヤラセだったという。
落ち目の芸人にイケメン俳優が売名目的で交際を申し込み、偽装の交際を始める。
次第に、気のある素振りで揺さぶりを掛け、私がその気になった時にズドン……
何とも周到で鮮やかな手口だ。
忍足さんと食事した個室には隠しカメラが仕掛けられ、デートした先では、ポイント毎にカメラがセットされていたらしい。
それを別の場所でフトシ達が面白可笑しくモニタリングしていたのだとか。
カメラスタッフがこっそり後をつけて、私と忍足さんの様子をカメラに収めたりもしていたそうだ。
私との食事中やデート中、忍足さんは小型のイヤホンを着け、フトシから飛ばされる指示に従って演技していた……という、衝撃的なネタバラシ。
「あ、森川とLINEしてたのは、忍足くんじゃなくて、実は俺!」
ショックで声も出せない私に、ダメ押しとばかりに残酷な事を言うフトシ。
「………先輩芸人じゃなかったら、ぶん殴りたいです」
怒りとショックで体を震わせる私を見て、皆が爆笑。
「てゆーか、間宮!あんた知ってたの?!」
皆と一緒に笑う間宮に詰め寄ると、彼女は首を左右に振る。
「いや、さっき初めて知ったよ。まさか、こんなオチが用意されているとは思ってもみなくて、ビックリしちゃって…」
「嘘!実は知ってたんじゃないの?!」
「知らなかったって、本当に」
「しらばっくれんの?!」
間宮に噛み付く私をカズが宥める。
「まぁまぁ、落ち着け。全てはウチの相方の策略や。悪いのはフトシやで」
当のフトシは、ヘラヘラ笑いながら言う。
「ま、森川だけでなく、世間をも騙せたからね。俺って超策士だよね」
自画自賛するフトシにガヤ担当の芸人も乗っかる。
「フトシさんは鬼才っスよ」
この現場で、私は完全アウェイ。
あまりに衝撃の強いオチ。
目の前が暗過ぎて、その場に立っている感覚さえ掴めずにいる。
私の心は、壊れる寸前の極限の状態を何とか保っている。
というか、これは完全に人間不信になるレベルだと思う。
「いや~、忍足くん、名演技だったね~!」
「すっごく、自然な演技だった~」
フトシを始め、皆が忍足さんの演技を称賛する中、私一人だけその場に取り残されている感覚で。
「ありがとうございます。とても良い経験になりました」
謙虚に振る舞う仕掛人、忍足 慧史。
彼は、私が落とし穴から救助されてからずっと、私と目を合わそうとしない。
恐らく、ばつが悪いのだろうけれど……
何か一言あってもバチは当たらないんじゃないかって思う。
「全てはこのオチの為に今日までやって来たから。森川の良い落ちっぷりが撮れたし、高視聴率間違いなしだなー」
フトシが言うと、一同が大きく頷いた。
沢山弄られ、ネタにされ
大きな笑いを得られた上、人気バラエティー番組のスペシャルで主役になった。
これは、芸人としてはかなり………いや、最高においしい状況だと思う。
他の売れない芸人からしたら、羨ましくて仕方がないだろう、この状況。
仮に、私がこの企画をテレビで視聴する側だったら、ドッキリを仕掛けられた芸人に羨望の眼差しを向けていただろう。
だけど、どんなに芸人としておいしくても……
一人の女としては、全くおいしさを感じない。
おいしいどころか、思わず顔を歪めてしまいそうな程苦くて渋くて、胃が捩れそうな程辛くて……
涙が出そうな程不味い。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ヒロインになりたい!!
江上蒼羽
恋愛
少女漫画やドラマのヒロインに憧れる、夢見る25歳。
ヒロインみたいな恋をして、素敵な人と結婚したい。
一度きりの人生だからこそ、ドラマチックな人生を謳歌したい。
普通じゃ嫌。
これって、ダメな事?
※作中で人名に対して失礼な物言いをする描写がありますが、あくまでも主人公のヒロイン志向キャラ由来のものです。
どうか、お気を悪くされないようお願い申し上げます。
H29.7/11~作成
H29.11/7本編完結
H29.12/17番外編完結
H30.10/29 全て終了(^^ゞ
H31.4/28~アルファポリスにて公開開始
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
拗れた恋の行方
音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの?
理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。
大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。
彼女は次第に恨むようになっていく。
隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。
しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
まだ、言えない
怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL
XXXXXXXXX
あらすじ
高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。
“TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。
吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。
「まだ、言えない」気持ちが交差する。
“全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか”
注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m
注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる