売名恋愛

江上蒼羽

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衝撃的オチ②

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フトシが言うには、ヤラセ交際自体がヤラセだったという。

落ち目の芸人にイケメン俳優が売名目的で交際を申し込み、偽装の交際を始める。

次第に、気のある素振りで揺さぶりを掛け、私がその気になった時にズドン……

何とも周到で鮮やかな手口だ。

忍足さんと食事した個室には隠しカメラが仕掛けられ、デートした先では、ポイント毎にカメラがセットされていたらしい。

それを別の場所でフトシ達が面白可笑しくモニタリングしていたのだとか。

カメラスタッフがこっそり後をつけて、私と忍足さんの様子をカメラに収めたりもしていたそうだ。

私との食事中やデート中、忍足さんは小型のイヤホンを着け、フトシから飛ばされる指示に従って演技していた……という、衝撃的なネタバラシ。


「あ、森川とLINEしてたのは、忍足くんじゃなくて、実は俺!」


ショックで声も出せない私に、ダメ押しとばかりに残酷な事を言うフトシ。


「………先輩芸人じゃなかったら、ぶん殴りたいです」


怒りとショックで体を震わせる私を見て、皆が爆笑。


「てゆーか、間宮!あんた知ってたの?!」


皆と一緒に笑う間宮に詰め寄ると、彼女は首を左右に振る。


「いや、さっき初めて知ったよ。まさか、こんなオチが用意されているとは思ってもみなくて、ビックリしちゃって…」

「嘘!実は知ってたんじゃないの?!」

「知らなかったって、本当に」

「しらばっくれんの?!」


間宮に噛み付く私をカズが宥める。


「まぁまぁ、落ち着け。全てはウチの相方の策略や。悪いのはフトシやで」


当のフトシは、ヘラヘラ笑いながら言う。


「ま、森川だけでなく、世間をも騙せたからね。俺って超策士だよね」


自画自賛するフトシにガヤ担当の芸人も乗っかる。


「フトシさんは鬼才っスよ」


この現場で、私は完全アウェイ。




あまりに衝撃の強いオチ。

目の前が暗過ぎて、その場に立っている感覚さえ掴めずにいる。

私の心は、壊れる寸前の極限の状態を何とか保っている。

というか、これは完全に人間不信になるレベルだと思う。


「いや~、忍足くん、名演技だったね~!」

「すっごく、自然な演技だった~」


フトシを始め、皆が忍足さんの演技を称賛する中、私一人だけその場に取り残されている感覚で。


「ありがとうございます。とても良い経験になりました」


謙虚に振る舞う仕掛人、忍足 慧史。

彼は、私が落とし穴から救助されてからずっと、私と目を合わそうとしない。

恐らく、ばつが悪いのだろうけれど……

何か一言あってもバチは当たらないんじゃないかって思う。


「全てはこのオチの為に今日までやって来たから。森川の良い落ちっぷりが撮れたし、高視聴率間違いなしだなー」


フトシが言うと、一同が大きく頷いた。

沢山弄られ、ネタにされ

大きな笑いを得られた上、人気バラエティー番組のスペシャルで主役になった。

これは、芸人としてはかなり………いや、最高においしい状況だと思う。

他の売れない芸人からしたら、羨ましくて仕方がないだろう、この状況。

仮に、私がこの企画をテレビで視聴する側だったら、ドッキリを仕掛けられた芸人に羨望の眼差しを向けていただろう。

だけど、どんなに芸人としておいしくても……

一人の女としては、全くおいしさを感じない。

おいしいどころか、思わず顔を歪めてしまいそうな程苦くて渋くて、胃が捩れそうな程辛くて……



涙が出そうな程不味い。


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