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行動を起こせ!③
しおりを挟む「前髪はどうされますか?見本の通りだと大分オデコが出ちゃいますけど」
「えっ?」
私がオーダーしたのは、涼しげだけど女の子らしさのある、ふんわり可愛いボブ。
前髪は長めで斜めに流してあって………
おっ………おやおや?
誰だ?鏡の中に居る、このワカメちゃんチックなちんちくりんは?
「なっ………えっ?えぇ?」
ふんわりエアリーなモテヘアな筈が、昭和な香り漂うおかっぱヘアへと変貌を遂げていた。
勿論、こんなヘアスタイルをオーダーしたつもりはない。
「すみません、雑誌見せて下さい」
見本として差し出した雑誌を受け取り、オーダーした筈のヘアスタイルを確認する。
「………あ…」
おいおいおい……何てこったい。
ページは合っていたものの、貼っておいた付箋の位置が大いにずれている。
可愛いボブをオーダーした筈が、あろう事か、似合う人を限定するシルエットのベリーショートをオーダーしてしまっていたらしい。
独特のヘアスタイルが見事に似合っている雑誌の中のモデルとは違い、明らかに似合っていない私。
顔とヘアスタイルがミスマッチし過ぎて、ヅラを乗せているみたいだ。
「ど、どうしよう……」
残念ながら、切った髪は元には戻らない。
これは、私のミス?いやいや、スタッフのこの女性が、もっとちゃんと確認を取ってくれていればこんな悲劇は起こらなかった筈だ。
これ、怒って良い所なんだよね?
困惑する私にスタッフの女性が「どうされます?」と結論を急かしてくる。
返答に困り果てて……&現実を受け止め切れずに雑誌と鏡を交互に眺めていると、店の電話が鳴り出した。
「申し訳ございません、少々お待ち下さい」
ワカメちゃんヘアの私を置いて、スタッフがレジの方へと向かう。
「…………」
あぁぁ……どうすんの?これ……と絶望感に打ちひしがれていると、カズさんが傍を通り掛かる。
タイミング悪し。
「輝子ちゃん、思い切ったね」
「あ、ははは……」
これ、笑うしかない。
「でも、結構良い感じ。似合ってるよ」
「えっ?本当ですか?」
見え見えのお世辞ながらも、カズさんが言うなら本当だと思い込める。
「うん、可愛い」
最上級の笑顔で言われたら、自分が最高に可愛い女の子だと錯覚させられる。
ときめかずにはいられない。
心の中で喜びの絶叫をしていると、カズさんが「あのさ…」と気まずそうに切り出してくる。
「凛香ちゃんて………元気かな?」
「え……凛ちゃん、ですか?」
一気にテンションダウン。
「うん………あれから何度かLINE送ってるんだけど、既読スルーされまくってて…」
「そ、そうなんですか……」
私にはLINEして来ないのに、凛ちゃんにはしてるんだ……って、ショックだった。
どうでも良いような人からのLINEは来るけどさ。
「やっぱり、まだ怒ってるのかな?」
イケメンは、シュンとする姿も絵になる。
良いよな、凛ちゃんは。
こんなイケメンの心を引き寄せられて。
「凛ちゃんて、真っ直ぐっていうか……筋の通らない事が嫌いなタイプで。一度怒ると結構尾を引くし」
「あー……やっぱり…」
凛ちゃんは、気が強いし、気難しい。
長年親友をやって来てるから、彼女への接し方は心得ているけど、時々地雷を踏んで痛い目を見る事がある。
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