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大人の女性に……side:涼亜
しおりを挟む告白ついでに、勢いで処女捧げます宣言までしてしまった。
恥ずかしさが込み上げてくるものの、後悔はない。
「……は、は」
口元をヒクヒクさせながら、お兄さんは苦笑いを浮かべた。
それから一度空を仰いでから、私に向き直る。
「気持ちは嬉しいけれど、涼亜ちゃんを縛りつけたくないんだ」
困ったように笑いながら、お兄さんは言った。
胸がぎゅっと締め付けられる。
また私はお兄さんを困らせてしまった。
どうして、私はいつもお兄さんを困らせてしまうのだろう。
最早特技の一つとして習得しちゃったのかも。
これといた大した特技がないくせに、人を困らせるのが得意だなんて、私ってばとてつもなく迷惑な存在だ。
それでもこのまま引き下がりたくなくて、どうにかお兄さんの気を引けるような言葉がないか、悪い頭で必死に考えた。
けど、ちっとも名案は浮かばない。
こんな時、自分の言葉のボキャブラリーの少なさに腹が立つ。
もっと国語の勉強しとけば良かったとか、本をいっぱい読んでおけば良かったとか………今後悔しても仕方がない事は分かってるけど、どうしようもなくて……
無駄に歯をカチカチさせてるだけの状態。
「涼亜ちゃんには、涼亜ちゃんに相応しい人がいると思うんだ。俺みたいなオッサンじゃなくて」
「………」
お兄さんの低い声は、とても心地好くて耳が蕩けそうになるけど、口にしている言葉は心をチクチク突っついてくるようだ。
「もう一度言う。約束はしない」
淡々とした口調で言った後、お兄さんがすぐに「だけど」と付け加える。
「涼亜ちゃんがこれからどう化けるか、少しだけ興味が湧いたよ」
思わず「えっ…」と聞き返すと、お兄さんがいつもの優しい笑顔を私に向けた。
「もし、3年経っても涼亜ちゃんの気持ちが一ミリもブレていなかったら、是非会いに来て」
私が反応する間もなく、お兄さんは私の耳元に顔を寄せて囁く。
「それまで取り敢えず預けておくね、ハンカチ」
耳に一瞬息がかかっただけなのに、こそばゆいのとドキドキするのとで、体がビクッと大きく震えて熱くなる。
そんな私の反応を見たお兄さんは、笑いを堪える素振りを見せながら「それじゃ」と私の頭を軽く撫でて、車のある方角へと歩いて行った。
その場に呆ける私は、お兄さんの広い背中が小さくなっていくのをただ見ていた。
絶対、見た目も中身もパーフェクトな大人の女になってやる………と決意しながら。
side:涼亜―――終わり
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