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第三章
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白蛇に手を引かれるがまま、旭は白蛇の腕の中に収まった。
横抱きに膝の上に乗せられ、白蛇の腕が旭を囲う。
これほど近くに寄るのは、倒れた日以来だ。
「……あ、」
首筋に鼻を埋めるように擦りつけられ、旭は声を漏らす。
衿を開けば、白蛇のさらりとした髪が肩を撫でた。
(白蛇さまの、心臓の音がする……)
人の姿を取っているだけで、機能があるのか旭には分らない。
それでも、規則正しい音を感じて、旭は安堵する。
背中を支える白蛇の手に、腰のあたりからこみ上げるものがあった。
「ぅ、あ、」
ふいに、首筋を舌が這った。ぬるりと舐められ、旭は肩を震わせる。
舐めたところに、今度は唇が当てられた。ぢゅ、と音がするほど強く吸われて、旭は腰から力が抜ける。
「ん、……っ」
ひり、とした痛みがあった。
「……痛むか?」
耳元で問われ、旭は「ひ、」と小さく息を飲む。
甘い痺れが体を駆け巡って、耳がじわりと熱を持った。
「い、え……大丈夫です、っ」
ゆるゆると首を横に振ると、再び首筋に唇が寄せられる。
二度、三度と強く吸われ、吸われたところがじくじくと熱い。
(もっと、色んなところを、触ってほしい……)
はしたない、願いだった。
今すぐ全てを曝け出してしまいたい。全てに触れてほしい。
ぎゅっと白蛇の衣服に縋りつく。
その願いが、ばれてしまったのだろうか。
背中に這わされていた手が、つう、と上に上がってきた。
肩を掴まれ、ぐっと押される。
されるがまま、旭は倒れた。
頬を滑る白蛇の手に、旭は恍惚の表情を浮かべる。
衿が、白蛇によって開かれた。
あらわになった鎖骨に、白蛇がまた唇を寄せる。
「ぁ、う……、」
するりと手が差し入れられて、旭の上半身を確かめるように触っていく。
以前、井戸で全裸をうっかり見られてしまった時のように、肋骨のあたりに触れる。
「やはり、少し肉付きが良くなったな」
「あっ、あ……ッ」
すり、と親指が胸の突起を掠めて、旭はびくんと跳ねた。
(白蛇さまが触れたところが……あつい、)
一度触られただけなのに、尖りきったそこにまた触れてほしくなってしまう。
そこに唇が寄せられるのを想像しただけで、皮膚の下にじわりと気持ちよさが広がった。
なのに、白蛇は再び尖りには触れてくれず、腕や、肩に触れる。
(どうして……っ)
もっと、もっと。
触って、舐めて、弄ってほしい。
そう願って、旭は気づく。自分が、白蛇に欲情しているということに。
(そうか……おれ、白蛇さまに、)
自覚すると、もうだめだった。
「あ、し、しろへび、さま……っ」
「……なんだ」
「お、おれ……、ご、ごめんなさい……っ」
すり、と腿を擦り合わせた動きに気づいたらしい白蛇が、少し起き上がって旭の下腹部に視線を落とした。
「――ああ。兆していたのか」
言葉にされて、旭はかっと頬を赤くした。
「ご、ごめんなさい、おれ……。白蛇さまに、匂いをつけてもらってただけなのに……っ」
「…………そうだったな」
苦虫を噛み潰したような顔をした白蛇を見て、旭は瞳にじわりと涙を貯めた。
(どうしよう……、さすがに嫌われたかも……!!)
「……生理現象だろう。気にするな」
「えっ、あ、……ひぅっ!」
再び覆いかぶさった白蛇が、旭の片足を掴んで広げた。
旭が状況を把握する前に、下着越しにそこを撫でられ、旭は悲鳴に近い短い声を上げる。
「あ、だめ、だ、め……っ」
すり、すり、と擦られ、旭は頭を振った。
びくびくと内腿が震える。
「楽にしてやろう」
「ぁあッ」
下着を緩められ、下着の中で窮屈そうにしていたそれが飛び出す。
――自身の陰茎が、憧れの神様に握られている。
旭はその事実に、気絶しそうになった。
「だめ、き、汚い……っ」
「風呂に入っただろう」
「そ、うです、けど……っ!そうじゃな、あっ、ぅっ」
くぷりと零れる先走りを全体に擦りつけるように上下され、旭の抵抗はあえなく失敗に終わる。
(だってこんな、き、きもちいい……っ)
欲情している相手本人に触られて、本気で嫌なわけがない。
ただ、神様という存在に触れられていることが、よくないことをしている気分にさせる。
(村ではずっと、清らかであることを、強いられてきたのに……)
男女が交わってはいけない。清らかでいなければならない。
そうやって育ってきた旭にとって、性欲の処理というものは事務的なものでしかなかった。
ずっと溜めておくと病気になるからという理由で、特に何かに欲情することもなく、ただ病気にならないためだけの処理。
そのはず、だったのに。
「も、もう、出ちゃ、だめっ、あ、ああっ」
「ああ、出せ」
せり上がってくるものを耐える術など知らない。
白蛇の声に呼応するようにあっさりと精を吐き出した旭は、ぐったりと体の力を抜いた。
「……は、ぁ……は、」
胸を大きく上下させて深く呼吸をして、旭は白蛇をぼんやりと視界に入れた。
白蛇は袂から手拭いを取り出して、手を拭いている。
(手を……拭いて……)
「――あああっ!!」
旭は大きな声を出して、勢いよく飛び起きた。
「うそ、白蛇さまの、手に……っ!!」
「言っただろう、気にするな、と」
「だめ、だめです!ちゃんと手を洗いましょう!おれ、桶を……っあ、」
立ち上がろうとして、旭はへたりとその場に座り込んだ。
「腰が抜けて立てなくなったか?」
白蛇が愉快そうに口角をあげる。
「~~~~~~っ!!」
旭はその場にうずくまり、声にならない悲鳴を上げた。
横抱きに膝の上に乗せられ、白蛇の腕が旭を囲う。
これほど近くに寄るのは、倒れた日以来だ。
「……あ、」
首筋に鼻を埋めるように擦りつけられ、旭は声を漏らす。
衿を開けば、白蛇のさらりとした髪が肩を撫でた。
(白蛇さまの、心臓の音がする……)
人の姿を取っているだけで、機能があるのか旭には分らない。
それでも、規則正しい音を感じて、旭は安堵する。
背中を支える白蛇の手に、腰のあたりからこみ上げるものがあった。
「ぅ、あ、」
ふいに、首筋を舌が這った。ぬるりと舐められ、旭は肩を震わせる。
舐めたところに、今度は唇が当てられた。ぢゅ、と音がするほど強く吸われて、旭は腰から力が抜ける。
「ん、……っ」
ひり、とした痛みがあった。
「……痛むか?」
耳元で問われ、旭は「ひ、」と小さく息を飲む。
甘い痺れが体を駆け巡って、耳がじわりと熱を持った。
「い、え……大丈夫です、っ」
ゆるゆると首を横に振ると、再び首筋に唇が寄せられる。
二度、三度と強く吸われ、吸われたところがじくじくと熱い。
(もっと、色んなところを、触ってほしい……)
はしたない、願いだった。
今すぐ全てを曝け出してしまいたい。全てに触れてほしい。
ぎゅっと白蛇の衣服に縋りつく。
その願いが、ばれてしまったのだろうか。
背中に這わされていた手が、つう、と上に上がってきた。
肩を掴まれ、ぐっと押される。
されるがまま、旭は倒れた。
頬を滑る白蛇の手に、旭は恍惚の表情を浮かべる。
衿が、白蛇によって開かれた。
あらわになった鎖骨に、白蛇がまた唇を寄せる。
「ぁ、う……、」
するりと手が差し入れられて、旭の上半身を確かめるように触っていく。
以前、井戸で全裸をうっかり見られてしまった時のように、肋骨のあたりに触れる。
「やはり、少し肉付きが良くなったな」
「あっ、あ……ッ」
すり、と親指が胸の突起を掠めて、旭はびくんと跳ねた。
(白蛇さまが触れたところが……あつい、)
一度触られただけなのに、尖りきったそこにまた触れてほしくなってしまう。
そこに唇が寄せられるのを想像しただけで、皮膚の下にじわりと気持ちよさが広がった。
なのに、白蛇は再び尖りには触れてくれず、腕や、肩に触れる。
(どうして……っ)
もっと、もっと。
触って、舐めて、弄ってほしい。
そう願って、旭は気づく。自分が、白蛇に欲情しているということに。
(そうか……おれ、白蛇さまに、)
自覚すると、もうだめだった。
「あ、し、しろへび、さま……っ」
「……なんだ」
「お、おれ……、ご、ごめんなさい……っ」
すり、と腿を擦り合わせた動きに気づいたらしい白蛇が、少し起き上がって旭の下腹部に視線を落とした。
「――ああ。兆していたのか」
言葉にされて、旭はかっと頬を赤くした。
「ご、ごめんなさい、おれ……。白蛇さまに、匂いをつけてもらってただけなのに……っ」
「…………そうだったな」
苦虫を噛み潰したような顔をした白蛇を見て、旭は瞳にじわりと涙を貯めた。
(どうしよう……、さすがに嫌われたかも……!!)
「……生理現象だろう。気にするな」
「えっ、あ、……ひぅっ!」
再び覆いかぶさった白蛇が、旭の片足を掴んで広げた。
旭が状況を把握する前に、下着越しにそこを撫でられ、旭は悲鳴に近い短い声を上げる。
「あ、だめ、だ、め……っ」
すり、すり、と擦られ、旭は頭を振った。
びくびくと内腿が震える。
「楽にしてやろう」
「ぁあッ」
下着を緩められ、下着の中で窮屈そうにしていたそれが飛び出す。
――自身の陰茎が、憧れの神様に握られている。
旭はその事実に、気絶しそうになった。
「だめ、き、汚い……っ」
「風呂に入っただろう」
「そ、うです、けど……っ!そうじゃな、あっ、ぅっ」
くぷりと零れる先走りを全体に擦りつけるように上下され、旭の抵抗はあえなく失敗に終わる。
(だってこんな、き、きもちいい……っ)
欲情している相手本人に触られて、本気で嫌なわけがない。
ただ、神様という存在に触れられていることが、よくないことをしている気分にさせる。
(村ではずっと、清らかであることを、強いられてきたのに……)
男女が交わってはいけない。清らかでいなければならない。
そうやって育ってきた旭にとって、性欲の処理というものは事務的なものでしかなかった。
ずっと溜めておくと病気になるからという理由で、特に何かに欲情することもなく、ただ病気にならないためだけの処理。
そのはず、だったのに。
「も、もう、出ちゃ、だめっ、あ、ああっ」
「ああ、出せ」
せり上がってくるものを耐える術など知らない。
白蛇の声に呼応するようにあっさりと精を吐き出した旭は、ぐったりと体の力を抜いた。
「……は、ぁ……は、」
胸を大きく上下させて深く呼吸をして、旭は白蛇をぼんやりと視界に入れた。
白蛇は袂から手拭いを取り出して、手を拭いている。
(手を……拭いて……)
「――あああっ!!」
旭は大きな声を出して、勢いよく飛び起きた。
「うそ、白蛇さまの、手に……っ!!」
「言っただろう、気にするな、と」
「だめ、だめです!ちゃんと手を洗いましょう!おれ、桶を……っあ、」
立ち上がろうとして、旭はへたりとその場に座り込んだ。
「腰が抜けて立てなくなったか?」
白蛇が愉快そうに口角をあげる。
「~~~~~~っ!!」
旭はその場にうずくまり、声にならない悲鳴を上げた。
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