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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
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「びっくりしたよー。仕事してたら急に父さんから電話がかかって来たものだから」
「兄さんは何か言ったりした?」
「いや、何の発言もしてないよ。こういうのは当事者が口を挟んだら騒ぎが大きくなるだけだからねぇ」
「これどうするの?」
面倒くさそうに、それでいて冷ややかな目で画面をスクロールしている兄さん。ここまで大きな騒ぎになってるのにいつも通りの冷静さは流石と言うべきか、関心がなさすぎだと言うべきか………
でもここまで落ち着いているのはすでに対策を取っているからって可能性もある。むしろその可能性の方が断然高い。
「この騒ぎの元凶である投稿主はすでに特定してアカウントを削除したよ。すでにニュースになってしまっているのは確認してるから、マスコミには父さんが圧を掛けてる。数時間後にはほとんど収まるんじゃないかなぁ」
まあ世界的有名な大俳優が騒ぎの中心なんだし、マスコミにとっては良いネタだよね。そのネタがまさか桜井渚だとは思ってもみなかったはずだから父さんに圧を掛けられてかなり焦っているんだろうな。兄さんが止めたのに広まった騒ぎをネタにするなんて父さんは許さないと思う。ちゃんとした目的のあるニュースだったなら圧は掛けなかっただろうけど……世界中のメディアのトップに立つ父さんを敵に回せる人なんていない…いや、兄さんくらいだと思う。
それが分かっているからこその落ち着きだったのかもね……って。
「…ん?兄さんがアカウントを削除したの?父さんじゃなくて?」
兄さんにそんな権限あったかな……?多くの仕事を任されている兄さんだけど、まだそこまでは干渉できなかったはず。
「俺も思った。なんかその権限をもらっちゃった。欲しいとは思ってなかったから少しも嬉しくないんだけどねぇ」
「おぉ……それは今回限りの話?」
「分かんない。聞いてなかった」
そこは聞こうよ……変なところで雑になるの何なの?
「それにしても良くアカウント削除だけで済んだね?知らなかったとはいえ、桜井の次期当主を騒動の中心にしたんだからそれなりに処罰があってもおかしくないのに」
「んー?それくらいで済むわけないじゃん。スタッフさんだったから懲戒処分として降格、ついでに俺の事務所には出禁になったらしいよー」
へぇ……しっかり処罰されてたんだ。兄さんの事務所はおれも所属してる所だけど、芸能界だと一番大きい事務所だから仕事内容は知らないけどスタッフさんとはいえ、かなりの仕事を失ってそうだね。この程度で兄さんの箔が落ちるようなことは万が一にもないと断言できるけど、兄さんを批判する人がいた以上ほんの少しだけでも名前に傷がついたのは間違いない。そのスタッフさんはもう芸能界から去るかもね。居場所がなくなるでしょ。
「まあ炎上くらいで俺の仕事が減るなら佐倉凪の価値はその程度ってことだよ。それこそ絶対にあり得ないって自分で言い切れるけどねー」
「だろうね」
肩を竦めて立ち上がった兄さんは隣の部屋に入って行った。おれ達が使っている部屋は全部で三部屋で、そのうちの二部屋は寝室。だから兄さんが使っている方の部屋に入って行った。その姿を追うと、何やら片付けを始めるらしい。
「兄さんは何か言ったりした?」
「いや、何の発言もしてないよ。こういうのは当事者が口を挟んだら騒ぎが大きくなるだけだからねぇ」
「これどうするの?」
面倒くさそうに、それでいて冷ややかな目で画面をスクロールしている兄さん。ここまで大きな騒ぎになってるのにいつも通りの冷静さは流石と言うべきか、関心がなさすぎだと言うべきか………
でもここまで落ち着いているのはすでに対策を取っているからって可能性もある。むしろその可能性の方が断然高い。
「この騒ぎの元凶である投稿主はすでに特定してアカウントを削除したよ。すでにニュースになってしまっているのは確認してるから、マスコミには父さんが圧を掛けてる。数時間後にはほとんど収まるんじゃないかなぁ」
まあ世界的有名な大俳優が騒ぎの中心なんだし、マスコミにとっては良いネタだよね。そのネタがまさか桜井渚だとは思ってもみなかったはずだから父さんに圧を掛けられてかなり焦っているんだろうな。兄さんが止めたのに広まった騒ぎをネタにするなんて父さんは許さないと思う。ちゃんとした目的のあるニュースだったなら圧は掛けなかっただろうけど……世界中のメディアのトップに立つ父さんを敵に回せる人なんていない…いや、兄さんくらいだと思う。
それが分かっているからこその落ち着きだったのかもね……って。
「…ん?兄さんがアカウントを削除したの?父さんじゃなくて?」
兄さんにそんな権限あったかな……?多くの仕事を任されている兄さんだけど、まだそこまでは干渉できなかったはず。
「俺も思った。なんかその権限をもらっちゃった。欲しいとは思ってなかったから少しも嬉しくないんだけどねぇ」
「おぉ……それは今回限りの話?」
「分かんない。聞いてなかった」
そこは聞こうよ……変なところで雑になるの何なの?
「それにしても良くアカウント削除だけで済んだね?知らなかったとはいえ、桜井の次期当主を騒動の中心にしたんだからそれなりに処罰があってもおかしくないのに」
「んー?それくらいで済むわけないじゃん。スタッフさんだったから懲戒処分として降格、ついでに俺の事務所には出禁になったらしいよー」
へぇ……しっかり処罰されてたんだ。兄さんの事務所はおれも所属してる所だけど、芸能界だと一番大きい事務所だから仕事内容は知らないけどスタッフさんとはいえ、かなりの仕事を失ってそうだね。この程度で兄さんの箔が落ちるようなことは万が一にもないと断言できるけど、兄さんを批判する人がいた以上ほんの少しだけでも名前に傷がついたのは間違いない。そのスタッフさんはもう芸能界から去るかもね。居場所がなくなるでしょ。
「まあ炎上くらいで俺の仕事が減るなら佐倉凪の価値はその程度ってことだよ。それこそ絶対にあり得ないって自分で言い切れるけどねー」
「だろうね」
肩を竦めて立ち上がった兄さんは隣の部屋に入って行った。おれ達が使っている部屋は全部で三部屋で、そのうちの二部屋は寝室。だから兄さんが使っている方の部屋に入って行った。その姿を追うと、何やら片付けを始めるらしい。
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