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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
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「な、何を思って歌ってた……?」
「うん」
「特に何も……鼻歌みたいな感覚で歌ってただけ……」
「え……え、それ本気で言ってる?」
こんな意味が分からない嘘は言わない。台本を読みながら歌ってたんだよ?他のことに集中しているのに本気で歌うことは出来ないよ。
「………………」
兄さんが何か考え込みだした……真剣な顔だけど目は笑ってるね。ちょっと面白がってる証拠だよ、これ。
おれ、そんなにおかしなこと言ったかな?無自覚に天才な感じじゃなくて普通に当たり前のことを言っただけなんですけど。
「兄さん?にいさーん。聞こえてる?」
「……聞こえてるから静かに話して。鼓膜が破れる」
「あ、ごめん」
今の言葉で兄さんの伝説を思い出したんだけど。兄さんって過去のバラエティ番組の生放送中に椅子が倒れる音で鼓膜が破れたんだよね。プチ放送事故だよ。五感過敏だから悪い効果を抑えるために薬を飲んでるけどその日は効果が出てなかったらしい。薬を飲んでいても一般的な人の数倍は五感が優れてるから出来るだけ兄さんの刺激にならないように気を付けてるけど、たまにやってしまう。
「なんか今日、薬効いてない?」
「いや、まだ薬を飲んでないだけー。あの薬、苦いじゃなくてマズいから毎日飲んでても慣れないんだよねぇ……直人くん、飲んでみる?」
「おれが飲んだら五感が機能しなくなるから無理。で、何を考えてたの?」
話が逸れたから戻したんだけど不服だったらしい。分かるよ?兄さんにとっては真面目な話だから。でもおれは正直関係ないし、この流れで薬を飲んでみようよーとか言われでもしたら堪った物じゃない。五感過敏も嫌だけど、機能しなくなるのは困る……!
遊びで言ってるだけで本気で飲ませようとしているわけではないと、ちゃんと理解してるけれども。
「俺の中で整理がついたら話してあげる。直人くんの七不思議のひとつ目が出来ちゃうかもだから、真面目に考えることにした」
「都市伝説みたいな言い方しないで?」
「あはは」
このツッコミ待ってた?本気で言ってるのかわざとなのか……旭の読めなさは兄さん譲りだと分かったよ。理解しちゃったよ。腹黒兄さんと一緒にいたらああなるのも必然だろうし、嫌でも黒くならざるを得ないと思うと勝手に哀れに思ってしまう。
旭のお給料が桜井で働く誰よりも高い理由、兄さんに振り回されるからって言うのが本当にその通りだよね。おれだったら無理。一日で辞めてる。
「うん」
「特に何も……鼻歌みたいな感覚で歌ってただけ……」
「え……え、それ本気で言ってる?」
こんな意味が分からない嘘は言わない。台本を読みながら歌ってたんだよ?他のことに集中しているのに本気で歌うことは出来ないよ。
「………………」
兄さんが何か考え込みだした……真剣な顔だけど目は笑ってるね。ちょっと面白がってる証拠だよ、これ。
おれ、そんなにおかしなこと言ったかな?無自覚に天才な感じじゃなくて普通に当たり前のことを言っただけなんですけど。
「兄さん?にいさーん。聞こえてる?」
「……聞こえてるから静かに話して。鼓膜が破れる」
「あ、ごめん」
今の言葉で兄さんの伝説を思い出したんだけど。兄さんって過去のバラエティ番組の生放送中に椅子が倒れる音で鼓膜が破れたんだよね。プチ放送事故だよ。五感過敏だから悪い効果を抑えるために薬を飲んでるけどその日は効果が出てなかったらしい。薬を飲んでいても一般的な人の数倍は五感が優れてるから出来るだけ兄さんの刺激にならないように気を付けてるけど、たまにやってしまう。
「なんか今日、薬効いてない?」
「いや、まだ薬を飲んでないだけー。あの薬、苦いじゃなくてマズいから毎日飲んでても慣れないんだよねぇ……直人くん、飲んでみる?」
「おれが飲んだら五感が機能しなくなるから無理。で、何を考えてたの?」
話が逸れたから戻したんだけど不服だったらしい。分かるよ?兄さんにとっては真面目な話だから。でもおれは正直関係ないし、この流れで薬を飲んでみようよーとか言われでもしたら堪った物じゃない。五感過敏も嫌だけど、機能しなくなるのは困る……!
遊びで言ってるだけで本気で飲ませようとしているわけではないと、ちゃんと理解してるけれども。
「俺の中で整理がついたら話してあげる。直人くんの七不思議のひとつ目が出来ちゃうかもだから、真面目に考えることにした」
「都市伝説みたいな言い方しないで?」
「あはは」
このツッコミ待ってた?本気で言ってるのかわざとなのか……旭の読めなさは兄さん譲りだと分かったよ。理解しちゃったよ。腹黒兄さんと一緒にいたらああなるのも必然だろうし、嫌でも黒くならざるを得ないと思うと勝手に哀れに思ってしまう。
旭のお給料が桜井で働く誰よりも高い理由、兄さんに振り回されるからって言うのが本当にその通りだよね。おれだったら無理。一日で辞めてる。
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