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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく

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「そもそも直人くん、君の国宝級のルックスに比べたら俺の顔なんてその辺に生えてる雑草でしかないと思うよ?」

 本気で言ってるの?逆でしょ。兄さんの国宝以上って言えるくらいの顔が雑草なら人類全員ミジンコ以下。ミジンコと比べたらミジンコが馬鹿にされてるみたいでかわいそうだけど、例えの話。

 いや、そうじゃなくて、なんでおれたちこんな会話してるの?兄さん辛いのに良くこんな話してきたね。心は元気って?それは良かったけど体は元気じゃないからいい加減休んでほしい。

「ということでおやすみ、兄さん。この水飲んでから寝てね」
「勝手に完結されちゃったよ。この水、何か入れてるよねぇ。匂いからして二種類?痛み止めと………睡眠薬、かなぁ」
「正解でーす。はい、飲んでね。グイッと」

 兄さんが気付かないはずないと思ってたし、何を入れたか言わないと飲まないのは分かってたから正直に言うと困った顔でため息を吐いてから飲んでくれた。兄さん、昔と違って純粋じゃなくなったからね。警戒心強くなったとも言える。言わないと飲んでくれない、逆に言えば中身を言えば飲んでくれるだろうと思ってた。

「グイッと、じゃないんだよ。なに人の飲み物に薬盛ってんの。ちゃんと飲むけどさぁ……」
「だって兄さん、薬嫌いでしょ。こうでもしないと飲まないと思ってね。じゃあお休みなさい」
「おやすみなさいませ」
「うん、おやすみ」

 ◇

「………え?」
「ぉは、よ」
「あ、うん。おはよう兄さん。寝起きなの?」
「そうだよー」

 兄さんの後遺症が悪化した翌日、朝起きてリビングに行くと兄さんがソファに横になっていた。昨晩と違う服装になっていることから二度寝だったことは分かるんだけど、いつもならすでに家を出ている時間。
 兄さんが言ってる学校って名門校で街中にあるんだよね。だからいつも家を出るのが早いんだけど今日はまだ家にいて、制服ですらなかった。今日って振替休日とかじゃないよね?

「今日学校だよね」
「俺は休むんだよ。昨日の夜よりマシだけど外を出歩けるほど治ってないんだよねぇ」
「大丈夫なの?」
「うん。家の中を歩き回るくらいは出来るよ。起きたら工藤さんが目の前にいて、驚いてる間に診察された。で、今日は一日安静にしていろってさ」
「大丈夫なら良いんだけど……無理しないで辛かったら寝ててよ?」

 なるほどと思っていたら「どっちがお兄ちゃんなのか分からなくなるねぇ」って言われた。どう考えても兄さんが兄さん何だけど、たしかにおれは兄さんに関しては心配性なところがあるかもしれない。でもそれは多分家族全員一緒なんだよね。

 あ、ちなみに工藤さんって言うのは桜井専属の医師兼薬師さんだね。有名大学を卒業していて、日本では有名なんだよ。すっごい優秀な人。
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