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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
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「兄さんっ!渚兄さん!」
「なお、と…くん……だい…じょ、ぶ…?」
「おれは兄さんが助けてくれたから大丈夫だよ!そんなことより兄さんっ、ごめんなさいおれのせいで…!ねぇっ、兄さん!兄さん!おねがいっ、返事をしてよ!!」
「あは、は……ごめ、んね…俺は………たぶん…もう、だめだよー……」
申し訳ございません、父上。跡継ぎは直人で問題ないかと。家の跡取りとして普段とは違った言葉遣いで、時折咳き込みながらもたどたどしく父さんに告げる。母さんには謝罪、そしておれには──
「ごめっ…んね。直人…無事、でよかっ………た……………」
「兄さんっ!」
「「渚!」」
兄としての言葉だった。何故こんなことになったのだろう。なにが悪かったのだろう。いや、そんなことどうでも良い。おれのせいで、おれのせいで兄さんは……
◇
時は約一年前に遡り───西暦21XX年。平和な時代が続き、特にこれといった進化もなく年月が過ぎていく中、世界屈指の大財閥である桜井家の屋敷では大規模なパーティーが開催されていた。
今日は桜井家令息のひとりであるおれの十一歳の生誕パーティー。父さんの会社や財閥と関わりのある人たちが呼ばれている。
「───皆様。本日は私の生誕パーティーにご参加いただきまして、心より御礼申し上げます。短い時間にはなりますがごゆるりとお過ごしくださいませ」
桜井家の屋敷内にある大ホール。ここは主にこうしたパーティーで使用される。総勢百名以上の方々に向けてお礼の言葉を言い、それを合図にパーティーが始まった。祝いの言葉に感謝で返しながらチラリと兄さんの方を見るといつも通り大勢の人に囲まれていた。
おれの誕生日ではあるけど、多くの人は桜井との繋がりを作るべく訪れている。こうなることは最初から分かっていたので今更落ち込みはしないけど複雑ではあるね。
「直人様、お誕生日おめでとうございます。今年も俺たちと仲良くしてくださいね」
「ありがとうございます、雅兄様。私の方こそ仲良くしていただけると嬉しいです。未来の家族ですしね」
「そうですね。それにしても、やはり渚様は人気がありますね。皆さまそろって直人様のお誕生日だと言うのに度胸があることです。まともに直人様を祝いもせずご自分に取り入ろうとしているとなれば渚様は本格的にお怒りになるとまだ分からないのでしょうか?毎回同じこと繰り返していますよね」
「目的はそれだけではないのでしょうけど。単純に兄上に好意を寄せていると言う方もいらっしゃるでしょう。兄上は有栖姉様一筋ですからアプローチするだけ無駄でしょうが」
本当に、と返してくるのは雅兄さんこと深真雅。深真家の跡取りで現在十九歳。渚兄さんの三歳年上で兄さんと幼馴染だからおれも仲が良い。
雅兄さん、有栖姉さんと渚兄さん、おれの年齢順で結構離れてるけど家族ぐるみで仲が良い。立場が似ているのでお互いに気を許せる相手でもあった。
「なお、と…くん……だい…じょ、ぶ…?」
「おれは兄さんが助けてくれたから大丈夫だよ!そんなことより兄さんっ、ごめんなさいおれのせいで…!ねぇっ、兄さん!兄さん!おねがいっ、返事をしてよ!!」
「あは、は……ごめ、んね…俺は………たぶん…もう、だめだよー……」
申し訳ございません、父上。跡継ぎは直人で問題ないかと。家の跡取りとして普段とは違った言葉遣いで、時折咳き込みながらもたどたどしく父さんに告げる。母さんには謝罪、そしておれには──
「ごめっ…んね。直人…無事、でよかっ………た……………」
「兄さんっ!」
「「渚!」」
兄としての言葉だった。何故こんなことになったのだろう。なにが悪かったのだろう。いや、そんなことどうでも良い。おれのせいで、おれのせいで兄さんは……
◇
時は約一年前に遡り───西暦21XX年。平和な時代が続き、特にこれといった進化もなく年月が過ぎていく中、世界屈指の大財閥である桜井家の屋敷では大規模なパーティーが開催されていた。
今日は桜井家令息のひとりであるおれの十一歳の生誕パーティー。父さんの会社や財閥と関わりのある人たちが呼ばれている。
「───皆様。本日は私の生誕パーティーにご参加いただきまして、心より御礼申し上げます。短い時間にはなりますがごゆるりとお過ごしくださいませ」
桜井家の屋敷内にある大ホール。ここは主にこうしたパーティーで使用される。総勢百名以上の方々に向けてお礼の言葉を言い、それを合図にパーティーが始まった。祝いの言葉に感謝で返しながらチラリと兄さんの方を見るといつも通り大勢の人に囲まれていた。
おれの誕生日ではあるけど、多くの人は桜井との繋がりを作るべく訪れている。こうなることは最初から分かっていたので今更落ち込みはしないけど複雑ではあるね。
「直人様、お誕生日おめでとうございます。今年も俺たちと仲良くしてくださいね」
「ありがとうございます、雅兄様。私の方こそ仲良くしていただけると嬉しいです。未来の家族ですしね」
「そうですね。それにしても、やはり渚様は人気がありますね。皆さまそろって直人様のお誕生日だと言うのに度胸があることです。まともに直人様を祝いもせずご自分に取り入ろうとしているとなれば渚様は本格的にお怒りになるとまだ分からないのでしょうか?毎回同じこと繰り返していますよね」
「目的はそれだけではないのでしょうけど。単純に兄上に好意を寄せていると言う方もいらっしゃるでしょう。兄上は有栖姉様一筋ですからアプローチするだけ無駄でしょうが」
本当に、と返してくるのは雅兄さんこと深真雅。深真家の跡取りで現在十九歳。渚兄さんの三歳年上で兄さんと幼馴染だからおれも仲が良い。
雅兄さん、有栖姉さんと渚兄さん、おれの年齢順で結構離れてるけど家族ぐるみで仲が良い。立場が似ているのでお互いに気を許せる相手でもあった。
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