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41話 誰が為に君は走る
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時は舞踏会当日の朝にまでさかのぼる。
舞踏会が開かれる当日の朝、窓から射す太陽の光に当てられたグリムは目を覚ました。
本当は昨夜の時点でこのシンデレラの世界から離れるつもりでいた。しかし昨夜意地悪なシンデレラの姉であるリオンと交わした最後の約束を果たす為、グリムは舞踏会が開かれるまではこの世界に滞在することを決めた。
あれからグリムに何か出来ないか考えたが答えは見つからなかった。むしろこれ以上自身が関わること自体、昨日彼女が言っていた唯一の晴れ舞台である舞踏会を台無しにしかねないと思えた。
◇
町は想像以上に賑やかになっている。明日でこの世界は終わりをつげ、物語の幕を閉じるのだから人々が興奮するのも当然だった。
シンデレラの物語が終幕に向けて大きく動き出すのは今日の夜からである。
魔女や王子様など主要な人物に関わるのを控えたグリムは明確な役割を与えられていなかった住人たちのもとを訪ねた。
「おや、あなたは「白紙の頁」の旅人さんですね」
あごのとがった顔が特徴的な男性がグリムに話しかける。彼はリオンにダンスの講師という役割を与えられた住人だった。
「私はただの町の住人ですから、舞踏会には招待されていません」
「そうなのか」
ダンスの講師は壁にもたれながら空を見上げた。
「あの子は大丈夫ですかね」
あの子というのはリオンの事だろう。
「物語の主役はもちろんシンデレラです。それでもあの子には……何の意味も持っていなかった私達に役割を与えてくれたあの子には幸せになってほしいものです」
そうだな、とグリムは肯定する。
「あれ、お兄ちゃんは確かシンデレラの姉に付き合わされていた……」
声がする方を見るとリオンによって服屋にさせられていた住人がいた。
「あなたもあの姉に何かしら役割を?」
「そういうあんたもその口かい?」
講師と服屋は互いに顔を合わせて心の底から幸せそうな顔で笑いあう。
「あんたたち、今シンデレラの姉って言ったか?」
今度は大柄な男が3人の前にやってくる。グリムはその大きな男に見覚えがあった。
「あんたは酒場にいた……」
「あの時は本当に済まない事をした」
男はグリムの言葉を聞いて申し訳なさそうに目線を下に落とす。数日前に細柄な男と共に酒場でお酒を飲んでいた男だった。
「あの嬢ちゃんの踊りを見てよ……あれから俺もただの住人なりにこの世界で出来ることをやってきたつもりだ」
大男は更生する機会を与えてくれたシンデレラの姉にお礼を言いたかったようだが、舞踏会の当日ということもあって、グリムと同じように関わるのを避けていたらしい。
3人はすぐに意気投合し、リオンについて嬉しそうに話し合う。
「あいつは……こんなにも慕われていたんだな」
3人の様子を見てグリムはそう思った。
「……おっと、本題を忘れるところだったぜ」
服屋は講師との談笑を止めてグリムの方を向く。
「兄ちゃん、シンデレラの姉を見ていないかい?」
その問いを聞いた瞬間、グリムはピタリと動きを止める。
「……それは赤髪の方の姉か?」
「もちろん、今俺たちが話していた、あんたと一緒にうちに来ていた姉の事さ」
「彼女がどうかしたのですか?」
講師の男が疑問を持つ。服屋の男は頭をガシガシとかきながら口を開く。
「仕立てたドレスを今日取りに来るって言ってたんだが、まだ来ていないんだ」
リオンと服屋に訪れた時、確かに彼女は舞踏会当日の朝にドレスを取りに来ると言っていた。しかし今の話を聞く限りお昼になってもドレスを取りに来ていないということになる。
「俺は今日彼女とは会っていない」
「そうか……」
服屋の男はグリムの言葉を聞くと困ったような顔を浮かべた。
「もしかしたらこれから取りに来るかもしれないし、俺は店に戻るぜ」
そう言って服屋は自分のお店の方へと走っていった。
「舞踏会までまだ時間はありますが、大丈夫ですかね」
講師の男は心配そうな声をあげる。
「町中の知り合いに声をかけて誰か彼女を見てないか聞いてくるぜ!」
大男は言葉を言い切るよりも前に走って行ってしまった。この場にいる誰もが彼女の身を案じていた。
「俺は今からシンデレラの家の様子を見に行く」
グリムはそう言うと走ってシンデレラの家に向かった。
なぜかは分からないが嫌な予感がした。その不安を拭い去ろうとグリムはシンデレラの家へ向かって走り始めた。
◇
シンデレラの家についたグリムは以前と同じように窓から家の中を覗き込んだ。
家の中にはシンデレラと継母と、もう一人金髪の姉がいた。中にいる人たちに気づかれないようにじっくりと確認するが、リオンの姿はどこにもなかった。
(どういうことだ?)
部屋の中を見るとドレスが二着綺麗に飾られている。どちらもあの日リオンが来ていたものとは異なる、おそらく継母ともう一人の姉の衣装だろう。
リオンだけ自身の部屋から出てきていないだけかもしれない。物語が本格的に始まる前ならば一昨日のように家の中に入ることも厭わなかったが、今は状況が違う。
今のグリムにはリオンが家の中にいるかどうか確かめる術がなかった。
服屋にリオンが来ていないと言われたセリフを思い出す。頭の中に残った不安は消えるどころか、より一層大きくなっていた。
(まさか、そんなはずはないはずだ)
ここで家の中にいるかどうかも分からない彼女が自分の部屋から出てくるまで見張り続けるわけにもいかない。グリムは他に彼女が訪れそうな場所を目指して走り始めた。
あれからアクセサリーショップや服屋に再度立ち寄ったが、彼女を見た者はいなかった。
「後は……ここしかない」
鍛冶屋の家の前に立つ。さすがにリオンのようにいきなり扉をあけるのをためらったグリムはノックする。すると扉は勢いよく開かれて中からドワーフの男が現れた。
「……なんだお前か」
「あんたがそんなに急いで出てくるなんて珍しいな」
「何をしに来た」
いつもよりとげとげしいその態度でグリムはなんとなく自身の悪い予感が現実のものになろうとしていることを予期し始めた。
「リオンは来ていないか」
「あいつはガラスの靴をまだ取りに来ていない」
ドワーフの男が勢いよく出てきたのはリオンが来たと勘違いしたからだった。
リオンが本来靴を取りに来る時間を過ぎていた事に対して彼も心配していたのだ。
もうすぐ舞踏会が始まるというのに服屋にドレスを取りにもいかず、この場所にも来ていない。
この状況は昨夜話した白雪姫の世界と似ていた。グリムの頭の中に考えうる限りの最悪のシナリオが思い浮かんだ。
あの時と異なるのはシンデレラという物語は既に終幕へ向けて動き始めているということ。
このままでは彼女が不在のまま舞踏会が開催されてしまうかもしれない。
今日この日の為に準備してきた彼女の行為がなかった事になってしまう。
それだけは絶対に許されない。
「……まだ間に合う」
グリムはゆっくりと口を開いた。
「何?」
「物語はまだ終わっていない、俺が必ずあいつを見つけ出す」
「見つけるだけか?」
ドワーフの男が再びグリムの方を向く。
以前は答えられなかった、その問いに対してグリムは決意を固める。
「あいつの本当に望んだ夢を……俺が叶えてみせる」
「……そうか」
ドワーフの男は小さく笑みをこぼすと家の中に戻ろうとする。
「ここで少し待っていろ」
言われた通り扉の前で待っているとすぐにドワーフの男は戻ってくる。
「お前が持っていけ」
少し息を荒くしながらドワーフの男はグリムに緋色の靴を押し付ける。それはリオンが舞踏会で踊る為に彼が用意したガラスの靴だった。
「あいつの事を頼んだぞ」
「分かった」
最後に一言だけ言葉を交わすとすぐにグリムはリオンを探して走り始めた。
なぜドワーフの男が最後に笑ったのか、グリムにはわからない。
自身が動くことで物語がどうなってしまうかも想像がつかない。
それこそ今までのように、物語がより最悪の形へと傾いてしまうかもしれない。
「それでも……」
町中の人達に生きる気力を与え、生きることを諦めていたグリムを思い、涙を流した彼女を見捨てるわけにはいかなかった。
舞踏会が開かれる当日の朝、窓から射す太陽の光に当てられたグリムは目を覚ました。
本当は昨夜の時点でこのシンデレラの世界から離れるつもりでいた。しかし昨夜意地悪なシンデレラの姉であるリオンと交わした最後の約束を果たす為、グリムは舞踏会が開かれるまではこの世界に滞在することを決めた。
あれからグリムに何か出来ないか考えたが答えは見つからなかった。むしろこれ以上自身が関わること自体、昨日彼女が言っていた唯一の晴れ舞台である舞踏会を台無しにしかねないと思えた。
◇
町は想像以上に賑やかになっている。明日でこの世界は終わりをつげ、物語の幕を閉じるのだから人々が興奮するのも当然だった。
シンデレラの物語が終幕に向けて大きく動き出すのは今日の夜からである。
魔女や王子様など主要な人物に関わるのを控えたグリムは明確な役割を与えられていなかった住人たちのもとを訪ねた。
「おや、あなたは「白紙の頁」の旅人さんですね」
あごのとがった顔が特徴的な男性がグリムに話しかける。彼はリオンにダンスの講師という役割を与えられた住人だった。
「私はただの町の住人ですから、舞踏会には招待されていません」
「そうなのか」
ダンスの講師は壁にもたれながら空を見上げた。
「あの子は大丈夫ですかね」
あの子というのはリオンの事だろう。
「物語の主役はもちろんシンデレラです。それでもあの子には……何の意味も持っていなかった私達に役割を与えてくれたあの子には幸せになってほしいものです」
そうだな、とグリムは肯定する。
「あれ、お兄ちゃんは確かシンデレラの姉に付き合わされていた……」
声がする方を見るとリオンによって服屋にさせられていた住人がいた。
「あなたもあの姉に何かしら役割を?」
「そういうあんたもその口かい?」
講師と服屋は互いに顔を合わせて心の底から幸せそうな顔で笑いあう。
「あんたたち、今シンデレラの姉って言ったか?」
今度は大柄な男が3人の前にやってくる。グリムはその大きな男に見覚えがあった。
「あんたは酒場にいた……」
「あの時は本当に済まない事をした」
男はグリムの言葉を聞いて申し訳なさそうに目線を下に落とす。数日前に細柄な男と共に酒場でお酒を飲んでいた男だった。
「あの嬢ちゃんの踊りを見てよ……あれから俺もただの住人なりにこの世界で出来ることをやってきたつもりだ」
大男は更生する機会を与えてくれたシンデレラの姉にお礼を言いたかったようだが、舞踏会の当日ということもあって、グリムと同じように関わるのを避けていたらしい。
3人はすぐに意気投合し、リオンについて嬉しそうに話し合う。
「あいつは……こんなにも慕われていたんだな」
3人の様子を見てグリムはそう思った。
「……おっと、本題を忘れるところだったぜ」
服屋は講師との談笑を止めてグリムの方を向く。
「兄ちゃん、シンデレラの姉を見ていないかい?」
その問いを聞いた瞬間、グリムはピタリと動きを止める。
「……それは赤髪の方の姉か?」
「もちろん、今俺たちが話していた、あんたと一緒にうちに来ていた姉の事さ」
「彼女がどうかしたのですか?」
講師の男が疑問を持つ。服屋の男は頭をガシガシとかきながら口を開く。
「仕立てたドレスを今日取りに来るって言ってたんだが、まだ来ていないんだ」
リオンと服屋に訪れた時、確かに彼女は舞踏会当日の朝にドレスを取りに来ると言っていた。しかし今の話を聞く限りお昼になってもドレスを取りに来ていないということになる。
「俺は今日彼女とは会っていない」
「そうか……」
服屋の男はグリムの言葉を聞くと困ったような顔を浮かべた。
「もしかしたらこれから取りに来るかもしれないし、俺は店に戻るぜ」
そう言って服屋は自分のお店の方へと走っていった。
「舞踏会までまだ時間はありますが、大丈夫ですかね」
講師の男は心配そうな声をあげる。
「町中の知り合いに声をかけて誰か彼女を見てないか聞いてくるぜ!」
大男は言葉を言い切るよりも前に走って行ってしまった。この場にいる誰もが彼女の身を案じていた。
「俺は今からシンデレラの家の様子を見に行く」
グリムはそう言うと走ってシンデレラの家に向かった。
なぜかは分からないが嫌な予感がした。その不安を拭い去ろうとグリムはシンデレラの家へ向かって走り始めた。
◇
シンデレラの家についたグリムは以前と同じように窓から家の中を覗き込んだ。
家の中にはシンデレラと継母と、もう一人金髪の姉がいた。中にいる人たちに気づかれないようにじっくりと確認するが、リオンの姿はどこにもなかった。
(どういうことだ?)
部屋の中を見るとドレスが二着綺麗に飾られている。どちらもあの日リオンが来ていたものとは異なる、おそらく継母ともう一人の姉の衣装だろう。
リオンだけ自身の部屋から出てきていないだけかもしれない。物語が本格的に始まる前ならば一昨日のように家の中に入ることも厭わなかったが、今は状況が違う。
今のグリムにはリオンが家の中にいるかどうか確かめる術がなかった。
服屋にリオンが来ていないと言われたセリフを思い出す。頭の中に残った不安は消えるどころか、より一層大きくなっていた。
(まさか、そんなはずはないはずだ)
ここで家の中にいるかどうかも分からない彼女が自分の部屋から出てくるまで見張り続けるわけにもいかない。グリムは他に彼女が訪れそうな場所を目指して走り始めた。
あれからアクセサリーショップや服屋に再度立ち寄ったが、彼女を見た者はいなかった。
「後は……ここしかない」
鍛冶屋の家の前に立つ。さすがにリオンのようにいきなり扉をあけるのをためらったグリムはノックする。すると扉は勢いよく開かれて中からドワーフの男が現れた。
「……なんだお前か」
「あんたがそんなに急いで出てくるなんて珍しいな」
「何をしに来た」
いつもよりとげとげしいその態度でグリムはなんとなく自身の悪い予感が現実のものになろうとしていることを予期し始めた。
「リオンは来ていないか」
「あいつはガラスの靴をまだ取りに来ていない」
ドワーフの男が勢いよく出てきたのはリオンが来たと勘違いしたからだった。
リオンが本来靴を取りに来る時間を過ぎていた事に対して彼も心配していたのだ。
もうすぐ舞踏会が始まるというのに服屋にドレスを取りにもいかず、この場所にも来ていない。
この状況は昨夜話した白雪姫の世界と似ていた。グリムの頭の中に考えうる限りの最悪のシナリオが思い浮かんだ。
あの時と異なるのはシンデレラという物語は既に終幕へ向けて動き始めているということ。
このままでは彼女が不在のまま舞踏会が開催されてしまうかもしれない。
今日この日の為に準備してきた彼女の行為がなかった事になってしまう。
それだけは絶対に許されない。
「……まだ間に合う」
グリムはゆっくりと口を開いた。
「何?」
「物語はまだ終わっていない、俺が必ずあいつを見つけ出す」
「見つけるだけか?」
ドワーフの男が再びグリムの方を向く。
以前は答えられなかった、その問いに対してグリムは決意を固める。
「あいつの本当に望んだ夢を……俺が叶えてみせる」
「……そうか」
ドワーフの男は小さく笑みをこぼすと家の中に戻ろうとする。
「ここで少し待っていろ」
言われた通り扉の前で待っているとすぐにドワーフの男は戻ってくる。
「お前が持っていけ」
少し息を荒くしながらドワーフの男はグリムに緋色の靴を押し付ける。それはリオンが舞踏会で踊る為に彼が用意したガラスの靴だった。
「あいつの事を頼んだぞ」
「分かった」
最後に一言だけ言葉を交わすとすぐにグリムはリオンを探して走り始めた。
なぜドワーフの男が最後に笑ったのか、グリムにはわからない。
自身が動くことで物語がどうなってしまうかも想像がつかない。
それこそ今までのように、物語がより最悪の形へと傾いてしまうかもしれない。
「それでも……」
町中の人達に生きる気力を与え、生きることを諦めていたグリムを思い、涙を流した彼女を見捨てるわけにはいかなかった。
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