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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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「そうだ母さん、後で使うから例の頼むね」
「はいはい」
 女性は苦笑しながら、本堂へ戻った。
「先生、例のって?」
 一年生が座りながら訊く。春彦はにっと笑いながら、白い箱を頭上にかがけた。
「ん~? 肝試し。みんなこの箱から紙を一枚取って、二ペアでうちの墓を回って貰う。地図は用意したから~因みに墓の広さは東京ドーム並みだからね~?」
 生徒達はあんぐりと口を開け、鈴虫に負けじと絶叫を上げた。

「若い子は賑やかで良いわね~」
 社務所で片付けをしながら、女性は呑気に笑ったのだった。

 箱から一枚ずつ紙を抜き取った生徒達は、最後に鈴の抜き取った紙に注目した。全員息を呑む。
「…十番」
「「「十番!」」」
 みんなが手元の紙を睨み付け、溜め息を零す。
「誰だよ十番」
 悔しそうに云う男子生徒を余所に、一年生が歓喜に震えていた。
「俺十番です!!」
「「「…は?」」」
 剛と春彦以外、一年生に詰め寄る。
「一年の平泉だな? 俺に変われ」
「やです」
「先輩に逆らう気か?」
「~~鈴せんぱ~い」
 助けを求められ、鈴は呆れ顔。
「意地悪しないの」
「あ~はいはい、公平だからね? 仲間割れしなさんな。んじゃ、外行くよ?」
 春彦がひらひらと手を振るそこへ、剛が掴む。
「ちょいと待て。お前手に持ってる紙、番号何番だ!」
「え~? 八番?」
 鈴は剛の隣から、その手に持つ紙を覗き込んだ。
「春ちゃん剛と一緒だ~」
「っ、てめぇ小細工したな!?」
「仮にも俺先生。卑怯な真似なんてね~」
「「怪しい」」
 鈴と剛がハモった。
「コホン! ではコピーした地図を渡すから、各ポジションに在る紙に、名前記入してからゴールな?」
 こうして肝試しは始まった。
「剛やっぱり顔紅いよ?」
「気のせいだ!」
 剛は真っ赤になりながら、速まる鼓動に戸惑っていた。

 墓場の向こうで、野太い悲鳴が木霊する。剛は真っ青になりながら、次にやって来る自分の順番に、喉仏をぐびりと上下した。
「さ~次だね剛君?」
 春彦はにっこりと微笑しながら、剛の腕を掴む。
「みんな楽しそうだね~」
 その言葉に剛は溜め息を零す。
「お前が自分で計画したなら、怖かねぇだろうよ!」
「あれ~? 剛君怖いんだ?」
「ぐぬぬっっ」
 剛の頬がひくりと引き攣る。
「剛?」
 鈴が困った様子で呼び、先を促した。
「次剛だよ?」
「り~ん~」
 むぎゅうと鈴に抱き着いたが、背後から別の生徒が引き剥がす。
「ほれ行け、はよ行け」
「お前ら、後で覚えてろよ!?」
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