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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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「知りたい?」
鈴は頷く。
「ほれ、あそこ」
「…は?」
あそこと云われて、指差す先を見る。祖母のさえがお気に入りだという俳優のポスター……。
「…上条…貴博?」
「そ」
にっこりと、微笑む薫に鈴は固まる。
「うっ」
「嘘じゃないわよ」
睨まれた。
「鈴は私の子供。可愛い子供よ? 姉さんも上条も関係無い。私の子供、里桜の弟よ?」
薫は立ち上がって、鈴へ歩み寄り抱き締める。
「母ちゃん…」
「自慢の息子よあんたは。これでもまだ…私を『母ちゃん』って呼んでくれる?」
「うん、…うん、母ちゃん!」
鈴は感極まって泣き笑いながら、ギュッと薫を抱き締め返した。
自治会から戻って来たさえは、鈴にお土産だと貰い物のお菓子を寄越す。
「ところで、あんた方向音痴だったわよね?」
薫は寝具の支度をしながら、鈴に訊く。
「よく辿り着いたわよね。成長したのよね鈴」
さえが嬉しそうに微笑んだ。
「うん、東京駅で知らないお姉さんが途中まで』って、車で新潟まで送ってくれて、新潟駅で今度は知らないおじさんが一緒にって、降りた駅まで…ったああっ!!! 母ちゃん、グウで殴らないでよ!」
「あんたねえ、知らない人にあれ程連いてくなって、…母さん私眩暈が」
「薫、しっかりしなさい!」
「???」
きょとんとした鈴を余所に、薫は心臓を抑える。
「「よくぞ無事で」」
薫とさえが呆れていた。
「胎教に良くないわ。何がなんでもパパにこの子を明日迎えに来て貰うわっ!」
「……」
「鈴はもう寝なさい」
さえが溜め息交じりにいう。鈴はむくれながら「はい」と返事をして、客間へ向かう。
鈴は瘤の出来た頭を擦り、不貞腐れながら布団に潜り込んだ。
朝から動き回って疲れていたのか、鈴はストンと眠りに落ちた。
二十三時を回った頃、車が停まる音がして薫とさえは顔を見合わせた。インターホンに薫が立ち上がる。隣の部屋では鈴が気持ち良さそうに眠っている。
インターホンのモニターには、里桜の顔が写っていた。
「え、里桜? 母さん里桜が来たわ!」
「まぁまぁ」
私が出るわとさえが嬉しそうに玄関のカギを開けた。が、里桜が真っ青な顔で立っている。
「どうしたの? 里桜」
「里桜!」
「こんばんは、本日『あっしー』で来ました、長男の疾風です」
玄関でへばる疾風に、さえが首を傾げた。
「よく判らないけど、…こんばんは?」
「おばあちゃん、鈴は?」
「鈴なら、客間に…あら」
そこへ、挨拶もせずに上がり込み、薰がキッチンから驚いて出て来る脇を、大きな影が駆けて行く。
「え? 隼人君?」
薫がギョッとした。
「…い、今のは?」
鈴は頷く。
「ほれ、あそこ」
「…は?」
あそこと云われて、指差す先を見る。祖母のさえがお気に入りだという俳優のポスター……。
「…上条…貴博?」
「そ」
にっこりと、微笑む薫に鈴は固まる。
「うっ」
「嘘じゃないわよ」
睨まれた。
「鈴は私の子供。可愛い子供よ? 姉さんも上条も関係無い。私の子供、里桜の弟よ?」
薫は立ち上がって、鈴へ歩み寄り抱き締める。
「母ちゃん…」
「自慢の息子よあんたは。これでもまだ…私を『母ちゃん』って呼んでくれる?」
「うん、…うん、母ちゃん!」
鈴は感極まって泣き笑いながら、ギュッと薫を抱き締め返した。
自治会から戻って来たさえは、鈴にお土産だと貰い物のお菓子を寄越す。
「ところで、あんた方向音痴だったわよね?」
薫は寝具の支度をしながら、鈴に訊く。
「よく辿り着いたわよね。成長したのよね鈴」
さえが嬉しそうに微笑んだ。
「うん、東京駅で知らないお姉さんが途中まで』って、車で新潟まで送ってくれて、新潟駅で今度は知らないおじさんが一緒にって、降りた駅まで…ったああっ!!! 母ちゃん、グウで殴らないでよ!」
「あんたねえ、知らない人にあれ程連いてくなって、…母さん私眩暈が」
「薫、しっかりしなさい!」
「???」
きょとんとした鈴を余所に、薫は心臓を抑える。
「「よくぞ無事で」」
薫とさえが呆れていた。
「胎教に良くないわ。何がなんでもパパにこの子を明日迎えに来て貰うわっ!」
「……」
「鈴はもう寝なさい」
さえが溜め息交じりにいう。鈴はむくれながら「はい」と返事をして、客間へ向かう。
鈴は瘤の出来た頭を擦り、不貞腐れながら布団に潜り込んだ。
朝から動き回って疲れていたのか、鈴はストンと眠りに落ちた。
二十三時を回った頃、車が停まる音がして薫とさえは顔を見合わせた。インターホンに薫が立ち上がる。隣の部屋では鈴が気持ち良さそうに眠っている。
インターホンのモニターには、里桜の顔が写っていた。
「え、里桜? 母さん里桜が来たわ!」
「まぁまぁ」
私が出るわとさえが嬉しそうに玄関のカギを開けた。が、里桜が真っ青な顔で立っている。
「どうしたの? 里桜」
「里桜!」
「こんばんは、本日『あっしー』で来ました、長男の疾風です」
玄関でへばる疾風に、さえが首を傾げた。
「よく判らないけど、…こんばんは?」
「おばあちゃん、鈴は?」
「鈴なら、客間に…あら」
そこへ、挨拶もせずに上がり込み、薰がキッチンから驚いて出て来る脇を、大きな影が駆けて行く。
「え? 隼人君?」
薫がギョッとした。
「…い、今のは?」
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