上 下
7 / 144

鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

しおりを挟む
 それを隼人は愛しそうに見守っていた。隼人が誰を好きなのか、里桜は知っているみたいだけれど、鈴に教えてくれない。きっと綺麗で知的な人なんだろうなと、鈴は頭の片隅で思う。
 唇をキュッと噛み締めて、里桜は半分に調理されたロブスターをつついていた。
「兄ちゃん、ロブスターあげるね?」
 里桜が海老が好きなのを知る鈴が、へへと笑いながら、皿を寄越す。
 里桜は微笑して「サンキュー」と応えた。
「でも良かったわ。あんた達年頃だからちょっと心配してたのよね~晴臣さん?」
 薫は麦茶を一口飲むと、向かい側に座る晴臣を見る。
「そうだね。二人共ありがとう。君達には新しいお兄さんが二人出来るし、賑やかになるよ」
 里桜と鈴はハタと箸を止めて晴臣を見た。
「「二人?」」
 里桜と鈴が顔を見合わせた。
「…嫌な予感がする」
 ボソッと里桜が呟いた。刹那、聞き覚えのある声が廊下から聞こえ、近付いたと思ったら、スーッと襖が開いた。
「あ~ったく道混みやがって」
「噂をすればだ。もうひとりのお兄さんが来たよ」
 襖を開けた男が面倒臭げに入って来る。鈴は持っていた箸を落とし、里桜は真っ青になって絶句した。
「せ…せんせ?」
「遅いじゃないか兄貴」
「全くだわ疾風さん」
「………よう、双子共」
 担任教師、小早川疾風先生だった。
「母ちゃん、先生が院長先生の息子って? 隼人さんひとりっ子じゃないの?」
 鈴は里桜を通り越して薫を振り返った。
「疾風さんが息子って知ってたわよ~云いたいのを我慢したかいがあったわ。びっくりしたでしょう?」
 此処に悪魔が居ると、二人は絶句。
「頭真っ白です」
「だろう鈴? 俺様が兄貴だ喜べ。おい、里桜までなんだ黙っちまって。失礼だな。何とか云えお前ら」
 疾風先生が鈴の頭をぐしゃりと撫でて、里桜の向かい側に腰を下ろす。
「…っ、別に、話す事なんて」
 里桜はロブスターを箸でグサリと刺した。
 鈴は息を呑んで見守り、薫が一方的にしゃべり続け、里桜は無言で食べる。鈴はというと、不可思議な空気の中落ち着かずに居た。

 二時間は長かった。
 ドッと疲れた鈴に薫が、洗面所から戻って来た際耳打ちして来た。
「鈴、ママこの後パパとお泊まりして来るから、里桜と帰ってくれる?」
「…うん」
 ---もう『パパ』って呼んでるのか。
 チラッと里桜を見れば、どよんとした空間の中に居る。
「なんか機嫌悪いわよね…疾風さん来てから」
 小声で云われ、鈴は疾風を見た。隼人から日本酒をお酌され、疾風は飲みながら里桜に一瞥を食らわせている。もし里桜が猫なら、毛を逆撫でて威嚇していそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく

かかし
BL
イジメが原因で卑屈になり過ぎて逆に失礼な平凡顔男子が、そんな平凡顔男子を好き過ぎて溺愛している美形とイチャイチャしたり、幼馴染の執着美形にストーカー(見守り)されたりしながら前向きになっていく話 ※イジメや暴力の描写があります ※主人公の性格が、人によっては不快に思われるかもしれません ※少しでも嫌だなと思われましたら直ぐに画面をもどり見なかったことにしてください pixivにて連載し完結した作品です 2022/08/20よりBOOTHにて加筆修正したものをDL販売行います。 お気に入りや感想、本当にありがとうございます! 感謝してもし尽くせません………!

処理中です...