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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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 二人は暖簾を潜って引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ。小早川様のお連れ様ですね?」
 女将と思われる恰幅の良い女性がにこやかに出て来た。二人は顔を見合わせて、首を傾げる。
「あの、天音ですけど…」
「やっと来たわね二人共! 待っていたわよ早くいらっしゃい」
 里桜の言葉に奥から薫が出て来た。
 淡い山吹色のワンピースを着た薫が、女将に「すみませんね」と微笑んでいる。
「…今、小早川って…?」
 薫の後を追う。よく磨かれた廊下を歩き、曲がり角を曲がると里桜がふと立ち止まった。
「兄ちゃん?」
 鈴は里桜の顔を見、目線を追い掛けて絶句した。
「隼人さん!?」
 通された部屋は八畳程在る和室で、小早川院長の晴臣とその息子の隼人が、先に席に着いていた。間にひとり分のスペースが空いている。他にも誰か来るようだ。
「やあ里桜君鈴君、席に着いて」
 鈴は息を呑んで隼人を見詰める。しかも、もしかしなくても、薫が再婚したら、この先隼人と家族になるという事だ。
「私の前の席においで鈴」
 隼人の声に促され、鈴は云われた場所に座る。里桜も真ん中の席へ行くと、薫が晴臣の前に腰を下ろした。
「びっくりさせてすまなかったね。薫さんが二人を驚かせたいって、云うから…」
「凄いサプライズでしょう?」
「「…サプライズって…」」
 二人は顔を見合わせた。
「えっと、君達のお母さんを私に下さい」
 晴臣は真っ赤な顔で二人に頭を下げる。
「母ちゃんが幸せなら」
「お母さんが幸せなら」
「里桜、鈴、ありがとう~」
 薫が二人まとめてハグをする。
「お腹の子に障りますよ?」
「あらそうね」
 晴臣が冷や汗をかくのを傍目に、里桜はグラスに注がれた水を一息に飲み干した。
「…母ちゃん、もうひとり誰か来るの?」
「そうよ~っていうか、料理冷めちゃうわね」
「先にいただきましょう。二人共たくさん食べるんだよ?」
「「…はい」」
「うわ~さすが双子! ハモるね~」
 隼人が楽しげに笑い、向かい側に座る鈴は頬を染めた。懐石料理が並べられた物を見て、鈴のお腹が鳴った。鈴は紅くなって俯いた。
「鈴はホタテが好きだよね」
 隼人が自分の分の、焼いたホタテを鈴の手取り皿に移す。
「里桜君も遠慮せずに食べるんだよ?」
「…はい」
 里桜はそっと吐息を零して、隣の鈴を見た。
 鈴は眼を輝かせて割り箸を持つ。
「…鈴」
「だって食べなきゃ勿体無いじゃない?」
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