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闇に咲く華
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「あぁ、三橋か。どうした? デートか?」
近くに居た少女に一瞥する。二人は紅くなって、「まあね」と答えた。
「…そっちの子先生の弟?」
律は顔が見えないように、俯く。
「え? あぁ、親戚の子なんだ。ちょっと具合が悪いみたいで、急いで帰る所だ」
「…ふうん。お大事に」
「あぁ。お前ら遅くなる前に帰れよ?」
竹塚がレジで精算すると、律の手を握って店を後にした。
「何? あれ。あんたさっき写真撮ってたけど、どうしたのよ? 急にあの車を追ってなんて、タクシー捕まえてこんな所までくるし。あの二人がなんなのよ?」
少女が訊く。三橋と呼ばれた少年は、「別に~ちょっと小遣い稼ぎにさ…」と云いながら携帯を手にしていた。
「高校生の行動範囲を舐めてたな。律だいじょ…」
振り返ると、マスクをしていたせいか律の息が荒い。
「すまん、律」
律は顔を上げて、竹塚が何を云ったのか理解した。律は首を横に振る。
「…先生、帰ろう?」
「…あぁ」
ギュッと手を握りしめられて、律はホッとする。
ーーー僕は此処に居て良いのかな。
迷惑を掛けているのだと、つい考えては俯いていた。
五分程で有料駐車場に着き、料金を支払って車に歩み寄ると、突然現われたカメラを手にした男が律を捉えてシャッターを押した。
「何!?」
「っ!?」
律が慌てて帽子を深く被った。竹塚は驚いて律を後部シートに急いで乗せ、律はシートに伏せて震える。
「坊や顔見せてよ! 義理のお兄さんが実は父親だったのって、どんな感じかなぁ? ちょっとで良いからさ、話し聞かせてよ」
「いい加減にしろ!」
殴りたいのを耐え、竹塚が急いで車に乗り込むと、急発進して駐車場から出た。ルームミラーから後続車を確認し、追い掛けて来ないのを確かめる。律を見ると、シートに蹲っていた。
「すまない。気分転換にと連れ出したらこんな事に。あいつらまだ諦めていなかったのかっ」
竹塚の怒りの声は律には聞こえない。律はそっと後続車を見ると、普通乗用車に小さな子供を乗せた家族連れなのを見て、溜め息を零す。漸く自分がシートベルトをしていなかったのを思い出して、カチリと締めた。
鼓動が不快にドクドクと鳴る。
ーーーどうして僕達があそこに来るのが解ったんだろう?
喫茶店で視線を感じたのは? 律は両手で身体を抱き締めた。
竹塚の実家にマスコミ関係者が居なかったことに安堵し、竹塚がぐったりとした律を抱き上げて家に入った。
「お帰りなさい。電話貰ってビックリしたわよ、律君は大丈夫なの?」
夏紀がドアを開けて外を確認して締める。
律は真っ青になって竹塚にしがみついていた。
「母さん、律を部屋に運ぶから、何か飲み物持って来てくれないか?」
「解ったわ」
近くに居た少女に一瞥する。二人は紅くなって、「まあね」と答えた。
「…そっちの子先生の弟?」
律は顔が見えないように、俯く。
「え? あぁ、親戚の子なんだ。ちょっと具合が悪いみたいで、急いで帰る所だ」
「…ふうん。お大事に」
「あぁ。お前ら遅くなる前に帰れよ?」
竹塚がレジで精算すると、律の手を握って店を後にした。
「何? あれ。あんたさっき写真撮ってたけど、どうしたのよ? 急にあの車を追ってなんて、タクシー捕まえてこんな所までくるし。あの二人がなんなのよ?」
少女が訊く。三橋と呼ばれた少年は、「別に~ちょっと小遣い稼ぎにさ…」と云いながら携帯を手にしていた。
「高校生の行動範囲を舐めてたな。律だいじょ…」
振り返ると、マスクをしていたせいか律の息が荒い。
「すまん、律」
律は顔を上げて、竹塚が何を云ったのか理解した。律は首を横に振る。
「…先生、帰ろう?」
「…あぁ」
ギュッと手を握りしめられて、律はホッとする。
ーーー僕は此処に居て良いのかな。
迷惑を掛けているのだと、つい考えては俯いていた。
五分程で有料駐車場に着き、料金を支払って車に歩み寄ると、突然現われたカメラを手にした男が律を捉えてシャッターを押した。
「何!?」
「っ!?」
律が慌てて帽子を深く被った。竹塚は驚いて律を後部シートに急いで乗せ、律はシートに伏せて震える。
「坊や顔見せてよ! 義理のお兄さんが実は父親だったのって、どんな感じかなぁ? ちょっとで良いからさ、話し聞かせてよ」
「いい加減にしろ!」
殴りたいのを耐え、竹塚が急いで車に乗り込むと、急発進して駐車場から出た。ルームミラーから後続車を確認し、追い掛けて来ないのを確かめる。律を見ると、シートに蹲っていた。
「すまない。気分転換にと連れ出したらこんな事に。あいつらまだ諦めていなかったのかっ」
竹塚の怒りの声は律には聞こえない。律はそっと後続車を見ると、普通乗用車に小さな子供を乗せた家族連れなのを見て、溜め息を零す。漸く自分がシートベルトをしていなかったのを思い出して、カチリと締めた。
鼓動が不快にドクドクと鳴る。
ーーーどうして僕達があそこに来るのが解ったんだろう?
喫茶店で視線を感じたのは? 律は両手で身体を抱き締めた。
竹塚の実家にマスコミ関係者が居なかったことに安堵し、竹塚がぐったりとした律を抱き上げて家に入った。
「お帰りなさい。電話貰ってビックリしたわよ、律君は大丈夫なの?」
夏紀がドアを開けて外を確認して締める。
律は真っ青になって竹塚にしがみついていた。
「母さん、律を部屋に運ぶから、何か飲み物持って来てくれないか?」
「解ったわ」
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