天使は甘いキスが好き

吉良龍美

文字の大きさ
上 下
86 / 98

天使は甘いキスが好き

しおりを挟む
「俺の車で行きましょう! 駐車場から持ってきます」
「あぁ、頼みます」
 龍之介は駐車場まで急いで駆けて行った。太一は緊張感に脚が竦み、しゃがみ込んだ。
「伯父さん!」
 鈴が太一の背中をさする。先程、龍之介が携帯電話を手に双眸を見開き、慌てて太一を店の外へ連れ出した。考えられるのは文面かもしくは写メ。もし写メなら、何かが撮られていた事になる。
「君達は帰宅しなさい。家の者が心配する」
「なんでだよ? 俺も行くぞ、行って恵を攫ったやつ殴ってやる!」
 平片が真っ赤になって叫んだ。
「だめだ」
 太一が眉間に皺を寄せて唸る。
「これは事件だ。警察に連絡して、恵は私が助け出す」
「伯父さん」
「…悔しいよ! 俺が教室戻らなきゃこんな」
 太一が顔を上げて立ち上がる。龍之介が車を運転して傍で停まった。
「君のせいじゃない。ここからは大人に任せなさい」
「伯父さん気を付けて、連絡待ってるから」
 太一は苦しそうに微笑して、鈴の頭を撫でると助手席に乗り込むと車が走り出した。
 鈴は震える手を、平片の手に重ねたのだった。

「このまま高速に乗ります」
「頼む」
 太一が龍之介に告げ、白い空を見上げる。
 ーーーかおる。あの子を…恵を助けてくれ。

「ん、あぁっ」
 秘孔にオイルを垂らされ、経ちあがった陰茎の先をチュウチュウと吸われて喘ぐと、恵は何度目かの絶頂にぐったりしていた。
「恵君の此処、俺の指に絡んで吸い寄せて、厭らしいな」
「あ、あ、ゆるしてっ、そこ、嫌っ」
「嫌じゃないよね? 此処」
 クニクニと前立腺を撫でられて、恵は腰を跳ねさせた。
「やぁっ! イクっ!」
「ふふ。蜜がいっぱいだな…」
 蜜孔からの白濁の舐め採ると、喉置くに収めて口腔で扱く。恵は紐で繋がれた手を、俊彦の頭に掻き乱した。
 ーーー気持ちいのダメなのにっ龍之介さん以外の人にされて、俺っ!
 泣きながら心中で龍之介へ謝った。
「あぁぁぁっ!」
 俊彦が白濁を嚥下して、唇の端に着いた白濁をぺろりと舌で舐め取る。恵は胸を上下させて息を乱した。やがて熱く硬い何かが、恵の秘孔に充てられ、恵はぴくんと震え…。
「あ、だめっ入れないで、お願いっお願いっヤダっ!」
「くっ、これで君は俺のものだ、大事にするよ恵君。好きだ君が、好きだ」
 ググッと大きな陰茎が恵を犯す。
「ひあっ!」
 恵の腹の中で、熱く硬い陰茎が恵を甘美へと誘う。
「なんて身体だ、俺のいちもつに絡んで蠢いて、離さないぞ恵君、君を」 
 うっとりと呟いた俊彦が、腰で恵の中を掻き回す。
 恵は泣きながら叫び続けた。


 どれぐらいの時間が経ったのか。恵は遠くでサイレンを聞きながら、意識を飛ばしていた。
「ちっ」
 何度も鳴るインターホンに、俊彦は舌打ちしながら恵の中から陰茎を抜いた。避妊具を着けていたので、恵の負担にはならない筈だ。俊彦は愛しげに恵の腰を撫でる。
 恵とのセックスはドラッグの様だと、俊彦は思う。泣き疲れと絶頂で気を失った恵の頬にキスをして、ベッドから降りるとカーテンを少し開けて外を見た。パトカーが一台と警察官が二人。
 車はガレージに入れて鍵を掛けて、電気は全て消しているからこの別荘は、留守だと諦めて時期に引き返すだろう。問題は龍之介だ。
 ーーー奴は絶対此処へ来る。
 恵を連れて何処かへ逃げなくてはと思案して、ふと思い立った。
「何処へ行ってもいつかは捕まる。それなら…」
 恵を道連れに、二人が出逢ったこの別荘ごと消えようか。甘美な誘惑に俊彦は微笑する。恵を道連れにすれば、龍之介は恵を二度と抱けない。触れる事も。
 やがて、警察官は音も無く引き返す。ガレージを確認する事も無く。眠る恵を尻目に、俊彦はリビングへ向かった。暖炉に火を起して、ガソリンを取りに勝手口から出る。念の為、外に誰か居ないか確認した。ガレージに行くと、カツンと何かが靴に触れた。見れば恵が首に下げていた、指輪のぶら下がった鎖だった。
 俊彦は鼻で笑うとそれを踏み付けてガレージの中へ入って行った。
『けい』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

九年セフレ

三雲久遠
BL
在宅でウェブデザインの仕事をしているゲイの緒方は、大学のサークル仲間だった新堂と、もう九年セフレの関係を続けていた。 元々ノンケの新堂。男同士で、いつかは必ず終わりがくる。 分かっているから、別れの言葉は言わないでほしい。 また来ると、その一言を最後にしてくれたらいい。 そしてついに、新堂が結婚すると言い出す。 (ムーンライトノベルズにて完結済み。  こちらで再掲載に当たり改稿しております。  13話から途中の展開を変えています。)

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

処理中です...