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天使は甘いキスが好き
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穢れを知らない天使の羽は、恵が昔かおるが寝物語で語ってくれた、天使の話しから来ていたのだと思う。天使は大きな羽を持ち、神様の許に居るのだという。
恵は小さい時、鳩の羽を拾ってはこれは天使の羽? とかおるによく訊いていたものだ。かおるはそれは鳩の羽。天使の羽は人の眼には見えないのよと、恵を慰める。
恵は空に向かって手を伸ばす。恵はそこで必ず眼が覚めた。頬には涙。思い出さなければと、龍之介には云ったがこの夢を見た後には、気が萎える。
ーーーどうして?
恵は夢の中でも泣いていた。
ーーー何が遭ったのだろう?
喫茶店で遭った美加という女性。もしかしたら、また同じ事があるかも知れない。恵はゾクリとして身体を震わせた。
「けいにいちゃん?」
伊吹が恵の部屋をノックして、ドアを開ける。
「伊吹か? どうした?」
「りんにいちゃんがきてるよ」
あぁ。と恵は重たく感じた瞼を押さえた。龍之介と本屋で別れて、太一と一緒に帰って来て…。
「そういえば、疲れて少し眠ったんだっけ? お祖母ちゃんは?」
「うんと、ね。りんにいちゃんいまコーヒーをいれてて、おとうさんはれいとあいのオムツかえてる」
「そうか…今行く」
恵はベッドから下りて、立ち眩みを感じた。
「にいちゃん!?」
「…大丈夫だ。軽い貧血だから」
そう云われても心配なのだろう。伊吹は恵の手を握って、階段をゆっくりと下りた。
リビングには鈴がコーヒーを飲んでいた。
「好い香り」
「お・そ・よ・う」
鈴が遅いぞと、軽く睨む。恵は微笑んでテーブルの、鈴の向かい側に座った。
「ごめんね? 待たせて。鈴の勉強の教え方上手いから助かるよ」
「おだてないの。ほら勉強やるぞ? 伊吹、ソファーの上に在る恵の勉強道具持って来て」
「は~い」
伊吹は鈴に云われた通り、準備して置いた勉強道具を持って来る。
「鈴、今夜こっちで食事済ませる?」
十和子がキッチンから訊く。
「裕太と食べて来たから。今日はいいや」
恵は驚いて鈴を見詰める。
「何?」
「平片とそんなに仲良かったかなぁって、思っただけ」
鈴は頬を染めた。
「別に。近状報告してたら、お互い趣味が合って意気投合しただけ」
恵はあぁ、と頷く。
「なんだよ?」
「べっつに~」
鈴が恵の脚を自分の爪先で突く。
「真剣にやらななきゃ、勉強教えないからな?」
「わーごめんっからかわないから! 鈴の好きなケーキ買って来たんだし」
「ケーキが在るなら許す」
恵はホッとして伊吹の視線に気付く。
「なんだ?」
「ひらかたのにいちゃんってりんにいちゃんとデートしてたの?」
「「…」」
恵と鈴が目線を合わせ伊吹を睨む。
「「子供は黙れ」」
二人同時に云う。伊吹は出目金の様に脹れて十和子の許へ行く。
「変な事云うから起こられるのよ?」
「ぶ~っ。ケーキぜんぶぼくがたべちゃうもん!」
十和子は慌てて、ケーキの箱を伊吹の手の届かない棚の上に置く。伊吹はいやいやとケーキの箱に向かってジャンプした。
「は~疲れた。鈴喉渇かない?」
一時間後、恵が立ち上がる。
「渇いた」
二人がキッチンへ向かい首を傾げた。夕飯の仕度をしている十和子の脇で、食器棚の前に椅子を運びその上で伊吹が立って手を広げている。
恵は小さい時、鳩の羽を拾ってはこれは天使の羽? とかおるによく訊いていたものだ。かおるはそれは鳩の羽。天使の羽は人の眼には見えないのよと、恵を慰める。
恵は空に向かって手を伸ばす。恵はそこで必ず眼が覚めた。頬には涙。思い出さなければと、龍之介には云ったがこの夢を見た後には、気が萎える。
ーーーどうして?
恵は夢の中でも泣いていた。
ーーー何が遭ったのだろう?
喫茶店で遭った美加という女性。もしかしたら、また同じ事があるかも知れない。恵はゾクリとして身体を震わせた。
「けいにいちゃん?」
伊吹が恵の部屋をノックして、ドアを開ける。
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「そうか…今行く」
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「…大丈夫だ。軽い貧血だから」
そう云われても心配なのだろう。伊吹は恵の手を握って、階段をゆっくりと下りた。
リビングには鈴がコーヒーを飲んでいた。
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「お・そ・よ・う」
鈴が遅いぞと、軽く睨む。恵は微笑んでテーブルの、鈴の向かい側に座った。
「ごめんね? 待たせて。鈴の勉強の教え方上手いから助かるよ」
「おだてないの。ほら勉強やるぞ? 伊吹、ソファーの上に在る恵の勉強道具持って来て」
「は~い」
伊吹は鈴に云われた通り、準備して置いた勉強道具を持って来る。
「鈴、今夜こっちで食事済ませる?」
十和子がキッチンから訊く。
「裕太と食べて来たから。今日はいいや」
恵は驚いて鈴を見詰める。
「何?」
「平片とそんなに仲良かったかなぁって、思っただけ」
鈴は頬を染めた。
「別に。近状報告してたら、お互い趣味が合って意気投合しただけ」
恵はあぁ、と頷く。
「なんだよ?」
「べっつに~」
鈴が恵の脚を自分の爪先で突く。
「真剣にやらななきゃ、勉強教えないからな?」
「わーごめんっからかわないから! 鈴の好きなケーキ買って来たんだし」
「ケーキが在るなら許す」
恵はホッとして伊吹の視線に気付く。
「なんだ?」
「ひらかたのにいちゃんってりんにいちゃんとデートしてたの?」
「「…」」
恵と鈴が目線を合わせ伊吹を睨む。
「「子供は黙れ」」
二人同時に云う。伊吹は出目金の様に脹れて十和子の許へ行く。
「変な事云うから起こられるのよ?」
「ぶ~っ。ケーキぜんぶぼくがたべちゃうもん!」
十和子は慌てて、ケーキの箱を伊吹の手の届かない棚の上に置く。伊吹はいやいやとケーキの箱に向かってジャンプした。
「は~疲れた。鈴喉渇かない?」
一時間後、恵が立ち上がる。
「渇いた」
二人がキッチンへ向かい首を傾げた。夕飯の仕度をしている十和子の脇で、食器棚の前に椅子を運びその上で伊吹が立って手を広げている。
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