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天使は甘いキスが好き
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平片の掴む鈴の腕に力が入る。
「嫌、痛いっ」
「あ、ごめん鈴」
思わず手を放した鈴の腕を、上村が擦ってやる。
「大丈夫か? 平片は相変わらず乱暴だなぁ」
ムッとした平片が、鈴を横から抱き締めた。他の客や、店員が好奇の眼で見て来る。
「触らないで下さい、上村先輩っ」
鈴は真っ赤になって、恥ずかしさに平片の腕から逃れた。
「裕太っ、何どうしたの?」
「平片君、細川に迷惑を掛けたら駄目じゃないか」
「上村、僕迷惑だなんて思ってない! 本当に今急いでるから。ごめんね?」
鈴はレジに向かって会計を済ませる。平片が上村を見、上村はそっぽを向いた。
ーーーこの上村野郎っわざとだな。
「上村先輩。俺達幼馴染だけど、それ以上に俺の大事な人なんです。鈴に近付かないで下さい」
平片は上村に歩み寄ると静かに告げた。
「…開き直りかよ。云っとくけど、鈴はあの通り成績優秀スポーツ万能。でも不思議ちゃんだから、男女問わずにファンが多いんだ。告白されるのなんて毎日」
「…やっぱり」
上村が笑う。
「…俺も狙ってるから」
「それは宣戦布告ですか?」
「そういう事」
平片は口角を上げる。
「それは諦めた方が良いですよ? 俺、この間のイブに鈴を貰いましたから」
刹那、上村はカッと紅くなる。
「お前っ!?」
「そういう事なんで」
「祐太会計終わったよ? 本屋行くだろ?」
「おう」
平片は勝ち誇った様に鈴の許へ行き、一緒にコンビニを出て行く。女性客の三人が、キャーと頬を染めて騒いだ。
「煩いっ」
「何よ、振られたからって」
そそくさと、女性客が逃げて行く。上村が苛々と立ち去った。店員はハラハラとしながら、見守るしかなかった。
鈴は平片の嬉しそうな顔を横から見上げて、首を傾げる。
「どうしたの?」
「別に~」
気分が良い。スキッリした。スッキリついでに平片の眼にラブホテルの看板が眼に付く。
「鈴、今直ぐお前が欲しい」
鈴は平片の見る方へ目線を向け固まった。派手な看板がキラキラと光る。
「こんな時間に…それに本屋は?」
「本屋は明日でも良いだろ? それに…こんな時間だから」
「だって…一度しかしてないし…」
ーーー好きだけど、恥ずかしい格好もさせられて…。
「優しくする。イブの時は俺初めてだったけどじっくり本で勉強したからな」
鼓動が鳴る。平片とはまだ一度しかしていない。
「僕の為に?」
鈴は潤んだ眼で見上げ、平片はごくりと唾を呑む。何処で同じ学校の生徒が居るか解らないが、今の二人にその考えが浮かばなかった。
「当たり前だろ? 惚れた恋人に感じて欲しいじゃんか」
鈴は平片の裾を掴んで、小さな声で云った。
「僕も…裕太が欲しい…」
平片は鼻息も荒く鈴の手を掴むなり、ホテルの暖簾を潜った。
いくつかの空いている部屋の写真を選んで、タッチパネルのボタンを押すと、アナウンスで先を促す。鈴は違和感を強くする。
「…ねぇ? 裕太…慣れてない?」
鈴が不安になって訊く。
「本で読んだり、兄貴からも訊いたの」
ーーーそういう事かよっ。
「っ! 裕太のスケベっもう裕太のお兄さんの顔、見れないじゃんか」
「ハハ。それだけ鈴の事しか頭に無いの」
エレベーターが開き、二人は乗り込む。いじける鈴の手を握る平片に、鈴は額を平片の肩に押し当てた。チンとエレベーターが止まり、扉が開く。番号を探して部屋を見付けた。
防音効果がしっかりしてるのだろう。通路を通っても静かだ。
「…鈴」
ドアの前で平片が手を差し伸べる。
「嫌、痛いっ」
「あ、ごめん鈴」
思わず手を放した鈴の腕を、上村が擦ってやる。
「大丈夫か? 平片は相変わらず乱暴だなぁ」
ムッとした平片が、鈴を横から抱き締めた。他の客や、店員が好奇の眼で見て来る。
「触らないで下さい、上村先輩っ」
鈴は真っ赤になって、恥ずかしさに平片の腕から逃れた。
「裕太っ、何どうしたの?」
「平片君、細川に迷惑を掛けたら駄目じゃないか」
「上村、僕迷惑だなんて思ってない! 本当に今急いでるから。ごめんね?」
鈴はレジに向かって会計を済ませる。平片が上村を見、上村はそっぽを向いた。
ーーーこの上村野郎っわざとだな。
「上村先輩。俺達幼馴染だけど、それ以上に俺の大事な人なんです。鈴に近付かないで下さい」
平片は上村に歩み寄ると静かに告げた。
「…開き直りかよ。云っとくけど、鈴はあの通り成績優秀スポーツ万能。でも不思議ちゃんだから、男女問わずにファンが多いんだ。告白されるのなんて毎日」
「…やっぱり」
上村が笑う。
「…俺も狙ってるから」
「それは宣戦布告ですか?」
「そういう事」
平片は口角を上げる。
「それは諦めた方が良いですよ? 俺、この間のイブに鈴を貰いましたから」
刹那、上村はカッと紅くなる。
「お前っ!?」
「そういう事なんで」
「祐太会計終わったよ? 本屋行くだろ?」
「おう」
平片は勝ち誇った様に鈴の許へ行き、一緒にコンビニを出て行く。女性客の三人が、キャーと頬を染めて騒いだ。
「煩いっ」
「何よ、振られたからって」
そそくさと、女性客が逃げて行く。上村が苛々と立ち去った。店員はハラハラとしながら、見守るしかなかった。
鈴は平片の嬉しそうな顔を横から見上げて、首を傾げる。
「どうしたの?」
「別に~」
気分が良い。スキッリした。スッキリついでに平片の眼にラブホテルの看板が眼に付く。
「鈴、今直ぐお前が欲しい」
鈴は平片の見る方へ目線を向け固まった。派手な看板がキラキラと光る。
「こんな時間に…それに本屋は?」
「本屋は明日でも良いだろ? それに…こんな時間だから」
「だって…一度しかしてないし…」
ーーー好きだけど、恥ずかしい格好もさせられて…。
「優しくする。イブの時は俺初めてだったけどじっくり本で勉強したからな」
鼓動が鳴る。平片とはまだ一度しかしていない。
「僕の為に?」
鈴は潤んだ眼で見上げ、平片はごくりと唾を呑む。何処で同じ学校の生徒が居るか解らないが、今の二人にその考えが浮かばなかった。
「当たり前だろ? 惚れた恋人に感じて欲しいじゃんか」
鈴は平片の裾を掴んで、小さな声で云った。
「僕も…裕太が欲しい…」
平片は鼻息も荒く鈴の手を掴むなり、ホテルの暖簾を潜った。
いくつかの空いている部屋の写真を選んで、タッチパネルのボタンを押すと、アナウンスで先を促す。鈴は違和感を強くする。
「…ねぇ? 裕太…慣れてない?」
鈴が不安になって訊く。
「本で読んだり、兄貴からも訊いたの」
ーーーそういう事かよっ。
「っ! 裕太のスケベっもう裕太のお兄さんの顔、見れないじゃんか」
「ハハ。それだけ鈴の事しか頭に無いの」
エレベーターが開き、二人は乗り込む。いじける鈴の手を握る平片に、鈴は額を平片の肩に押し当てた。チンとエレベーターが止まり、扉が開く。番号を探して部屋を見付けた。
防音効果がしっかりしてるのだろう。通路を通っても静かだ。
「…鈴」
ドアの前で平片が手を差し伸べる。
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