天使は甘いキスが好き

吉良龍美

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天使は甘いキスが好き

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 弁解はもう良いから。と、恵は叫びたいのを我慢して小声で云う。
「結婚はしない。俺には君だけだ」
 恵は涙を浮かべて顔を横に振る。
「嘘は訊きたくないっ! お父さんも同じ! お母さんを裏切ったっあなたまで俺を裏切るのかよ!?」
 夕方の玄関前。誰が見ているかも知れない。でも心が追い付かないのだ。恵の心は悲鳴を上げている。
「俺は恵を裏切らない。信じて欲しい」
 恵は泣きながら、顔をただ横に振る。
「なら、どうすれば信じてくれる?」
 恵は唇を噛んだ。美加は龍之介に抱かれたと云う。
「俺を…抱いてよ」
 龍之介は息を呑んだ。
「美加さんが嘘を云ったのなら、龍之介さんにとって、今は俺だけなんだろう? …やっぱり未成年に手ぇ出すの怖い!? そんなもんなの? 口だけ…え、何?」
 龍之介は恵の腕を引っ張って行き、自分の車に乗せた。恵は驚いて、ナビシートから龍之介を見詰める。
「後悔はしないし、させない」
 恵は胸がドクンと鳴った。
 車は十和子と擦れ違う。
「…あら、恵?」
 十和子は買い物袋を手に首を傾げた。

「…どこ連れてく気?」
 恵はドアミラーで、十和子の姿を見詰める。
「俺のマンションだ」
 恵はハッとして龍之介を見た。
「俺は結婚なんかしない。恵が居れば良い。美加は過去の女だ。あいつは関係無い。着いたら君を抱く」
「っ」
 恵は両手で顔を覆った。
「それ、本気で云ってんの? 俺未成年だぜ?」
「抱いてと云ったのは君だ。出逢ってから我慢していた。俺は君のお父さんとは違う。俺は君に、恵に惚れてる。本気なんだ」
 恵は熱くなった頬をガラスに押し当てる。
「…本気で犯罪者になるつもり?」
「なっても良い。信じて貰えるなら、俺は恵を抱く。君が成人するまで待つつもりだった。でも…」
 車は高層マンションの地下駐車場へ入る。
「俺は抱くよ」
 恵は胸の震えを感じた。

「おばあちゃんおかえり」
 伊吹はリビングで、十和子の買い物袋から野菜ジュースを取り出す。掌サイズの物だ。
「伊吹。恵は南川先生と何処へ行ったか知らない?」
 伊吹はストローを刺して一口飲む。
「ほえ? しらない」
 伊吹はテクテクと歩いて、猫のぬいぐるみの横にちょこんと座った。

 マンション内は片付けられていて、恵は浴室に逃げ込み、裸のままパニックを起こした。
 ーーーまさか、本当に?
 マンションに着いて、玄関を潜ると龍之介は恵の衣服を脱がし始めた。驚いた恵はシャワーを浴びると叫んで、真っ赤になったまま浴室の場所を訊き、今に至る。
「恵」
 恵は飛び上がって振り返った。
「あっ…」
 全裸の龍之介が、浴室に入って来たのだ。刹那、完全に経ちあがった大人の陰茎に、恵は紅くなる。平片の家で観た男優と同じぐらいのサイズだ。やはり鍛えているのだろう。惚れ惚れとする程に、龍之介の身体は立派だった。
「一緒にシャワーを浴びよう」
「…うん」
 スポンジをボディソープで泡だらけにして、恵を洗い始める。恵はさっきまで、失恋のどん底に居たのだ。
 ーーーこの回転の速さは何だろう?
 恵の思考が追い付かない。確かに自分から「抱いて」とは云ったけど。
「下は…自分で」
 かろうじて出た言葉がそれだった。
「やらせてくれ。…恵は綺麗な肌をしているな」
 顔を寄せられて、唇が重なる。
「ん、ふ、んっ」
 優しいキスから、力強いキスに変わる頃、恵はぐったりとして龍之介の胸に凭れた。
「な、に?」
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