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天使は甘いキスが好き
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二人は玄関へ向かいながら、恵はポケットの中に入れた携帯を障った。
「えいじくんパソコンおもしろいね!」
パソコンで迷路のゲームをした。途中で怪獣が出て対戦をする。その日は成田と共に、英治の個人病院を営む反対側の自宅に呼ばれた。通いの家政婦さんは、美味しいチョコケーキを焼いて作ってくれた。ケーキはとても美味しくて、伊吹はお代りをして、十和子の焼いたクッキーも食べた。が、食べた分だけ出る物は出る。伊吹は二人に気付かれない様に、家政婦さんにこっそりトイレの場所を聞いた。
「こちらですよ」
「ありがとうです。かせいふさん、ぼくのおばあちゃんみたいだね?」
家政婦は首を傾げた。
「おばあちゃんおこるとこわいけど、とってもやさしいの。ぼくおばあちゃんだいすきなの」
「まぁ。伊吹様の気持ちはちゃんと、届いてますですよ?」
「うん。あ、あと。あのふたりにはぼくがといれだなんていわないでね?」
家政婦は微笑んで頷いた。男の子は大変なのだ。
「なんでなりたがついてくるかね?」
ソファーに座って、胡坐を掻く英治に、成田が睨む。
「おさななじみなんだから、いいの。まえはよくいっしょにふろにはいったんだぜ?」
良いだろう? と成田がカカカと笑う。
「そうか。でもおれはよめにもらうってやくそくしたぞ?」
「ばっかじゃなえの!? おとこどうしでできるかよ」
「ばかはおまえだ。アメリカにいきゃそくOKなんだよ。それにいまのにっぽんは、これからばんばんどうせいこんみとめるところふえるぞ」
「えっ!?」と成田はこれには焦った。
「さ、させないからな! いぶきはおれの」
「なに? またけんか?」
運悪く伊吹がリビングに戻って来た。
「な、なんでもない。な? たまき」
玉木はあぁと、意味深に笑う。
「パソコンのつづきだ」
「うん」
英治が伊吹を椅子に座らせて、自分は背後から抱き込む様に画面の移動の仕方を教えている。そこからゲーム開始だ。成田は伊吹の機嫌の良さに、寂しい思いをして、ひとりソファーに腰を下ろす。
ーーーおれ、なにしにきたんだか…しっとしにきたのか?
笑えねぇと、ひとり成田がブスくれた。
「カレーの隠し味にチョコ使うのか?」
スーパーの帰り道、買い物袋を手に恵は平片に訊く。重い野菜を平片が持ち、恵は飲料水を持っている。
「結構イケるんだよ」
ふーんと、恵は何気に駅の改札口を見た。
「…え?」
龍之介が女性と話ながら、改札口から出て来る。他にも若い同年代が、数人後から連いて歩いていた。龍之介がふと、恵に気付いて微笑んだ。
「恵」
「…龍之介さん」
『龍之介』の名前に平片は眼を細め、上から下まで見た。
ーーーこいつが、恵の好きな奴? うわぁ本当に年上…。
「誰? 龍君の弟?」
さっきの電話の向こうで聞こえた、甘ったるい女性の声だと気付く。
「いや…、彼は」
「始めまして。俺、細川恵といいます。龍之介先生には、家庭教師をお願いしているんです」
恵はにっこり微笑んで云う。龍之介の後方から連いて来ていた、友人らしい男達が、
「お?」と恵を囲んだ。
「何々? 可愛いじゃん。男の子? もしや最近付き合い悪いのって、この子のせいかな?」
龍之介は困った様子で微笑む。龍之介の腕に抱き付いた女性は、恵をジッと見るとほくそ笑んだ。
「龍君、マンション行こう? 久しぶりにパーティなんだから」
「…パーティ?」
恵が眉根を寄せる。
「あぁ。こいつら、最近付き合い悪いって俺の家に来て、急遽パーティする事になってね」
恵はムッとして、龍之介に纏わり付く女性を見る。
「やだこわーい。この子私のこと睨んだ、もしかして嫉妬されたかしら」
「止めろよ。美加」
龍之介が呆れて窘める。
ーーー…呼び捨て?
「えいじくんパソコンおもしろいね!」
パソコンで迷路のゲームをした。途中で怪獣が出て対戦をする。その日は成田と共に、英治の個人病院を営む反対側の自宅に呼ばれた。通いの家政婦さんは、美味しいチョコケーキを焼いて作ってくれた。ケーキはとても美味しくて、伊吹はお代りをして、十和子の焼いたクッキーも食べた。が、食べた分だけ出る物は出る。伊吹は二人に気付かれない様に、家政婦さんにこっそりトイレの場所を聞いた。
「こちらですよ」
「ありがとうです。かせいふさん、ぼくのおばあちゃんみたいだね?」
家政婦は首を傾げた。
「おばあちゃんおこるとこわいけど、とってもやさしいの。ぼくおばあちゃんだいすきなの」
「まぁ。伊吹様の気持ちはちゃんと、届いてますですよ?」
「うん。あ、あと。あのふたりにはぼくがといれだなんていわないでね?」
家政婦は微笑んで頷いた。男の子は大変なのだ。
「なんでなりたがついてくるかね?」
ソファーに座って、胡坐を掻く英治に、成田が睨む。
「おさななじみなんだから、いいの。まえはよくいっしょにふろにはいったんだぜ?」
良いだろう? と成田がカカカと笑う。
「そうか。でもおれはよめにもらうってやくそくしたぞ?」
「ばっかじゃなえの!? おとこどうしでできるかよ」
「ばかはおまえだ。アメリカにいきゃそくOKなんだよ。それにいまのにっぽんは、これからばんばんどうせいこんみとめるところふえるぞ」
「えっ!?」と成田はこれには焦った。
「さ、させないからな! いぶきはおれの」
「なに? またけんか?」
運悪く伊吹がリビングに戻って来た。
「な、なんでもない。な? たまき」
玉木はあぁと、意味深に笑う。
「パソコンのつづきだ」
「うん」
英治が伊吹を椅子に座らせて、自分は背後から抱き込む様に画面の移動の仕方を教えている。そこからゲーム開始だ。成田は伊吹の機嫌の良さに、寂しい思いをして、ひとりソファーに腰を下ろす。
ーーーおれ、なにしにきたんだか…しっとしにきたのか?
笑えねぇと、ひとり成田がブスくれた。
「カレーの隠し味にチョコ使うのか?」
スーパーの帰り道、買い物袋を手に恵は平片に訊く。重い野菜を平片が持ち、恵は飲料水を持っている。
「結構イケるんだよ」
ふーんと、恵は何気に駅の改札口を見た。
「…え?」
龍之介が女性と話ながら、改札口から出て来る。他にも若い同年代が、数人後から連いて歩いていた。龍之介がふと、恵に気付いて微笑んだ。
「恵」
「…龍之介さん」
『龍之介』の名前に平片は眼を細め、上から下まで見た。
ーーーこいつが、恵の好きな奴? うわぁ本当に年上…。
「誰? 龍君の弟?」
さっきの電話の向こうで聞こえた、甘ったるい女性の声だと気付く。
「いや…、彼は」
「始めまして。俺、細川恵といいます。龍之介先生には、家庭教師をお願いしているんです」
恵はにっこり微笑んで云う。龍之介の後方から連いて来ていた、友人らしい男達が、
「お?」と恵を囲んだ。
「何々? 可愛いじゃん。男の子? もしや最近付き合い悪いのって、この子のせいかな?」
龍之介は困った様子で微笑む。龍之介の腕に抱き付いた女性は、恵をジッと見るとほくそ笑んだ。
「龍君、マンション行こう? 久しぶりにパーティなんだから」
「…パーティ?」
恵が眉根を寄せる。
「あぁ。こいつら、最近付き合い悪いって俺の家に来て、急遽パーティする事になってね」
恵はムッとして、龍之介に纏わり付く女性を見る。
「やだこわーい。この子私のこと睨んだ、もしかして嫉妬されたかしら」
「止めろよ。美加」
龍之介が呆れて窘める。
ーーー…呼び捨て?
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