天使は甘いキスが好き

吉良龍美

文字の大きさ
上 下
31 / 98

天使は甘いキスが好き

しおりを挟む
 二人は玄関へ向かいながら、恵はポケットの中に入れた携帯を障った。

「えいじくんパソコンおもしろいね!」
 パソコンで迷路のゲームをした。途中で怪獣が出て対戦をする。その日は成田と共に、英治の個人病院を営む反対側の自宅に呼ばれた。通いの家政婦さんは、美味しいチョコケーキを焼いて作ってくれた。ケーキはとても美味しくて、伊吹はお代りをして、十和子の焼いたクッキーも食べた。が、食べた分だけ出る物は出る。伊吹は二人に気付かれない様に、家政婦さんにこっそりトイレの場所を聞いた。
「こちらですよ」
「ありがとうです。かせいふさん、ぼくのおばあちゃんみたいだね?」
 家政婦は首を傾げた。
「おばあちゃんおこるとこわいけど、とってもやさしいの。ぼくおばあちゃんだいすきなの」
「まぁ。伊吹様の気持ちはちゃんと、届いてますですよ?」
「うん。あ、あと。あのふたりにはぼくがといれだなんていわないでね?」
 家政婦は微笑んで頷いた。男の子は大変なのだ。
「なんでなりたがついてくるかね?」
 ソファーに座って、胡坐を掻く英治に、成田が睨む。
「おさななじみなんだから、いいの。まえはよくいっしょにふろにはいったんだぜ?」
 良いだろう? と成田がカカカと笑う。
「そうか。でもおれはよめにもらうってやくそくしたぞ?」
 「ばっかじゃなえの!? おとこどうしでできるかよ」
「ばかはおまえだ。アメリカにいきゃそくOKなんだよ。それにいまのにっぽんは、これからばんばんどうせいこんみとめるところふえるぞ」
「えっ!?」と成田はこれには焦った。
「さ、させないからな! いぶきはおれの」
「なに? またけんか?」
 運悪く伊吹がリビングに戻って来た。
「な、なんでもない。な? たまき」
 玉木はあぁと、意味深に笑う。
「パソコンのつづきだ」
「うん」
 英治が伊吹を椅子に座らせて、自分は背後から抱き込む様に画面の移動の仕方を教えている。そこからゲーム開始だ。成田は伊吹の機嫌の良さに、寂しい思いをして、ひとりソファーに腰を下ろす。
 ーーーおれ、なにしにきたんだか…しっとしにきたのか?
 笑えねぇと、ひとり成田がブスくれた。

「カレーの隠し味にチョコ使うのか?」
 スーパーの帰り道、買い物袋を手に恵は平片に訊く。重い野菜を平片が持ち、恵は飲料水を持っている。
「結構イケるんだよ」
 ふーんと、恵は何気に駅の改札口を見た。
「…え?」
 龍之介が女性と話ながら、改札口から出て来る。他にも若い同年代が、数人後から連いて歩いていた。龍之介がふと、恵に気付いて微笑んだ。
「恵」
「…龍之介さん」
 『龍之介』の名前に平片は眼を細め、上から下まで見た。
 ーーーこいつが、恵の好きな奴? うわぁ本当に年上…。
「誰? 龍君の弟?」
 さっきの電話の向こうで聞こえた、甘ったるい女性の声だと気付く。
「いや…、彼は」
「始めまして。俺、細川恵といいます。龍之介先生には、家庭教師をお願いしているんです」
 恵はにっこり微笑んで云う。龍之介の後方から連いて来ていた、友人らしい男達が、
「お?」と恵を囲んだ。
「何々? 可愛いじゃん。男の子? もしや最近付き合い悪いのって、この子のせいかな?」
 龍之介は困った様子で微笑む。龍之介の腕に抱き付いた女性は、恵をジッと見るとほくそ笑んだ。
「龍君、マンション行こう? 久しぶりにパーティなんだから」
「…パーティ?」
 恵が眉根を寄せる。
「あぁ。こいつら、最近付き合い悪いって俺の家に来て、急遽パーティする事になってね」
 恵はムッとして、龍之介に纏わり付く女性を見る。
「やだこわーい。この子私のこと睨んだ、もしかして嫉妬されたかしら」
「止めろよ。美加」
 龍之介が呆れて窘める。
 ーーー…呼び捨て?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたとの離縁を目指します

たろ
恋愛
いろんな夫婦の離縁にまつわる話を書きました。 ちょっと切ない夫婦の恋のお話。 離縁する夫婦……しない夫婦……のお話。 明るい離縁の話に暗い離縁のお話。 短編なのでよかったら読んでみてください。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

おじさんは予防線にはなりません

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」 それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。 4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。 女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。 「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」 そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。 でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。 さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。 だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。 ……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。 羽坂詩乃 24歳、派遣社員 地味で堅実 真面目 一生懸命で応援してあげたくなる感じ × 池松和佳 38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長 気配り上手でLF部の良心 怒ると怖い 黒ラブ系眼鏡男子 ただし、既婚 × 宗正大河 28歳、アパレル総合商社LF部主任 可愛いのは実は計算? でももしかして根は真面目? ミニチュアダックス系男子 選ぶのはもちろん大河? それとも禁断の恋に手を出すの……? ****** 表紙 巴世里様 Twitter@parsley0129 ****** 毎日20:10更新

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。 しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。 しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生ーーーしかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく・・? 少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。 (後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。 文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。 また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

僕の兄は◯◯です。

山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。 兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。 「僕の弟を知らないか?」 「はい?」 これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。 文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。 ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。 ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです! ーーーーーーーー✂︎ この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。 今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

処理中です...