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天使は甘いキスが好き
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平片が携帯越しに怒鳴る。
「大丈夫だったよ? ってか凄い偶然なんだけど、助けてくれた先輩がうちらの学校のOBだって。今大学生で教育学部だってさ。カッコ良くてさぁ、喫茶店でケーキ奢って貰っちゃった!」
【お前…】
電話の向こうで平片が何やら怒った様子だ。
「平片?」
【食いもんで釣られるな! 大体お前は昔から危なっかしいんだよ】
「なんだよそれ。俺男だぞ?」
【その男が、男にナンパされたんだろうが】
うっと恵は唸る。
「あれは、あいつらがヘンタイで…」
【あぁそうだな。で? その先輩は? どうなんだよ?】
今度は恵がムッとする番だった。
「龍之介さんはそんな人じゃないっ」
電話の向こうで平片が固まる。
【名前で呼ぶ仲かよ…】
「別に良いじゃん。それより、当日大丈夫だから。それじゃ俺これから風呂だからまた明日な」
【お…おう】
携帯を切った恵は溜息を吐くと、携帯をベッドにほうって、パジャマを手に浴室へ向かった。
「なんだよ、龍之介さんだ? 何処のどいつだよ? 恵も恵だ、自分が人の眼を惹くって解れよ。なんなんだよったく」
平片はベッドにつっぷすと、もぞりと身を捩った。
「人の気も知らねぇで」
平片は天井を向くと、胸のモヤモヤに苛立った。
リビングからパジャマ姿の伊吹が出て来た。
「けいにいちゃん、きょうおふろね、ぼくひとりではいれたんだよ?」
「凄いな~もう直ぐお兄ちゃんだもんな。伊吹は偉いぞ?」
「ほんとう? ぼくえらい? おとうさんにもおしえようっと」
恵は浴室へ向かう脚を止めた。振り返ると、伊吹はリビングへ戻ってソファーに腰を下ろしている。
ーーー伊吹には知られない様にしないとな…。
なんで自分が振り回されなければならないのか。来年は高校生。進路はまだ迷ってはいるが、【進路調査票】には多分、調理師学校と書くだろう。かおるの店を守るなら、調理師免許を持っていた方が良いに決まっている。十和子も年だ。これ以上無理は頼めないのも、薄々感じ取っている。まずは高校を卒業して、専門学校を決めて…。
ーーー龍之介さんは、今頃何してるんだろう? 明日もあの図書館へ行ってみようか。そしたら会えるだろうか?
帰り際、お互いのメルアドの交換をしてしまった。
ドキドキしたのは初めてだ。男の大人に惹かれるのは、きっと人恋しいだけ。誰でも構わない筈だ。恵は服を脱ぎ、脱衣籠に入れると、ガラリと扉を開いた。
恵が自室に戻ると、携帯の着信履歴が点滅していた。
「平片かな? あいつまだ文句…」
携帯電話のフラップを開くと、
【南川龍之介】の文字が出ていた。恵は急いで携帯履歴から電話を掛けると、コール二回で龍之介が出た。
【恵君?】
「うん。ごめんなさい、お風呂入ってたから…。龍之介さんは何してたの?」
恵は頬を片手で押さえながら、ベッドに腰を下ろす。
【俺? 勉強って云いたい処だけど、君の事考えてた。君は?】
恵はドキンと胸が高鳴って、頬が熱くなるのを感じた。
「…俺も…龍之介さんの事考えてた。俺、変なのかな」
泣きそうな声で、震える声で拙く呟いた。電話の向こうで、龍之介の息を呑む音が聞こえる。
ーーー嫌われたらどうしよう? 一瞬恵は切なくなって俯く。
【変じゃないよ。…さっきも云ったけど、俺も恵君の事考えてた。おあいこだね】
その言葉に、恵は泣きたくなる程にホッとする。
【明日学校終わったら何か用事ある?】
「え? 無いけど」
図書館へ行こうかと思ったが。
【じゃ、観たい映画があるんだけど一緒にどう?】
「…映画?」
それじゃ、まるで…。
【映画は嫌い? ファンタジー物なんだけど】
「大丈夫だったよ? ってか凄い偶然なんだけど、助けてくれた先輩がうちらの学校のOBだって。今大学生で教育学部だってさ。カッコ良くてさぁ、喫茶店でケーキ奢って貰っちゃった!」
【お前…】
電話の向こうで平片が何やら怒った様子だ。
「平片?」
【食いもんで釣られるな! 大体お前は昔から危なっかしいんだよ】
「なんだよそれ。俺男だぞ?」
【その男が、男にナンパされたんだろうが】
うっと恵は唸る。
「あれは、あいつらがヘンタイで…」
【あぁそうだな。で? その先輩は? どうなんだよ?】
今度は恵がムッとする番だった。
「龍之介さんはそんな人じゃないっ」
電話の向こうで平片が固まる。
【名前で呼ぶ仲かよ…】
「別に良いじゃん。それより、当日大丈夫だから。それじゃ俺これから風呂だからまた明日な」
【お…おう】
携帯を切った恵は溜息を吐くと、携帯をベッドにほうって、パジャマを手に浴室へ向かった。
「なんだよ、龍之介さんだ? 何処のどいつだよ? 恵も恵だ、自分が人の眼を惹くって解れよ。なんなんだよったく」
平片はベッドにつっぷすと、もぞりと身を捩った。
「人の気も知らねぇで」
平片は天井を向くと、胸のモヤモヤに苛立った。
リビングからパジャマ姿の伊吹が出て来た。
「けいにいちゃん、きょうおふろね、ぼくひとりではいれたんだよ?」
「凄いな~もう直ぐお兄ちゃんだもんな。伊吹は偉いぞ?」
「ほんとう? ぼくえらい? おとうさんにもおしえようっと」
恵は浴室へ向かう脚を止めた。振り返ると、伊吹はリビングへ戻ってソファーに腰を下ろしている。
ーーー伊吹には知られない様にしないとな…。
なんで自分が振り回されなければならないのか。来年は高校生。進路はまだ迷ってはいるが、【進路調査票】には多分、調理師学校と書くだろう。かおるの店を守るなら、調理師免許を持っていた方が良いに決まっている。十和子も年だ。これ以上無理は頼めないのも、薄々感じ取っている。まずは高校を卒業して、専門学校を決めて…。
ーーー龍之介さんは、今頃何してるんだろう? 明日もあの図書館へ行ってみようか。そしたら会えるだろうか?
帰り際、お互いのメルアドの交換をしてしまった。
ドキドキしたのは初めてだ。男の大人に惹かれるのは、きっと人恋しいだけ。誰でも構わない筈だ。恵は服を脱ぎ、脱衣籠に入れると、ガラリと扉を開いた。
恵が自室に戻ると、携帯の着信履歴が点滅していた。
「平片かな? あいつまだ文句…」
携帯電話のフラップを開くと、
【南川龍之介】の文字が出ていた。恵は急いで携帯履歴から電話を掛けると、コール二回で龍之介が出た。
【恵君?】
「うん。ごめんなさい、お風呂入ってたから…。龍之介さんは何してたの?」
恵は頬を片手で押さえながら、ベッドに腰を下ろす。
【俺? 勉強って云いたい処だけど、君の事考えてた。君は?】
恵はドキンと胸が高鳴って、頬が熱くなるのを感じた。
「…俺も…龍之介さんの事考えてた。俺、変なのかな」
泣きそうな声で、震える声で拙く呟いた。電話の向こうで、龍之介の息を呑む音が聞こえる。
ーーー嫌われたらどうしよう? 一瞬恵は切なくなって俯く。
【変じゃないよ。…さっきも云ったけど、俺も恵君の事考えてた。おあいこだね】
その言葉に、恵は泣きたくなる程にホッとする。
【明日学校終わったら何か用事ある?】
「え? 無いけど」
図書館へ行こうかと思ったが。
【じゃ、観たい映画があるんだけど一緒にどう?】
「…映画?」
それじゃ、まるで…。
【映画は嫌い? ファンタジー物なんだけど】
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