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6.通じ合った気持ちと新たな災難

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 草むらのベッドで二人、仰向けになる。オークツリーの身体の中に、オークツリーのヒト型がいるなんて本当に不思議でたまらない。キスだけで幸福感で満たされるなんて、思わなかった。ベッドの上がいつもより暗いのは、ヒト型となって『分身』になっているから。木であるオークツリー本体と分離してしまっている以上、どこかしら影響が出るのだと言う。
「なあ、どうしてヒト型を見せてくれなかったのか聞いていい?」
 俺がそう言うと、少し言いにくそうに話し始めた。
「初めて会ったとき、ヒト型だったのはね、クロウが泣いていたからです。遠くから聞こえた泣き声が気になって。ヒト型になって様子を見に行ったんです。最初はカラスってことに気が付きませんでした。子供なのに私を見て、ぐっと泣くのを我慢して。それを見てたらいじらしくなってね。それでここを提供したんです。それからクロウが通って来てくれるようになって、だんだんと慈しみではなくて愛しさに変わって来たんです。私もヒト型になってクロウの元に行きたいと何度も思ったんです」
「じゃあ、なんで」
「以前言いましたよね。私はうんと長生きしているんです。だからクロウがいなくなった後もずっと一人で生きていくことになるんです。幸せな時間を知ってしまえば、その後が辛すぎるんです。なら、いっそヒト型で会わなければ、ただの木であれば恋愛のような関係にならず寂しさも幾分和らぐはずだろうと。私の独りよがりなんです」
「でも今日、こうしてヒト型になって会ってくれた」
「限界でした。フォックスに襲われそうになったなんて。自分が寂しくなるからなんて言ってられないと。私がクロウを守らなければと思ったんです。だから、クロウ。私を呼んで」
 オークツリー の言葉に胸がいっぱいになり泣きそうになった。俺はその回答の代わりに再度、唇を重ねる。俺は鼻の頭をかきながら笑う。
「思いっきり呼ぶから。だから、俺のこと、守って」
 今までもこのウロの中で守ってくれたオークツリー。今度はもっともっと守ってくれる。俺とオークツリーはお互いに抱き合った。その時、羽根の羽ばたくような音が聞こえた気がしたけど、俺は気のせいかと思っていた。オークツリーの分身の影響で、いつもなら俺以外入れないウロが空いていて誰かが入っていたことに、気づかなかったんだ。

***

 それから数日して。俺がいつものように餌場に行こうとしていたところを、ウッドペッカーが血相変えて近づいて来た。
「クロウ、大変だ! フォックスが!」
 フォックス、と聞いて俺は身体をビクンと揺らした。大丈夫だ、オークツリーがいる。あの日と、違うんだ。
「フォックスが、どうかしたのか?」
 俺は努めて冷静に、ゆっくりウッドペッカーの方を向いた。すると彼は慌てた様子で自分の後ろについてこいと促して来た。いつもならこんなに強引なことを言わないので相当、緊急なのか、と驚く。仕方ない、とウッドペッカーの飛行するあとをついて俺も飛ぶ。

数分後ろについて行っている間に森の端まで飛んで来た。突然、ウッドペッカーが地上に向けて降下した。それを見て俺も降下を始める。そのうち目に入って来たのは、大きな尻尾のヒト型。フォックスだ。拳を握り、尻尾の毛が逆立っていつもより太く見える。そして何より『近寄ってはならない』と直感で気づいた。
 地上に降り立ち、俺は翼を閉じた。フォックスは俺に気づくと細い目をいきなり、大きく開いた。
「よお、クロウ。単刀直入に言うけどよ、教えてくれ。お前、オークツリーと出来てんのか」
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