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第二十七話 女の顔
27-2.「悪い人じゃないけど……」
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「新しいおもちゃを当てがったってわけ?」
完全に見抜かれている。
「効果はあったみたいだ。ついでに僕の気勢を殺いでくれた。やってくれたね」
「恐れ入ります」
「いいけどね。今はあの子の安定が肝心だ」
この人だって子どもの頃から彼女を見てきたのだ。それはわかっているが今日子はどうにも彼を信用できない。
「何してんすか?」
宮前が出てきて間に入った。
「なんでもない」
達彦はそっけなく言って店に入っていく。
「悪い人じゃないけど……」
「わかってる」
宮前が言いかけるのを遮って今日子はくちびるを噛んだ。
「えーと、もう一回言ってくれますか?」
「コスプレだよ、コスプレ」
笑顔を張り付けた美登利の眼が怖い。まずいなと琢磨はなんとか止めに入る。
「こいつはそういうことは……」
「わかってるけどさ、効果抜群だろ? いいと思うけどな」
鞄店の若旦那が禿げ上がったおでこを撫でながら言う。
「ちょっと写真を撮らせてもらってポスター作れば、嫌でも目立つだろ」
「ポスターはやめた方が良い」
達彦が会話に入ってきて皆が彼を見る。
「足跡を残すのはよくない。彼女は静かに平和に暮らしたい、そうだよね?」
美登利は眉をひそめて頷く。
「正体がわからなければいい訳だ」
「ああうん、そうだよね!」
達彦の言葉尻に乗っかって商店主たちが声をあげたものの続くアイディアがあるわけでもないようだ。
そこでまた達彦が口を開く。
「去年のことを思い出してくださいよ。仮装した集団が結構歩いてたでしょう」
「うんうん」
「子どもが店を回ったりして」
「うんうん」
「あれ、通行人も注目してましたよ。どこの店で何を貰ったんだろうって。店名の入ったものを持ってればわかりますからね」
「ほほう」
「つまり、とびきり目立つ人間が歩いてれば目で追うし、目立つパッケージを持ってれば店名ぐらいは目に飛び込んでくる」
「いい宣伝じゃないか!」
「いいね、それ」
口々に言いあって皆はそろって美登利に目を向ける。
「そんなの私じゃなくたって」
「汚いおっさんが目立つカッコしたって目を逸らされて終わりだよ」
「それこそカボチャでも被ればいいじゃないですか」
「カボチャだね、で終わっちまうよ。わかってないねえ」
完全に見抜かれている。
「効果はあったみたいだ。ついでに僕の気勢を殺いでくれた。やってくれたね」
「恐れ入ります」
「いいけどね。今はあの子の安定が肝心だ」
この人だって子どもの頃から彼女を見てきたのだ。それはわかっているが今日子はどうにも彼を信用できない。
「何してんすか?」
宮前が出てきて間に入った。
「なんでもない」
達彦はそっけなく言って店に入っていく。
「悪い人じゃないけど……」
「わかってる」
宮前が言いかけるのを遮って今日子はくちびるを噛んだ。
「えーと、もう一回言ってくれますか?」
「コスプレだよ、コスプレ」
笑顔を張り付けた美登利の眼が怖い。まずいなと琢磨はなんとか止めに入る。
「こいつはそういうことは……」
「わかってるけどさ、効果抜群だろ? いいと思うけどな」
鞄店の若旦那が禿げ上がったおでこを撫でながら言う。
「ちょっと写真を撮らせてもらってポスター作れば、嫌でも目立つだろ」
「ポスターはやめた方が良い」
達彦が会話に入ってきて皆が彼を見る。
「足跡を残すのはよくない。彼女は静かに平和に暮らしたい、そうだよね?」
美登利は眉をひそめて頷く。
「正体がわからなければいい訳だ」
「ああうん、そうだよね!」
達彦の言葉尻に乗っかって商店主たちが声をあげたものの続くアイディアがあるわけでもないようだ。
そこでまた達彦が口を開く。
「去年のことを思い出してくださいよ。仮装した集団が結構歩いてたでしょう」
「うんうん」
「子どもが店を回ったりして」
「うんうん」
「あれ、通行人も注目してましたよ。どこの店で何を貰ったんだろうって。店名の入ったものを持ってればわかりますからね」
「ほほう」
「つまり、とびきり目立つ人間が歩いてれば目で追うし、目立つパッケージを持ってれば店名ぐらいは目に飛び込んでくる」
「いい宣伝じゃないか!」
「いいね、それ」
口々に言いあって皆はそろって美登利に目を向ける。
「そんなの私じゃなくたって」
「汚いおっさんが目立つカッコしたって目を逸らされて終わりだよ」
「それこそカボチャでも被ればいいじゃないですか」
「カボチャだね、で終わっちまうよ。わかってないねえ」
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