94 / 324
第十七話 天使の偶像
17-3.「おっしゃる通りです」
しおりを挟む
「中の物を持ち出すならなおさらでしょ」
「ここの園長先生とかは?」
「卒園アルバム見て電話してみたけど連絡つかなかったです」
「行方知れずか」
古びた看板には学校法人とある。城山苗子理事長に尋ねてみようとも考えたがとりあえず店に戻ることにして、いったん少年たちと別れた。
「幼稚園の関係者っつうより、土地の持ち主に連絡が取れればいいわけだろ」
志岐琢磨は眉を上げて言った。
「法務局に行けば誰でも調べられるよ」
達彦も事も無げに言う。
「まあ、登記された住所に本人が居るとも限らんが、身元は判る」
なるほどと思い、そうはいっても住所がわからないから番地表示を確認しに幼稚園の前に戻った。
散歩の途中らしいおじいさんと行き合う。もののついでのつもりで話しかけてみる。
「ご近所の方ですか?」
「そうだよ」
「この幼稚園の土地なんですけど、持ち主はこのあたりの人かご存じないですか?」
「そこの向かいのじいさんだよ」
なんですと。何度も何度も頭を下げて、言われた家を訪ねてみた。
「ね、こんな簡単に許可がもらえるなら犯罪をおかさないでおいて良かっただろ」
「おっしゃる通りです」
「おねえさんのおかげだけどね」
持ち主さんから借りた鍵を使って鎖を外して中に入ることができた。
「多分、天使像の前だったと思うんだ」
少年の兄が雑草の茂みに踏み込んで言う。
「シャベルを持って立ち上がったら天使と目が合った気がした。だから天使像の前だと思う」
「じゃあ掘ってみよう」
借りてきたスコップでざくざく掘ってみた。話は通ってるからそれこそやりたい放題だ。
それほど深い場所に埋めたとも思えない。まんべんなくさらっていたら本当に天使像の真ん前で見つかった。
「これだ」
四角い缶が埋まっていた。元の色は判然としない。少年の兄が取り出して開けようとするが開かない。
「叩き壊そうか」
「おねえさん……」
たしなめられて肩をすくめたとき、園舎の方で物音がした。さっと美登利は表情を固くする。
「不法侵入の人?」
不安そうに小さくつぶやく少年の肩を叩く。
「見てくるからここにいて。やばそうな音とか声とか聞こえたらすぐに逃げること」
言い聞かせてから、手前の扉に近づいてみた。当然鍵がかかっている。
そのまま外側の通路沿いに様子を窺いながら歩いていくと、掃き出し窓のひとつが割れていた。真ん中のサッシを境に下半分がほぼすっぽり割れている。
「ここの園長先生とかは?」
「卒園アルバム見て電話してみたけど連絡つかなかったです」
「行方知れずか」
古びた看板には学校法人とある。城山苗子理事長に尋ねてみようとも考えたがとりあえず店に戻ることにして、いったん少年たちと別れた。
「幼稚園の関係者っつうより、土地の持ち主に連絡が取れればいいわけだろ」
志岐琢磨は眉を上げて言った。
「法務局に行けば誰でも調べられるよ」
達彦も事も無げに言う。
「まあ、登記された住所に本人が居るとも限らんが、身元は判る」
なるほどと思い、そうはいっても住所がわからないから番地表示を確認しに幼稚園の前に戻った。
散歩の途中らしいおじいさんと行き合う。もののついでのつもりで話しかけてみる。
「ご近所の方ですか?」
「そうだよ」
「この幼稚園の土地なんですけど、持ち主はこのあたりの人かご存じないですか?」
「そこの向かいのじいさんだよ」
なんですと。何度も何度も頭を下げて、言われた家を訪ねてみた。
「ね、こんな簡単に許可がもらえるなら犯罪をおかさないでおいて良かっただろ」
「おっしゃる通りです」
「おねえさんのおかげだけどね」
持ち主さんから借りた鍵を使って鎖を外して中に入ることができた。
「多分、天使像の前だったと思うんだ」
少年の兄が雑草の茂みに踏み込んで言う。
「シャベルを持って立ち上がったら天使と目が合った気がした。だから天使像の前だと思う」
「じゃあ掘ってみよう」
借りてきたスコップでざくざく掘ってみた。話は通ってるからそれこそやりたい放題だ。
それほど深い場所に埋めたとも思えない。まんべんなくさらっていたら本当に天使像の真ん前で見つかった。
「これだ」
四角い缶が埋まっていた。元の色は判然としない。少年の兄が取り出して開けようとするが開かない。
「叩き壊そうか」
「おねえさん……」
たしなめられて肩をすくめたとき、園舎の方で物音がした。さっと美登利は表情を固くする。
「不法侵入の人?」
不安そうに小さくつぶやく少年の肩を叩く。
「見てくるからここにいて。やばそうな音とか声とか聞こえたらすぐに逃げること」
言い聞かせてから、手前の扉に近づいてみた。当然鍵がかかっている。
そのまま外側の通路沿いに様子を窺いながら歩いていくと、掃き出し窓のひとつが割れていた。真ん中のサッシを境に下半分がほぼすっぽり割れている。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
Kingの寵愛~一夜のお仕事だったのに…捕獲されたの?~ 【完結】
まぁ
恋愛
高校卒業後、アルバイト生活を続ける 大島才花
すでに22歳の彼女はプロダンサーの実力がありながら
プロ契約はせずに、いつも少しのところで手が届かない世界大会優勝を目指している
そして、今年も日本代表には選ばれたものの
今年の世界大会開催地イギリスまでの渡航費がどうしても足りない
そこで一夜の仕事を選んだ才花だったが…
その夜出会った冷たそうな男が
周りから‘King’と呼ばれる男だと知るのは
世界大会断念の失意の中でだった
絶望の中で見るのは光か闇か…
※完全なるフィクションであり、登場する固有名詞の全て、また設定は架空のものです※
※ダークな男も登場しますが、本作は違法行為を奨励するものではありません※
彼女の光と声を奪った俺が出来ること
jun
恋愛
アーリアが毒を飲んだと聞かされたのは、キャリーを抱いた翌日。
キャリーを好きだったわけではない。勝手に横にいただけだ。既に処女ではないから最後に抱いてくれと言われたから抱いただけだ。
気付けば婚約は解消されて、アーリアはいなくなり、愛妾と勝手に噂されたキャリーしか残らなかった。
*1日1話、12時投稿となります。初回だけ2話投稿します。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
本作の感想欄を開けました。
お返事等は書ける時間が取れそうにありませんが、感想頂けたら嬉しいです。
賞を頂いた記念に、何かお礼の小話でもアップできたらいいなと思っています。
リクエストありましたらそちらも書いて頂けたら、先着三名様まで受け付けますのでご希望ありましたら是非書いて頂けたら嬉しいです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる