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Episode 26 学校が戦場になった日
26-8.「気をつけろよ」
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にっこりと美登利は微笑む。
同時に校門脇の住宅のガレージの扉が開きだした。
内側から飛び出してきたのは志岐琢磨が招集した応援部隊だ。
「一網打尽だ。一人も逃がすな」
琢磨に指示されて櫻花のOBたちが苦も無く少年たちを締め上げていく。
その場が静かになるまでさほど時間はかからなかった。
ヘルメットをはぎ取って確認していた琢磨が舌打ちした。
「美登利!」
門扉越しに怒鳴った。
「金指がいねえ。金髪の小柄な奴だ。主犯の奴が来ねえわけがない。中を確認しろ」
「金髪って」
そんな人間がいたらすぐにわかるに決まってる。
背後の片瀬にパトロールを指示しようと振り返った美登利は、目の端で一人の生徒を見とがめた。
制服のズボンに黒いTシャツ。金髪でもないし格好だけなら作業中の生徒にしか見えない。
だが、あんな顔の生徒は青陵にはいない。
「綾小路!」
昇降口前で待機していた綾小路高次に美登利が叫ぶ。
「セレクトの金指だよ! 捕まえて」
綾小路が駆け出したが金指の動きも早い。ピロティーを抜けて校舎裏を体育館の方へ向かって逃げていく。
舌打ちして美登利と片瀬も走り出した。
「静かになったな」
エンジン音が消えたのに気づいて正人は校舎の方を見上げた。一緒にいた櫻花メンバーもそっちを見る。
しばらくして裏門から校内に戻っていた三年生二人がまた引き返してきた。
「池崎、中川が呼んでる。こいつらのリーダーが校内に潜り込んでたらしい。捕まえるのに足の速いのが必要だって、オレたちと交代だ」
「了解っす」
「それから、こいつらの中からひとり連れてこいって」
「? なんでですか」
「わからんが……」
三年の男子は固い表情でつぶやいた。
「怖くて、とてもあいつと口きけねえよ」
「え……」
「中川のヤツ、相当キレてるぜ。気をつけろよ」
適当に選んだ一人を引きずって正人は校内に戻った。
駐輪場をすぎたところで中川美登利が一人で正人を待っていた。
「そいつをここに置いて、あなたは片瀬くんたちと合流して。金指って黒いTシャツの小柄な奴を捜すんだよ」
「あんたは? こいつどうするのさ」
「黙って行って」
その抑揚のない低い声、固く冷たい表情。もう見たくないと思っていたのに。
正人はぐっと眉根を寄せて美登利を見つめる。
「どうしたの、早く行って」
苛立ちを隠しもせず美登利は早口に言う。
選挙戦のときとはまた違う。冷たい美貌の下に沸々と煮えたぎるものがその瞳から感じ取れる。
同時に校門脇の住宅のガレージの扉が開きだした。
内側から飛び出してきたのは志岐琢磨が招集した応援部隊だ。
「一網打尽だ。一人も逃がすな」
琢磨に指示されて櫻花のOBたちが苦も無く少年たちを締め上げていく。
その場が静かになるまでさほど時間はかからなかった。
ヘルメットをはぎ取って確認していた琢磨が舌打ちした。
「美登利!」
門扉越しに怒鳴った。
「金指がいねえ。金髪の小柄な奴だ。主犯の奴が来ねえわけがない。中を確認しろ」
「金髪って」
そんな人間がいたらすぐにわかるに決まってる。
背後の片瀬にパトロールを指示しようと振り返った美登利は、目の端で一人の生徒を見とがめた。
制服のズボンに黒いTシャツ。金髪でもないし格好だけなら作業中の生徒にしか見えない。
だが、あんな顔の生徒は青陵にはいない。
「綾小路!」
昇降口前で待機していた綾小路高次に美登利が叫ぶ。
「セレクトの金指だよ! 捕まえて」
綾小路が駆け出したが金指の動きも早い。ピロティーを抜けて校舎裏を体育館の方へ向かって逃げていく。
舌打ちして美登利と片瀬も走り出した。
「静かになったな」
エンジン音が消えたのに気づいて正人は校舎の方を見上げた。一緒にいた櫻花メンバーもそっちを見る。
しばらくして裏門から校内に戻っていた三年生二人がまた引き返してきた。
「池崎、中川が呼んでる。こいつらのリーダーが校内に潜り込んでたらしい。捕まえるのに足の速いのが必要だって、オレたちと交代だ」
「了解っす」
「それから、こいつらの中からひとり連れてこいって」
「? なんでですか」
「わからんが……」
三年の男子は固い表情でつぶやいた。
「怖くて、とてもあいつと口きけねえよ」
「え……」
「中川のヤツ、相当キレてるぜ。気をつけろよ」
適当に選んだ一人を引きずって正人は校内に戻った。
駐輪場をすぎたところで中川美登利が一人で正人を待っていた。
「そいつをここに置いて、あなたは片瀬くんたちと合流して。金指って黒いTシャツの小柄な奴を捜すんだよ」
「あんたは? こいつどうするのさ」
「黙って行って」
その抑揚のない低い声、固く冷たい表情。もう見たくないと思っていたのに。
正人はぐっと眉根を寄せて美登利を見つめる。
「どうしたの、早く行って」
苛立ちを隠しもせず美登利は早口に言う。
選挙戦のときとはまた違う。冷たい美貌の下に沸々と煮えたぎるものがその瞳から感じ取れる。
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