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第3章 異端の子
壊れる関係
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静かで穏やかな時間の流れる深い森の、更に奥。
少年の押し殺した泣き声が、深緑の森に抱かれて小さく木霊していた。
「やっぱりここにいた。……泣いてるの?」
「……」
何も言わずに横を向く少年の隣に、少女がふわりと腰を下ろす。優しい花の香りがした。
「大人の言う事は嘘ばかり」
暫くの間何も言わなかった少女が、ふと思い出したようにそう告げた。振り向いた少年ににっこりと無邪気な笑みを浮かべて、少女は少年の少し震えている手を握り締める。一瞬ぴくりと震えた少年だったが、少女の手を振りほどこうとはしなかった。
「だって、私知ってるもの」
握り締めた手に僅かな力を加えて、少女は少年を真っ直ぐに見つめた。無垢で、とても温かい眼差しに、少年の心がかすかに震える。
「ライリがとても優しいって」
「……セルリア」
「ライリは魔族なんかじゃない」
誰もいない静かな森。目を閉じて佇めば、自分の存在すら霧散してしまいそうな静寂の中。その音のない波に呑み込まれ溺れそうになっていた少年は、少女のたった一言で浮上する術を手に入れる。
差し伸べられる手のない静の森で、少年はやっと自分の居場所を見つけられたような気がした。
「子供だからって、やっぱり情けなんかかけるもんじゃなかったんだ!」
――大人たちが、怖い顔をして僕を見ている。
「穢れた血の追放を。これ以上の犠牲者が出る前に!」
――弓を構えて威嚇している大人も見える。
「闇は所詮闇だ。我らと相容れる存在ではない」
――どうして。僕はただ……皆に認めてもらいたかったのに。
「ライリを森から追放しろ!」
――どうして……僕の体、こんなに赤く汚れているんだろう。
「ライリ! ちょっと、ライリったら!」
ぐいっと袖を掴まれて、ライリの思考がそこで途切れた。
赤い過去の光景から、目の前で息を切らして自分を見上げるレフィスを瞳に焼き付ける。そうする事で、意識が「今」に縫い付けられるような気がした。
「……」
「どうしたの? あんな言い方、ライリらしくないよ」
「僕らしいって何? 大体君が僕の何を知ってるんだ。……何も知らないくせに」
「知らないわよ。だから聞いてるんじゃない! 大体ライリだって、聞いても教えてくれないじゃない」
逆切れしそうに少し声を荒げたレフィスを一瞥して、ライリがそれ以上何も言う事はないと踵を返す。背中から発せられる気配は先程と同じで、触れればただでは済まされない尖った刃物のようだった。
「……待ちなさいよ」
押し殺した声でそう言ったレフィスが、再び歩き出したライリの正面に立ちはだかって道を塞いだ。挑戦的なレフィスの態度と視線に、ライリがうんざりしたように瑠璃色の瞳をすうっと細める。さっきから少しも弱まる事のない剥き出しの殺気に怖気付きそうになったレフィスだったが、ここで引き下がる訳には行かないときゅっときつく唇を噛み締めた。
「どきなよ。……今、ひどく機嫌が悪いんだ」
脅しを含んだ声音と共に、ライリが右手をレフィスに向けた。
「怪我では済まないかもしれないよ」
「脅したって無駄なんだから。大体ライリ、何で私が怒ってるのか分からないでしょう!」
「セルリアに言った事だろう。悪いけど、あれは僕の本心だ」
「それもあるわ。でも一番怒ってるのは、ライリが何も言わないからよ!」
心臓を凍らせてしまいそうなほど冷たい視線。肌にびりびりと伝わる、それだけで痛みを感じる殺気。蛇に睨まれた蛙のように喉はからからに干上がっていきそうだったが、それでもレフィスは今この時にライリから目を逸らしてはいけないと感じていた。何より、その冷たい炎の揺れる瞳の奥に、かすかな悲しみの闇を見たような気がしたから。
「何も知らないくせにって……本当は知ってほしいんでしょう? 聞いて欲しいんじゃないの? でもライリは怖がってる」
「……っ」
明らかに殺気が増した。気を抜けば、そのまま意識すら奪われそうになる。こんな風にライリの視線を受けた事はない。でも今言わなくてはと、レフィスは気を奮い立たせてライリを見つめた。
「話してよ、ライリ。私たち、何の為の仲間なの? それともライリにとっては……それだけの仲間なの?」
「……」
「私、まだ知り合って短いけど、ライリは大事な仲間だと思ってるよ。ライリを置いて行く事はしない。それはきっと、ユリシスやイーヴィも同じだよ」
「……どこまで甘いんだ」
ぽつりと零れた言葉にレフィスが気を抜いた一瞬、ライリの中から凄まじい怒りと殺意に満ちた気が爆発した。突然の事に防御しきれなかったレフィスの体が、殺気をまともに食らって勢いよく後ろに吹き飛んだ。
「きゃあっ!」
ライリを中心にして爆発した殺気は通行人も巻き込んで、一時騒然となった大通りには地面に倒れこんだ人や粉々に砕けた窓ガラスが散乱していた。その中に、もうライリの姿はどこにもなかった。
「全く……お前は直球過ぎだ」
ライリに吹き飛ばされてどこかに激突するはずだと硬直していたレフィスは、背後から聞こえた声にびっくりして、いつの間にか閉じていた瞳をぱっと大きく開いた。
「……ユリシス」
民家の壁に激突する寸前で背後からレフィスを抱き止めたユリシスが、呆れたように溜息をつきながらレフィスの体から腕を放す。
「ありがとう。……それと、ごめんなさい」
「謝るくらいなら、最初からライリに吹っ掛けるな」
「でも……ライリ、辛そうだった。話して少しでも楽になるんなら……聞く事くらい出来ると思ったの」
「……あいつの抱えている闇は深い」
「ユリシスは、ライリの事何か知ってるの?」
見上げたレフィスに、ユリシスが緩く首を横に振ってそれを否定する。
「レフィス。お前、考えた事があるか?」
逆に問われ、レフィスが目を丸くしてユリシスを見上げる。若草色の瞳に映るユリシスは、なぜか少し悲しげな影を落しているように見えた。
「弓術を得意とするエルフが、なぜ暗黒術を扱えるのか。しかも魔族並みに強い力を」
「え?」
「エルフはもともと仲間意識が強い。それゆえに、異端者はどこまでも忌み嫌われる」
「……」
「だがお前は、すべてを知った上であいつを受け止められると、俺は思う。……あいつにはまだ、それに気付くだけの余裕がないだけだ」
ユリシスの言葉を聞きながら、レフィスはこの場を去ってしまった仲間の一人を思って静かに目を閉じた。瞼に映るライリの顔は、やっぱりどこか悲しげに揺らめいていた。
「レフィス、出発の準備をしておけ」
唐突に言われ、レフィスが物思いから現実へ慌てて逆戻りした。
「準備が整い次第、セルリアのいた深閑の森へ向かう」
「え? でも……」
「あいつは置いていく」
レフィスの言葉を遮ってきっぱりと言い切ったユリシスに、レフィスは何も言う事が出来ずに唇を噛み締める。
今の状態のライリを一緒に連れて行く事は出来ない。それはレフィスにだって分かる。けれど、どこかで今のライリを一人にしておけないと言う気持ちも捨てきれずにいた。
「……ライリ」
唇から零れた名前は、レフィスの胸に少しだけ悲しい静かな波紋をゆっくりと広げていくだけだった。
少年の押し殺した泣き声が、深緑の森に抱かれて小さく木霊していた。
「やっぱりここにいた。……泣いてるの?」
「……」
何も言わずに横を向く少年の隣に、少女がふわりと腰を下ろす。優しい花の香りがした。
「大人の言う事は嘘ばかり」
暫くの間何も言わなかった少女が、ふと思い出したようにそう告げた。振り向いた少年ににっこりと無邪気な笑みを浮かべて、少女は少年の少し震えている手を握り締める。一瞬ぴくりと震えた少年だったが、少女の手を振りほどこうとはしなかった。
「だって、私知ってるもの」
握り締めた手に僅かな力を加えて、少女は少年を真っ直ぐに見つめた。無垢で、とても温かい眼差しに、少年の心がかすかに震える。
「ライリがとても優しいって」
「……セルリア」
「ライリは魔族なんかじゃない」
誰もいない静かな森。目を閉じて佇めば、自分の存在すら霧散してしまいそうな静寂の中。その音のない波に呑み込まれ溺れそうになっていた少年は、少女のたった一言で浮上する術を手に入れる。
差し伸べられる手のない静の森で、少年はやっと自分の居場所を見つけられたような気がした。
「子供だからって、やっぱり情けなんかかけるもんじゃなかったんだ!」
――大人たちが、怖い顔をして僕を見ている。
「穢れた血の追放を。これ以上の犠牲者が出る前に!」
――弓を構えて威嚇している大人も見える。
「闇は所詮闇だ。我らと相容れる存在ではない」
――どうして。僕はただ……皆に認めてもらいたかったのに。
「ライリを森から追放しろ!」
――どうして……僕の体、こんなに赤く汚れているんだろう。
「ライリ! ちょっと、ライリったら!」
ぐいっと袖を掴まれて、ライリの思考がそこで途切れた。
赤い過去の光景から、目の前で息を切らして自分を見上げるレフィスを瞳に焼き付ける。そうする事で、意識が「今」に縫い付けられるような気がした。
「……」
「どうしたの? あんな言い方、ライリらしくないよ」
「僕らしいって何? 大体君が僕の何を知ってるんだ。……何も知らないくせに」
「知らないわよ。だから聞いてるんじゃない! 大体ライリだって、聞いても教えてくれないじゃない」
逆切れしそうに少し声を荒げたレフィスを一瞥して、ライリがそれ以上何も言う事はないと踵を返す。背中から発せられる気配は先程と同じで、触れればただでは済まされない尖った刃物のようだった。
「……待ちなさいよ」
押し殺した声でそう言ったレフィスが、再び歩き出したライリの正面に立ちはだかって道を塞いだ。挑戦的なレフィスの態度と視線に、ライリがうんざりしたように瑠璃色の瞳をすうっと細める。さっきから少しも弱まる事のない剥き出しの殺気に怖気付きそうになったレフィスだったが、ここで引き下がる訳には行かないときゅっときつく唇を噛み締めた。
「どきなよ。……今、ひどく機嫌が悪いんだ」
脅しを含んだ声音と共に、ライリが右手をレフィスに向けた。
「怪我では済まないかもしれないよ」
「脅したって無駄なんだから。大体ライリ、何で私が怒ってるのか分からないでしょう!」
「セルリアに言った事だろう。悪いけど、あれは僕の本心だ」
「それもあるわ。でも一番怒ってるのは、ライリが何も言わないからよ!」
心臓を凍らせてしまいそうなほど冷たい視線。肌にびりびりと伝わる、それだけで痛みを感じる殺気。蛇に睨まれた蛙のように喉はからからに干上がっていきそうだったが、それでもレフィスは今この時にライリから目を逸らしてはいけないと感じていた。何より、その冷たい炎の揺れる瞳の奥に、かすかな悲しみの闇を見たような気がしたから。
「何も知らないくせにって……本当は知ってほしいんでしょう? 聞いて欲しいんじゃないの? でもライリは怖がってる」
「……っ」
明らかに殺気が増した。気を抜けば、そのまま意識すら奪われそうになる。こんな風にライリの視線を受けた事はない。でも今言わなくてはと、レフィスは気を奮い立たせてライリを見つめた。
「話してよ、ライリ。私たち、何の為の仲間なの? それともライリにとっては……それだけの仲間なの?」
「……」
「私、まだ知り合って短いけど、ライリは大事な仲間だと思ってるよ。ライリを置いて行く事はしない。それはきっと、ユリシスやイーヴィも同じだよ」
「……どこまで甘いんだ」
ぽつりと零れた言葉にレフィスが気を抜いた一瞬、ライリの中から凄まじい怒りと殺意に満ちた気が爆発した。突然の事に防御しきれなかったレフィスの体が、殺気をまともに食らって勢いよく後ろに吹き飛んだ。
「きゃあっ!」
ライリを中心にして爆発した殺気は通行人も巻き込んで、一時騒然となった大通りには地面に倒れこんだ人や粉々に砕けた窓ガラスが散乱していた。その中に、もうライリの姿はどこにもなかった。
「全く……お前は直球過ぎだ」
ライリに吹き飛ばされてどこかに激突するはずだと硬直していたレフィスは、背後から聞こえた声にびっくりして、いつの間にか閉じていた瞳をぱっと大きく開いた。
「……ユリシス」
民家の壁に激突する寸前で背後からレフィスを抱き止めたユリシスが、呆れたように溜息をつきながらレフィスの体から腕を放す。
「ありがとう。……それと、ごめんなさい」
「謝るくらいなら、最初からライリに吹っ掛けるな」
「でも……ライリ、辛そうだった。話して少しでも楽になるんなら……聞く事くらい出来ると思ったの」
「……あいつの抱えている闇は深い」
「ユリシスは、ライリの事何か知ってるの?」
見上げたレフィスに、ユリシスが緩く首を横に振ってそれを否定する。
「レフィス。お前、考えた事があるか?」
逆に問われ、レフィスが目を丸くしてユリシスを見上げる。若草色の瞳に映るユリシスは、なぜか少し悲しげな影を落しているように見えた。
「弓術を得意とするエルフが、なぜ暗黒術を扱えるのか。しかも魔族並みに強い力を」
「え?」
「エルフはもともと仲間意識が強い。それゆえに、異端者はどこまでも忌み嫌われる」
「……」
「だがお前は、すべてを知った上であいつを受け止められると、俺は思う。……あいつにはまだ、それに気付くだけの余裕がないだけだ」
ユリシスの言葉を聞きながら、レフィスはこの場を去ってしまった仲間の一人を思って静かに目を閉じた。瞼に映るライリの顔は、やっぱりどこか悲しげに揺らめいていた。
「レフィス、出発の準備をしておけ」
唐突に言われ、レフィスが物思いから現実へ慌てて逆戻りした。
「準備が整い次第、セルリアのいた深閑の森へ向かう」
「え? でも……」
「あいつは置いていく」
レフィスの言葉を遮ってきっぱりと言い切ったユリシスに、レフィスは何も言う事が出来ずに唇を噛み締める。
今の状態のライリを一緒に連れて行く事は出来ない。それはレフィスにだって分かる。けれど、どこかで今のライリを一人にしておけないと言う気持ちも捨てきれずにいた。
「……ライリ」
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