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22:魔法戦

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セリムはアーサー、キーラとの騒動があったあとすぐにギルドを出た。今日は幾つも騒動があり時間をくってしまった所為で情報を集めるだけしかできなかった。それでも有意義な日ではあったが。


「そういえば依頼受けてなかったな…」


 とは言えセリムはまだEランクの初心者だ。その為、街の外での依頼は受けられない。


(そーいや、ランクの上げる条件き聞いてなかったな)


 カルラに言われたおっちょこちょいな所がここかもなと苦笑を浮かべた。




 セリムは今現在、都市アルスの門扉の前にいた。と言うのも金を稼ぐ予定だったのだが、色々と巻き込まれて出来なかったのでこうして夕方から行くことにしたのである。周りにはちらほらと他の冒険者と思わしき人たちもいる。


「オイ、坊主。夜は一人じゃ危ないぞ。昼間と違って周りが見えないし、モンスターが活発になるからな」


 親切心で忠告してくれる人だったが、セリムの顔を確認するやいなや驚きをあらわにする。


「おわっ、セリムっ」


 それだけ言うと足早に警備兵の所に行き手続きをし始めた。思ったよりもセリムの名は今朝の一件、ーーアーサー、キーラのも含むーーで知られているらしかった。それでも逃げないでほしいものだ。傷つく…見た目は十五歳でも中身ははまだ七歳のピュアボーイなのだ。



 夜の戦闘自体は初めてであったが、心配はしていなかった。

 門扉の所までいき、警備兵にギルドカードを見せる。それが街を出入りする時の決まりなのだそうだ。そうすることで行方不明になったものなどが判明するし怪しい者を入れたり、逃がしなりしないようにするのだそうだ。ちなみに警備兵はメルクじゃなかった。警備兵にも心配されたが大丈夫だと言い押し切った。

 さっそく森に向かう。


「さて、いっちょやりますかね」


 森に入り、辺りをを散策しゴブリンを見つけるがただのゴブリンか…とため息をつきながら速攻仕留める。仕留めた死体は魔石だけ取ると燃やした。


「もっと強いのはいないのかね」


 そんな風に思いながら森を疾駆していく。途中転びそうになるが何とか回避し走る事数分、見つけたのはオークらしき集団だった。


「初めてみるな。というか本当に豚だな」


 一人暢気に感想を漏らすがよく見るとあちこちに血が飛び散っていた。オークは集団で何かを囲むようにして佇んでおり、時折何かを潰すようなグシャ、グチャと言う男が聞こえる。


(誰か死んでるのか?)


 人が死んでるのにまったく動じないセリム。本来なら少しは恐怖してもおかしくはないのだが色々な魂を取り込んでしまった所為で色々変質してしまったようだ。

 木の陰からその集団の見ていると何かが飛んでくるのがわかった。セリムが隠れていた木の少し後ろにあった木にぶつかり葉がユラユラと落ちる。


「た、たす‥れ…」


 木にぶつかったのはどうやら先程からオークに攻撃を受けていた冒険者のようだった。腕は変な方向に曲がり、腹なんか抉れてしまっている。男がぶつかった木はセリムが隠れていた木よりも後ろにあった所為で男の視界にセリムが映ってしまい助けを求めてしまったのだ。それがまずかった。オークがこっちを振り向きブヒブヒと豚語らしき何かを言っている。男としては助かりたい一心だったのだろうが、こちらにしてみれば良い迷惑である。


(はぁ。余計なことを…どうせもう助からないらないだろうに)


 オークが近づいてくるのが音で分かった。セリムは男の元へと駆け寄るが助けるようなことはしなかった。


 いきなり火球を放った。ボゥと言う音と共に周囲の闇を払いながら飛んでいった火の玉は触れた瞬間爆発し、瀕死だった男は死んだ。


(恨むなら恨め。村を出た時から俺は家族を護るためなら己を犠牲にすることを厭わない、そういう覚悟でここに来たんだからな)


 誰かを護る為に己を切り捨てる。それが全ての悪を背負うと決めたセリムの覚悟だった。護れるなら何にでもなると…

 その瞬間聞きなれたアナウンスが流れる。


≪魂を消化、  …魂に付随する情報の取得。開示しますか?≫


 開示を拒否する。一々踏み台にした奴の事を気にしている暇はないのだから。


≪魂を喰らった事によりその全ての権利が譲渡されます≫


 その言葉と共に新たなスキルが手に入る。頭の中にステータスを表示する。


 名前 セリム・ヴェルグ
 年齢 :7歳≪見た目精神年齢ともに15歳≫
 種族 :人族
 1次職 :異端者
 2次職 :異端児
 レベル :30
 体力 :3500
 魔力 :3000
 筋力 :4000
 敏捷 :2950
 耐性 :3700

 スキル
神喰ゴッドイーター  LV2】
 剣技  LV6   
 纏衣まとい LV9  
【筋力強化   LV7】 
【拳技  LV6】  
【命中率上昇 Lv6】  
【体力強化  Lv3】  
【敏捷強化  Lv3】  
【耐性強化  Lv1】  
【魔力強化  Lv2】  
【硬化  Lv3】 
【気配遮断  Lv3】 
【気配感知  Lv1→2】 up
【咆哮  Lv2】 
【嗅覚上昇  Lv2】 
【毒液  Lv2】
【火魔法  Lv2】
【水魔法  Lv1】 
【風魔法  Lv1】 
【白魔法  Lv1】 
【暗黒魔法  Lv1】
【鑑定  Lv3】 new
【短剣術  Lv3】 new
【夜目  Lv2】 new

 職業専用スキル
【呪印 Lv1】 
【正統破壊 Lv1】
【強奪  Lv2】 new(盗賊専用スキル)

 魔道具効果 
 隠蔽  Lv10 max

【】の中身は隠蔽スキルにより視えません。




 新たなスキル鑑定を使い、オーク共を視る。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ・オーク
 レベル:28
 体力 :2800
 魔力 :780
 筋力 :1790
 敏捷 :600
 耐性 :1900


 スキル
 筋力強化  LV2
 体力強化  Lv2
 咆哮  Lv1
 受け流し  Lv2


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ・ハイオーク
 レベル:47
 体力 :4300
 魔力 :1200
 筋力 :2700
 敏捷 :1000
 耐性 :2200


 スキル
 筋力強化  LV4
 体力強化  Lv4
 咆哮  Lv2
 受け流し  Lv3
 統率  Lv2


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 視てみると一匹だけ身体が一回りは大きいのがいるのが分かる。初めて使った鑑定スキルで己と敵とのステータスを確認。問題ないなと分かるとセリムも動き出す。

 オークの集団に突っ込んでいく。オークはブヒブヒ言いながら手に持つ棍棒らしきもので殴り掛かってくる。棍棒を回避すると攻撃直後の隙だらけのオークに殴り掛かる。知性がないせいか、大振りの一撃を見舞ったオークは胴体ががら空きだ。


「ブモッ」


 声を上げ多少痛がって見せるもののあまりダメージがなかった。


「ん? 手ごたえはあった筈だが」


 そんな考察をしていると、背後からオークが捕まえようと手を伸ばしてくる。それを肘で突き上げ軌道をずらし蹴りを叩きこむ…が、またしても先程のオークと同じ感触。


(打撃は効果がないのか)


 その時、背中を向けていたオークに一発貰ってしまう。運悪く吹き飛ばされず、たたらを踏み、眼前にいたオークのところに行ってしまった。


「ブモォォ」


 気合の鳴き声とでもいうかのようなものを上げ蹴りを放ってくる。先程の仕返しかと思ってしまう。だが、そう簡単にやられるセリムではなかった。振り上げられた足を両腕で掴む。脇腹辺りに痛みが走るが無視だ。


「初見だから油断したが、調子に乗るなよ豚風情が」


 そう言ってオークを味方のいるところに投げるつける。その時に投げる力とオークを蹴りを止め、掴む力によりオークの脚が太ももからブチブチと気色の悪い音を立て千切れた。


「ブモォォォォォォォォォォォォォォ」


 叫びなのか痛みかそれとも怒りか。オークの脚を後ろに投げ捨て剣を抜く。そしてそのままオークに再び突進。オークたちハイオークも含め全部で五匹ほどいたが、次々に倒されていく。必死にハイオークが指示を出している様だったがそれよりも早くオークを切り捨てていく。


 打撃は聞かなかったが剣ではあっさり斬り倒す事が出来た。一分とかからずに残りはハイオークだけとなった。


「あとはお前だけだな」


 親の形見でもみるかのように睨みながら攻撃を仕掛けてくる。さすがに一回り大きいだけあり先程までのオークとは違った。だが結局は敵ではなかった。魔法を放つ。さすがにファイアーボールばっかだとなと思ったのでフレイムアローやフレイムランスを使うことにし焼いていく。

 お手本はカルラの所で見せてもらっていたので簡単だった。さすがカルラ。こうして豚の丸焼きの完成だ。処理をし魔石を回収、素材はどこが使えるかとか知らなかったので全て燃やそうかとも思ったが、せっかくなのでこのまま放置しモンスターが寄ってくるのを待つことにした。


 モンスターが姿を現すまでの間、先程の傷を白魔法で癒す。まだレベルが低い為そこまでの効果が見込めないのが残念だが回復出来るだけマシだろう。

 数分もすると予想通りモンスターが血の匂いに惹かれて姿を現した。木の上に上り観察してする。最初に姿を現したモンスターは狼系のモンスターだ。オークの肉を喰らっている。そこに一気に奇襲をかけ、首を落とす。そのあとにも数匹モンスターがきたが直ぐに殺した。その時に試しに先程の冒険者の職業"スキル"強奪を使ってみたら、これは相手のステータスを一時的に削る効果があるようだった。



「さすがにここにずっと居続けるのはあれだな」


 そう言いながら死体を燃やしていく。火事にならないよう注意しながら。その所為と言うかお陰というか魔法のコントロールがうまくなったのは余談だろう。

 その後にもモンスターを狩り、その日は森を後にした。




 名前 セリム・ヴェルグ
 年齢 :7歳≪見た目精神年齢ともに15歳≫
 種族 :人族
 1次職 :異端者
 2次職 :異端児
 レベル :34
 体力 :3500→4300
 魔力 :3000→3400
 筋力 :4000→4900
 敏捷 :2950→3700
 耐性 :3700→4200

 スキル
神喰ゴッドイーター  LV2】
 剣技  LV6   
 纏衣まとい LV9  
【筋力強化   LV7→8】 up 
【拳技  LV6】  
【命中率上昇 Lv6】  
【体力強化  Lv3→4】 up  
【敏捷強化  Lv3→4】 up  
【耐性強化  Lv1】  
【魔力強化  Lv2】  
【硬化  Lv3】 
【気配遮断  Lv3】 
【気配感知  Lv2】 
【咆哮  Lv2→3】 up 
【嗅覚上昇  Lv2→3】 up 
【毒液  Lv2→3】 up
【火魔法  Lv2→3】 up
【水魔法  Lv1】 
【風魔法  Lv1】 
【白魔法  Lv1】 
【暗黒魔法  Lv1】
【鑑定  Lv3】 
【短剣術  Lv3】 
【夜目  Lv2】 
【魔力操作  Lv1】 new
【受け流し  Lv3】 new
【統率  Lv2】 new

 職業専用スキル
【呪印 Lv1】 
【正統破壊 Lv1】
【強奪  Lv2】

 魔道具効果 
 隠蔽  Lv10 max

【】の中身は隠蔽スキルにより視えません。



 街に帰るころには空は白んできていた。


「そーいや、今日キーラとかいうエルフと戦わなきゃだな」


 欠伸をしながら門扉を潜りビルド停に戻る。やはり皆寝てしまっているのだろう、静かだった。音を立てないように階段を上り自分の部屋まで行くとベッドに倒れた。さすがに疲れた。


 数時間だけ睡眠をとり、起床する。寝ぼけた頭で桶に張ってある水を使い顔を洗うと、冷たさが心地よく、シャキッとなる。


「眠い…」


 階段を降り朝食を摂りに行く。


「あんた、夜帰ってきてなかったみたいだけど大丈夫?」


 宿のおばちゃんが心配そうに話しかけてきてくれる。とりあえず大丈夫ですといい頷いて見せる。


「すいません、今日は軽めでお願いできますか?」

「あいよ」







 朝食を食べ支度を整えるとギルドへと向かった。またしても欠伸が出る。欠伸を噛み殺し約束の闘技場へと向かう。

 闘技場に入るとそこはオード達の時と同じく人が集まっていた。


(こいつら暇なのか? 働けよ)


 そう思いながらアーサー、キーラを両名を探す。


「よぉ、セリム。来てくれたか」


 アーサーが声を掛けてくれたおかげで直ぐに見つけることが出来た。


「悪いな。さっそくだが始めてくれるか?キーラがソワソワしてて」

「了解」


 それだけ答えキーラのとこに向かう。人垣が割れ通してくれる。


(ワハハハハ、道を開けろ!)


 どうでもいいことを考えてしまう。これが異世界の影響だろうか。



「よく逃げずに来たわね」

「逃げてもしつこく追ってきそうだったからさ」

「んなっ! 私を何だと思っているのよ」


 こんな会話をし直ぐに決闘が始められる。周囲の連中はどちが勝つかを賭けている奴もいたりと勝手に盛り上がっている。


「お前はどっちが勝つと思う?」
「そりゃ、キーラじゃねーか。なんつってもエルフだし遠距離から魔法で攻撃すればな」
「セリムもすごかったが接近戦型っぽいしな~」


 こんな会話があちらこちらで聞こえてくる。そんな中遂に、決闘の合図を告げる音が鳴った。まず最初に動いたのはキーラだった。手を前にかざし魔法を発動する。


「我の求めたるは炎 集いて闇を照らし 敵を撃て」


 詠唱が終わると同時に複数のファイアーボールと思わしき魔法が飛んでくる。


「詠唱!?」


 驚いてしまう。この反応をどう受け取ったのか周りの連中はセリムが魔法を知らないのかという話し声が聞こえてくる。

 問題はそこじゃないんだがと思いながら火球を全てかわしていく。セリムが驚いたのは、詠唱があったことについてだ。今まで詠唱なんて一度も使ったことがなかったし聞いたことも無かった。カルラも使ってなかった。その為驚きをあらわにしてしまった。


「んもうっ! 避けてんじゃないわよ」

(避けなきゃ怪我するだろうが!)


 キーラは次の魔法を発動した。今度は両手を前に翳す。


「我の求めたるは水 命の源にて大いなる一部 呑み込め」
「我の求めるのは風 空を乱舞し 全てを断ち切らん」


 詠唱が完了すると同時に片手ずつに違う魔法が顕在する。周りが驚いている、高度な技術なんだろう。しかし、セリムには関係なかった。魔法で遠距離からやってくるならちょうどいいと練習として張り合いだす。

 脚で地面をかるくトンッと叩く。その瞬間炎の壁が出来あがりキーラの攻撃を防ぐ。


「なっ! 私の魔法を」


 魔法戦においてキーとなるのは魔力量だ。相性も関係するにはするが魔力をどれだけ込めたかによって威力が変わってくる。


 炎と水で水蒸気が出来上がり風で飛ばされる。その中でセリムは手に炎を収束させていた。


「さて、ちょっと実験に付き合ってもらうぞ」


 昨日魔法を使ってるときに炎を収束したものをそのままの形で放つ事が出来るかと考えたのである。ファイアーボールよりも収束させたそれを線の攻撃として放つようはファイアービームとかそんなもんだ。名前は格好悪いから使わないが。

 今のセリムではまだ魔力操作が拙いため時間がかかる。が、ようやく完成し放とうとした瞬間だった。手元で爆発してしまったのだ。


「くそっ、やっぱできねぇか」


 周囲からどうなったのかと言うどよめきが起こる中、煙の中から何事もなかったような顔でセリムが出てきた。一瞬だけ纏衣を使いステータスを跳ね上げる。そしてキーラのすぐ後ろに回り込みチョップの寸止めで終わらす。




 キーラは気付いた時には試合が終わっていた。まったくセリムの動きが見えなかったのだ試合を観戦する者の中でその動きを追えたものはアーサーとギルドマスターのレイニーを含む数人だけだろう。

 セリムは試合が終わった後、ざわざわと騒がしくなる場を気にすることなく、すぐにギルドを後にした。そうして魔法の練習へと向かったのだった。

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