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14:動き出す運命

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 時はソート村にクロント王国の者たちが着た頃に戻る。


「アガレスティ様、このあとはアガレスティ様が村人を視て行くと言う事でいいんですよね?…アガレスティ様?」


 騎士の一人が訪ねるがアガレスティと呼ばれた人物は反応を示さない。


「ん、あぁ、悪いね、それで構わないよ。準備してくれるかい」


 はやる気持ちを押さえつけ優しい口調で言い放つアガレスティ。

 まさかこんな辺境の村で神敵スキル保持者、しかも今までに発見されたことのない新種のスキルを持発見できるとは。その事がアガレスティにとって 何よりも心を躍らせた。手柄が立てられると…

 アガレスティ率いるクロント王国がそもそも何故こんな村に来たかと言うとつい数週間前にクロントより北に位置するエルフの国ーアルフレイムーが何者かにより壊滅させられたと言う報せが入った為であった。

 クロント王国の王ーライドリヒ・クロントはこれに対し国に害をなす存在から国の防衛を目的とし戦力の増強を図ることにしたのである。その為、王国領の各地に人員を探索の命で送り、アガレスティ率いる騎士達はこの村に来たのだ。



 しかしこの村では残念ながら戦力となる存在は見つからなかった。

 だが、そんな事はアガレスティにとっては些細な事だった。何せ新種の神敵スキルの発見と言う重大な情報を得たのだから。



 こうして運命の歯車は少しずつ狂いはじめる。











 荷馬車に揺られることを三日。アガレスティの考えることなど知る由もないセリムは、目的の場所、都市アルスに辿り着く。アルスは周囲を壁に覆われた城郭都市だ。馬車と護衛の二人は他の街に用があるらしく先程別れた。


「んー 馬車って結構ケツが痛いのな」


 軽くストレッチをする。アルスにたどり着くまでの間は特に何が起こるわけでもなく平和なものだった。


「さてとっと、街に入らさせて貰うかな」


 軽く言い放ち都市の入り口に向かう。が、そこには多くの警備兵などが待機しており中々に物々しい雰囲気を醸し出していた。

 近付くに連れ警備兵達が目つきを細めてこちらを伺っているのが分かった。しかしそんなのは気にせず近付き話しかける。


「すいませんが、街に入りたいんですけど」

「入りたいんならまずは、身分を証明出来る物を見せてもらわないと」

「証明?」


 この世界に来てから聞いたことのない単語が出たため理解が出来なかった。


「持って無いなら金を払ってからその後に身分証明書を発行する手続きをとるんだが、生憎と今はそう言う訳にはいかないんだ」

「何故と理由を聞いても?」


 警備兵の言葉から察するに何かしら緊急事態が起こっていることが分かる。その事情を聞くことにしたセリム。


「なんだ、知らないのか。 エルフの国が何者かに襲われて壊滅したそうなんだ。だから今は、警備を厳重にし人の出入りを厳しく制限している」


 初耳だ。それよりも国を壊滅させる程の戦力。そんなもの戦争じゃないなら現状思いつくのは一つしかない。大罪スキルの内のどれか、または複数。憶測の域を出ないため口にはしないがそれ以外あり得ないと決めつけていた。


「そこを何とかなりません?」


 軽い口調で言い放つセリム。ちっとも通して欲しそうには見えない。


「ダメだ、身分が分かんない奴を街に入れるわけにはいかないんでな」

「そこを何とかっ!」


 入れてもらわないと今後生活するうえで困るので少しは必死に頼みこむ。が、やはり警備兵の答えはダメの一点張りで話が進まずにいると一人の男が入口の中から出てきた。


「どうした?」
  
「それが… と言う事情でして…」


 入口から出てきたは男は他の警備兵と同じく鎧を付けていたが雰囲気が違った。人を見定めるような鋭い目つき。それだけでこの人物がかなりの観察眼の持ち主だと言うのが窺えた。


「見た所、君は冒険者のようだが…身分証を持っていないのか?」

「冒険者になりにここへ来たので」

「なるほど。理由は分かった。だが今はそう簡単に人を入れられないのは分かるな?」


 そこまで言い一旦言葉を区切ると、こちらの反応を窺う。理解しているかの確認の意味合いなのだろう。


「そこでだ、今はどこも警備を強化している所為で人員が足りない。冒険者の手も借りたいところであるのだ。だからもし、君が我々にとって益となる存在ならば、君の身分を私が保証し街への入場を許可しよう」


 背後から隊長、そんな事していいんですかと驚きを声に出す警備兵。今は人手が必要な時だと言われると渋々ながらも納得した様子で引き下がる。隊長と呼ばれた男はセリムに向き直り問いかける


「で、どうするんだ少年?」

「それで通してもらえるなら」


 セリムとしても八方塞がりの所だったので隊長と言われた男の提案には渡りに船だったのだ。応えを聞くなり男は頷き街の中に入って行ってしまった。 
 
    あれ、置いてけぼり…






 それから数十分後――

 隊長と言われた男が再び姿を現した。先程とは違い腰に剣を帯び、武装を整えていた。


「待たせて悪いね、今日は元々休みだったからね。遅ればせながら自己紹介させてもらうよ。メルク・ニルヴァーナだよろしく」


「セリム・ヴェルグです。こちらこそよろしく」


 お互いに挨拶をかわし森へと向かって歩いていく。

 何故、森へ行くのかと言うと、メルクが益となるならと言ったことが原因である。今からセリムが使えるかどうか腕を見極める為に森へ赴き、モンスターを狩るのである。今は人手が足りないと言う事で、護衛として少しでも腕の立つ者を集めているのだそうだ。だからいきなりこんな無茶とも思えることをさせているのである。

 メルクにもそれが分かっているのか、すまなそうな顔をしている。


「今回狩ってもらうモンスターはコボルトや ゴブリン程度だな。新人冒険者では結構お世話になる相手だ」


 今回提示されたモンスターはセリムにとっては今更といっても良かった。そんな物でいいのかとも思ったが、簡単に済むのならそれに越した事はない。黙ってメルクの後についていく。


 しばらく歩くとスキル"気配感知"に反応が現れる。そのすぐ後にメルクも立ち止まる。木に身を隠しながら説明をしてくれる。


「ゴブリンだ、数は二匹。いけるか?」


 頷き了承の合図を出す。


「無茶はするなよ。いざとなったら私が割って入るから」


 その言葉を聞き歩きだす。後ろからオイっ! 何してるんだっ!と小声で叱責するメルクを無視してゴブリンに近づく。この程度の敵に姿を隠して挑むなどと言う戦い方はしない。必要ないからだ。


「ギャギャ!」

「グギャ」


 ゴブリンたちはセリムに気付くとこちらに向かって走り出してくる。メルクが言わんこっちゃないと言いセリムを助けに飛び出す。が、その瞬間、一瞬にして仕留められた。

 迫ってきたゴブリンの攻撃をよけ二匹とも素手で一発。それだけである。


「さてこれで身分を証明してもらえますよね?」

「あ、あぁ、そうだな」


 メルクはセリムに対し少し意外感を覚えていた。帯剣していたからてっきり剣を使うものだと思っていたのだ。意外感を覚えながらも課題はクリアしたのでアルスに引き返そうとした時、森の奥の方から悲鳴が聞こえてくるのが聞こえたきた。
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