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閑話祭り その2 『留置所にて』 『???』 『賢者』

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『留置所にて』

「……で、これからどうするんだ、ナギ?」
「何言ってんだよ、マーリー。どーするって……どーしようもねぇだろうよ」
 強固な石造りの牢屋の中で、二人の少年はそう言葉を交わしていた。
 それは成金 望が特例で釈放を許された後の話であり、彼らの他には牢屋の前に佇む見張りの青年しかいなかった。
「操られてたとか言い訳したってよ、俺が王族の暗殺に動いた事は動かしようが無い事実なんだからよ。どーしようもねぇだろ。なんなら今、殺されてないのが不思議ってもんだぜ」
 そう諦めたように言葉を返す少年を見て、対する一人は呆れたように言葉を紡ぐ。
「それで良いのかよ? 結局、お前の悩みは何も解決してないんだろ?」
 それは酷く真実を突いた言葉であった。
 少なくともナギ・フィーロに対しては。
「……」
「ノゾムさんに話してた事を纏めるならよ。自分がなんなのか知りたい――それがお前の望んだ事なんだろう?」
「……黙れよ」
「お前の話を信じるならよ、無責任に生み出されて、良いように操られただけだろ」
「……黙れって言ってんだよ」
「それのどこがお前の人生――」
「――黙れって言ってんだよ!!!!」
 そう叫ぶと少年は淡々と台詞を投げ続けた少年の胸倉を掴んだ。
 そのままの勢いでもって、壁へと叩きつけ、言葉を吐きかける。
「テメェに何が分かんだよっ!! ああっ!?!? ふざけやがって!!」
「……」
 憤怒の表情で――、否。
 実際に激昂という表現がしっくりくる程に感情を高ぶらせながら少年は吠える。
「俺の人生だ!? んなもん俺が一番知りてぇわ!!」
「……」
「ああ、そうだよ!! 知りたかったさ!! 俺がなんなのか!? 俺は何の為に生まれたのか!!」
「……」
 吐きつけられる激白を、片方は何も言わずに受け止める。
 その真っ直ぐな視線に気づかないまま、ナギと呼ばれた少年は俯きながら言葉を重ねる。
「生まれから異質だった!! 育ちから異端だった!! じぃちゃんはいたけどよ!! それしかなかった!!」
「……」
「なんで俺だけ違ったんだ!? どうして俺は違ったんだよ!! 何かしたのかよ!! 何もしてねぇよ!!」
 それは慟哭であった。
 どこにも、誰にも話せずに、ナギが抱え込み育て上げた悲哀の種。
 差別なんていう言葉では生温く、孤独なんて言葉ですら程遠い。
 これまでの人生という少年の中では長すぎる時間で以て作り上げられた絶望の形。
 それをこじ開けたのは無責任に過ぎるマーリーの発言であった。
 自分とそう変わらない年でありながら、自分とは違い王族の護衛を守ったという栄光を持ちながら、痴漢などという汚点を誤魔化さずに話し、自分と同じく牢屋へと入れられた少年。
 それらの事実を知った時、ナギは何もかもがふざけていると思った。
 どうして真面目に生きてきた自分が死刑に怯えながら、ふざけきったこいつに人生なんて問われるのか。
 どうしてコイツは自分が欲しくて仕方が無かったモノを捨ててまで、こんな場所に入ったのか。

 ――ナギには心底、このマーリーの意図が読めなかった。

「……俺だって本当はまだ死にたくねぇよ」
 胸倉を掴んだ手を震えさせながら、ナギはそう呟く。
 その声は震えていたが、この場にいる誰もがそれを情けないとは思わなかった。
「まだ、なんにも分かってねぇんだ。俺はまだ……」
 手に雫が落ちる。
 それは言葉にならないナギの気持ちそのもので――

「んで? 結局、どーしたいのお前は?」

 ――それを確認したマーリーは最初と変わらないトーンでそう言った。
「……え?」
 思わず呆然と呟き、ナギは視線を上げマーリーを見る。
 そこには真っ直ぐに見つめ返す視線だけがあった。
「いやいや。え?ーー、じゃねぇよ。質問には全く答えてないじゃんか、お前」
「……」
 呆れたように言葉を変えながら、マーリーは自身の胸倉を掴んでいる手をどかす。
 そのまま首を傾げて彼は言葉を投げかける。
「俺はただ単にお前がどーしたいのかを聞いてんの。諦めるならそれでも良いんだけど、お前の話聞いてると俺としても、少しばかり思うところはあったからさぁ」
「……」
 ナギは絶句していた。
 先ほどもマーリーの意図は読めないと思ったが、ここまでだとは思わなかったのだから。
「何をぼーっとしてんだよ。しょうがねぇなぁ。とりあえず、生きたいは生きたいんだよな?」
「……あ、ああ」
 変わらず呆けたまま、なんとかそう言葉を返すナギ。
 そう返すのが精一杯であった。
「おーけい。そんじゃ、やる事は一つだろ」
 そう言うとマーリーと呼ばれた少年は一切の気負いも無しに続く言葉を吐き出した。
「脱獄しようぜい」
 そう言うと彼は牢の入り口へと無造作に近づいていく。
 そのまま檻の隙間から手を伸ばすと、入り口のすぐ近くで立っていた兵士の懐を弄り出した。
「お、おい!?」
 それを見て、ナギはようやく活動を再開する。
 目の前の光景に余りにも現実味が無かったので、行動が遅れたがそれは明らかに異常であった。
 そもそもどうして兵士はピクリとも動かないのか。
「ん? ああ、心配するなよ。ちょいと結界魔法で体の自由を奪ってるだけだから――お? あった、あった」
 そう言いながら、マーリーは兵士の懐から鍵を取り出すと事も無さげに牢から外へと抜け出した。
「ほれ、早く来いよナギ。他の見張りが来る前に逃げようぜ」
 そうして、当たり前のように話しかけてくるマーリー。
 ナギにとってはそれら全てが理解の外だった。
「……意味がわからねぇ」
「ん?」
「どうして俺なんか助けるんだよ!! お前ならそのままじっとしてれば確実に釈放されただろうが!!」
「あー。まぁ、そうだろうなぁ」
「本当にふざけるなよ!! こんな事したらもうお前だって殺されるかもしれないんだぞ!!」
「んー。まぁ、そうかもなぁ」
「ほんとにわかって――」
「――でも、俺がそうしたかったからしょうがねぇよな」
 なんとも毒気の抜ける顔で、なんでも無いかのようにマーリーは笑った。
「自分が分からないってのは辛いよなぁ。――俺もノゾムさんに会うまではそうだったからよ」
 どこか恥ずかしそうにマーリーは笑う。
 それは宝物を自慢するような少年の笑み。
「俺もな。小さい時から自分の考えなんて許されなくて、親の言う通りに勉強だけを続けて、続けて、続けて、只々がむしゃらに走り抜けてこのリーネ大学に入ったんだ」
 だけどな――、と結び彼は言葉を続けていく。
「そうして最終学歴のリーネ大学に入った時に……この後、どうすれば良いのかが急に分からなくなったんだよ。今までは大学に入る事だけが目的で、入った後自分がどこに進みたいのかなんて考えた事も無かったんだ。それに気づいた時は驚くよりもぞっとしたぜ。振り返ってみるに、俺の人生にはそもそも『自分』なんてモノが無かったんだから」
 それはナギにとって予想もしていなかった言葉であった。
 こんなふざけ倒した様な男の口から、まさか自分と同じ様な悩みが出るとは思わなかったのだから。
「そんな時にノゾムさんが教えてくれたんだ。俺という人間が何に対して喜ぶ人間なのかを。そして本当の自分をさらけ出した先にある今まで感じたことが無い程の素晴らしい自由を」
 そう語る少年の目はどこまでも透き通っていて、純粋な尊敬だけを映していた。
「――だから、決めたんだ。俺もいつかこうなろう――、って。皆の『自分らしさ』を解放出来る世界を作ろうって。誰かが自分を偽る事が無いように、誰もが自分を縛る事が無いように」
 少年は熱意を持って夢を語る。
 どこまでも、どこまでも真っ直ぐに。
「だからさ。お前がまだ『自分』を見つけられてないのなら、俺はそれを手伝うよ。――それこそが俺が目指した道だから」
「……」
 ナギはまともに言葉を出せなかった。
 けれども、確かにナギの胸には言葉に出来ない思いが溢れてきていた。
 思えば、メスト・フィーロと別れて以来、これほどまでに誰かと胸襟を開いて会話した事など無かった。
「あ……りが……とう!!」
 零れ落ちる滂沱の涙は、溢れ落ちる感情の発露そのものか。
 言ってる事はめちゃくちゃだったが、これまで深い対人経験を積んでこなかったナギには、自身の損得を抜きにして、真っ直ぐに差し伸べられてくるその手を拒む事は出来なかった。
「んじゃ、行こうぜ。ナギ。とりあえずの目標は『賢国』脱出ってか」
「……ああ、そうだな」
 そうして二人の少年は牢を後にした。

 ――その後。
 信じられない程に卓越した結界魔法を駆使して執拗に若い女性の下着を狙う泥棒と、それを妨害する事に全力を注ぐ少年の二人組が世界各国で目撃される事になるのだが。
 幸か不幸か、そんな未来を知る者はこの時点では一人もいなかった。



『???』

「あはははははははははっっ!! すごいねっ、彼は!! こうなるんだ! すごいよっ、すごいっ!! 誰も死なないなんて想像もしてなかったよ!!」
「そう。それは良かったね」
 声だけが響く空間――、という通常の表現では表し難い概念世界。
 明らかに生物的な要素が欠けるそんな場ではありながら、此処では確かに会話という酷く人間じみたやり取りが行われていた。
「ノゾム君のステータスはひっくいからねぇ!! 最後の最後に動けるとは思わなかったんだけど!! すごいよ!! 予想が外れるなんて何年……いや、何百年振りだろう!!」
「落ち着きなよ。さすがにはしゃぎすぎだから」
 ――男とも女とも。童とも老人とも取れるような二対の声。
 違和感なんて言葉では言い表せない程に矛盾を孕んだその声は、それでも区別を可能とするほどに声色に特徴を滲ませていた。
 片方は弾むような上機嫌で、片方は諫める調子で冷静に、声たちは会話を続けていく。
「ふふふふふふっっ!! むーりーだーよぉぉぉぉ!! ああ!! 嗚呼!! 楽しいね、楽しいな、楽しいよ!! これからどうなるんだろうね! カオス理論だ!! バタフライエフェクトって奴さ!! ナイアちゃんの力はどんどん戻るし!! 龍王だって活動を再開する! 新しい魔王の彼だって遂に動いてくれそうだ! ぁぁ。ああ。勇国も賢国も剣国も聖国も三百年前とは全然違う! 国家としての構想がある! 選ぶのは共存か戦争か、和平か支配か!! ああっ!! ここからだね、ここからだよ!!」
 上機嫌な声は語り続ける。
 心底嬉しそうに、本心から楽しそうに。
 誰にも憚ることなく堂々たる態度で――
「戦国だ!!」
 ――その声は戦乱を喜んでいた。
「実に!! 実に千年ぶりの群雄割拠だっ!! 今までの英雄が死んで、新しい英雄が生まれて、悲哀も憎悪も巻き込んで、狂乱と賛嘆の宴が始まるね!! 素晴らしいよ、素晴らしい!! ありがとう、――ッ!! 君が送ってくれたノゾム君のお陰で、今の僕はとても幸せだよ!!」
「そうかい。それならよかったよ」
 捲し立てるように、囃し立てるように、のべつ幕なしに語り続ける存在に対して、言葉をかけられた方は呆れたように言葉を返した。……ほんの僅かに安堵の色を滲ませつつ――

「――ただ、一つだけ聞きたいんだけど、キミってノゾム君に力を貸したりしてないよね?」
「……」

 ――そして。
 そこに差し込まれる様に、問い掛けが投げられた。
 それは今までの上機嫌が嘘のように平坦なトーンであり、さながら詰問じみていた。
「ナギ君が最後に飛び掛かった時、ノゾム君が予想外の反射を見せてアリアちゃんを押し倒したからこそ、彼女は生き延びることが出来たけれど」
「……」
「普通に考えるとノゾム君の<ステータス>で、あの時のナギ君に対応できたとは思えないんだよねー?」
 あざとく語尾を上げるようにして、あくまでも確認の体を取りつつ投げかけれるソレだが、そこには口調とは裏腹に言い知れぬ圧迫感を伴っていた。
「しっかり者の――に言うまでもないと思うけど、他の神の世界に干渉するのは重罪だからね? 異世界転移として死者を送り込むのだって、かなり黒よりのグレーだし」
「……」
「元々イレギュラーの転移者は僕のお願いでもあるんだけど、もし世界を渡った後にまだ関わっているのなら最悪の場合、神としての権限すら――」
「――ねぇ」
 そんな言葉を塗りつぶすように。
 底冷えがするなんて表現ですら生ぬるいほどに、冷たく、ただただ冷たく声が返された。
 これまでの会話の流れを斟酌なく切り捨てて、その声は言葉を紡いでいく。
「私からも一つ聞きたいんだけさ」
「……う、うん。どした……の、――?」
 それを受けて、問いを投げかけていた声は先ほどまでの威勢が嘘のように、縮こまるようなトーンで言葉を返す。
「その発言は私を疑っているってことで良いのかな? ――」
「あ……あら? もしかして――、怒ってる?」
 声の一つがそう返した瞬間。

 ――空間が割れた。

 因果が崩壊し、次元が乱れ、世界軸が傾いでいく。
 それは明らかな世界の崩壊であったが、何も変化したのは世界だけではない。
 言葉だけの存在であった二つの存在が、影が変化するように蠢く気配と共に、人型へと変化していく。
 それでもどうしてか概念的なモノであり、容姿や性別すら分かるものではないが、その存在は確かに怒りを露わにしていた。
「大した根拠もなく、雑すぎる君の主観に基づいて、私は尊厳を踏みにじられたっていう認識で良いんだよね?」
 それでも声は荒げない。
 あくまでも静かに、しかして激情を確かに載せて、ソレは言葉を紡いでいた。
「いや……そんなつもりは無いよ? ホントだよ? だから、ちょっと落ち着いてほしいなぁという、なんというか……」
 そんな急変にしどろもどろに返す片方は、もはや最初の上機嫌が嘘のようであった。
「『異世界転移』……君の言葉を借りるのなら黒よりのグレーだっけ? 私は今まで随分と協力的に動いてあげていたつもりなんだけど、その結果がコレならやっぱり間違いだったみたいだね。他の神の忠告を素直に聞いていればよかったな。曰く、君とは関わるなだっけ?」
「あ……あのぅ、――さん?」
「凄いよね? そもそも疑われる理由が、『君が送り込んだ人間が予想外に頑張っているんだけど、なにかした?』、なんてね。イレギュラーを欲しがった君からそんな文句を言われるなんて、それこそ予想もしてなかったな」
 憤慨を乗せて声は語る。
「ねぇ? そういう疑問を持つってことは、私が送ってあげたあの転移者、ノゾムはあの時に急激に<ステータス>を上げたりしたの?」
「……いや、してないです」
「<ステータス>的に説明できない動きでもしたの? それとも因果律を操作したような痕跡でもあったのかな?」
「……どっちもありません」
「君としては動けたってだけで予想外だったかもしれないけど、結果としては王女に向けて転んだだけだよね?」
「……はい」
 影の一つが肩を落とすように、しゅん、となるが、怒りをぶつけていた方は溜飲が下がらないとでも言うように言葉を重ねていく。
「そもそも私が関与するのなら、ナギも王女も無傷で抑えているよ。あんな不甲斐ない結果を元に私の関与を疑うのは納得がいかない。大体、私はこの観測世界で、君と並んでその様子を見ていたのだけれど、君は真横で神通力を使われても気づかない程に鈍感なのかな?」
「うぅ……で、でもでも!! あの時のナギ君の速度はとてもじゃないけど、ノゾム君が目で追える速度じゃ無い筈だし、それならやっぱり反応ができたこと自体が――」
「――走馬燈でも見てたんじゃないの? 知らないけど」
「……」
 その一言で、言い訳を続けようとしてた方は沈黙した。
 死の間際にこれまで人生を振り返る程の思考加速を得る走馬燈。
 生物には確かにそんな力があるし、それであれば説明がつくという事に納得してしまったようであった。
「……で、でも、あの時に狙われていたのはアリアちゃんで――」
「――ナギ君は殺気に溢れていたし、彼女の目の前に立っていたノゾムが勝手に勘違いして走馬燈を見ても不思議じゃないと私は思うけどね」
 沈黙が流れた。
 それは論破が成されたという確かな証明であり、そうして多少の気まずさを残す片方を置き去りに、肩を怒らせるようにして一つの存在はその場を後にしたのであった。


「……ふぅ。――が怒るなんて初めて見たなぁ。んー。やっぱり最近は感情が豊かになってきてるよねぇ」
 肩をすくめるようにして、残された方はそう言葉を紡ぐ。
 そこには先ほどまで見せていたようなしおらしい態度など微塵もなく。どこかおどけるように言葉を紡ぐ。
「まぁ、理屈は通るけどね。やっぱり――にしては少し感情的な反論だったかなぁ。十中八九有りえないとは思うけど、本当にルール違反している可能性もあるよねぇ。楽しいな、楽しいね。どちらもあり得るなんて――」
 ただただ楽しそうにソレは笑うのだった。
「――まったく予想ができないや!」
 その発言はどこまでも無邪気な喜びで満ちていた。


「……これで誤魔化せたと思うのは楽観が過ぎるか」
 残された声がそう笑っていた頃。
 去った方も先ほどまでの憤慨が嘘のように、冷静にそう言葉を紡いでいた。
 ただただ訥々と、静かに並べるようにソレは言葉を紡いでいく。
「もう同じ方法は使えないか。……はぁ、こんな無駄に危ないだけの橋を渡るのは、私の流儀じゃなかった筈なんだけれど。まったく――やれやれだぜって感じかな」
 そんな呟きを拾う存在はこの場にはいなかった。



閑話『賢者』

「……やっぱり不自然だよね」
 手にしていた書類を戻しながら、僕はそう独白を零した。
 独り言なんてなんの生産性も無い行動だけれど、これまでの僕の不毛な情報収集を踏まえたのなら、むしろ相応しい動作だと言えるだろう。
「……情報が無さすぎる」
 引き寄せた椅子へと腰を落ち着けて、僕は思考を巡らせる。
 一ヵ月。
 それは、この勇国へ潜った僕が三百前の魔王に関する資料について調べた期間だ。
 仮にも国の代表である僕としては、そろそろ賢国へ帰らないといけないのだけれど、欲しかった資料は未だに影も形も掴ませてはくれない。
「……おかしいな。事前調査では勇国は明らかに魔王討伐に乗り気だったのだけれど」
 三百年前。
 過分な評価とはいえ、僕が賢者として称えられることになった魔王討伐という大事件。
「……最初にして最後の四大国家間の共同戦線なのに、これは異常だよ」
 当時の勇国の情報が、その中でも魔王と王族に関する情報が不自然なまでに欠落しているのだ。
「ここまで無いとなると、他国である筈の賢国の方が勇国について資料を残しているんじゃないかな?」
 呟いてはみたが、もし仮にそれが真実だとすれば笑えない話である。
 何のために親友にバレない様に、嘘をついてまでこんな所に来たのかが、まるで分らなくなるのだから。
「意図的に隠蔽されたのだとすれば、やっぱり勇国には疚しい処があったっていうことかなぁ」
 そう考えるのが自然かもしれないが、それだと確定的な証拠だとは言い難い。
 少なくとも当時の資料が無いという理由だけで、三百年間ずっと悪逆非道であると唱えられてきた魔王が実は人畜無害な存在であった――、と信じさせるのは不可能というものだろう。
「……とくにエルにとっては、お父さんの話も絡んでくるしね」
 そう呟いて、僕はため息を零す。
 当時の真相を探るという目的を諦めるという訳ではないけれど、ここまで成果が上がらないのならアプローチを変える必要があるだろう。
 既にこの資料室は粗方調べた訳で、ここからあくまでも勇国での情報収集に拘るのであれば、王の部屋などを調べるくらいしか思いつかない。
「そこまでいくと……流石にエルの力を借りたとしても難しいだろうし」
 一つ嘆息して、卓上に出しっぱなしにしていた本を一冊手に取りながら、僕は腰を上げた。
 どちらにしてもここで出来ることは無いのだから、一度賢国へ帰り改めて方針を固めようと考えながら、僕は手にしていた本を棚へと戻し――
「ん?」
 ――僅かな、本当に微かな魔力の残滓に気が付いた。
 僕はソレを辿り本棚の橋へと視線を移す。
 そこには『勇者 エル・アルレイン・ノート』とだけ題された一冊の小冊子があった。
「……なんだろうね」
 呟きと共に冊子を手に取り、ぱらり、と内容を確認する。
 それは勇者と呼ばれる女の子について、簡潔に概要や来歴をまとめただけの目新しい所のない本だったけれど――
「……これは」
 ――魔力を手繰り、進めていけば本の途中からソレはあった。
『私の生涯における後悔について、此処に残す』
 そこにあったのは、感じられた事が奇跡であるかのような微量な魔力で綴られた魔力文字。
 己惚れる訳ではないけれど、僕でなければこのページを開くまで魔力に気付く事すら難しかっただろう。
 当然、そんな魔力で綴られた文字はその光量すら弱々しい。
 今いるこの場所が薄暗い書庫でなければ、読み取ることも困難であっただろうことは想像だに難くなかった。
「……」
 僕はこれこそが探していた資料だと確信めいた思いを抱きながら、どこか謎めいたその文章へと視線を滑らせていった。


 私の生涯における後悔について、此処に残す。
 誰が為でもなく、私自身の懺悔の為に。
 懺悔とはいっても、これは贖罪ではない。
 赦される為ではなく、罪の所在を明確にする為にここ記すのだ。
 この文がいつかの世に、どこぞの誰かの目に留まった時に、私の娘に一切の非が無い事の証として。
 そう。
 私には『娘』がいる。
 亡き妻が残してくれた最高の宝であり、私の最高の誇りである。
 身内びいきを一切省いたとしても、娘が才色兼備の非の打ち所がない子である事実については、誰にも否定はできないことであろう。
 それは単なる事実であり、言葉を兼ねつくしても足りぬほどに娘は優秀であった。
 ――空恐ろしい程に。
 彼女はあまりに優秀過ぎた。
 娘が物心がつく頃には教育係は不要になっていた――、といえば、その異常性が伝わるだろうか。
 因みに不要となったのは貴族としての礼儀を、作法を、勉学を教える教育係のその全て――、である。
 娘は周りの者と比べるまでもなく、突出し過ぎていた。
 ……それでも、それだけであれば問題は無かった。
 優秀に過ぎるということは確かに一つの危惧であったが、それだけであれば王家として、国としてはありふれた問題でもあり、扱いに留意すれば平穏無事に過ごせただろう。
 だが、結果としてそうはならなかった。

『お父様。……私、選ばれたみたい』

 ――それが起きたのは、娘が九つになった時だった。
 前兆もなく、前触れもなく、脈絡もなく。
 いつも通りのある朝に、私は『両刃の剣を抱きしめるように抱えた』娘に、そう声をかけられた。
 震える声でそう語る娘に対して、私はどうするべきなのか皆目見当もつかなかった。
 柄部に赤い宝石が嵌め込まれた以外は、一切の装飾もないソレが『聖剣』などという神具であることが発覚するのは、それから直ぐの事である。

 それからのことは端的に記そう。
 ――娘は『勇者』になっていた。
 村を襲ったオークの首を撥ね、町へと飛来したワイバーンを焼き殺し、国を脅かす程に増えすぎたゴブリンの聯隊を殲滅した。
 成人を迎えておらぬ小娘が一人で、これを成した。
 
 ……成してしまったのだ。

 数え切れぬ命を救い、数多くの悲劇を塞ぎ、語り尽くせぬ栄光を掴み――
 ――数え切れぬ命を奪い、数多くの脅威を潰し、語り尽きぬ恐怖の対象となった。
 それだけを聞けば、恩を知らぬと民を責めるのは容易いだろう。
 だが、眼前に運ばれてきた強大な魔物の死骸を見た時、凱旋し直に娘が変えた地形を見た時、親である私ですら根源からの恐怖を覚えたのだ。
 誰が民意を笑えようか。
 娘がその気になれば、比喩ではなく物理的に、この国を壊せるのだから。
 到底、娘に言えることではないが、政策として娘を消すべきだという考えも浮かぶほどに、それは大きな問題であった。
 この場合、娘にその意思があるかは関係ない。
 出来るということが既に問題であった。
 誰しも居住には安全と安寧を求める。
 一回も噴火したことが無くとも、火口のすぐ側に家を建てる者はおるまい。
 少なくとも大多数の人間にとって、脅威とは遠ざけるべきものなのだから。
 そして、国とは規模こそ大きいというだけで、力弱き人間の集合体。
 ――であればこそ。
 民意を蔑ろにして国は成らぬ。
 加えて皮肉なことに、娘の活躍により近隣の魔物が間引かれ、一時の平和を得てしまった勇国には、それこそ――『勇者』という驚異しか残ってはいなかった。
 畳み掛けるように、事態は動く。
 魔物の発生が落ち着いたことで、娘が王都へいる時間が増えた。
 そうしてそれは同時に、王都に住む貴族の緊張を高めることに繋がり。
 ――決断は遠い話ではなかった。

『お父様。……私、選ばれたみたい』

 塞いだ耳にあの日の娘の声が浮かぶ。
 私は選択を間違えたのだ。
 誰しもを遠ざけた玉座の間にて、私は一人苦悩していた。
 あの日。
 娘がそう言葉を紡いだ時に、私は一言言うべきだったのだ。
 そんなモノは気にするなと笑い飛ばすべきであった。
 震える娘の頭を撫で、まず何よりも安心させるべきであった。
 神意だからといって、託宣だからいって――決して、娘を戦場に送るべきでは無かった。
 村がオーガに襲われようが、町がワイバーンに襲われようが、ゴブリンが雲海の如く群がってこようが。
 ――自警団が、警備兵が、宮廷魔導士が、聖騎士がこれを防ぐべきだったのだ。
 いたずらに加護を振りまく神など無視し、神具なんぞその辺に埋め立てて、娘を只の娘として育てるべきだったのだ。
 ――だが、もう全ては遅い。
 目前へと迫る決断を前に、公開という免罪府で視界を塞ぐ私。
 そんな愚かな王を嘲笑うように。

 不意に、唐突に、脈絡も前兆も置き去りにして、その男は現れた。

『王よ。何をお悩みか?』

 それは気配の無い男であった。
 誇張ではなく、狂言ではなく、足音も、生気も、――信じられないことに魔力ですらも感じられない男であった。
 そんなこの世界の理からして余りにも有りえない存在にも関わらず、男は至極当たり前のようにこの場に存在していた。
 突然の事に私は息を呑んだ。
 この場からは人除けをしたとは言っても、ここは王宮の最奥といっても過言ではない玉座の間である。
 警備の観点からしても、間違いなくこれは異常事態であった。
 そうして、動揺する私を置き去りに。
 男は嗤う――幽鬼が如く。
 男が謡う――亡霊の様に。

『まぁ、言わずとも分かりますがね。御身内の事です。さぞや苦渋のご決断でしょう』

 ――だが。
 そんな言葉を聞いた瞬間、私は動揺も置き去りに、激昂と共に切りかかっていた。
 これでも武勇でもって、武勲でもって『勇王』まで上り詰めた私である。
 男が如何に不可解な存在であったとしても、敵と定めたのであれば躊躇いなど無かった。
 私はこれまで切り捨ててきた数多の魔物と同じように、男の首を撥ね飛ばさんと剣線を滑らせた。

『おお。怖い、怖い。これは冒険者たちを取り込んでいなければ死んでいましたね』

 ――そして、男の首はそんな私の一撃をなんでもないかのように受け止めていた。
 そんな結果に思わず私は絶句する。
 眼前の光景が信じられなかった。
 私も娘には遠く及ばないとはいえ、それでも人間としては恵まれた<ステータス>を有している。
 また、手にしたこの剣にしたところで、オリハルコンを混ぜ込んだ国宝であり、それを踏まえるのであれば、この一撃を受け止めたこの男の<ステータス>はどれほどのモノになるのか。
 それは想像すら出来ないことであった。――私の娘と同じように。

『話を聞いてくれる気になりましたか? 実は私も選ばれたモノなんですよ』

 貴方の娘と同じように――、などと得意げに語る男の口元は絶対の優越感に溺れるように歪んでいた。

 そこから続いた男の要求は、内容としては至極簡単なモノであった。
 娘と同じような存在が他国にもいるから、それらを纏め上げ魔大陸の調査を頼みたいというのだ。
 魔大陸。
 世間一般に流れる通説によれば、それは海を挟んだ先に存在だけ確認されていた未踏の地であり、この大陸とは比べ物にならない程に数多の魔物で溢れた地獄ということになっている。
 だが、男が語るにはそれは誤りであるらしい。――、というよりは情報が足りてないと言うべきか。
 男曰く――、魔大陸にいる魔物の中には少なからず知性を持つ者がおり、それらは群を成して国を作り、それなりには文化的な生活を有しているとのことだ。
 だが、その知性は我ら人間と比べて決して高いとは言えず、人間を見ると見境なく殺害し、その血で自らの渇きを潤し、その肉で腹を満たすのだと言う。
 その中でも、魔王なる存在は既に冒険者へ多大な損害を与えていると男は語った。
 ――そして。
 男の真の目的はそんな地への侵略であった。

『私も王という立場には多少の憧れがありまして。――とはいえ、同族の人間を相手に事を起こすつもりはありません。まぁ、魔物の王であればご迷惑をかけないと思いましてね』

 ――、などと嘯く男だが、そんな言葉が本心で無いことは野心に塗れた男の目からしても明らかであった。
 そもそも、無意識だったようだが、この男は先ほど『冒険者を取り込んだ』と口を滑らせていた。
 それを思い出せば、魔王が冒険者を害したという発言自体、信憑性など皆無に等しい。
 ――だが。
 私にコレを断ることは出来なかった。
 経緯がどうであれ結果として数多の人間が死んだという事実があるのであれば。
 ソレを成した『魔王』なる絶対恐怖の象徴があるというのなら。

 ――娘に魔王を倒させ、英雄と化し祭り上げる。
 それで娘が救われるのなら、私は――



「随分と熱心に読んでいたみたいだね」
「……あっぐッ!?!?」
 ――意識の外から、不意に耳朶を打った言葉。
 それは通常であれば驚愕という結果を以て脳内を脅かしたであろうが、今この場に限れば大したことではなかった。
 正に今。
 この身を襲う激痛に比べれば、そんなものは些事でしかないのだから。
「どうやって弱らせるか考えていたんだけど、杞憂だったなぁ。賢者とは言え後衛職なんてこんなもんか」
「なっ……なにを……」
 自身の口元から零れる血を追いかけるように、私は視線を落とす。
 移った視界は確かに、腹部を貫いた誰かの手を捉えていた。
 冷静に見る余裕など欠片も無いが、それでも子供の様にか細い手である事は分かった。
 ――だが、それだけ確認しても意味が分からない。
 いや、それを確認したからこそ、理解が出来ない。
 これでも僕は賢者だ。
 魔力の扱いについては三百を超えるだけを研鑽を重ねてあり、無意識化でも魔力感知を怠ったことはない。
 魔力量によって距離の差は出るとは言え、これだけ近づかれて気づかない訳が――
「――ッ!! まさか……お前がま」
「さて、油断なんて馬鹿のすることだしね。悪いけど貰うよ、その<ステータス>」
 驚愕を含んだ賢者の言葉が最後まで紡がれることは無かった。

「吸収<ステータス>」

 ぞるり――、とそんな音が響いたと同時。
 貫いた抜き手を中心として弧を描くように、賢者という存在が渦を成し、回り、巡り、吸い込まれていく。

 ――そうして。

 三百年を優に生き、四大英雄として称え上げられ、魔法史の中で多くの変革を成した『賢者』は余りにもあっさりとこの世からその姿を消した。
 それは床に零れ落ちた血の一滴ですら例外ではなく、全てが終わった後、薄暗い書庫に残されたのはあどけない顔で笑う少年、ただ一人であった。

 開かれた途中で地に落ちたノート。
 それだけが、彼女がこの世に残せた最後の痕跡であった。
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