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第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される
35. アレクの企て
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エレインとアグニが地上に降りてから早くも7日が経過したある日。
ギルドの掲示板前で、アレクは自らが募集したパーティ募集の要項を睨みつけていた。
『彗星の新人』が事実上解散となってから、アレクはパーティに属さず、ダンジョンにも潜らずに部屋に篭ることが増えていた。一人で街を歩いていても、一人歩きした噂により、後ろ指刺されることが多く居た堪れないのだ。
解散後、他の3人はと言うとーーー
ロイドは宣言通り、ソロでダンジョンの1階層から再攻略を進めているらしい。パーティに誘う声も少なくはないようだが、彼は頑なにソロプレイに拘っているようだ。
ルナもダンジョンで修行すると言っていたが、めっきり姿を見せていない。故郷に帰ったのではという噂もある。
リリスは中央神殿で祈りを捧げつつ、身寄りのない子供を世話する孤児院にも、足繁く通って支援をしているらしい。
それぞれ自らのやるべきことを見い出し、邁進している。
だが、アレクは冒険者であることを諦めたわけではない。自らの鼻柱をへし折ったホムラにどうにか復讐することが出来ないか、宿の天井の木目を数えながら日夜考えていた。
そこで思いついたのが、冒険者同盟だ。
既にパーティを組んでいようが、ソロプレイヤーだろうが関係ない。とにかく一緒に70階層主に挑む意欲のある冒険者を片っ端から集めるのだ。流石に100人の手練れを集めれば、ホムラであれど無事では済まないはずだ。
そんな思いで出した募集には、思ったよりも人数が集まっており、数日中には100人に達する見通しだ。
(ふん、今度こそあの鬼神をぶっ殺してやる)
100人も居れば、ホムラ一人倒すことは造作もないだろう。結局数の力は偉大なのだ。
だが、一つ問題があった。
それは、報酬についてだ。
パーティに参加することで、一人銀貨50枚。
参加報酬として募集要項に記載した金額だ。100人となると金貨50枚は必要になる計算だ。
(ボスの階層の第一突破者には、宝物が授けられると聞く。ホムラとかいう鬼神を倒して、そのお宝を入手できれば、報酬を支払うのも問題ないだろう)
100人で挑むのだから、負けはあり得ない。だから、アレクは報酬の心配はしていなかった。だが、流石に金貨50枚はかなり惜しい。踏み倒すことは流石にできないので、踏破報酬が豪華なことを祈るばかりだ。
あと必要なのは、《転移門》の魔石だ。
70階層に到達したことがある冒険者は、手持ちの魔石に70階層が記録されているが、今回は未達の冒険者も多く参加する。
基本的に《転移門》の定員は1名だ。自分の力で到達し、冒険をした場所を記録するのがギルドの定めたルールである。
だが今回、アレクはそのルールを破り、闇魔法使いの職人に魔石の改造を依頼していた。
ちょうど昨日、その魔石の改造が終わったと連絡が入ったので、早速取りに行ってきた。アレクはズボンのポケットから怪しく光る魔石を取り出すと、口元を歪めた。
(残された全財産をつぎ込んだが、この魔石があれば大量の冒険者を引き連れて行くことができる)
他の冒険者の魔石の情報に、アレクの魔石に記録された場所情報が上書きされる。これで皆で70階層に行けるようになるらしい。
詳しい仕組みは分からないが、闇魔法使いの腕は確かのようで、街の外れに位置する彼の厨房には、入れ替わり立ち替わり客が訪れていた。こじんまりとした店の棚には得体の知れない魔道具が所狭しと並べられていた。
闇魔法使いは真っ黒なローブを被り、顔が見えず、男か女かすら分からない。だが、アレクはそんなことには興味がなかった。重要なのは、使える道具を提供してくれるか否かである。
(あとは、人数が集まるのを待つのみ)
ホムラを無惨に倒せば、彼が保護しているエレインの精神も壊すことができるかもしれない。2人同時に雪辱を果たせるのならば、一石二鳥である。
エレインの泣きっ面があんなにも嫌いだったのに、アレクは今、無性にエレインが泣き崩れる様を見たいと感じていた。
(俺のプライドを傷つけた罪を償わせてやる…くくく)
アレクは歪んだ笑みを浮かべて、ぼんやりとした光を放つ魔石をズボンのポケットにしまい直した。
ギルドの掲示板前で、アレクは自らが募集したパーティ募集の要項を睨みつけていた。
『彗星の新人』が事実上解散となってから、アレクはパーティに属さず、ダンジョンにも潜らずに部屋に篭ることが増えていた。一人で街を歩いていても、一人歩きした噂により、後ろ指刺されることが多く居た堪れないのだ。
解散後、他の3人はと言うとーーー
ロイドは宣言通り、ソロでダンジョンの1階層から再攻略を進めているらしい。パーティに誘う声も少なくはないようだが、彼は頑なにソロプレイに拘っているようだ。
ルナもダンジョンで修行すると言っていたが、めっきり姿を見せていない。故郷に帰ったのではという噂もある。
リリスは中央神殿で祈りを捧げつつ、身寄りのない子供を世話する孤児院にも、足繁く通って支援をしているらしい。
それぞれ自らのやるべきことを見い出し、邁進している。
だが、アレクは冒険者であることを諦めたわけではない。自らの鼻柱をへし折ったホムラにどうにか復讐することが出来ないか、宿の天井の木目を数えながら日夜考えていた。
そこで思いついたのが、冒険者同盟だ。
既にパーティを組んでいようが、ソロプレイヤーだろうが関係ない。とにかく一緒に70階層主に挑む意欲のある冒険者を片っ端から集めるのだ。流石に100人の手練れを集めれば、ホムラであれど無事では済まないはずだ。
そんな思いで出した募集には、思ったよりも人数が集まっており、数日中には100人に達する見通しだ。
(ふん、今度こそあの鬼神をぶっ殺してやる)
100人も居れば、ホムラ一人倒すことは造作もないだろう。結局数の力は偉大なのだ。
だが、一つ問題があった。
それは、報酬についてだ。
パーティに参加することで、一人銀貨50枚。
参加報酬として募集要項に記載した金額だ。100人となると金貨50枚は必要になる計算だ。
(ボスの階層の第一突破者には、宝物が授けられると聞く。ホムラとかいう鬼神を倒して、そのお宝を入手できれば、報酬を支払うのも問題ないだろう)
100人で挑むのだから、負けはあり得ない。だから、アレクは報酬の心配はしていなかった。だが、流石に金貨50枚はかなり惜しい。踏み倒すことは流石にできないので、踏破報酬が豪華なことを祈るばかりだ。
あと必要なのは、《転移門》の魔石だ。
70階層に到達したことがある冒険者は、手持ちの魔石に70階層が記録されているが、今回は未達の冒険者も多く参加する。
基本的に《転移門》の定員は1名だ。自分の力で到達し、冒険をした場所を記録するのがギルドの定めたルールである。
だが今回、アレクはそのルールを破り、闇魔法使いの職人に魔石の改造を依頼していた。
ちょうど昨日、その魔石の改造が終わったと連絡が入ったので、早速取りに行ってきた。アレクはズボンのポケットから怪しく光る魔石を取り出すと、口元を歪めた。
(残された全財産をつぎ込んだが、この魔石があれば大量の冒険者を引き連れて行くことができる)
他の冒険者の魔石の情報に、アレクの魔石に記録された場所情報が上書きされる。これで皆で70階層に行けるようになるらしい。
詳しい仕組みは分からないが、闇魔法使いの腕は確かのようで、街の外れに位置する彼の厨房には、入れ替わり立ち替わり客が訪れていた。こじんまりとした店の棚には得体の知れない魔道具が所狭しと並べられていた。
闇魔法使いは真っ黒なローブを被り、顔が見えず、男か女かすら分からない。だが、アレクはそんなことには興味がなかった。重要なのは、使える道具を提供してくれるか否かである。
(あとは、人数が集まるのを待つのみ)
ホムラを無惨に倒せば、彼が保護しているエレインの精神も壊すことができるかもしれない。2人同時に雪辱を果たせるのならば、一石二鳥である。
エレインの泣きっ面があんなにも嫌いだったのに、アレクは今、無性にエレインが泣き崩れる様を見たいと感じていた。
(俺のプライドを傷つけた罪を償わせてやる…くくく)
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