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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part34 カエルノオウジサマ/カエルは怒る
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ララは呆然としてその光景を目の当たりにしていた。
「カエル……さん」
撃たれたはずのカエルは大きくへこんだかと思うと、すぐに跳ね返って弾を押し返して弾いてしまう。そして、何のダメージもなく、そこに佇んでいる。ララはカエルに再度声をかけていた。
「カエルさん!」
笑っていた。そのバケガエルは笑っていた。ユーモラスな、滑稽な、カエルの特徴を膨らませたような独特のそのシルエットで。漫画のように笑顔を浮かべていた。そしてバケガエルのイプシロンはララに対してこう答えたのだ。
「これが俺の魔法。だからおれ平気」
「痛くないの?」
「ちょっと痛い。でも――」
一呼吸置いてイプシロンは答えた。真面目で落ち着いた声で。
「お前のような子供が悲しい顔をしている方がもっと痛い」
そして再び狙撃の弾は撃ち込まれた。だが、そんなモノは彼にかけられた最高の魔法の前には全くの無力だ。イプシロンはそのシルエットを再び凹ませたが、また何のダメージも無しにはじきかえしたのだ。
「ほんとだ! すごい!」
死なない――、悪意を象徴するような攻撃にも平然としている。ただその姿を見ただけでもララの心には安堵感が満ちてきていた。
「そうだ俺はこれくらいではなんともない。心配しなくて良い。だからなあとちょっとだけ待ってろ、あの暗い空に悪い奴らが隠れている。今あそこに行って退治してくる。だからちょっとだけ待つ」
優しく諭すような声がする。イプシロンのその言葉にララは思わず、こう答えていた。それは去年の聖夜の夜の時に見た夢物語の思い出だった。
「じゃぁ……、あのクリスマスの時みたいに?」
「ゲコ? 覚えてるのか?」
ララははっきりと顔を縦にふっていた。
あの時、記憶消去の操作はしっかりとやったはずだが、子供の場合心理状態が不安定なこともあり極稀にこう言うことが起きる。クラウンにバレたら叱責される事だろう。
「あやや、それちょっと困る。頼むから誰にも言うな。俺おこられる」
イプシロンの狼狽える声を聴きながらもララは思い出していた。あの聖夜の夜に恐ろしい大人たちに襲われた時に救けてくれた不思議なカエルのことを。でもそのカエルとの約束をララが無視するはずがなかった。
「わかった。誰にも言わない」
「そうか、だったら俺も約束する。お前たちを絶対に守る。みんな笑って暮らせるようにしてやる。だからあと少しだけ我慢して待ってろ。いいな?」
「うん」
「ほら、みんなのところへ帰る。ここはまだ危ない」
その言葉にララは笑っていた。そして大きく頷くと軽く手を振りながら、廃ビルの奥へと去っていったのだった。それを見送りつつ、イプシロンは頭上を仰いでいた。その怒れる視線が地上から、ステルスヘリの方へと向けられている。その怒りと義憤は今なお潰えては居なかったのである。
「アレを落とす。絶対に落とす――アイツら、子どもたちを怖がらせた」
そしてヒタヒタと歩きながら頭上を仰ぎ続けていた。そのヘリに到達するための手段を思案しながら。
「お前たちだけは絶対に許さない」
イプシロンの目が炯々と光っていた。その怒りの視線は確実に黒い盤古たちのステルスヘリへと届いていたのである。
「カエル……さん」
撃たれたはずのカエルは大きくへこんだかと思うと、すぐに跳ね返って弾を押し返して弾いてしまう。そして、何のダメージもなく、そこに佇んでいる。ララはカエルに再度声をかけていた。
「カエルさん!」
笑っていた。そのバケガエルは笑っていた。ユーモラスな、滑稽な、カエルの特徴を膨らませたような独特のそのシルエットで。漫画のように笑顔を浮かべていた。そしてバケガエルのイプシロンはララに対してこう答えたのだ。
「これが俺の魔法。だからおれ平気」
「痛くないの?」
「ちょっと痛い。でも――」
一呼吸置いてイプシロンは答えた。真面目で落ち着いた声で。
「お前のような子供が悲しい顔をしている方がもっと痛い」
そして再び狙撃の弾は撃ち込まれた。だが、そんなモノは彼にかけられた最高の魔法の前には全くの無力だ。イプシロンはそのシルエットを再び凹ませたが、また何のダメージも無しにはじきかえしたのだ。
「ほんとだ! すごい!」
死なない――、悪意を象徴するような攻撃にも平然としている。ただその姿を見ただけでもララの心には安堵感が満ちてきていた。
「そうだ俺はこれくらいではなんともない。心配しなくて良い。だからなあとちょっとだけ待ってろ、あの暗い空に悪い奴らが隠れている。今あそこに行って退治してくる。だからちょっとだけ待つ」
優しく諭すような声がする。イプシロンのその言葉にララは思わず、こう答えていた。それは去年の聖夜の夜の時に見た夢物語の思い出だった。
「じゃぁ……、あのクリスマスの時みたいに?」
「ゲコ? 覚えてるのか?」
ララははっきりと顔を縦にふっていた。
あの時、記憶消去の操作はしっかりとやったはずだが、子供の場合心理状態が不安定なこともあり極稀にこう言うことが起きる。クラウンにバレたら叱責される事だろう。
「あやや、それちょっと困る。頼むから誰にも言うな。俺おこられる」
イプシロンの狼狽える声を聴きながらもララは思い出していた。あの聖夜の夜に恐ろしい大人たちに襲われた時に救けてくれた不思議なカエルのことを。でもそのカエルとの約束をララが無視するはずがなかった。
「わかった。誰にも言わない」
「そうか、だったら俺も約束する。お前たちを絶対に守る。みんな笑って暮らせるようにしてやる。だからあと少しだけ我慢して待ってろ。いいな?」
「うん」
「ほら、みんなのところへ帰る。ここはまだ危ない」
その言葉にララは笑っていた。そして大きく頷くと軽く手を振りながら、廃ビルの奥へと去っていったのだった。それを見送りつつ、イプシロンは頭上を仰いでいた。その怒れる視線が地上から、ステルスヘリの方へと向けられている。その怒りと義憤は今なお潰えては居なかったのである。
「アレを落とす。絶対に落とす――アイツら、子どもたちを怖がらせた」
そしてヒタヒタと歩きながら頭上を仰ぎ続けていた。そのヘリに到達するための手段を思案しながら。
「お前たちだけは絶対に許さない」
イプシロンの目が炯々と光っていた。その怒りの視線は確実に黒い盤古たちのステルスヘリへと届いていたのである。
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